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2025年4月1日の建築基準法・建築物省エネ法の改正で、注文住宅の建て方が大きく変わりました。工事費用の上昇、確認申請の手続き増加など、住宅建築を考えている人への影響は避けられません。しかし、これらの改正は、私たちの住まいをより快適で安全なものにするための重要な一歩でもあります。この記事では、2025年の建築基準法・建築物省エネ法の改正が注文住宅に与える影響について、kao一級建築士事務所の越野かおるさんに伺い解説します。
まずは、そもそも建築基準法とは何なのか、どのような目的で改正がおこなわれたのかを解説します。
建築基準法は、「人命を守る」ことを目的に制定された法律で、建物の構造や設備、用途、敷地などについて最低限の基準を定めたものです。耐震性や防火性といった安全性はもちろん、周囲の建物や環境への配慮も含まれており、日本のすべての建築物がこの法律の枠組みによって設計・施工されています。
一方、建築物省エネ法は、建物のエネルギー消費性能に関する基準を定め、省エネ性の高い建物の普及を目的とした法律です。断熱や設備の効率性などを評価・審査の対象とし、CO2削減や脱炭素社会の実現を支える役割を担っています。
2025年の建築基準法・建築物省エネ法の改正は、省エネルギー性能と安全性の両面から住宅の質を底上げすることを目的にしています。その背景には、建築分野が日本のエネルギー消費全体の約3割を占めるという実態があります。
「建築は『住みはじめてから』だけでなく、土地の造成や基礎工事、建設、そして解体までの全ライフサイクルで多くのエネルギーを使っています。それを少しでも減らすために、建物の省エネ性能適合を義務化し、構造の見直しも進めていくのが今回の改正の大きな目的です。
現在、日本政府は2050年のカーボンニュートラル※の実現を目指しており、これにより2030年以降に新築される住宅については、ZEH水準の標準化を目指しています。省エネと創エネ、そこに断熱・気密が加わるのがZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)の基本です。今回の改正は、今後それを実現するための一歩です」(越野さん/以下同)
※CO2を含む温室効果ガスの排出量と吸収量を「差し引きゼロ」にすること
ZEHについてもっと詳しく→
ZEH住宅とは?補助金がもらえる条件や、光熱費、メリットデメリットを解説【2024年度版】
2025年の法改正に先立ち、建築基準法や関連制度は段階的に見直されてきました。例えば、防火地域での木造住宅を可能にする緩和措置や、既存建築物の活用を促す制度の整備です。
これにより、スクラップ・アンド・ビルド一辺倒ではなく、今ある建物を活かす発想が制度面からも支えられるようになりました。こうした動きは、CO2の排出を抑えながらの住まいづくりを進める土台となり、2025年の省エネ性能義務化・構造規制強化にもつながっています。
2025年4月1日の改正内容は、以下のとおりです。
<建築基準法>
■4号特例の見直し(法6条)
建築確認・検査の対象外建築物の縮小(法6条)
軽微な変更の対象の拡大(規則3条の2)
エレベーターの建築確認等の対象見直し(令146条)
提出図書等の合理化(規則1条の3)
確認申請書等の様式改正
限定特定行政庁の業務範囲の見直し(令148条)
確認検査員等の数の見直し(機関省令・指定準則)
■小規模木造建築物に係る基準の見直し(施行令第3章)
壁量基準の見直し(令46条)
筋かいの対象拡大(令45条)
柱の小径の基準の見直し(令43条)
基礎の基準の見直し
■階高の高い木造建築物等の構造安全性の検証法の合理化(法20条)
簡易な構造計算の対象の木造建築物の規模見直し(法20条1項)
簡易な構造計算の対象範囲の拡大
鋼材のボルト接合の適用範囲の拡大
二級建築士等の業務独占範囲の見直し(建築士法3条)
<建築物省エネ法>
■省エネ基準適合の義務化(法10条)
これらのうち、注文住宅に大きく影響する内容について、次章で詳しく解説していきます。
2025年の建築基準法の改正内容についてもっと詳しく→
建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料(国土交通省)

2階建て以下で延床面積が500平米以下の小規模な木造の一戸建て住宅は「4号建築物」とされ、建築確認や構造審査の一部を省略することが認められていました。これを「4号特例」といいます。
しかし2025年の改正では、この特例が縮小され、従来の4号建築物は『新2号』『新3号』という新たな区分に置き換えられました。今後はそれぞれの区分ごとに、建築確認や構造審査などの申請手続きが求められるようになります。
「これは、住宅の省エネ性を高めるためには太陽光発電パネルを載せる、断熱材を厚くするなどにより建物の重量が重くならざるを得ず、それを支えるための厳密な構造計算が必要になったためです。手続きの負担は増えるものの、安全性を高めるための見直しと考えるとよいでしょう」

4号特例についてもっと詳しく→
4号特例の縮小、建築基準法改正で木造の構造関係の資料提出が義務化に(注文住宅検討者向け/2025年改正)
これまで耐震設計における壁量計算は、「重い屋根・軽い屋根」という区分ごとに、必要な耐力壁の量が決まっていました。2025年の法改正ではこの区分が廃止され、建物全体の仕様をふまえた設計が求められるようになりました。
「太陽光発電パネルを載せる家が増えてきて、もともと軽いとされていた金属屋根などを使っても、屋根の総重量はかなり重くなってきています。従来は『屋根を軽くすれば耐震的に有利』と考えられてきましたが、今はもう屋根が重くなる前提で構造を考えなければなりません。
『重い屋根・軽い屋根』という分け方が現実に合わなくなったことが、今回の法改正の背景にあります」
2025年の建築基準法・建築物省エネ法についてもっと詳しく→
建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料(国土交通省)
2025年の法改正では、安全性を確保しつつ、住宅設計の自由度を高めるための合理化も進められます。具体的には、これまで簡易な構造計算で建築できるのは、高さ13m以下かつ軒高9m以下の建物に限られていました。それが2025年4月以降は、高さ16m以下かつ階数3以下に合理化されました。
「これは、とくに都市部での3階建て住宅などで、快適性と断熱性能を両立する家づくりを可能にする重要な変更です。
改正前は、3階建て住宅を設計する際、軒高9m以内に収めないと軒高制限に引っかかってしまうため、3階建てで天井高2.4mを確保しようとすると、ダクトや配管を納めるスペースを確保することができませんでした。
それが今回の改正で軒高の上限が引き上げられたことで、各階の天井高や配管スペースにゆとりが出ました。その結果、配管を納めやすくなり設備の選択の幅が出て、さらに3階建てでも天井が高い開放的な家にできるなど、設計の自由度が高まっています」

「これに合わせ、構造計算が必要な延床面積は、500平米超から300平米超に縮小され、対象となる建物が増えました。これは4号特例の縮小と同様に、省エネ性能の向上、高さ規制の合理化などにより建物の重量が増加するのをふまえ、それを支える構造の強化が必要となったためです」
2025年の改正では、すべての新築住宅に対して「省エネ基準への適合」が義務づけられ、これまで努力義務だった省エネ性能の確保が、すべての建築主に求められるようになりました。
「これまでは断熱等級4が努力義務でしたが、2025年4月以降はそれが義務になりました。そして2030年頃には、より高い断熱等級5が最低基準になると見込まれています」
断熱等級とは、住宅の熱の逃げにくさ(断熱性能)のレベルを等級1~7で示す指標で、数値が高いほど断熱性能が高くなります。
「断熱等級4はあくまで最低ラインであり、北欧などの基準と比較すると物足りなさは否めません。そのためとくに北海道や東北などでは、2030年を待たず、より高い等級を目指す動きが進むだろうと思います」
断熱等級についてもっと詳しく→
断熱等級4・5・6・7の違いやおすすめの等級、高断熱の家を建てる際の注意点などを解説!
ここからは、法改正が実際に注文住宅にどんな影響を与えるのかを解説します。
2025年の法改正により、すべての新築住宅に断熱等級4の適合が義務化され、断熱・気密性能が一定以上確保された家づくりが標準になります。これにより、冬の足元の冷えや夏の2階の暑さといった、これまで当たり前のように我慢されていた「住まいの不満」が軽減されることが期待されます。
「これまでの日本の住宅は、性能が十分でなくても『仕方ない』と我慢して住むケースが少なくありませんでした。寒ければこたつやヒーターを増やしていく結果、物も消費エネルギーもどんどん増えてしまっていたのです。
しかし本来は我慢しないで快適に暮らせるべきです。法改正により断熱や気密がしっかりした住宅になることで、そういう付け焼き刃の対応をしなくても、快適に暮らせる家になります」

今回の法改正では、省エネ性能や構造の安全性など、建築物としての基本性能が一律に引き上げられました。また2024年には、「建築物の省エネ性能表示制度」により各住宅の「省エネ性能ラベル」の表示が努力義務となっています。
これにより「きちんとつくられた住宅かどうか」が第三者にも分かりやすくなり、将来的な流通や売却時にもプラスに働くと考えられます。
「初期コストがかかっても、長い目で見れば価値が維持されやすくなるのは大きなメリットだと思います」
「法改正によって、設計や確認申請の作業量はこれまでの2倍ほどに増えました。また、省エネ性能を満たすために太陽光発電などの設備を導入するケースも少なくありません。消費エネルギーを抑えられ光熱費を削減できるようになりますが、設備機器の費用は100万~200万円の追加コストがかかります。
さらに、断熱や構造の工事では求められる性能グレードが上がり、使う材料や工法も増えていくため、全体として建築費は高くならざるを得ないのが現状です」
建築確認や省エネ性能の審査にかかる作業が増えたことで、住宅が完成するまでのスケジュールにも影響が出ています。
「設計や申請の作業が増えたのに加え、断熱や構造の工事も煩雑になり、その結果として工期も延びています。省エネ性能の検査も完了検査と別に項目が追加されているので、その対応にも時間がかかります」
工期が延びれば、その分だけ現場にかかる人件費や管理コストも増加します。設計や性能面だけでなく、スケジュールや予算にも余裕を持って計画を立てることが、今後ますます重要になっていきそうです。

これから注文住宅を建てるときには、何を意識すればよいのでしょうか。
2025年の法改正で断熱等級4の適合が義務化されましたが、国は2030年を目途に、より高い断熱等級5の水準を住宅の標準とする方針を示しています。こうした流れを見越して、家を建てる際は早い段階から等級5相当の断熱性能を目指せば、将来的な資産価値の維持や快適性の確保につながります。
「2025年の建築基準法改正ではとくに『省エネ』が注目されていますが、耐震性能もあわせて考えるのが基本です。太陽光発電パネルを載せれば屋根が重くなり、その分構造の強化も必要になるからです。断熱や創エネ、構造までを含めて最初からセットで考えることが重要です」
断熱性能や創エネ設備、耐震性能などで一定の条件を満たせば、ZEH住宅や長期優良住宅として、「子育てグリーン住宅支援事業」「ZEH補助金」などの各種補助金制度や税制優遇の対象になる場合もあります。そうすると、初期コストの対策になるのもメリットです。
子育てグリーン住宅支援事業についてもっと詳しく→
子育てグリーン住宅支援事業は、子育て世帯以外も補助金がもらえる?
ZEHについてもっと詳しく→
ZEH住宅とは?補助金がもらえる条件や、光熱費、メリットデメリットを解説【2024年度版】
法改正によって住宅の性能に対する要件が厳しくなる中で、設計や施工の実績と知識がある事業者を選ぶことが、家づくりの成否を大きく左右します。施工実例を見るのはもちろん、どういう考え方で家づくりをしているのか、直接聞いてみるのが大切です。
「施主に分かりやすく説明するのはもちろんですが、『納得してお金を出せる』ような打合せ内容になるのがベストです。省エネについてはデータを示して科学的根拠からのアプローチもありますし、メリットとデメリットを提示してくれる建築会社は信用できるでしょう。
省エネ住宅については、もはや『得をする・もとを取れる』というのは昔の話で、いかに『地球のために一人一人が担う責任を果たすか』というニュアンスに変わっています。耳障りのよい『得すること』ばかり言う業者には注意が必要かもしれません」

最後にあらためて、これから注文住宅を建てる人に向けてのアドバイスを越野さんに伺いました。
「2025年の建築基準法改正によって、省エネや耐震といった住宅の性能は一定水準まで整うようになりました。しかし、その性能をどう活かすかは、住まい手の意識と工夫にかかっていると感じています。
例えば、自分たちの暮らしに本当に必要な設備は何か、どこにお金をかけるべきかを整理しておくこと。それによって、性能を無駄にせず、快適で納得のいく住まいを実現することができると思います。
自分たちの家族の現在、そして未来のライフスタイルのイメージを建築士などに伝えたうえで、『建てること』だけでなく、『どう暮らしていくか』までを見据えた家づくりを、ぜひ考えてみてください」
2025年の建築基準法・建築物省エネ法の改正により住宅の快適性と安全性が底上げされた
作業増加や仕様の複雑化により、工期・建築費の増加は避けられなくなっている
性能を活かせる住まいの実現には、暮らし方に合う設備選びと信頼できる施工先選びが重要