4号特例の縮小、建築基準法改正で木造の構造関係の資料提出が義務化に(注文住宅検討者向け/2025年)

最終更新日 2025年09月22日

4号特例の縮小、建築基準法改正で木造の構造関係の資料提出が義務化に(注文住宅検討者向け/2025年改正)

2025年4月から、省エネ基準の適合義務化に伴い、木造住宅の建築確認申請が変更されます。ここでは一級建築士の塚原光顕さんのお話をもとに、4号特例の縮小や構造計算などの義務化について詳しく解説していきます。

2025年4月以降に家を建てる人に関係がある法改正とは?

はじめに、2025年4月以降に家を建てる人に関係がある、2つの法改正について紹介します。

建築物省エネ法の改正

2022年に建築物省エネ法が改正され、2025年4月からはすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。これまでは、住宅の断熱性能は4段階に区分されており、断熱等性能等級4が最高等級でした。

しかし、今回の改正では、新たに断熱等性能等級5~7が新設され、区分は7つに増えます。さらに、最低でも断熱等性能等級4が必須となりました。
この改正の背景には、2050年までにカーボンニュートラルを達成し、温室効果ガスを大幅に削減するという政府が掲げた日本の目標があります。

断熱等性能等級の図解
現在、断熱等性能等級は7段階存在する。暑さ・寒さ対策を考慮する上で、断熱等性能等級は重要なポイント(イラスト/いぢちひろゆき)

「2025年4月以降は、最低でも断熱等性能等級4をクリアしないと建築確認申請が通らなくなります。以前まで断熱等性能等級4は長期優良住宅の基準値だったので、すべての住宅において高い断熱性能が義務付けられることになります」(塚原さん、以下同)

これまでは中規模以上の非住宅のみが省エネ適合義務の対象でしたが、改正後の2025年4月からは小規模な非住宅および、すべての新築住宅が義務対象となります。
それに伴い、新築住宅の建築確認手続きの中で、省エネ基準への適合性審査を行う必要があります。

省エネ基準適合義務化の対象
省エネ基準適合義務化の対象
建物の規模にかかわらず、すべての新築住宅が省エネ基準適合義務化の対象となる(画像/国土交通省)

建築基準法の改正

省エネ法の改正は建築基準法にも反映され、省エネ対策の加速や木材利用の促進などをはじめ、2025年4月からさまざまなルール変更が実施されます。これにより一般住宅にも、環境負荷を減らすための持続可能な建築方法が義務付けられることになります。

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建築基準法改正の中でも特に注目されているのが「4号特例の縮小」です。4号特例という言葉にはあまりなじみがないかもしれませんが、建築コストや引き渡しまでの期間、そして住まいの安全性や快適性にも影響があるため、家を建てる前に正しく把握しておきましょう。

新築住宅のイメージ
2025年4月の建築基準法改正は、多くの新築住宅やリフォームに影響してくる(画像/PIXTA)

4号特例とは

建築基準法改正の中でも、特に大きな変更点が4号特例の縮小です。まずは、そもそも4号特例がどういうものなのかを押さえておきましょう。
建築基準法では、建築物には4つの区分があり、一般的な規模の木造2階建てや平屋は「4号」に分類されています。
4号特例とは、建築基準法第6条に定められた、特定の条件下の木造建築物(4号建築物)に対して、建築確認の審査を一部省略することができる規定です。

「建築士が設計・工事監理を行った、2階建て以下で延床面積が500m2以下の小規模な木造建築物を4号建築物といいます。4号建築物は、建築確認の審査を簡略化することが許可されており、住宅の機能や安全性を示す構造計算書などを提出する必要がありません」

小規模な木造住宅のイメージ
4号特例により、2階建て以下で延床面積が500m2以下の木造住宅は構造計算書などの提出が不要となっている(画像/PIXTA)

2025年の建築基準法改正に伴う「4号特例の縮小」ってなに?

4号特例がなくなり、小規模な木造建築物にも審査が義務付けられる

ここからは、「4号特例の縮小」について解説していきます。

「2025年の建築基準法の改正により、従来の4号建築物という区分はなくなります。また、2号・3号の内容も変更になります(新2号建築物・新3号建築物の新設)」

建築物の区分変更に関しては以下の図を参照してください。

4号建築物・新2号建築物・新3号建築物
法改正前後の建築物の区分
2025年4月からは、建築物の区分自体が変更となる。特殊建築物とは学校や病院など不特定多数の人が利用する建築物や、汚物処理場など衛生上・防火上特に規制すべき建築物のことを指す(イラスト/いぢちひろゆき)

「建築基準法の改正によって2025年4月からは特例の対象が大きく縮小されます。

これまでは、2階建て以下で延床面積が500m2以下の木造建築物(4号建築物)であれば建築確認の審査の一部を省略することができましたが、今後は、2階建て以上のすべて住宅および、延床面積200m2以上の平屋は新2号建築物に分類され、審査の際に構造や省エネに関連する図書を提出することが義務となります。

つまり、以前は構造計算など建築確認の審査の内容を一部省略することができた小規模な木造住宅であっても、2025年4月以降は審査対象になる可能性が高いということです。また、新築住宅だけでなく大規模なリフォームの際も同様に確認申請が必要となるため注意が必要です」

なお、延床面積200m2以下の木造平屋建ては法改正により新3号建築物に分類され、これまでの4号特例のように審査を一部省略することが可能です。

建築確認審査の対象となる建築物
建築確認の審査対象となる建築物の変化
これまで4号建築物に区分されていた木造建築物の大半が、2025年4月からは新2号建築物に区分される(参考/国土交通省)(イラスト/いぢちひろゆき)

4号特例縮小の背景

4号特例が縮小され、小規模な木造住宅でも構造関係の資料の提出が義務化される背景について説明します。

「省エネ基準適合義務化により、今後、建築物の重量増加が見込まれます。屋根に太陽光パネルを搭載したり、断熱性の高いサッシを導入すると、建物への重量負担が増えるようになるのです。そうなると、これまで通り4号特例にのっとって建築確認の審査を一部省略していたのでは建築物の安全性が担保できません。構造検討をしっかりと行い、安心・安全な建築物であると証明することが求められているのです」

4号特例縮小の要点
コンパクトな住宅であっても、2階建て以上であれば構造関係規定適合などの資料の審査を省略することはできない(イラスト/いぢちひろゆき)

4号特例縮小の影響はいつから?

では、2025年4月以前に家づくりをスタートした場合はどうなるのでしょうか?例えば、2025年3月に建築確認の審査を申請をし、4月に着工する新築住宅の場合は法改正の影響を受けるのか、また、そういった際は構造計算や申請をやり直さなくてはいけないのか塚原さんに伺いました。

「改正基準法は4月着工分からとなります。よって確認申請書類の提出が3月であっても、着工が4月以降であれば改正基準法の対象となり、追加で資料を求められます。法改正をまたぐスケジュールで家づくりを進めている人は不安もあるかと思います。依頼する建築会社にあらかじめ確認し、不安や疑問を解消した上での家づくりをおすすめします」

法改正後の建築・リフォームの注意点

法改正後に家を建てたり大規模なリフォームを予定している人は、以下のことに注意しましょう。

以前よりもコストが高くなる傾向に

「多くの木造住宅で構造計算や省エネ計算などが必要となり、その分のコストが費用に上乗せされることが予想できます。また、断熱性の高いサッシは価格が高いので、窓が多い間取りや大きな窓を採用すると全体の費用も上がってくるでしょう」

建築コストの上がり幅に関しては建築会社によっても差が大きいため、会社選びの時点で比較検討してみましょう。

コストのイメージ
予算内で家を建てるためにも、費用の内訳はできるだけ知っておきたい(画像/PIXTA)

審査項目や書類提出が増え、工期が長くなる可能性がある

費用以外にも注意すべき点があります。

「審査項目や提出書類が増える都合上、着工までの期間が延びる可能性が考えられます。法改正以前は審査の完了まで3~4週間ほどですが、審査の際に要確認事項があれば設計の修正が行われることもあります。また、建築業界全体において、これまでの工程と大きく変わるため、特に法改正直後は審査完了まで時間がかかるかもしれません。住まいの完成を急いでいる場合は、できるだけ余裕をもった家づくりをおすすめします」

構造計算のイメージ
チェック項目が増える分、時間もかかると予想される(画像/PIXTA)

大規模なリフォームも審査が義務化

新築住宅だけでなく、リフォームをする場合にも法改正の影響があります。増改築などの構造に関わる大規模なリフォームを実施する場合は、構造計算や省エネ計算をしっかりと行った上で審査をしなくてはいけません。その分、従来よりもコストがかかることが考えられるため、依頼する会社によく相談しましょう。

大規模リフォームのイメージ
構造に関わるリフォームを予定している場合は要注意(画像/PIXTA)

構造計算に慣れていない建築会社もある?

4号特例が適用される建築物は構造計算書などの提出が必須ではなかったため、建築会社によっては構造関係の資料作成に不慣れな場合もあります。

「多くの建築会社では以前から構造計算書などの作成を行っているので、それほど心配しなくても問題ないと思います。また、社内で構造計算書などの作成を行っていなくても、外部の構造設計事務所に計算を委託している場合もあります。不安を感じたら、構造計算書などの作成についてはどのようにしているかを担当者に聞いてみるとよいでしょう」

構造計算ソフトのイメージ
多くの建築会社では専用のソフトを使って構造計算などをしている(画像/PIXTA)

【法改正によるメリット】快適な安全な住まいが実現できる

ここからは、構造計算や省エネの義務化などによるメリットを紹介しましょう。

構造計算により住まいの安全性が保証される

「構造計算書などの提出が義務化されることでコストと時間はかかりますが、住まいの安全性が保証されることは大きなメリットです」

日本は地震をはじめとする自然災害が多い国。家族が安心して住める家は、今後さらにニーズが高まりそうです。

家の安全性をチェックするイメージ
構造上の安全性は住まいにとってかけがえのない価値(画像/PIXTA)

1年中快適な家になる

「省エネ基準適合が義務付けられることで、高断熱が当たり前となります。夏の暑さ・冬の寒さ対策に悩みにくくなり、家のどこにいても一定の気温を体感しやすくなります。1年を通して快適に過ごすことができるでしょう」

暖かいリビングのイメージ
高断熱の住まいは、小さな子どもや高齢者も心地よく暮らせる(画像/PIXTA)

ランニングコストを節約できる

「導入費用は高くなるかもしれませんが、省エネ住宅にすることで光熱費を抑えることが期待できます」

また、構造計算などをしっかりと行うため、災害などから受けるダメージを抑え、結果としてメンテナンス費用がかかりにくいという利点も考えられます。

家と光熱費のイメージ
高断熱の家は空調費用を節約できる(画像/PIXTA)

これから家を建てる人は、スケジュールに十分な余裕をもって

最後に、法改正に向けて意識したいポイントについて塚原さんに伺いました。

「2025年の法改正によって家づくりの流れや必要となる費用はこれまでと大きく変わります。そのことを理解した上で、資金や期間に余裕をもって住まいの計画を進めましょう。納得のいく住まいを完成させるためには、ゆとりをもつことが必要です」

まとめ

2025年4月以降、多くの新築木造住宅で構造計算書などの提出が必須となる

法改正に伴い、コストアップや建築期間が長くなることが予想される

住まいの安全性と快適性が保証されるメリットがある

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取材・文/佐藤愛美(りんかく) イラスト/いぢちひろゆき
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