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東日本大震災をきっかけに、省エネに対する人々の関心が高まっている。住宅設備のなかでも省エネにつながる設備機器への注目が高い。太陽光を利用した発電機器のある家は、どれくらいあるのか、どの都道府県で所有率が高いのかを、総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」から見ていこう。
「令和5年住宅・土地統計調査」によると、「太陽光を利用した発電機器」がある住宅は全国で270万戸。平成20年の52万戸から平成25年は157万戸と約3倍に、令和5年は270万戸と15年間で約5.2倍になっている。
太陽光発電設備の導入は、主に一戸建ての持ち家で進んでいる。下表の令和5年の結果を見ると、「太陽光を利用した発電機器」のある住宅総数270万戸のうち、245万戸が一戸建ての持ち家で導入戸数の約9割を占めている。
また、太陽光発電導入住宅の割合(所有率)は、共同住宅や賃貸住宅も含む「住宅全体」に対しては
4.9%、一戸建て(持ち家)に対しては9.0%となっている。
| 調査年 | 住宅全体 | 一戸建て(持ち家) |
|---|---|---|
| 平成20年 | 52万戸(1.0%) | 48万戸(1.9%) |
| 平成25年 | 157万戸(3.0%) | 143万戸(5.5%) |
| 平成30年 | 219万戸(4.1%) | 199万戸(7.4%) |
| 令和5年 | 270万戸(4.9%) | 245万戸(9.0%) |
平成20年以降、太陽光発電設備が大幅に増えた背景には、平成23年に起きた東日本大震災による意識の変化がある。国土交通省が震災の翌年に実施した「国民意識調査」によると、「東日本大震災後の考え方の変化」について、43.8%の人が「節電意識の高まり」を選んでいる。半数近くの人が、これまでよりも強く「省エネ」を意識するようになったのだ。また、太陽光発電を導入する際の国や自治体からの補助金制度や、使いきらなかった電力の固定価格買取制度(FIT制度)など、制度面での充実も「太陽光を利用した発電機器」の普及率増加の後押しに影響していたと考えられる。
これから太陽光発電設備を設置しようと考えている人はどれくらいいるのだろうか。「2024年 注文住宅動向・トレンド調査」(リクルート)によると、注文住宅建築者の25.9%が、建築する際に重視した条件の一つとして「太陽光発電や蓄電池を搭載すること」を挙げている。
また、高水準の省エネ住宅に太陽光発電設備などを備えた「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を導入する人も年々増加している。前述の調査でZEHについて知っている人に、導入・検討状況を聞いたところ2024年は74.3%がZEHを検討し、45%が実際に導入している。導入者の割合は2020年の2倍以上になっているのだ。

ZEHは、以下の3要素を組み合わせることで「生活で消費するエネルギー」より「太陽光発電などで創るエネルギー」が多くなることを目指す住宅だ。ZEH住宅の新築や購入に補助金を設けるなど、国も普及に力を入れている。
【ZEHの3要素】
①断熱性能の高い建物(暑さや寒さに影響されにくい)
②高性能の省エネ設備(少ないエネルギーで生活可能)
③太陽光発電などの創エネルギー設備(電力を創る機能)
では、ZEHによる「省エネ+創エネ」で光熱費をどの程度減らせるのだろうか。ZEH導入者に対する調査では、光熱費の削減額は1カ月あたり平均7161円という結果に。また、約3分の1以上の人が1万円以上削減していると回答している(グラフ)。太陽光発電で消費電力の全てまかなうとまでいかなくても、光熱費の節約効果は高いといえる。

ZEHについてもっと詳しく
→ZEH住宅とは?補助金がもらえる条件や、光熱費、メリットデメリットを解説【2025年度版】
「太陽光を利用した発電機器」の所有率が高いのはどの県なのか。「一戸建て(持ち家)」について所有率が高い都道府県のトップ20を見ると、トップ3の佐賀県・熊本県・宮崎県をはじめ、九州の7県が20位以内にランクイン。静岡県、愛知県・岐阜県など東海エリアの所有率も高い。
太陽光を利用する発電は、「発電できる日照時間の長さ」「発電効率が高くなる晴れの日の多さ」「太陽から地上に届く光のエネルギー量(日射量)」がポイントになる。ランキング20位には、この3要素のいずれかが上位に入っている県が多い。
一方、秋田県・新潟県・青森県・石川県、北海道など日本海側のエリアや、東京都、大阪府など高層建物が多く一戸建ての敷地が狭くなりがちな大都市圏は、所有率が6%未満と低くなっている。
つまり、太陽光発電設備の所有率の高いエリアは、太陽光発電に適した気象条件や地理的な条件があると考えられる。もちろん、同じ県内でも気象条件は異なる。気象庁など公的機関のサイトではエリアごとのデータも調べられるので、チェックしてみるとよいだろう。
| 順位 | 県名 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 佐賀県 | 16.14% |
| 2位 | 熊本県 | 14.66% |
| 3位 | 宮崎県 | 13.87% |
| 4位 | 長野県 | 13.76% |
| 5位 | 静岡県 | 13.38% |
| 6位 | 山梨県 | 13.27% |
| 7位 | 愛知県 | 12.53% |
| 8位 | 大分県 | 12.32% |
| 9位 | 岡山県 | 12.17% |
| 10位 | 滋賀県 | 12.16% |
| 11位 | 栃木県 | 12.13% |
| 12位 | 鹿児島県 | 11.94% |
| 13位 | 群馬県 | 11.87% |
| 14位 | 山口県 | 11.72% |
| 15位 | 岐阜県 | 11.67% |
| 16位 | 広島県 | 11.28% |
| 17位 | 福岡県 | 11.19% |
| 18位 | 長崎県 | 10.83% |
| 19位 | 香川県 | 10.67% |
| 20位 | 宮城県 | 10.59% |
エリア別の日照時間・日射量を調べるなら
→気象庁「2024年(令和6年)の日本の天候(速報)」全国気候表2024年(13ページ)
→NEDO「日射量データベース閲覧システム」(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
国では2050年カーボンニュートラルに向けて、「2030年に新築一戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を導入する」目標を掲げていて、住宅供給者に働きかけを行っている。このため、今後は太陽光発電設備がセットになった注文住宅のプランなどが増加すると考えられる。
さらに、2025年10月からは、新規に導入された住宅用太陽光発電の「FIT価格(固定買取価格)」が4年間大幅に引き上げる制度もスタートする(2027年3月まで)。
近年は、世界的なエネルギー高騰化に伴い電気料金の値上げが続いている。快適な生活に加え、光熱費を大きく減らす効果のある太陽光発電設備やZEH住宅は、今後の家づくりの有力な選択肢になりそうだ。
住宅用太陽光発電設備についてもっと詳しく
→住宅用(家庭用)太陽光発電のメリット・デメリットを徹底解説。やめておいたほうがいい場合もある?
→はじめてさん必見! 太陽光発電入門ガイド