賃貸での一人暮らし、どんな暖房器具を選べばいいのでしょうか?賃貸物件にはエアコンが付いているものもありますが、地域や部屋の広さによってはそれだけでは寒い、ということもあるでしょう。また、在宅ワークなどで自宅にいる時間が増え、冬の電気代がかさんでしまったという人も多いはず。一人暮らしの空間や用途に合ったコスパのいい暖房器具を手に入れて、暖かく快適な環境で過ごしましょう。消費生活アドバイザーの和田由貴さんにうかがった、電気代を抑える節約方法もご紹介します。
暖房とひとことで言ってもさまざまな種類があり、暖められるエリアや速さが異なります。消費生活アドバイザーの和田由貴さんによると、暖房器具は大きく3つのタイプに分類できるといいます。
休みの日に1日家で過ごす、在宅ワークで家にいる時間が長いときなどは、部屋全体を暖めるエアコンやファンヒーターが適しています。空気を暖めたうえで対流させるので、短時間で効率よく部屋を暖めることができます。ただし、空気が乾燥しやすかったり、ほこりが舞いやすい点には注意が必要です。
輻射式に分類されるオイルヒーターは、フィン(放熱板)内のオイルを温めて熱を放出し、輻射熱でじんわり部屋を暖めるもの。部屋全体を暖めるのに時間はかかりますが、乾燥しにくく換気の心配もありません。
寒い部屋で着替えたいときなど、つけてすぐに暖めたいなら、カーボンヒーターやハロゲンヒーターといったいわゆる電気ストーブや、小型のセラミックファンヒーターが便利。
キッチンで料理中に足元を暖めたいときや、トイレ、脱衣所などのスポット暖房器具としても向いています。
エアコンと併用して足元を暖めるには、ホットカーペットやこたつが適しています。ホットカーペットには、おしゃれなラグのようなタイプや、自分のいる場所をピンポイントで暖める小さなマットのようなタイプもあります。
こたつは一人暮らし用のコンパクトなものを。こたつ布団を外せば、冬以外もテーブルとして使えるのがメリットです。
ヒーターの熱と毛布のぬくもりで体を直接温める電気毛布には、膝掛けタイプや着るタイプのものも。敷き毛布・掛け毛布タイプは、ベッドの中をぽかぽかに保ってくれます。ほかの暖房器具と比べて電気代が低いのも魅力です。「ただし乾燥しやすいので、寝る直前まで暖めておき、寝るときは切った方がいいでしょう」(消費生活アドバイザー・和田由貴さん)
使いたい暖房器具が決まったら、どんなところに気をつけて購入すればいいのでしょうか?チェックしたい点を紹介します。
エアコンと同様、素早く部屋を暖めてくれるファンヒーターですが、「ガスは配管の問題で、賃貸物件に設置するのは難しいです。石油を使う暖房器具は、火災や一酸化炭素中毒などが懸念されることから、賃貸物件では地域の条例で禁止されていることも」と和田さん。
賃貸借契約書に禁止と書かれていれば、ガスファンヒーターや石油ファンヒーターを使用することはできないので注意しましょう。
2023年の家計調査によると、一人暮らし世帯の1~3月の電気代は9340円※。4~6月の5486円、7~9月の5842円と比べて1.5倍以上と、冬場は高くなる傾向にあります。これから暖房器具を購入する場合は、電気代を比較して選ぶことが大切です。
「メーカーのカタログなどに1時間あたりの電気料金が載っているので、チェックするといいでしょう」と和田さん。
下で紹介する「暖房器具のコスパ比較」もぜひ参考にしてください。
ちなみに、あらかじめ物件に設置されていることが多いエアコンですが、「エアコンの平均使用年数は13.6年※。最新の機種と20年以上前のような古い機種とでは、省エネ度が格段に違います」と和田さん。
ただ古くなったからといって買い替えてもらうのは難しいですが、効きが悪い、または故障したという場合は、管理会社に問い合わせてみましょう。
※政府統計ポータルサイトより
不意に触ってしまったり地震で揺れたりして暖房器具が転倒した場合、火傷や火災などの事故につながる恐れがあります。転倒時や温度が異常に上昇した際、自動的に電源がオフになる暖房器具を選ぶといいでしょう。
一定時間で電源が切れるタイプのものや、人感センサーで人の動きを感知してオン・オフするものなどは、切り忘れの防止になり、節電にも役立ちます。
「一人暮らしの賃貸物件では、契約アンペアは20A~30Aが一般的です。30A=3000Wなので、暖房器具に加えてトースター、電気ケトル、ドライヤーなどを同時に使うと消費電力が3000Wを超えてしまい、ブレーカーが落ちる原因になります」と和田さん。「とはいえ、エアコンの場合、起動時こそコンプレッサーが稼働して2000W近い電力を使いますが、設定温度に達して室温を維持させているときは、消費電力は小さいのです」
「同時に、大量の電力を使わないこと」を心がければいいでしょう。
電力会社に連絡すれば契約アンペア数を上げることも可能ですが、基本料金は下記のように上がるのでご注意を。また、建物自体で使える最大容量が決まっていることもあるので、上げたい場合は大家さんか管理会社に確認が必要です。
10A | 311円75銭 |
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15A | 467円63銭 |
20A | 623円50銭 |
30A | 935円25銭 |
40A | 1,247円00銭 |
50A | 1,558円75銭 |
60A | 1,870円50銭 |
「WHO(世界保健機関)によると、冬季における住宅の室温が18度未満になると健康被害のリスクが高まるとされています。室温が18度を切ったら、我慢せずに暖房をつけるようにしましょう。なお、湿度が低いと実際の温度よりも寒く感じるので、湿度は40~60%に保つことが大切です」と和田さん。
温度と湿度を管理するために、部屋に温湿度計を設置するのがおすすめです。100円ショップなどでも手に入ります。
それではここで、一人暮らしで使うことの多い暖房器具の特徴と、1時間あたりの電気代、購入価格の目安をご紹介しましょう。
暖房器具 | 特徴 | 1時間あたりの電気代の目安※ | 初期費用(購入価格)の目安※ |
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エアコン | 賃貸物件に備え付けられていれば、新たに購入する必要がない。ただし古い機種の場合は消費電力が大きく、右の目安の電気代を上回ることも。冷房機能が付いているのも特徴 | 17~21円 | 約8万5000~16万円(8畳タイプ) |
セラミックファンヒーター | 温風を吹き出して素早く暖める。小型のため、キッチンや脱衣所、トイレなど、ピンポイントを暖めたいときに | 17~37.2円 | 約4000~1万7000円 |
カーボンヒーター、ハロゲンヒーター | 遠赤外線効果により、短時間でピンポイントを暖める。エアコンが効くまでの補助暖房としても | 9.3~37.2円 | 約3000~1万7000円 |
オイルヒーター | 中のオイルを温めて放熱。温風を出さないため乾燥しにくく快適。ただし暖まるまで時間を要する | 15.5~37.2円 | 約1万7000~5万円 |
パネルヒーター | 輻射熱でじんわりと暖める。デスクの下で足元を囲い、狭い範囲を暖めるタイプも | 4~5.1円 | 約5000~1万4000円 |
こたつ | ヒーターユニットはカーボン、石英管、ハロゲン。足元がすぐ暖まる。冬以外もテーブルとして使える | 6.8~9.3円 | 約7000~2万5000円(本体) |
ホットカーペット・マット | 底冷えを防いで足元から暖める。一人用のマットタイプも | 1.1~15円 | 約4000~2万円(1~2畳タイプ) |
電気毛布 | 寝具として使うほか、膝掛けになるもの、着る電気毛布なども。電気代の安さは圧倒的 | 0.2~1.8円 | 約3000~1万円 |
最後に、暖房の電気代を抑えながら快適に過ごすためのポイントをご紹介します。
エアコンやヒーターでせっかく暖めた部屋の空気。窓から逃がさず、冷気を遮断して暖かさをキープするには、「カーテンの丈を長めにして、窓をしっかり覆うようにしてください。厚手の素材だとよりいいでしょう」(和田さん)。長さはフック部分のアジャスターである程度調整できます。
また、ホームセンターなどで購入できる断熱シートを窓に貼るのも有効。結露も防いでくれます。
フローリングの床にラグやカーペットを敷く人も多いと思いますが、その下にも断熱シートを敷くと、床下からの冷気が伝わりにくくなります。ホットカーペットの下に敷けば、温熱効果がより高まります。
部屋を加湿すると、体感温度が上がります。「加湿器を利用するのもいいですが、スチーム式は常にお湯を沸かしている状態なので電力を消費します。節電には、気化式かハイブリッド式がおすすめです」(和田さん)
室内に濡れたタオルや、洗濯物を干すのもいいでしょう。ただし、一人暮らしの部屋が狭い場合は、加湿しすぎると結露やカビの原因に。快適に過ごせるとされる湿度40~60%をめざしましょう。
暖房器具は、就寝時や外出時は電源を切って節電に努めましょう。ただしエアコンに限っては、つけっぱなしにした方が電気代の節約に。
「エアコンは設定温度に至るまでが最も電力を使います。その後、温度を維持させているときの電力はあまりかかりません。部屋が暖まったらオフにするのではなく、設定温度を下げるといいでしょう。30分程度の外出ならつけっぱなしで構いません」と和田さん。
また、エアコンで暖まった空気は上に向かうため、床に近い生活空間がなかなか暖まらないということも。ルーバーを下向きにする、サーキュレーターや扇風機を天井に当てて空気を攪拌させる、といった工夫で、足元まで暖かさが届きます。
以下、エアコンの節電に役立つポイントをまとめました。
タートルネックや機能性ソックス、ルームシューズなどを着用して暖かく過ごしましょう。首、手首、足首を保温すると血流が促進され、冷え対策になります。
「消費電力の少ない電気毛布を膝掛けとして利用するのもおすすめです。湯たんぽはお湯を沸かすタイプだと、ガスコンロでもIHでも多くのエネルギーを消費します。それよりもコスパの良い充電式タイプのものを使うといいでしょう」(和田さん)
これから部屋を選ぶというときには、建物の構造も確認しましょう。断熱性・気密性が高い住宅を選ぶと、暖房効率がよく、電気代を抑えられることが期待できます。また築浅物件の方が断熱性能は高い傾向にあります。なかには樹脂サッシや複層ガラスなど、窓の断熱対策がされている物件も。
日当たりを重視して物件を選ぶのもおすすめです。ただしあまり窓が大きすぎると、暖気が逃げやすいので注意しましょう。
暖房器具は用途によって使い分けよう
冬の室温が18度を切ったら暖房器具の出番
窓の断熱、加湿、防寒グッズなどで節電を