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賃貸マンションやアパートのインターネット環境について、インターネット「対応」や「完備」「接続可」「無料」……と、さまざまな言葉が使われている。しかし、これらの何が違って、結局どれを選べばいいのか分からない人は多いだろう。賃貸物件のインターネット環境は何をチェックしたらいいのか、接続方式は何があるのか、賃貸マンション・アパートのインターネット契約はどうしたらいいのか、工事の有無を判断するにはなど、基本を押さえて、自分にピッタリ合う部屋を選ぼう。
今やライフラインといえば電気・ガス・水道とインターネットの時代。賃貸物件でもインターネット環境の整備が当たり前になってきた。賃貸物件で「インターネット対応」や「完備」「接続可」「無料」……という場合は、下記4つのいずれかの方法でインターネットと接続できることを意味している。
(1)光配線方式
(2)LAN配線方式
(3)VDSL方式 ※電話用ケーブルを使用
(4)ケーブルテレビ
別の言い方をすれば、4つのいずれかで接続できるのであれば「対応」でも「完備」でも「接続可」でもよいというわけで、「対応」「完備」「接続可」等は接続方法の違いを示しているわけではない。例えば同じ「対応」でも、賃貸物件によって接続方法が違うのだ。
では4つの接続方法ならどれでも同じ通信速度や各種手続きなのかというと、実は下記のようにそれぞれ特徴が異なる。
また、これらの方法のほかに、個人でモバイルルーターを用意し接続する方法もある。工事やオーナーへの確認は不要であるため、「物件に付随しないインターネット接続方法」で紹介する。

4つの違いの中で注目したいのが、通信速度の違いだ。例えばインターネットで動画をたくさん見たいなら、やはり通信速度が速いほうがいい。速さの目安は(1)光配線が一番速く、次いで(2)LANと(3)VDSLだ。(4)ケーブルテレビは契約内容によって異なり、(2)と(3)より速い場合もあれば、これらより遅い場合もある。
ただし(1)光回線だけど古いマンション、という場合は注意が必要だ。なぜなら一般家庭向けに光回線のサービスが始まったのは2000年代初頭だが、それ以前に建てられた古い賃貸マンションはもちろん、それ以降でも賃貸マンションの各部屋に普及するまでにしばらく時間がかかったからだ。古いアパートには光回線が通っていない物件もある。その場合は、管理会社や大家さんに個別契約を相談してみよう。
光回線の普及以前に建てられていても、後で光回線を各部屋に通した「光回線導入のマンション」もある。それでも古いマンションの中には建物の構造上、光回線を各部屋にどうやっても通せない場合がある。
通るかどうかは、工事をしてみなければわからない。その結果、101号室は光回線だけれど、102号室はVDSL方式なんてこともある。また入居時に光回線を通す工事をする場合は、既に光回線が通っている賃貸物件と比べて工事費が余計にかかる。
ただしマンションが光回線に対応している場合は、まず自身のマンション内で光回線がどこまで行われているかを確認しよう。
マンションで必要となる光回線の工事は、大きく下記の3つに分かれる。
1.光ファイバーケーブルをマンションの共用部まで引き込む
2.引き込まれたケーブルを室内まで引き込む
3.光コンセントを室内に設置する(光配信方式のみ)
これらの工程がどの段階まで行われているかを事前に大家さんや管理会社に確認するようにしておくと、工事をする前に判断がつく場合もある。
このように、インターネットの接続方法が通信速度や入居時の工事費用を左右するので、賃貸物件を探す際には4つのうちどの方法でインターネットに接続するのかを確認することが重要だ。
ここまでで紹介してきた光配線方式などの接続方法は「固定回線」と呼ばれ、インターネットの回線を物件や各部屋に通さなければ利用できない。「固定回線」の他に「モバイル回線」を利用する方法もあり、こちらは物件の工事などが不要だ。モバイル回線を利用するには、個人でホームルーターを用意する、ポケット型Wi-Fiを契約する、スマートフォンのテザリングを利用するなどの方法がある。
一人暮らしのインターネット環境をより詳しく
一人暮らしでインターネット環境どうすれば? 目的に合わせてWi-Fi・回線を選ぼう!ネット代も解説
通信速度が一番速い
古いマンションでは、部屋まで光回線を通せない場合がある
ほとんどの場合、回線会社やプロバイダー契約が不要のため、入居後すぐにインターネットを使用できる
採用している賃貸物件が少ない
古いマンションでもインターネットに接続できる
光配線方式で利用できる「ひかりTV」など一部サービスが使えない
インターネットの無料プランを使える場合もある
無料プランの場合、通信速度が遅いことがほとんど
では見つけた部屋がいずれの方法なのかをどうやって確認すればいいのか。(4)ケーブルテレビの場合は不動産会社に確認すれば教えてくれるが、(1)~(3)のどれかというのは、不動産会社が教えてくれたとしてもインターネット環境の進歩が早いため、担当者が勘違いしていることもあり得る。正確に知りたい場合は回線会社(NTTやKDDI)に確認したほうが確実だ。回線会社ではホームページ上に問い合わせ先を掲載しているので、そこに連絡して詳細を確認しよう。
マンションのインターネット環境についてはこちらもチェック
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「インターネット無料」をうたっている賃貸物件の場合は、上記接続方法の(1)光回線(2)LAN(4)ケーブルテレビのいずれかであることがほとんど。また「無料」である理由は、賃貸物件のオーナーが一括で契約して入居者に提供するからだ。
いずれの「インターネット無料」にも以下のようなメリットがある。
通信速度で比較すると、(1)光回線(2)LANを使った「無料」であれば、上記のとおり速いが、(4)ケーブルテレビの無料プランの場合は通信速度が遅いため、インターネットを快適に楽しみたいという人にはあまり向いていない。別途、速度の速いプランに変更することもできるが、その際は入居者が料金を負担する(つまり無料ではなくなる)ことになる。
ケーブルテレビを使わず、別途回線会社やプロバイダーと契約することもできるが、だからといって「その分家賃などを下げて欲しい」といっても難しい。なぜならマンションやアパート全体で契約することでオーナーが支払う料金が決まっているため、一部屋ごとの利用の有無はその料金には関係がないからだ。ケーブルテレビはインターネット以外にも映画やドラマの見放題プランなどがあるので、そういった別のサービスも含めて検討しよう。
一般的に「無料」のインターネット環境が整っているため家賃や共益費が高くなりがちなことだ。そのため、周辺物件の相場と比較検討してから選ぶようにしたい。
なお「インターネット無料」ではプロバイダーを選べないが、既にもっている別のプロバイダーのメールアドレスはそのまま使用できる。
インターネット無料物件についてより詳しく
「インターネット使用料無料」の賃貸物件とは? メリット・デメリット、注意点を紹介
賃貸のインターネット回線を選ぶとき、まずはオーナーによって定められている固定回線(光回線など)がないか確認しよう。固定回線の場合、オーナーがすでに回線を定めているケースと、居住者が自由に選べるケースが存在する。一方、モバイル回線(ポケット型Wi-Fiやホームルーターなど)を利用したいなら、工事が不要なため個人で自由に契約可能だ。自分が求めるインターネット環境に合わせて、物件選びの段階で回線の種類をチェックしたり、必要に応じてモバイル回線に契約しよう。
インターネット環境に求めるものは人それぞれ異なる。ここでは、自宅での動画やオンラインゲームを楽しみたい人、外出先でも快適にインターネットを使いたい人の2パターンを例に、インターネットに詳しいITライターの太田百合子さんに取材した回線選びのアドバイスを紹介する。
自宅での動画視聴やオンラインゲームに適したインターネット回線は、利用するデバイスと希望する画質によって異なる。スマートフォンでの動画視聴やオンラインゲームであれば、普段スマートフォンで利用している携帯会社のモバイル回線や、ホームルーターでも問題なく楽しめる。
一方、PCやテレビ、プロジェクターなどの大画面で高解像度の動画を楽しみたい場合や、遅延なくPCゲームを楽しみたい場合は、光回線を有線で接続する方がより安定した通信環境を利用できる。
外出先で使用するデバイスがスマートフォンのみなら、使用量に合わせて、データ利用量の大きいモバイル回線プランを契約するとよい。
タブレットやPCでもインターネットを使用したいなら、スマートフォンのテザリング機能のほか、ポケット型Wi-Fiが選択肢に挙がる。スマートフォンのテザリング機能は、追加機器の購入も不要で便利だが、バッテリー消費が早まるデメリットがある。インターネットの使用回数が頻繁だったり、長時間になる人は、ポケット型Wi-Fiの利用が安心といえる。
テザリングは、スマートフォンのモバイル回線を他のデバイスがWi-Fi経由で利用できるようにする機能。外出先でもPCやタブレットでインターネットを使え、追加の機器購入が不要だ。デメリットとしては、スマホのバッテリー消費が激しくなり、データ使用量が増えることが挙げられる。スマートフォンの契約プランによっては追加料金が発生する可能性がある。
以上を踏まえて、インターネット環境を重視して部屋を選ぶ場合にチェックしたい点をまとめてみよう。
□インターネットの接続方法を不動産会社と回線会社に確認
□(1)光回線の場合、部屋まで既に通っているのか、工事で通すのか確認
□「インターネット無料」の場合、家賃や共益費などを相場と比較検討を
その上で、通信速度を重視するなら(1)光回線で接続する賃貸物件を選ぶようにするといいだろう。一方、通信費用を抑えたいなら「インターネット無料」を選びたいところだが、インターネット無料の賃貸物件はまだまだ数が少ないし、家賃などがどうしても高くなりがちだ。
無料には及ばないが、部屋の回線会社と携帯電話の通信会社が同じ系列であれば(ex.NTTとNTTドコモ)、おトクな料金体系を使えることがある。インターネット料金をなるべく抑えたいのであれば、「無料」にこだわらず、こうした方法も検討するといい。
また、4つの接続方法が整っていてもいなくても、モバイルルーターを契約すればインターネットに接続できる。モバイルルーターも携帯電話と同じ系列であれば料金を抑えやすい。
ちなみにモバイルルーターは通信会社や端末機器、通信環境によって速度が異なるが、(2)のLAN配線方式や(3)VDSLより速い場合も多い。ただし通信会社よってつながらないエリアがあったり、通信端末によって通信速度や当月に利用できるデータ通信量も異なるので、あらかじめ通信会社のホームページなどで確認しておこう。
気になる部屋のインターネット接続方法を調べ、家賃などとのバランスや回線&通信会社による料金体系も比較検討した上で、自分のライフスタイルに合った部屋を選ぶようにしよう。
※2025年6月13日時点の情報です
太田百合子さん
ITライター。WEBディレクションやインターネット関連のフリーペーパーの編集、情報誌の立ち上げなどを経て、現在はパソコン、タブレット、スマートフォン、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットやそれらを使って利用できるサービスを中心に取材、執筆を行っている。(「自分に向いているインターネット回線の選び方」部分)