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壁紙は部屋の印象を大きく左右するポイント。賃貸でも、できれば自分好みの壁紙に変えて、お部屋のインテリアを楽しみたいですよね。持ち家でなくても壁紙は張り替えられるのか、原状回復を行う際などの注意点やそのDIY方法について、セルフリフォーム材料などを販売するインターネットショップ・壁紙屋本舗を運営する株式会社フィルの林さんに教えてもらいました。
賃貸の場合、入居者には 原状回復義務があります。この原状回復の原状というのは、入居当時そのままの状態ということではなく、自然消耗や経年劣化による損傷や汚れは問題ありません。ただし、故意や過失によるものはNGです。壁に傷や汚れを付けてしまった場合は、契約時に支払った敷金から補修などにかかる費用を原状回復費用として、差し引かれることもあります。また、敷金を預けていない場合や、補修費用が敷金以上の金額になるような場合は、費用を退居時に請求されることもあります。
賃貸物件の中には、オーナーや管理会社に許可を得て行ったDIYであれば退居時の原状回復義務が免除されるというものもありますが、通常の賃貸物件で壁紙の張り替えを行いたいという場合は、原状回復をするということを念頭に行うのが良いでしょう。そこで、賃貸の場合は既存の壁紙を剥がしてから新しい壁紙を張る”張り替え“ではなく、既存の壁紙の上に新しい壁紙を張って、退居時に重ね張りしたものを剥がすという方法がおすすめです。

原状回復・退去費用についてより詳しく
→原状回復義務とは?どこまで自己負担?免除? 不動産賃貸で注意すべきこと、原状回復ガイドラインについて分かりやすく解説
→賃貸の退去費用の相場は? 入居者負担で妥当? 高額にならないためには?
一定規模以上の建築物や火気を使用する部屋などの場合、火災時に安全に避難する時間を確保するため、壁と天井を不燃性、難燃性のものに限定する”内装制限”というルールがあります。壁紙の張り替えを考えている部分が内装制限の対象だった場合、壁紙は不燃、準不燃、難燃などの材料のものを選択しなければなりません。また、壁の内装制限は壁の下地と壁紙の施工方法との組み合わせで認定されるため、施工方法が変わらないよう、既存の壁紙を剥がしてから新しい壁紙を張る必要があります。
つまり、内装制限の対象だった場合、簡単に原状回復できるような壁紙DIYは難しくなります。施工を考えている箇所が内装制限の対象となるかどうかは、事前に調べてから計画するようにしましょう。

基本的に原状回復する意思がある場合は、壁紙を重ね張りすることについて、オーナーや管理会社へ事前に申告する必要はありませんが、契約書の禁止事項に、壁のリフォームなどが含まれている可能性もあります。内装制限の確認も含め、壁紙DIYを行う場合は事前に管理会社などに相談してから行うのが安心です。
賃貸の壁に自分で壁紙を張る場合、退居時にきれいに剥がせる壁紙やグッズを使用するなど、原状回復可能な方法で施工するのが一般的です。


仕上がりにこだわってきれいに張りたいという場合、水に溶けやすく、剥がしやすい粉末を水で溶いて使う糊(ポテグルなど)で壁紙を張るのがおすすめです。

はがしやすい糊のポテグルはじゃがいも由来のデンプンからできた粉糊で、定量の水に溶かすことでジェル状の水性糊になります。
「こういった水系の糊はたっぷり塗ると、乾くまでの間は滑らせて壁紙を動かすことができます。数mmのズレなどを微調整することができるので、DIY初心者でも簡単にきれいに壁紙を張ることが可能です。乾いてしっかりと接着した後も、剥がしやすいという特徴があります。
糊を既存の壁紙に塗るということに抵抗を感じる人も少なくないかもしれませんが、一般的なビニール壁紙の上に糊で張った場合は、剥がすときに多少裏紙が残ってしまっても、霧吹きやローラーで水をたっぷり塗布してから剥がせば、きれいに剥がせますし、残った糊は水で拭きとることができます。水に溶ける糊なので、水だけできれいに落とすことが可能です」(林さん、以下同)

簡単にきれいに張れるというこのはがせる糊ですが、相性の悪い壁紙もあります。
「種類が豊富で、リーズナブルな価格のものを見つけやすい国産壁紙ですが、その裏面の素材は通常パルプ(紙)です。パルプの場合、水を吸うと伸び、乾くと縮むという性質上、はがせる水性糊を使用して張ると、はがしやすい程度の接着強度になっているため、壁紙の収縮により引っ張られて剥がれてきてしまうことがあります。ですので、はがせる糊を使用する場合は、水を吸っても伸縮が起こりにくい、フリース(不織布)という裏面素材の壁紙がおすすめです」
裏面がフリースの壁紙は、輸入壁紙に多いそうですが、輸入壁紙はサイズも国産壁紙とは異なります。国産壁紙のサイズが幅90cm~1m程度で、両端にミミと呼ばれる切りしろがあるのに対し、輸入壁紙は幅50cm程度と幅が狭く、ミミもありません。ミミがない分、隣り合う壁紙のつなぎ目を重ねて張る必要はなく、幅も狭いので初心者でも張るときに扱いやすいというメリットがあります。
最近では、国産のフリース壁紙も少しづつ出てきて、価格帯や柄の選択肢も増えてきています。
さらに、国産壁紙は、床に広げて壁紙の裏に糊を塗るのに対し、フリース壁紙の場合は壁に直接のりを塗って張ることができます。国産壁紙を張るときほど作業スペースを取らないという点も、初心者にはうれしいポイントです。


そういったはがせる糊で壁紙を張る場合、糊を塗る道具などが必要になりますが、最低限、カッターが1本あれば手軽に施工できる、シールタイプの粘着がついた壁紙を使用するという選択肢もあります。
「シールタイプの貼って剥がせる壁紙は、裏面が弱粘着のシール状になっていて、裏紙を剥がしてシールのように既存の壁紙の上に重ねて張ることができ、壁から剥がすときも既存の壁紙を傷めずにきれいに剥がすことができます。
最近ではシールタイプの壁紙も種類が豊富で、賃貸の壁紙DIYの選択肢として人気があります。しかし、糊で張るのとは違い、張ってからずらして調整をすることはできないですし、何度も張り直すと剥がれやすくなります。やり直しがしづらいという点で、糊で張る場合よりも難易度は高めです」

剥がせるといっても、糊で張るのも、シールタイプもやっぱり不安……という人の中には、マスキングテープを壁に張り、その上に両面テープで張るという方法を選択する人もいるようです。
「マスキングテープの方が、糊やシールよりも安心感があると感じる人も多いようですが、マスキングテープといっても、粘着剤の種類はさまざまです。シリコン系、アクリル系の粘着剤のもので、長期間張っていても糊残りしづらいものを選んで使用すればよいのですが、選び方を間違えると、剥がれにくくなったり、粘着が残ることもあります。
さらに、この方法は接着面が全面ではなく、部分的なので、広範囲に施工すると、シワやたわみが気になることもありますし、マスキングテープは粘着力が弱いので、部分的な接着面に負荷がかかると剥がれやすいというリスクもあります。広い壁一面に張るということではなく、部分的に壁紙を替えたい、建具に壁紙を張りたいというようなケースであれば、選択肢として検討してもいいでしょう」
身近な材料を使用するので、ハードルが低いと思う人もいるかもしれませんが、マスキングテープの上に両面テープを貼るという方法の難易度は比較的高いそうです。
また、はがせる水性糊では張りにくい国産壁紙を賃貸の壁に張りたい場合は、マスキングテープと両面テープを使う方法を選択する人が多いようですが、その場合は貼って剥がせる原状回復可能な両面テープで施工するという方法もあります。一般的な両面テープより費用はかかりますが、マスキングテープを貼る手間は省くことができ、その分施工時間も短くすみます。

お気に入りの壁紙を楽しみたいけれど、賃貸の壁に張るのは気が引けてしまったり、壁紙を張るのがNGだった場合、壁に直接張らずに楽しむ方法もあります。
例えば、小さめの空間であれば、突っ張り棒でお気に入りの布やラグ、壁紙を壁面にかけることで部屋の雰囲気を簡単に一新できます。ラックの背板に壁紙を張るアイディアも。

また、壁を彩るのは壁紙だけではありません。突っ張り棚や壁面収納を設置すれば、収納スペースを増やしつつ、壁の印象を華やかにするディスプレイスペースとしても活用可能。小物や観葉植物を飾ることで、より個性的な空間を演出できます。賃貸でも安心して取り入れられ、いつでも元の状態に戻せるのが魅力です。
一人暮らしの賃貸のお部屋のインテリアについて詳しく
一人暮らしのおしゃれな部屋・インテリアのつくり方
壁紙の色選びは空間の雰囲気を大きく左右します。定番の白やくすみカラー(トープや生成色)は、どんなインテリアにも合わせやすい安定の人気を誇ります。最近では、グレージュや青みがかったカラーがトレンド。
「定番のくすみカラーでも、どのようなスタイルを実現したいかによって色合いが変わってきます。例えば、日本と北欧の要素を合わせた『ジャパンディ』スタイルでは、ベージュやアースカラー系。韓国インテリアではパステルのくすみピンクやパープルが人気です。より大胆なスタイルとして、ビビッドなピンクやシアン、グリーンなどをアクセントクロスに取り入れるのも新しい流行です」




壁紙にはさまざまな材質がありますが、日本で流通している壁紙の多くはビニール壁紙。最近では、欧米でよく使用されている「フリース壁紙」も人気に。水分で伸びたり経年変化で縮んだりしにくいため、施工がしやすくDIYにぴったりです。
水に強く、耐久性があり、汚れが付きにくいため、キッチンやバスルーム、子ども部屋に最適。色や模様のバリエーションも豊富で、比較的安価。
破れにくく、壁の凹凸をなだらかに隠し、水分を含んでも伸びたり縮んだりしにくいという特性を持つため、DIY向き。きれいに張って剥がしやすいため、頻繁な模様替えも可能。
自然素材で環境に優しく、通気性が良い。寝室やリビングに適している。
高級感があり、音吸収や断熱効果も期待できるため、寝室やリビングに適している。
材質は、特に実物を見なければわからないもの。ぜひホームセンターや専門店に出向き、実際に手で触れて比較してみてください。
模様は、見る距離や、模様が展開される面の大きさによって、大きく印象が異なります。模様付きの壁紙を選ぶ際は、壁紙との距離感、壁の大きさ、空間の広さを考慮しましょう。
例えば、玄関やキッチン、トイレなどの小さな空間では、自然と壁紙との距離は近く、壁は小さくなります。あまり大きな模様は視界に収まりにくく、思っていた印象と違ってしまうかもしれません。
「模様選びに、これが正解という鉄則はありません。小さな空間に大きな模様がバシッと決まることもあります。模様のある壁紙選びで注意するべきなのは、実際に張ったときとのイメージの違い。
実物サンプルを手に入れ、張りたい壁に張り付けてみて、実際はどのくらいの距離感で見るのか、光の当たり方はどうかなど、確認しておくことをおすすめします」
賃貸での画鋲の利用方法についてはこちら
賃貸の部屋の壁、画鋲(押しピン)は禁止?代わりになるものはある?
壁紙を選ぶときは、壁紙単体で考えるのではなく、ドアなどの建具、床、インテリアとのバランスで考えます。店舗に実物を見に行くときは、事前に部屋の写真を撮っておくと便利です。
A4程度の大きさのサンプルを、実際に張る予定の壁に張り付けてみましょう。部屋の用途や壁の位置によって、壁との距離、光の当たり方などが異なります。購入候補のサンプルを複数枚張って見比べてみると良いでしょう。
紹介したどの方法で施工するにせよ、壁紙を張る前には必ず試しに張ってみることが大事です。
「原状回復可能な商品を使用して壁紙を張った場合でも、必ずきれいに剥がせる保証があるわけではありません。築年数が古い住まいなどでは既存の壁紙が劣化していて、張ることはできても剥がれてきたり、剥がすときに既存の壁紙を傷めてしまうということも考えられます。
目立たない、小さなスペースに1~2カ月張ってみて、剥がれてきたり、剥がすときに不具合がなければ、数年間張っていても問題ない場合が多いです。検証するのは面倒な工程かもしれませんが、原状回復に不安があるのであれば、検証してから判断することで後悔や失敗を防ぐことができます」
壁紙の割り付けとは、簡単に言うと壁紙の模様が綺麗に合うように配置することです。見せたい模様が綺麗に壁にあらわれるように、寸法や継ぎ目を調節します。
「壁紙の模様をより楽しむために、ぜひ割り付けにこだわってみてください。『とりあえず上から』『とりあえず角から』と張っていくと、模様が中途半端なところで切れてしまうかもしれません。上手な職人の方の割り付けは見事なものです。ぜひDIYで壁紙を張る方にも、割り付けを楽しんでいただきたいと思います。家具をどかして床に壁紙を広げるとイメージが湧きやすいです」
賃貸の場合でも、自分好みの壁紙を楽しむためのツールや方法はたくさんあります。賃貸だからとあきらめず、壁紙DIYを気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。
賃貸で壁紙DIYをする場合は原状回復義務や内装制限を念頭に置いて計画する
契約書の禁止事項を事前に必ず確認する
既存の壁紙の上に張って、退居時にきれいに剥がせる方法であれば、壁紙の模様替えは基本的にはOK