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賃貸で住まい探しをして、契約する段階になると、多くの人が「この物件はココの家賃保証会社と契約してください」と言われるはず。近年、こうした家賃保証会社(正しくは家賃債務保証会社、以下家賃保証会社)の利用がマストという物件が増えているという。では、その理由とは? 家賃保証会社を利用したくない場合はどうしたらいいのか、聞いてきた。
近年、急速に増えているのが、家賃保証会社を利用して契約する賃貸物件。今まで必要だった連帯保証人は不要になるものの、契約時に家賃の0.3カ月~1カ月分、もしくは数万円などの固定額を家賃保証会社に支払う必要がある。場合によっては保証人+家賃保証会社というケースもあるという。
これは入居時に連帯保証人が用意できない人にとっては朗報だが、初期費用が高くなるとデメリットに感じる人もいることだろう。では、家賃保証会社を利用する物件が増えている理由はどこにあるのだろうか。家賃保証サービスを行うオリコフォレントインシュアの営業企画部長・野本秀彦さんに話を伺った。
「大きいのは社会全体の高齢化です。連帯保証人の方が高齢化し、年金生活なので保証人になれない、滞納したときに払えないという状況が増えてきました。実質的に連帯保証としての意味をなしていないんです。そのための受け皿として、家賃保証会社が普及してきたのです。また、保証会社を利用してもらうことで、賃貸人(つまり大家さん側)の経済的損失が軽減されることになるため、結果として敷金や礼金の募集条件が緩和されている傾向にあります」と背景を解説する。
2020年4月には民法が改正され、連帯保証人には極度額の設定が必要となった。極度額とは、連帯保証人が背負うべき限度額のことで、改正前は保証額が無制限だったため、多額になりすぎるという問題があったからだ。こうした社会的な背景と変化により家賃保証会社の利用が「常識」になりつつあるのだ。
また、コロナ禍では収入に大きく影響を受けた人も多かったが、賃貸人側(大家さん側)が不測の事態に備えて家賃保証会社を利用することで不安が軽減され、物件募集がされるようになったことも利用の後押しとなっている。
では、連帯保証人が用意できる人の場合でも、家賃保証会社を利用しなくてはいけないのだろうか。
「基本的には、大家および不動産管理会社が、家賃保証会社をつけるかどうかを決めていますので、気に入った物件が家賃保証会社をつけなくてはいけない場合、原則として利用しなければなりません。また、家賃保証会社は選べないことが多く、この部屋を借りるならこの会社かこの会社で、と指定されることがほとんどです」(野本さん)
もう少し詳しく解説しよう。保証会社を利用すると入居者が家賃を滞納した場合でも、保証会社が家賃を立て替えて支払うため、大家・不動産管理会社には、毎月、確実に家賃が振り込まれるようになる。大家や不動産管理会社からすれば、家賃の回収不能リスクはゼロになるわけだ。そのため、連帯保証人制度を併用するのではなく、家賃保証会社に切り替え、一本化したいという背景もある。
ただ、管理会社によっては、家賃保証会社でなく保証人に変更することや、家賃保証会社を自分で選ぶことが可能なケースもあるそうなので、家賃保証会社を利用したくない場合、一度相談をしてみるといいかもしれない。
では、あまり考えたくないことだが、家賃を滞納してしまった場合はどうなるのだろうか。
「家賃を滞納しても、家賃保証会社が立て替えているだけですので、入居者の支払い義務は当然、残ります。当社でも、家賃が引き落とせない場合、入居者にすぐに連絡します。いちばん多いのがうっかり、つまりたまたま口座にお金がない場合です。そんな場合はすぐにお支払いいただけることが多いです」と話す。一般に住まいは生活の基盤になるため、家賃が滞納になるケースは少ないのだという。ただ、それでも、家賃を支払えない/支払わないというトラブルはつきものだ。
「家賃が滞る理由はさまざま。病気や失業などと切実なこともあります。家賃保証会社は個々の事情を伺いながら、相談に乗ることで生活を立て直すお手伝いを行うこともあります」と野本さん。
ちなみに、家賃保証会社に支払う金額が大きいほど、保証内容が手厚くなるのだとか。ただ保証内容が手厚くても、滞納すればするほど金額は雪だるま式に増え、最終的には入居者の支払い総額が増えるだけ。自分で自分の首を締めるだけなので、これは注意したい。
賃貸住宅を借りる際の連帯保証人制度は、特に高齢者や外国人だと用意することが難しく、不公平・不透明と批判されてきた制度だ。家賃保証会社が普及することで、大家、不動産管理会社、そして入居者も、より安心して住まいを借りられるようになっている。今はその過渡期といえそうだ。
こうした各種背景や社会的な需要の高まりもあり、保証会社の契約を必須とする物件は年々増加。
2010年、家賃債務保証会社の利用率は39%だったが、2014年に約56%まで上昇している。さらに
2023年度には全国の物件のうち93%は家賃保証会社との契約が必須という結果(※)も出ている。
エリアにもよるが、現在、ほとんどの物件で家賃保証会社と契約することが入居条件になっていると考えていいだろう。
※日本賃貸住宅管理協会「第28回賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』2023年4月~2024年3月」(17ページ)。2010年、2014年も同協会の調査より
先ほども紹介したとおり、家賃保証会社の利用を必須とする物件は増えている。普及の背景にある「高齢化」や「民法の改正」を考えたときに、保証会社の利用が今後、急激に減ることはないだろう。
それでも、どうしても家賃保証会社を利用したくないのであれば、次のような交渉や条件変更を検討などして、根気強く繰り返し探すという手もある。
例)「保証人を用意するので、家賃保証会社を利用したくないのですが、可能でしょうか?」
例)「家賃保証会社の費用を節約したいので、エリアにはこだわりません」
例)「家賃保証会社を利用したくないので、入居時期にはこだわりません」
しかし、「保証会社に入りたくない」というこだわりが強すぎると、理想に近い部屋を見逃すことも考えられる。自分にとって賃貸物件を選ぶ上での優先順位を考えておこう。
家賃保証会社は敷金礼金など初期費用の募集条件緩和と同時に、連帯保証人制度に代わって、利用されるようになった。家賃保証会社を利用することによって、多くの人が引っ越しやすくなり、安心して部屋を貸すこと/借りることができるようになりつつある。これから家を探す人は、初期費用として家賃保証料が必要になると考えておくほうがスムーズな家探しができるだろう。
保証会社が必須の物件は、基本的に保証会社を利用する
住人と保証人の高齢化により連帯保証人制度が実質的に意味をなさないため、家賃保証会社が普及した
連帯保証は高齢者や外国人だと難しい場合があったため、家賃保証会社により安心して住まい探しができるようになった