キッチン設備の選び方次第で、作業の効率は違ってくる。加熱調理機器や生ゴミ処理機、食器洗い乾燥機、浄水器、レンジフードなど現代の必須アイテムの機能を見ていこう。
■ガスコンロの基礎知識
効率がよく安全に。手入れのしやすさも向上
加熱調理機器の代表であるガスコンロ。4000kcal/h前後と、それ以下のカロリー数のバーナーを組み合わせた3口タイプが一般的だ。天板寸法は60cm以外に、75cmとワイドなものが開発されている。熱効率のよさはもとより、安全性の高い設計、調理に便利な機能、手入れのしやすさ、清掃性なども、従来のガスコンロと比べて格段にアップしている。
【選び方のポイント1】バーナーの安全性、多様な便利機能をチェックする
最近のガスコンロは多機能になっているので、まずは性能面を詳しくチェックしておこう。
近ごろの機種は安全性が格段に高くなっている。コンロの各バーナーにはセンサーが搭載され、鍋底の温度を常にチェック。自動的に火力を調節するだけでなく、空焚きを防止したり、消し忘れ時には自動的に消火したり、煮物などの焦げ付きを検知する。また機種によっては鍋がないと点火しない、使用中に鍋を外すと弱火になるといった検知機能も備えている。
また、揚げ物時の温度調節や自動炊飯・自動湯沸かしなど、調理を効率よく仕上げるための機能も充実している。
【選び方のポイント2】掃除のしやすさ、デザイン性も向上。価格帯が広いので必要な機能を見極めて
掃除もしやすくなっている。例えば鍋をのせる五徳は軽量でシンプルな形状で、簡単に外して洗える。プレートは汚れ落ちのよいガラス質やフッ素塗装の素材、フラット形状のものが一般的に。
またデザイン面では、操作パネル部分が、オーディオ機器のようにスタイリッシュなものなど、キッチンのインテリアにこだわる人も満足のいくタイプが登場。
価格は5万円台から20万円台くらいが多い。その差は、ここで紹介したような機能がどの程度備わっているかによる。何が必要か詳細をよく確かめて選びたい。
■IHクッキングヒーターの基礎知識
鍋底を発熱させ、周辺の汚れが少なく高い熱効率
加熱調理機器として、IHクッキングヒーターが定着している。そのしくみは、磁力線の働きで鍋底自体を発熱させて調理を行うもの。スイッチを入れるとプレート下のコイルから発生する磁力線によって鍋底にうず電流が生じ、発熱に導く。火力の強さ、清掃のしやすさ、さまざまな安全&便利機能が備えられていることなどが利点として挙げられる。
【選び方のポイント1】ガスコンロと違う点や、基本機能の詳細を把握する
最近の商品は、さまざまな安全機能が充実している。例えば鍋を外すと約1分後に自動的に通電がオフになったり、鍋底の温度を過度に上昇させない機能、切り忘れ防止などで、子どもからお年寄りまで安心して使える。また、特殊ガラス質のプレートは、フラットな形状で、掃除もラクにできる点も大きなメリットとされる。
火力は通常2kwのヒーターでガスの4000kcal/hのバーナーに相当し、最高の火力は3kw。保温から中火、強火まで火加減を調節できる。ボタンはトッププレート上などにあり、指で軽く触れるだけで操作できる。
そのほか、光センサー搭載で安定した高温調理ができたり、自動湯沸かし、自動炊飯機能などがついている機種もあり、調理の作業効率がアップする。
【選び方のポイント2】オールメタルタイプや進化したグリルの機能もチェック
通常のIHは、使える鍋は底が平らな鉄やステンレスに限られる。そこで最近では、アルミ、銅などほかの素材の鍋も対応可能なオールメタルタイプも登場。これまで愛用していた鍋を使いたいから、と選択する人も多い。
またグリル(※1)は、受け皿に水を入れなくても調理でき、庫内のワイド化で大きなピザやたくさんの魚が一度に焼けたり、煙や臭いをカットする機種も出ている。
※1 メーカーによっては、「オーブン」と呼ぶ
【選び方のポイント3】トッププレートの幅や火力などで価格に差。必要な機能を選ぶ
普及タイプのIHはトップのプレートの幅が60cmで、最高火力は2kw~3kw。価格は20万円台からそろう。高級タイプでは幅が75cmとワイドなものもあり、最高火力は2.5kw〜3kw。自動湯沸かしや炊飯、ロースター脱煙などの便利な機能がついて、20万円台後半の価格帯となる。オールメタルタイプは30万円台以上と高額。キッチンの広さやわが家に必要な機能、どんな鍋を使いたいかを考えて選ぶようにしよう。
ちなみに、IHとガスコンロでは、調理にかかる光熱費に大きな差はない。電力会社との契約の際には、電気料金メニューの内容もよく確かめておきたい。
■食器洗い乾燥機の基礎知識
家事がラクになり、衛生的で節水効果も高い
キッチンの設備で人気が高く、多くの家庭で取り入れられている食器洗い乾燥機。食器洗いの面倒な手間が省け、食後の時間にゆとりが生まれること、高温のお湯ですすぐため油汚れがすっきりと落ちて、フキンを使わずに乾燥できるので清潔、などの点が評価されている。手洗いと比較すると、使用水量も少なく節水効果が高く、光熱費トータルでも割安になる。
【選び方のポイント1】扉の開閉方法や食器の収納量をチェックする
食器洗い乾燥機はシステムキッチンのフロアキャビネット内に組み込んで設置し、面材も同じ素材で統一できる。タイプは、扉の開き方の違いで、前開き式と引き出し式に分けられる。輸入品に見られる前開き式は、庫内容量が大きくたくさんの食器が入る。
最近、より広く普及しているのが引き出し式。腰をかがめずに出し入れできるので、より作業がラクになる。目安として、幅45cmタイプでは家族4~6人分・約40点、60cmタイプは約50点の食器が収納できる。
一方輸入品の前開き式は、国産の製品と比べると、排水管が本体の横にくる分、庫内が大きく、同じ寸法でもより多くの食器を収められる。家族の人数や日ごろから使う食器の点数、キッチンの大きさから、わが家に適したタイプを選ぶようにしよう。
【選び方のポイント2】ミストや蒸らしなど洗浄方式、カゴの設計の違いにも着目する
最近の食器洗い乾燥機は、従来取れにくかった汚れをいかにして落とせるかを主眼に、開発が進められている。例えば、洗いと蒸らしを繰り返すことで汚れを浮かせて落としたり、高濃度の洗剤を含んだ洗浄水で事前洗いし除菌するなどで、口紅のあとや茶渋、カレーのこびりつきなどの汚れも徹底して落とせるようになっている。各社の製品の洗浄方法をじっくりと比較検討してみたい。
洗浄から乾燥までの時間は、多くの機種が1時間あまり。洗浄時には若干の音が出るので、深夜稼働させるなどの使い方をするなら、ショールームに出向いて音の大きさも確認してほしい。そのほか、庫内のカゴの、食器や小物の収めやすさも見ておこう。
価格は、幅45cmの引き出し式で10万円台後半からそろう。幅60cmの庫内容量の大きい輸入品は、30万円前後と高額になる。
■生ゴミ処理機の基礎知識
生ゴミの量を、手軽に衛生的に減らす
生ゴミ処理機の普及も進んでいる。操作は庫内に投入するだけと簡単。処理できるのは、野菜屑や果物の皮、魚の骨、肉類。貝殻など処理できない、または処理に注意が必要な食品も一部あるが、それでも家庭内のゴミは格段に減る。処理物はそのまま捨てるか、園芸用の堆肥にも活用できる。
【選び方のポイント】乾燥式、バイオ式の処理方法の違いを見る
処理方法によって種類が分かれる。現在最も開発・普及が進んでいるのが「乾燥式」。処理機内のゴミを高温の熱風で加熱し乾燥、かさを減らす。処理時間が速く、手入れがラクなのが利点。屋内に置ける機種が多く、ゴミ箱感覚で使うことができる。
「バイオ式」は、処理機内のバイオチップの中の微生物にゴミを分解させるもので、定期的にチップを追加する。価格は4万円〜7万円台が多く、電化製品の量販店で購入できる。そのほか、排水口に直接生ゴミを投入し、シンク下の処理槽内で処理するタイプもある。
購入に際しては補助金制度を設けている自治体もあるので、詳しくは地元の役所に確認を。
■浄水器の基礎知識
おいしい飲料水を、家庭で簡単に得られる
おいしい水を求め、浄水器を取り入れる家庭も多くなっている。浄水器は、設置のスタイルによって種類が分けられ、浄水のシステムやろ過材も中空糸膜、活性炭、セラミックなどによるものがある。性能面でも、水道水中の濁りやサビ、塩素を取り除くものから、鉛やトリハロメタン、身体に有害な微生物までを除去するものなど多様だ。
【選び方のポイント】人気のあるビルトインタイプの特徴を知る
浄水器は設置方法によって種類が分かれる。昔からあるのは、蛇口の先端に取り付ける直結型やシンク上部にカートリッジを置く据え置き型。最近では、シンクの下にカートリッジを設置するビルトイン型が出ており、新築やリフォーム時に好まれる。
さらにビルトイン型には2種類あり、浄水専用の水栓を設置する使い勝手のシンプルな「浄水専用水栓型」と、浄水と水道水をコックなどで切り替える「兼用水栓型」とがあり、シンクまわりをすっきりと使える。
総じてカートリッジの交換時期は機種によって異なる。本体の価格以外にカートリッジの費用、シンク周辺のスペース、浄水性能の違いなどを比較検討して選びたい。
■レンジフードの基礎知識
シロッコファンで油煙を排出する
レンジフードは、調理中に発生した煙や湯気、臭いを戸外に排出するための設備。現在は、ダクトを通じて排気口まで油煙を誘導するシロッコファンタイプが一般的になっている。従来のプロペラファンよりも吸引力が強いため、高断熱、高気密の住まいには最適だ。IHクッキングヒーター対応の機種も出ている。
【選び方のポイント】タイプや便利機能、掃除のしやすさをチェック
人気のオープンスタイルのキッチンでは、能力の高さやフードのデザイン性、掃除のしやすさがより重要なポイントになる。
フードは標準的に用いられているのが深型のブーツタイプ。低い位置から効率よく油煙を誘導するアイレベルタイプ、対面式やアイランド型などのキッチンで用いる大型タイプ、コンロ間近から排気する下引きタイプなどがある。
機能面では、コンロと連動して自動的に稼働を始めたり、炎や煙の状況を察知して自動的に風量の調節を行うもの、リモコンで操作できるものなど多彩だ。また、フィルターは取り外しがしやすく、最近では自動洗浄機能付きのレンジフードも登場している。
住まいの設備を選ぶ本(2016年春 1月26日発行)掲載
文/川成亜紀