次にくる住みたい街はここだっ! ~北品川編~

次にくる住みたい街はここだっ! ~北品川編~

品川駅といえば、SUUMOのみんなが選んだ住みたい街ランキングでは総合13位にランクインする注目度の高い駅。15分もあれば都内の主要駅にはどこでも出ることができ、羽田空港、成田国際空港へのアクセスも良し。2027年開業予定のリニア中央新幹線の起点駅にもなる予定です。しかし、周辺は、ホテルやオフィスが林立する東京随一のビジネス街。徒歩15分圏内で手ごろな物件を探そうとしても、見つけるのはなかなか難しいかもしれません。
そこで注目したいのが、品川駅からもほど近い京浜急行北品川駅〜青物横丁駅の旧東海道沿いのエリアです。ここはかつて、東海道の第一の宿場町「品川宿」と呼ばれた一帯で、高輪の高層ホテル街や港南のオフィス街からは想像もつかないような昔ながらの街並みが広がり、地域に根ざした暮らしが継承されています。さらにここ数年、ゲストハウス、コワーキングスペース、ブック&カフェ、ワインバーなど、新しい業態の店や施設が次々と誕生しており、社会起業家や地域活動家の熱い注目を集めています。品川宿の魅力とはなんなのか?歩きながら探っていきたいと思います。

東京随一のビジネスタウンに囲まれた立地

街を歩き始める前に、品川宿と周囲の位置関係を簡単に説明しましょう。
品川宿は、品川駅の南側に位置しており、品川駅からは歩いて15分もかからずに行くことができます。大企業の本社や最先端の商業施設が集まる天王洲アイルまでは、北品川駅から徒歩15分程度。JRの在来線と新幹線の線路を越えた西側には閑静な住宅地として知られる御殿山があり、こちらも北品川駅から歩いて10分程度。まさに大都会に囲まれた立地です。なお、北品川駅から新馬場駅間は徒歩10分程度、新馬場駅から青物横丁駅間も徒歩10分程度という距離感です。

御殿山ガーデンには、都心とは思えない緑が広がる
御殿山ガーデンには、都心とは思えない緑が広がる
天王洲運河。渡ればもう天王洲アイル(右)だ
天王洲運河。渡ればもう天王洲アイル(右)だ

ところで、「京浜急行の北品川駅は、なぜ品川駅の南側にあるのに『北』なの?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。これはかつて、目黒川から北側を北品川宿、南側を南品川宿と呼んでいた名残です。品川宿は、慶長6年(1601)、東海道の整備と併せて施行された宿駅伝馬制度によって設置されました。品川駅が開業するのは明治5年(1872)のことですから、品川駅よりも先に北品川という地名があったというわけです。品川駅の開業と同年に宿駅伝馬制度が廃止され、鉄道が一般的な交通手段になるまでは、長らく品川の中心は品川宿だったのです。

チェーン店がほとんどないローカル色の濃い商店街

品川宿の一角にある看板建築
品川宿の一角にある看板建築

さて、初めてこの地を訪れた人は周囲の大都会ぶりとのギャップに衝撃を受けるかもしれません。

品川宿の特徴としてまず挙げられるのはチェーン店の少なさです。品川宿を端から端まで歩いてみても、コンビニを除けば、ファストフードやファミリーレストラン、チェーン系居酒屋をほとんど見かけません。
チェーン店がない代わりに、個人商店のバリエーションは豊か。青果店、鮮魚店、喫茶店、定食屋、居酒屋、美容室、医院などなんでもそろっており、最近都内でみかけなくなった駄菓子屋も現役です。歴史の古い街だけに、創業100年を超える老舗もあります。なかには400年以上続いているという商店も。
また、この立地にしては物価は比較的安めです。ある洋食店では、前菜・メイン・デザート・コーヒーがついたランチセットが税込1000円。同じ内容を天王洲アイルでいただけば、1800円ぐらいであろうという体感でした。
以前、商店街関係者が商店街の歩行者の交通量を調べてみたところ、地元の人の割合が非常に多かったといいます。つまり、おそらくは地元だけで経済がある程度回っており、古い街ゆえ店主の不動産所有率も高いので、コストパフォーマンスの高いサービスが提供できるのでしょう。

ノスタルジーただよう路地裏、神社仏閣も多い

路地と古井戸
路地と古井戸

旧東海道から一歩路地に入れば、ノスタルジー漂う昭和的原風景が広がっています。軒先でアロエやゼラニウムを栽培し、メダカや亀を飼育しているような家が軒を連ね、その合間には古井戸が。品川神社、荏原(えばら)神社、養願寺、東海寺など、歴史ある神社仏閣も点在し、伝統的な祭りや行事も数多く開催されています。
さらに住宅街を歩いていると、突如、水路と係留されたたくさんの船が現れます。背景には品川の高層ビル群が望めます。ここは「品川浦の船溜り」と呼ばれ、釣り船や屋形船の発着所になっているのですが、なんと品川宿が宿場になる前から利用されてきたというから驚きです。現代と過去が入り混じるこの風景は、非常に品川宿らしい景色かもしれません。

品川浦の船溜まり
品川浦の船溜まり

さらに、好きな人にはたまらないのが、「猫」の存在です。品川宿の特定の公園には「街猫」と言われる猫たちが生息しており、住民たちがみんなで世話をしています。住民にとってみれば昔ながらの習慣なのかもしれませんが、最近でいうところの「シェア」の価値観に通じるものもあるかもしれません。

路地裏で昼寝をしていた白猫。「これからは猫もシェアする時代だニャア」
路地裏で昼寝をしていた白猫。「これからは猫もシェアする時代だニャア」

個性的なお店が増えている

歴史と昔ながらの暮らしが息づく品川宿には、ここ2、3年、ゲストハウス、コワーキングスペース、ブック&カフェ、ワインバーなど、これまでになかった業態の店が増えています。

なかでも、ひときわすてきなたたずまいが目を引いた「KAIDO books&coffee」にお邪魔してみました。「KAIDO books&coffee」は、地元の蔵書家が「道」をテーマに収集した1万冊の本を読むことができるブック&カフェ。店内は、静かに本を読む人、PCで仕事をする人、おしゃべりをする人など、20〜30代ぐらいのお客さんでにぎわっていました。なかには小さなお子さんを連れたご家族も。オシャレすぎずマニアックすぎず、常連度が高すぎず、一見(いちげん)でも入りやすい雰囲気に好感をもてます。

「KAIDO books&coffee」の1階
「KAIDO books&coffee」の1階

オーナーは、品川宿で生まれ育った佐藤亮太さん。佐藤さんは、いったんは品川宿の外で就職するも、2009年に、「地元のためになることをしたい」と、街に人力車を走らせ、ガイドを行う「品川人力車」という地域おこしプロジェクトをスタート。一躍街の有名人となりました。そして、2015年8月、「生まれ育った街に自分も来たくなるようなお店をつくって人を集めたい」という思いからこのカフェをオープンさせたと言います。
「おかげさまで、土日は若い人でいっぱいになりますよ」と、さわやかな笑顔を見せる佐藤さん。彼の思いはしっかりと近隣の若い世代に届いているようです。

このほかにも、リメイク作家・ DIYアドバイザーの玉井香織さんが営む「ハレルヤ工房」、空き家をリノベーションしたコワーキングスペース「うなぎのねどこ」など、品川宿には、生活にスパイスを加えてくれそうな店やスポットがまだまだあります。その多くに共通するのは、オーナーが、固有の歴史や伝統に価値を見出し、生活のなかでセンスよく発信しているということです。

住宅街のなかでさりげなく営業している「ハレルヤ工房」。店内にはオーナーがリメイクを手がけた雑貨や家具がずらり。古いものをリメイクして新たな命を吹き込むという温故知新の姿勢はとても品川宿的だ(写真提供/ハレルヤ工房)
住宅街のなかでさりげなく営業している「ハレルヤ工房」。店内にはオーナーがリメイクを手がけた雑貨や家具がずらり。古いものをリメイクして新たな命を吹き込むという温故知新の姿勢はとても品川宿的だ(写真提供/ハレルヤ工房)
会員制のコワーキングスペース「うなぎのねどこ」。オフィスとしてはもちろんイベントスペースとしても活用でき、金つぎ、いけばな、盆栽といったワークショプが頻繁に開かれ、人と人をつなぐ場として機能している(写真提供/うなぎのねどこ)
会員制のコワーキングスペース「うなぎのねどこ」。オフィスとしてはもちろんイベントスペースとしても活用でき、金つぎ、いけばな、盆栽といったワークショプが頻繁に開かれ、人と人をつなぐ場として機能している(写真提供/うなぎのねどこ)

泊まりたい街=住みやすい街

地域融合型宿泊施設の企画・運営を行う、株式会社宿場JAPANの代表・渡邊崇志(わたなべたかゆき)さんも、この流れに大きく貢献した一人です。
青春時代を品川宿で過ごした渡邊さんは、ホテル業を志し、留学、放浪、就職を経て、地元の良さを再確認。ゲストハウス事業を通じた地域おこしを行うことを決意したそうです。そして2009年、北品川駅のほど近くの旧東海道沿いに「ゲストハウス品川宿」をオープン。2014年には、新馬場駅のそばに1日1組限定の宿「Bamba Hotel」をオープンさせ、ここ2、3年のゲストハウスブームに先駆け、地域融合型宿泊施設のモデルを成功させました。

渡邊崇志さん。「Bamba Hotel」にて
渡邊崇志さん。「Bamba Hotel」にて

「泊まっていいところは、住みやすい街であることが大前提。ですから、宿の運営と地域おこしは一体です。『ゲストハウス品川宿』と『Bamba Hotel』はターゲットは違いますが、地域の人の理解と協力のもと、『地域一体型のおもてなし』を提供する宿であるということが共通のコンセプトです。例えば『ゲストハウス品川宿』のほうでは、日曜以外はあえて朝食は提供せず、地元のお店を紹介したり、宿の風呂ではなく銭湯を紹介したりして、品川宿の面白さを知ってもらうような工夫をしています。『Bamba Hotel』は、地元のお店からルームサービスを頼んだり、地元の人がガイドを行うといった、より親密なサービスを提供しています。そうやって外から人を呼び込み、地域経済を活性化させ、交流を促進することにより、さまざまな人々を受け入れる土壌を育んでいければと思っています。お互いの文化を尊重し、共に暮らせる街、それが新しい『宿場』のあり方ではないかと思うんです」(渡邊さん)

今、品川宿は、歴史伝統を受け継ぎながらも新しい文化が生まれつつある、非常に面白い街になっているのです。

「ゲストハウス品川宿」。宿泊客以外でも気軽に利用できるインフォメーションもある
「ゲストハウス品川宿」。宿泊客以外でも気軽に利用できるインフォメーションもある

物件の傾向や家賃相場は?

最後に、品川宿の物件について触れておきたいと思います。品川宿には古くからの土地オーナーが多いため、物件探しはマンションが基本になります。

品川宿には、単身者向けの物件が豊富なことからも、身軽でこだわりのあるシングルの方にとくにオススメの街だと思います。単身者向けの物件が多いのは、間口課税されていた名残で「うなぎの寝床」のような細長い区画の土地が多く、ペンシルビル的な集合住宅を建てやすいためでしょう。
単身者向け1K/1DKマンションの家賃相場は、品川駅10.1万円に対して、北品川駅9.8万円、新馬場駅9.2万円、青物横丁駅8.9万円。品川駅に比べれば安いとはいえ、都内の相場からすると高めですが、築年数にこだわらなければ6〜7万円台の物件もたくさんあります。立地を考えると穴場と言えるのではないでしょうか。
DINKsまたはファミリー向けの2K以上の物件となると、賃貸だとほとんど選択肢がないので、中古マンションを狙うのがよいでしょう。新築マンションもないことはありませんが、数千万から億の覚悟が必要となりそうです。
DINKs向けの2K/DK/LDKの中古マンションなら2000万円台から選択肢があります。一例を挙げると、1979年築、北品川駅から徒歩3分の2DKのマンションは2250万円。1969年築の青物横丁駅から徒歩4分の2DKマンションは2680万円。ファミリー向けの3K/DK/LDK中古マンションは、1990年代以前築の物件なら3000万円台ぐらいから、1990年代から2000年代築のマンションでは5000万円以上が相場となっています。(SUUMO家賃相場 2016年8月18日現在)

意外と、ファミリーにとっても魅力的

ファミリー向けの物件の数は少ないものの、子育て環境の面でも品川宿は魅力的です。
品川区は、学童保育を進化させた「すまいるスクール」の整備や、公立学校選択制、中高一貫教育の導入など、23区のなかでも子育て・教育に力を入れている区として知られています。加えて、品川宿周辺は、都心の割には子育てに適した環境が多いのです。例えば旧東海道は車の交通量がほとんどなく地元の大人の目も多いので、子どもが登下校する際も安心感があります。天王洲公園や東品川海上公園まで出かければ、緑もあり、子どもたちも思いっきり遊べます。

東品川海上公園
東品川海上公園

また、品川宿らしいのは、「ふれあいの家−おばちゃんち」という試みです。これは、保育士や栄養士、子育てや仕事を引退したシニアなど、地域の人が中心となって、幾つかの拠点で託児室や子育て交流ルームを運営するというもの。親と子どもを地域ぐるみでケアしてくれるというのは心強いですね。

さて、21世紀の宿場町「品川宿」の面白さを感じていただけたでしょうか。興味をもたれた方は、まずは、街を散策しに行って、街の空気をじかに感じてみてください

取材・文/鈴木さや香 撮影/中村宏覚
2016年10月6日
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