子世帯と親世帯がひとつ屋根の下で暮らす「二世帯住宅」は、建物の空間の分け方・使い方によって、さまざまなプランのバリエーションがある。今回は、どんな二世帯住宅が、どんなライフスタイルの家族と相性がいいのか、大きく3つのタイプに分けた上で解説していこう。
ひとことで二世帯住宅といっても、プランのバリエーションはさまざま。1階に親世帯、2階に子世帯など上下で空間を分けたり、左右に分けたり、1階または2階の一部を親世帯のコンパクトなスペースにしたり。また、親世帯と子世帯がお互いのスペースを区切らず、リビングや水まわりを共有しながらいっしょに暮らしている場合も二世帯住宅だ。
それぞれの好みや暮らし方に合わせたさまざまなプランがあるが、空間の「独立度」によって大きく3タイプに分けられる。
最も独立度が低いタイプ。玄関も水まわりもリビングも、親世帯と子世帯がいっしょに使うプランだ。核家族で暮らす一般的な一戸建てに、暮らす人数が増える分、寝室や収納スペースを増やしたプランをイメージすると分かりやすいだろう。
玄関は1カ所だが内部で親世帯と子世帯に分かれていたり、浴室は共用しているがリビングやキッチンはそれぞれの世帯にあるなど、家の中のどこか一部をいっしょに使うプラン。
最も独立度が高いタイプ。玄関をはじめ、すべての生活空間を分けたタイプ。左右または上下で分けることが多い。
二世帯住宅の3つのタイプには、それぞれに特徴がある。それぞれの独立度や空間の分け方などの特徴を、メリット・デメリットで比較してみた。なお、デメリットとして挙げた内容には、プランの工夫で解決できることも多い。
では、現在、二世帯で同居している人たちは、3タイプのうちのどの二世帯住宅で暮らしているのだろう。
リクルート住まいカンパニーの「2014年 注文住宅動向・トレンド調査」によると、完全同居タイプで暮らしている人が最も多く半数近くを占めている。玄関など一部をいっしょに使う一部共用タイプは33.0%で約3軒に1軒。完全分離タイプは23.3%で約4軒に1軒だ。
大きく分けると3タイプの二世帯住宅。家を建ててから後悔しないように、自分たちにはどのタイプが合っているのかを早めに見極めたい。ポイントは「独立度をどれだけ重視するか」と「生活時間帯などライフスタイルがどれだけ違うか」だ。
親世帯がまだまだ元気で経済的にも自立していて、自分たちの暮らしを楽しみたいと考えている場合や、子世帯が親から経済的、精神的に独立して暮らしたいという気持ちが強い場合など、「親は親」「子は子」という独立度の高い暮らしを望むなら「完全分離」や「一部共用」のほうがよさそう。
また、夫の親と同居する場合、親世帯も子世帯も妻は専業主婦なら、「完全同居」よりは「一部共用」、「一部共用」よりは「完全分離」のほうが、家事の仕方やライフスタイルの違いでお互いに気兼ねをしなくてすむ。
それぞれの世帯のライフスタイルによっても、独立性の高い「完全分離」や「一部共用」がいいか、「完全同居」がいいかは違ってくる。
子世帯と親世帯とで食事や睡眠の時間帯が違ったり、どちらかの世帯に来客が多かったり、在宅で仕事をしている家族がいる場合など、ライフスタイルが大きく違うなら独立性の高いタイプにするのが同居をうまく営む秘訣だ。
親世帯が1人で、別々に暮らすのは寂しい、心配、という場合は、「完全同居」のほうが安心だろう。
「完全同居」「一部共用」「完全分離」のうちの、どのタイプにするかのイメージができたら、自分たちがより心地よく暮らせるようにするには、どんなプランを盛り込めばいいかを考えていこう。
注文住宅で二世帯住宅を建てるなら、「完全同居」「一部共用」「完全分離」それぞれのデメリットをプランの工夫で解消することも可能だ。
例えば、今は「完全同居」か「一部共用」でも、将来的に、健康に不安が出てきていっしょに暮らすことになるかも、という不安があるなら、どちらかの世帯のスペースを広めにとっておいて、ゆくゆくは完全同居のように暮らせるプランにしておいたり、内部で行き来しやすい間取りにしておく方法もある
「一部共用」を選んだとしても、キッチンや浴室は別々にしたり、どちらかにシャワー室を設けるなどして、生活時間帯の違う二世帯でもお互いのストレスを減らすことができる。しかし、水道やガスの引き込みなどは将来、追加すると大きな金額になる。プランがあらかじめ想定できるなら、水道管、ガス管を引いておくことをオススメする。
また、独立度が低い「完全同居」でも、メインのリビングのほかに、小さなサブリビングを設ければ、夫婦がふたりでゆっくりくつろぐことができるなど、プランはさまざま。
どんな暮らしがしたいか、将来のライフスタイルも含めて考えながら、自分たちと相性のいい二世帯住宅をつくりたい。