TXとともに歩み、“住みたい街”に成長した研究学園
2005年に開業したつくばエクスプレス(TX)沿線には、20の駅とともに複数の新しい街が誕生し、それぞれ駅を中心に計画的なまちづくりが進められてきた。開業から16年、沿線の発展は目をみはるものがあり、住みたい街として名前が挙がる街も少なくない。そのひとつが、TXの終点であるつくば駅の隣駅「研究学園駅」だ。
アカデミックな雰囲気の駅名が示すように、大学や最先端の研究機関等が集積するつくば研究学園都市の副都心として開発されてきたエリアである。駅周辺にはつくば市役所をはじめとする行政施設、関東最大級のショッピングセンター「イーアスつくば」や会員制倉庫型店「コストコ」などの商業施設が配置され、大規模な公園や緑地も整備されている。充実した都市機能、豊かな自然、科学の街ならではの知的な環境が人々を引きつけ、エリアの人口は増え続けているという。
研究学園駅から徒歩3分に立つ「パークハウスつくば研究学園」は、TXの線路を挟んだ2つのレジデンスで構成されている。総戸数は550戸。20~24階建ての4棟からなる建物は、街の中でもひときわ目立つ存在だ。
取材に応じてくれたのは、管理組合理事長の桑原毅さんと副理事長の村松栄一さん。
空が広いことに感動したと駅に降り立ったときの印象を伝えると、「電柱がないからですよ」と教えてくれた。なるほど、言われてみれば視界を遮る電柱や電線がない。同マンションの周辺は無電柱化され、つくば市のシンボル、筑波山を一望する広々とした景観が気持ちいい。
「車道も歩道も広く、ちょっと歩けば小さな公園や緑地があちこちにあります。10分も車を走らせればキャンプ場がある、豊かな自然がすぐそこ。のびのびと子育てしたい人にはもってこいの環境です」(桑原さん)
平均専有面積103㎡、構造・設備も自慢の免震レジデンス
竣工は2009年。当初からの住人だという二人に、このマンションを購入しようと決めた理由を伺った。
「私は転勤でつくば市に来て、自然豊かな環境がすっかり気に入り、このあたりで家を買うことにしました。TXが開通して間もなくでしたから、あちこちでマンションが分譲されていて、つくば駅から守谷駅の範囲で複数の物件を検討。そのなかで、免震構造であることに加えて、スラブ厚などの建物構造や住戸内のゆとりある造りに魅力を感じたのがこのマンションでした」(桑原さん)
「私の場合、決め手はスペックの高さ。その時期にTX沿線で分譲されていたマンションの情報を各ホームページで確認し、スペックを比較検討しました。例えば、当時外壁の断熱材は厚さ20㎜が多かった中、このマンションは25㎜ある。構造面だけでなく、付帯設備も充実しています。加えて、専有面積は平均103㎡と、家族で暮らすには申し分ない広さです」(村松さん)
平均専有面積が100㎡超とは驚きである。住戸の広さは90㎡前後、100㎡前後、110㎡前後の3パターンで、最も狭い住戸でも85㎡あるそうだ。
では、その住み心地は?
「我が家は専有面積110㎡の3LDKなので、リビングが30畳近くあります。廊下は幅1050mm、浴室は1620サイズなど、いろいろなところが余裕をもってつくられていて暮らしやすいです。特にお風呂は、子どもと一緒に入っても全然窮屈感がありません。
もちろん、自然豊かな環境にも大満足です。周辺に子どもが遊んだり、学んだりできる施設や研究所も多く、子どもたちは何度も行っても刺激があって楽しいようです」(桑原さん)
「今は夫婦2人ですから100㎡は広すぎる感がありますが、子育て期は本当に快適でした。しかも、厚い躯体や二重サッシのおかげで遮音性能が高く、とても静か。残念なのは最寄りの研究学園駅が快速停車駅ではないことですが、快速停車駅やもっと都心寄りの駅だったら、このスペックのマンションは高額でとても買えなかったでしょうね」(村松さん)
ちなみに、このマンションにはTXで都心方面へ通勤・通学する人も多いそうだ。
趣の異なる複数のラウンジからキッズスペースまで、仕切りのない共用スペース
TXの線路の北側、けやきレジデンスのエントランスに入ると、左右の通路に沿ってラウンジ、ライブラリー、キッズスペースなどが次々に現れる。オープンスペースに配置された共用施設は、このマンションの大きな特色といえるだろう。
「独立した共用施設はゲストルームのみ。あとはすべてドアなどの仕切りを設けないオープンスペースになっていています。複数あるラウンジはそれぞれ雰囲気が違い、使い方もさまざま。ソファで来客と歓談する人、テーブル席で保険の相談などをしている人。ライブラリーは学生さんや、パソコンに向かって仕事をしている人も多いです。みなさん自分の好きな場所で好きなことをして過ごしていますね」(桑原さん)
著名な設計事務所がプロデュースしたとあって、どのスペースもデザイン性が高い。家具や調度品はアンティークのもの、名のあるデザイナーの照明などが数多く使われている。
「内装に良いものが使われているので、修理や買い替えをしようと思うと結構お金がかかります。かといって安易に手ごろなものに買い替えるわけにはいかない。それを気に入っている住人も多いですから、お金がかかっても、できるだけ元々あるものを維持していく方針です」(桑原さん)
そんな特色ある共用施設は、みんなが快適に使うために工夫が必要だったという。
「設計者のこだわりでしょうか、当初のライブラリーはかなり暗く、とても読書などできる明るさではなかったため、すぐに照明改修を行いました。また、仕切りがないオープンスペースのため、子どもたちが騒いでいてうるさいといった苦情が出ました。管理組合としては、住人みんなが気持ちよく使うために一定のルールが必要と考え、エントランスを入って左側を子どもゾーン、右側を大人ゾーンとして使い分けを呼びかけています」(村松さん)
新築に近づける設備更新で住み心地をブラッシュアップ
中古マンションの設備は新築マンションにかなわないと思いがちだが、「このマンションは設備が自慢です」と村松さん。
「築10年を過ぎても陳腐化しないよう、随時設備更新を進めています。その際は、今の新築マンションのスペックになるべく近づける方針です。例えば、駐車場のゲートはリモコン式だったものを、ETC制御のチェーンゲートに更新。ETC搭載の車はゲートに接近するだけで自動開閉し、いちいちリモコンを操作する必要がありません。
鍵はセンサーにかざすノンタッチタイプでしたが、ハンズフリー対応にシステムを更新しました。エントランスやエレベーターホールのオートロックは、鍵を携帯しているだけで解錠するので、通るたびに鍵をかざすわずらわしさはなし。更新前は『必要ないのでは?』という声もありましたが、使ってみたら快適だと好評です」(村松さん)
管理組合がスタートしてすぐ、住人の目線で見直した設備があるという。
「竣工時は共用スペースの電気代が嵩んでしまって。各棟各階の外廊下に飾り照明が不規則に830個ほど配置されていて、それがすべて消費電力の大きいハロゲンランプだったからです。そこで、早い時期にすべてLEDに交換。あいにく国産品にはソケットの適合するものがなく輸入することになりましたが、節電効果は大きかったですね。その他の場所も速やかにLED化を進め、5期までに共用スペースの電球はほぼ交換済みです」(村松さん)
外廊下に配置された多数の飾り照明は、夜暗くなると、その効果を発揮。各棟各階に灯ったランダムな光がマンションを浮かび上がらせる。設計者が狙ったデザイン性はそのまま、節電とコストダウンを果たしたというわけだ。
恒例イベントが多数。新たにマルシェも企画し、住人の交流を促進
ファミリーを中心に幅広い年齢層が暮らすパークハウスつくば研究学園。年間を通してさまざまな交流イベントが開催されている。
「1月の餅つきに始まって、七夕、ハロウィーン、クリスマスのイベントも。例年、みんなでラウンジに集まって飾り付けを楽しんだり、ハロウィーンでは仮装した子どもたちが事前登録した家を訪問したり、にぎやかです。管理組合で綿菓子機やポップコーン製造機を所有しているので、イベントには必ず出動し子どもたちに喜んでもらっています。
2019年には新しい試みとしてマンションマルシェを開催しました。防災訓練とセットにして、参加者を増やそうという狙いです。野菜の直売や屋台、包丁研ぎやマッサージの出店も好評で、ぜひ恒例行事にと考えていましたが、残念ながらコロナ禍ですべてストップ。昨年と今年は、理事会メンバーで飾り付けだけ行っています」(桑原さん)
つくば市は若いファミリー層が多い街ではあるが、同マンションにはシニア世代も多く、竣工後まもなく、マンションの住人を中心にシニアのサークルが発足。近隣からの参加者も増え、旅行やハイキングなどさまざまなイベントで交流を深めているそうだ。
修繕積立金方式をフラット化、管理組合による公式サイトで情報を発信
管理組合は法人化されており、「管理組合法人パークハウスつくば研究学園」が正式名称だ。理事会は17名で構成され、役員は立候補と抽選による輪番制を併用。任期は2年で、毎年半数を入れ替えて運営している。聞けば、村松さんは1期に理事長を務め、その後もずっと理事を継続しているそうだ。
「自分たちのマンションですから人任せではいけない。管理組合を頑張らなければと思い、初年度に立候補届けを出したら、一番提出が早かったからと理事長になってしまった(笑)。毎年何かしらイベントがあるので辞め時を失って、現在に至っています」(村松さん)
村松さんは、さまざまな勉強会にも参加し、そこで得た知識やノウハウを管理組合の活動に生かしている。これまでの取り組みについて話を伺った。
「2期で、修繕積立金を段階増額方式から均等積立方式に変更しました。段階増額方式では値上げや一時金が発生する前に売って出ていく人が多く、築15年も経つともうフラット化する意味がない。長く住んでいる人に不公平感がないようにと説明しました。フラット化に苦労しているマンションが多いようですが、丁寧に説明しみなさんに理解していただきました」(村松さん)
昨年、管理組合はマンションの公式サイトを立ち上げた。構造や設備、共有施設、コミュニティー活動、管理組合についてなど、マンションの情報が網羅された充実した内容だ。その目的とは?
「以前は管理会社のサービスとして管理組合の情報を提供するサイトがあったのですが、それがなくなってしまって。そこで、過去の理事会の議事録などを確認したいときにネットで簡単に見られるようにできないかとの意見があったのと、外部への情報発信も重要とのことから、ウェブサイトを開設することにしました。
外部に向けたサイトになっていますが、住人専用ページがあり、そこに理事会の議事録や管理規約などを載せています。理事会では音声記録を取り、それもすべて公開。長時間にわたる理事会を全部聞くのは大変ですから、目的の議案が探しやすいようタイムテーブルも用意しています」(桑原さん)
「公式サイトを通じて管理組合の活動に少しでも関心を持ってもらいたい。また、購入を検討されている方に正確な情報を提供し、どういうマンションかを知ってもらうことも目的です。というのは、ここは周辺の他のマンションに比べると管理費や修繕積立金が高いと思います。その理由として、修繕積立金が段階増額方式ではなく均等積立方式であることをサイト内で説明をしています。そこを理解したうえで選んでもらいたいと思っています」(村松さん)
ホームページはクオリティーの高いものにするため、サイトの制作・更新は業者に依頼。コストをカバーするため、桑原理事長が自ら広告主を探したそうだ。検索数は徐々に上がっており、手応えを感じているとのこと。
最後に、最新の取り組みを伺った。
「所有するマンションに住みながら、その一部を貸す、シェアハウスという住み方があります。例えば、家族の状況が変化し100㎡に1人で住むとなったら、空いている部屋を貸そうと考える人も出てくるでしょう。日本ではまだシェアハウスやルームシェアが浸透しておらず、良いイメージを持たない人もいますから、トラブル回避のために最低限のルールづくりを検討しているところです」(村松さん)
“自然とあそぶ。都会と生きる。” マンション公式サイトのキャッチフレーズから、この街に住む喜びが伝わってくる。パークハウスつくば研究学園は、これからも住み手の知恵とパワーで暮らし心地を上げ、存在感を増していくことだろう。
※今後のイベント開催、共用施設の使用は新型コロナウィルス感染症対策のため上記通りではありません