存在感抜群!住み心地向上に挑む「ポストモダンタワー」

ファミール月島グランスイートタワーの外観

バルコニー内側の外壁タイルはネイビー。全戸の室外機の外側もそろえてネイビーに塗られている
物件名:
ファミール月島グランスイートタワー
所在地:
東京都中央区
竣工年:
2002年
総戸数:
242戸

もんじゃ焼きの街にそびえる世界的建築家の作品

特に都市部で暮らしたいと考える人にとって、人気の選択肢であるタワーマンション。東京はその最大集積地だ。2000年ごろから始まったとされる「都心回帰」によって、とりわけ山手線内部、湾岸エリアで多く供給されてきた。

隅田川、晴海運河に囲まれ、“もんじゃ焼きタウン”として知られる中央区の月島もタワーマンション密度の高い街。駅を中心にタワーマンションが林立しているが、その中に1棟、突出した個性を放つマンションがある。それが今回紹介するファミール月島グランスイートタワーだ。

月島もんじゃストリート

月島のもんじゃストリートは、月島駅を挟んで、ファミール月島グランスイートタワーの西側にある

ファミール月島グランスイートタワーの外観

ほかのタワーマンションとは明らかに異なるプレゼンス

オレンジ系とブルー系のタイルが交錯する、インパクト抜群のデザインを手がけたのは、アメリカでポストモダンの旗手と称された世界的建築家、マイケル・グレイヴス氏。主な作品に、アメリカのウォルト・ディズニー本社やウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートスワン&ドルフィン、ニューヨーク美術館、ホイットニー美術館などがある。

日本では福岡での仕事が多く、THE BASICS FUKUOKA(旧ハイアットリージェンシー福岡)、呉服町ビジネスセンター、ネクサス百道レジデンシャルタワー、西日本工業大学デザイン学部小倉キャンパスなど。首都圏では、UR賃貸住宅のアルテ横浜、千葉県の御宿町役場庁舎・保健センターなどを手がけている。物件名で検索してみると、いずれの建物にも、ファミール月島グランスイートタワーに重なる方向性が確認できるはずだ。

地下鉄2路線が走る月島駅まで徒歩1分の利便性

お話をうかがったのは、管理組合理事長の大須賀さんと副理事長の本田さん。大須賀さんがここを購入したのは6年前で、それ以前は近隣の江東区の賃貸マンション住まいだったそうだ。外観デザインも購入の決め手になったのでしょうか?と聞いてみると、

「いや、外観デザインについてはあまり気にしていませんでした(笑)。購入のきっかけは子どもが生まれて家族構成が変わったこと。共働きなので、通勤にストレスがないような足まわりの良さを条件にして探し、このマンションを見つけたんです。ここは都営大江戸線と有楽町線の2路線が使える月島駅まで徒歩1分。銀座は歩いて20分ぐらいで着いてしまいます。
日常的な買い物は月島駅近くのスーパーなどで事足りますし、専門店、レストランがとても充実している豊洲のららぽーとや有明ガーデンもバスですぐに行くことができる。豊洲駅前の豊洲公園や豊洲ぐるり公園は、東京湾を眺めながら子どもと安全に遊べる場所です。住み始めてから徐々にこのマンションのロケーションの素晴らしさが分かってきましたね」

ファミール月島グランスイートタワーのエントランス

ホテルのような趣が漂う正面エントランス

副理事長の本田さんは、以前は吉祥寺にお住まいで、都心部での暮らしは初めて。やはり、足まわりがとても良いですねと話す。

「確かに、月島駅の地上出口さえ間違わなければ、初めてここに来る人でも迷わずたどり着ける、目立つデザインですね。でも、住人目線で言えば、やはりフットワークの良さがポイントだと思います。地下鉄2路線はもちろんですが、以前住んでいた両親が旅行好きで、その点、エントランスのすぐ目の前がバス停で、ほぼ数分間隔で東京駅八重洲口行きの都営バスが発着するのは、本当に恵まれていると感じました。1階のエントランスロビーは、ここの住人にとって“屋内型バス停”みたいなものです(笑)
また、タワーマンションならではの点として挙げられるのは、眺めの良さ。うちは11階で隅田川ビューが楽しめます。徐々にタワーマンションが増えてきて、以前に比べると窓から見える隅田川の面積が小さくなった気もしますが、それでも開放感は格別ですね」

ファミール月島グランスイートタワーのエントランスロビー

吹き抜けになっている1階のエントランスロビー

ファミール月島グランスイートタワーのエントランス前

エントランスロビーに接したマンション横の公開空地から清澄通りを見る。都営バスのバス停はマンションの目前に

ファミール月島グランスイートタワーの管理組合理事・副理事

取材に応じていただいた大須賀さん(左)と本田さん

消防署員も感心するマンション防災への取り組み

次にマンション管理について聞いてみた。ファミール月島グランスイートタワーは中央区から、防災組織の結成やマニュアル作成などソフト面の防災対策に積極的に取り組むマンションとして「防災対策優良マンション」の認定を受けており、防災に関する取り組みが充実している。本田さんが説明してくれた。

「理事会とは別に防災委員会があり、私は委員長も兼任しています。委員は、輪番で選ばれた人、立候補者、理事会から理事2名、そして古くから変わらず委員を務め続けている方々10数名で構成されています。防災に関する一定の意識や知識、技能を持っている人に与えられる『防災士資格』を取得している方もいらっしゃいますね。
また、各階に“フロア委員”という、そのフロアの住人の安否確認をする役割も設けています。これも輪番制で、フロア委員を経験された方は着実に増えており、マンション全体の防災力が高まっていると考えています。
さらに委員会では、要配慮者の情報も把握しています。要配慮者とは、75歳以上の住人、一人暮らしのお年寄り、身体の不自由な方などのこと。中央区と連携し、個人情報の取り扱いに留意しつつ、何か起きた時に取り残される人がいないようにとの考えから情報を管理しています」

昨年の防災訓練は理事と防災委員だけで行ったが、今年2022年は秋に全住人に参加を呼び掛ける通常のスタイルで実施予定。地震発生時と火災発生時で異なる対応など、きめ細かな内容になるそうだ。

「一般的に、マンション火災はそれほど延焼せず、燃えたとしても火元の住戸の上下左右だそうです。しかし、地震の影響はマンション全体に及びますよね。震度5強以上が発生した場合、当マンションでは『災害対策本部』を立ち上げ、各フロアとトランシーバーで連絡を取って、在宅者、けが人などを把握することになっています。
都合が付かず防災訓練に参加できない人には、玄関ドアの共用廊下側にマグネットの『無事ですカード』を貼ることをお願いしています。防災訓練ではフロア委員がトランシーバーを使って、『無事ですカード』の枚数を本部に知らせるシミュレーションも実施しています」

訓練を支援する地元消防署の方が『いつも手際が良いですね!』と言ってくれるくらい、参加者の動きが円滑なんですよと本田さん。さすが「防災対策優良マンション」である。

ファミール月島グランスイートタワーの防災訓練

2020年11月に行われた防災訓練のひとコマ。災害対策本部で『無事ですカード』が何枚貼られていたかを集計(写真提供/ファミール月島グランスイートタワー管理組合)

ファミール月島グランスイートタワーの防災訓練

これが『無事ですカード』

ファミール月島グランスイートタワーの防災訓練

地元消防署指導のもと、水消火器を使った訓練も(写真提供/ファミール月島グランスイートタワー管理組合)

住吉神社例大祭

住吉神社例大祭では、マンション前の歩道や公開空地が御神輿の仮置場、テント設置の場として提供される(写真提供/ファミール月島グランスイートタワー管理組合)

“駐車場外部貸し”で管理組合の財務状況を大幅改善

管理組合理事長の大須賀さんも、3年前に輪番で防災委員を務めた経験がある。

「実はそれまでマンション防災や管理に対しては、関心が低かったんです。個人的に起業したばかりだったこともあり、何かと忙しかったですからね。
でも、防災委員になってその意識が変わりました。ボランティアで長い間委員を務め、熱心に活動し続けている委員会のメンバーを見て、大いに感化されたんです。このような共助の意識の高い人に、このマンションは守られてきたのだと痛感しました。誰かがやらなければならないことなんだなと。
自分のモチベーションや知見を活かして、何らかのイベントや地域おこしにボランティアとして貢献するというのはよく聞きますが、私は、どうせやるなら自分のマンションに対しての貢献のほうが、住み心地が良くなるのはもちろん、資産性にも好影響を与えると考えました。知らない場所でゴミ拾いするより――もちろん、それも立派なことですが――自分が暮らすマンションの改善に関われば、分かりやすく結果が出てやりがいが感じられるのではないかと。そこで2年前に管理組合理事に立候補、すぐに理事長にも立候補して今に至っています」

また、防災委員会とは別に、修繕委員会の存在も、マンションにとって大きな存在だという。

「こちらにも有志として、長年委員を務めてくださっている方が複数いらっしゃいます。費用が100万円を超えるような修繕が必要になった時、果たして行うべきか否か、その妥当性について助言をいただいたりしていますね。今年で築20年を迎え、2026年に2回目の大規模修繕工事が控えているため、マンションの品位を守りつつ、コストカットをして財務状況を安定させていくことが理事会のテーマのひとつ。その点で修繕委員会はありがたい存在です」(大須賀さん)

財務状況の安定といえば、約4年前、まだ大須賀さん、本田さんが理事会に入る前、当時の理事会が大きな決断を下したという。

「それが駐車場の一部を外部貸しすることでした。ファミール月島グランスイートタワーの駐車場の出入口は表の清澄通りに面していて、構造上、外から直接入出庫が可能なんです。また、駐車場から直接マンション内に入るアクセスは設けられていないため、住人以外の方に駐車場を貸しやすかったんですね。
駐車場外部貸しを行う前、駐車場区画の半数以上は空いてしまっており、財務的にはかなり厳しい状況だったと聞いています。区画には比較的大きな車両が入るタイプと、小さめのファミリーカー向け、2種類があって、特に小さいほうの区画に空きが目立っていたそうです。
外部貸しを始めたところ、近隣のオフィスや商業施設のニーズがあって、ほぼ空き区画が埋まり、今もその状態が続いています。駐車場料金は管理組合の大きな収入源ですから、外部貸しの決断には本当に助けられていますね」(大須賀さん)

ファミール月島グランスイートタワーの駐車場

駐車場の入出庫口。手前の歩道を挟んで右に清澄通りが走っている

郊外ではあまり見られないが、鉄道、バスなどの公共交通が充実している都市部では、駐車場が埋まらず困っているマンションは珍しくない。ましてファミール月島グランスイートタワーのように2路線使える地下鉄駅まで徒歩1分、マンションの目の前でバスが数分おきに発着するとなれば車をもつ意味が薄くなり、手放す住人が増えるのは自然の流れだ。

高齢化による免許返納者の増加、若者の車離れが進んでいると言われる。ファミール月島グランスイートタワーのように、住人のセキュリティがしっかり担保される構造という大前提が必要だが、これからの都市部のマンション暮らしでは、駐車場を第三者と共有するスタイルが徐々に一般化するかもしれない。

コスト削減×先行投資で居住満足度を高めたい

続いて、大須賀さん、本田さんが理事会に入ってからの取り組みを聞いてみた。

「2階の集会室やフィットネスルーム、和室など共用施設の利用者が以前より少なくなっているため、稼働率を上げられないか、用途変更も含めて検討しています。コロナ禍以降に定着したリモートワーク用にアレンジするのもひとつの案としてあがっています。先日には、駅などで見かけるようになったクローズ型のテレワークブースをトライアルで導入しては、との意見もありました。スタンドアローン型で電源さえあればOKで、設置のための工事は不要。仮に利用率が低ければ、共用施設を傷めることなく撤去することも可能だそうです」(大須賀さん)

ファミール月島グランスイートタワーのゲストルーム

25階のゲストルーム。リビングとベッドルームが別々につくられたゆとりのある間取り

ファミール月島グランスイートタワーのフィットネスルーム

ランニング、筋トレなどができるフィットネスルームは2階に

ファミール月島グランスイートタワーの和室

住人交流などに使われる和室

ファミール月島グランスイートタワーのラウンジ

2階のラウンジルーム。左側は吹き抜けで下には1階エントランスロビーがある

ファミール月島グランスイートタワーの花壇

エントランス横の花壇。しっかり手入れされた季節の花が住人や道行く人の目を楽しませる

ファミール月島グランスイートタワー横の公開空地

マンション横の公開空地。複数のベンチが置かれた誰でも使える憩いのスペース

ITの運用も積極的に進めているという。

「マンション管理組合が活用しているグループウェアの『Mcloud(エム クラウド)』を導入し始めたところです。議事録のデータベース化、共用施設の予約、住人アンケート作成などいろいろな機能をチョイスできますが、ともあれ本格的な運用はこれから。現在は登録を促進しているところで、いずれ住人向け説明会を行おうと考えています。
また、コロナ禍以降、Zoomも採り入れてリアルとオンラインのハイブリッド理事会にする試みも始めました。住戸を賃貸に出していてご自身は遠方に住んでいる理事さんに好評でしたし、実験的に住人総会でもやってみたところ、さしたるトラブルもなく終えることができました。
先に述べましたが、削減できるところはする一方で、将来的な住み心地やマンションの魅力向上につながると判断した部分には、積極的にお金を投じていこうと考えています」(大須賀さん)

保守的でなく、挑戦していく理事会でありたい、と大須賀さん。ファミール月島グランスイートタワーの住み心地は、今後、さらに良いものになっていくだろう。

ファミール月島グランスイートタワーの銘板

外観とは趣が異なり、落ち着きのあるマンション銘板

※今後のイベント開催、共用施設の使用は新型コロナウィルス感染症対策のため上記の通りではありません

構成・取材・文/保倉勝巳 撮影/一井りょう

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