マンション急増中の中央区・晴海エリアの「映える」タワマン
変わり続ける東京都心。そのなかでも段違いのスケール、スピードで発展を続けているのが「湾岸エリア」だ。
ただ、ひとくちに湾岸エリアといっても、地域は広い。海から陸へ向かう順にあげてみると、台場・有明・東雲・豊洲・晴海・勝どき・月島・佃・芝浦…と多数のアドレスが並ぶ。
なかでも、近年マンションが増え、暮らす場所としても注目を集めているエリアのひとつが中央区の晴海だ。
2001年の晴海アイランドトリトンスクエア街びらきに前後して、ビュープラザ、ガーデンプラザ、ビュータワー、アーバンタワーが続々と竣工。総計1000数百戸が供給された後は、しばらく目立った大規模マンションは建たなかったが、2009年にベイシティ晴海スカイリンクタワー(367戸)、2015年にDEUX TOURS(ドゥ・トゥール。2棟で計1450戸)、ベイサイドタワー晴海(352戸)がそれぞれ竣工…と飛躍的に住人が増えた。さらに、将来的には東京五輪の選手村がマンションに転用され、5600戸超が供給される見込みだ。
管理組合と自治会を合体してムダをなくす
今回取材した、ザ・パークハウス 晴海タワーズ ティアロレジデンスは、地上49階建て・総戸数861戸の大規模タワーマンションだ。
ちなみに、外観、エントランスホール、ランドスケープのコンセプトデザイナーは、建築界最高の賞「プリツカー賞」を当時最年少の49歳で受賞した建築家、リチャード・マイヤー氏。デザインコンセプトは「Origami」(折り紙)。バルコニーのガラス手すりが、足元をゆったり流れる運河の青や、敷地内の植栽の緑を映すように計算されているという。
が、このマンションのポイントは、もちろん外まわりだけではない。独自の改革に取り組み、持続可能な仕組みを急ピッチでつくり上げている点も注目に値する。
「完成から4年経った2020年2月の臨時総会で、ふたつの大きな改革を行うことが決まりました。まずは、管理組合と自治会の役員兼務体制への移行です」(マンション管理組合・牧内真吾理事長。以下コメント同)
通常、マンションの管理組合は、修繕工事、設備更新などハードの価値を維持するための取り組みを担う。加えて、大規模マンションでは管理組合と別に自治会も設けられ、住人間交流の促進、マンション外の地元コミュニティとの交流、地域の町内会との情報交換、地元行政とのコネクション構築などを担うケースがある。ただし、自治会は特に設けていないマンションもあり、その場合は、管理組合が自治会的機能も兼任することになる。
「このマンションの自治会は竣工の翌年に、地元の“晴海連合町会”に加盟しました。これによって、地域の氏神である住吉大社の3年に1度の例大祭へ住人が参加して、神輿をかつげるようになりました。ほかにも、早期に行政情報を入手して住環境改善に向けた陳情をしたり、さまざまなマンション内イベントを開催するなど、有意義な実績を残してきました。マンション前の車道の交差点に注意喚起を促す赤いアスファルト舗装をして、ドライバーの視認性を高め、安全性を高めることができたのも、自治会の活動のおかげです」
タブレットとチャットの活用で、ニューノーマル時代の理事会を実現
「ただ、自治会は管理組合と違って任意団体です。管理組合のように輪番で理事を決めるようにはいかず、原則的には自薦他薦で集めるしかないため、将来の成り手不足が懸念されていました。さらに、自治会が何かイベントを開くために共用施設を使いたいときは管理組合に利用申請してもらう必要もありました。利用申請のタイミングが遅かったり判断のための開示情報が少ないと申請を否決する場合もあったのです」
そこで考えたのが、管理組合役員が自治会の役員を兼ねるという策だった。
「2つの組織の人員総数を従前の4分3程度に削ることができ、重複していた業務を一本化して意思決定がスムーズになりました。また、活動予算も自治会系は行政の助成金、管理組合系は管理費からと出所を分け、お金の流れをクリアにできたのも大きなメリットでした」
ただ、管理組合と自治会兼務による合理化の半面、各理事の負荷は高くなってしまうのでは?
「役員全員にタブレットを貸与し、マイクロソフトTeamsのチャット機能で会話や簡易決議をできるようにしました。“意見書の回答をどうしようか?”“クリスマスのイベントの内容は……?”といったやりとりをチャットで決めておくわけです。そうして、月1回の理事会に臨むことで、ミーティング時間が長引くことを抑えています。まあ、とはいえ、議論しなければならない事は多く、1回の理事会が3時間以上になることもありますが……ともあれ、タブレットを使うことで全員がリアルに出席せず、リモート参加も可能なニューノーマル対応のハイブリッド型理事会を実践できています」
聞けば、以前にも、某IT企業製のグループウェアを導入していたが、いまひとつ使いづらかったため、タブレット+マイクロソフトTeamsの組み合わせに変えたという。withコロナの時代、マンション管理組合にとってデジタル化は切り離せない物になりそうだ。
築4年目で“修繕積立金の均等化”という大仕事をクリア
続いて、2020年2月の臨時総会で決まった改革その2について教えていただいた。
「長期修繕計画の修繕サイクルの見直しと、計画期間の長期化による“修繕積立金”の均等化です。一般的に長期修繕計画は12年周期、計画期間は30年で策定されますが、これを15年周期、60年間の計画として、修繕の総額を抑制しました。併せて、築年数が経過するにつれて段階的に負担増となる想定だった修繕積立金を均等支払いに見直しました」
管理会社が素案をつくり、外部コンサル、理事会が入念にチェックし、計4回の説明会を開催。修繕積立金は従前の約2.5倍になったが、合意形成に至ったという。毎月支払う修繕積立金が値上げされることに対して、キツいと考える住人は少なくないだろう。しかし、例えば30歳で購入した人は90歳になるまで規約上は修繕積立金が変わらない。何かと先行きが不確実な時代にあって、これは大きな安心材料になるのではないか。
「60年均等にすることで、工事総額を単純に60で割れば年間必要額が算出でき、恣意性の入る余地がありません。極端に言えば、修繕積立金について、未来の理事会は機械的に決められるのです。誰がやっても変わらないのは安心であると言えると思います」
ただ、将来的には工事費の上昇や、新技術登場による低コスト化もあり得るので、5年毎の見直しを細則に規定したとのこと。抜かりがない。
世の中の多くのマンションが、将来、修繕積立金を上げる、あるいは資金不足に陥って臨時に修繕一時金を徴収しなければならないなどの課題を抱えているなか、ザ・パークハウス 晴海タワーズ ティアロレジデンスは、竣工から4年目の時点で、その悩みから解放されたわけだ。
「ですので、今、理事会には“余力”があり、比較的フリーに活動できる状態です。サービス改善、ハード修繕、業務分担促進で理事の負荷を下げるなど、時間をかけて最良の選択を追究できるのは、持続可能なマンションをつくる上で非常に良いことだと考えています。手始めに、昨年6月の通常総会で防水対策に着手することが決まりました。このマンションは、地下に電気室を備えています。一昨年、地下に電気室を設けたほかのタワーマンションが浸水で停電になった事例を受け、地下扉の一部を防水扉に交換する計画です」
絶景とラグジュアリーな共用施設。都心エリアながら開放的な敷地も確保
続いて、住人に住み心地を尋ねてみた。皆が口をそろえたのはマンションが立っているエリアの開放的な環境だ。
確かに、現地を訪れて最初に感じたのは、マンションの足元に広がるエリアの広さだった。敷地面積を調べてみると1万4956.52㎡。建物の建築面積は5611.83㎡なので、空地は約1万㎡におよぶ。また、広大な晴海運河に面したロケーションも開放感を高めているはずだ。
夫婦2人暮らし・60歳代のAさんは、
「開放的な住環境と言えば、眺望も欠かせません。うちは西向き住戸ですが、バルコニーに出れば、日本橋、銀座、日比谷、田町などの眺望が素晴らしく良く見えるんです。昼も良いですが、夜景も絶景ですよ。夏場はバルコニーにリクライニングチェアを出し、夕焼けを見ながらビールを飲むのが何よりの楽しみ。刻々と変わっていく空の色とアクセサリーのようにきらめく都心のビル群は、わが家の自慢ですよ。新築で購入したので、ここに住み始めてもう今年で5年目ですが、この眺めはまったく飽きないですね」と満足そうに話してくれた。
30代で妻、子ども2人と暮らすBさんも、開放感が気に入っていると言う。
「都心でありながら少し大通りから外れているため、静かな環境が保たれています。子どもと自転車やサッカーなどを楽しめるスペースが裏にあるのも良いですね。歩道が広く取られていて、安全に歩けるのも助かります。また、多彩な共用施設もこのマンションならではです。2階の水盤のあるプライベートルーフガーデンや、ここに面しているガーデンビューラウンジ、親や親せきが遊びに来たときに便利なゲストルームなどが特に気に入っています。ゲストルームはほとんどホテルのようなしつらえで皆に喜んでもらえます」
スーパー、学校、病院…住民が増えることで、街の環境も充実
30代、小学生のお子さんを持つワーキングマザー・Cさんに買い物環境を聞いてみた。
「最寄りのスーパーはトリトンスクエア内の成城石井。晴海通りを挟んで立つツインタワーマンションのドゥ・トゥール1階には24時間営業のマルエツもあって、夜遅くなったときなどに利用します。月島駅ユーザーには、マンションに向かう途中にあって、食料品が充実している文化堂やフジマートが人気みたいですね。
あと、春海橋を渡るとららぽーと豊洲がありますし、さらに先には、24時間営業のイオン東雲店も。昨年6月にグランドオープンした有明のショッピングシティ有明ガーデンは、買い物だけでなくスパやシアターといったエンタメ施設もいろいろそろっています」
なるほどかなりの充実度だ。ちなみに教育関係も至近距離に整っている。月島駅に向かう途中、徒歩数分の距離に中央区立晴海保育園、区立晴海幼稚園、区立月島第三小学校、区立晴海中学校が集まっている。すぐ近くには幼保一体型の区立晴海こども園もある。
なお、私立の認可保育園は少しずつ増えているものの、住民が急増しているエリアのため、全般的に保活は厳しいとのこと。マンション内には民間の保育園もあるが、住人優先などの優遇措置は特にないそうだ。
再びCさん。医療環境が充実している点も助かるんですよ、とのこと。
「最寄りでは同じ晴海2丁目に内科・小児科のファミリークリニックがありますし、トリトンスクエアには、慈恵医大病院をはじめ、内科・小児科・耳鼻咽喉科・皮膚科・病児保育室を備えたクリニックや歯科、眼科があります。
総合病院が多いのも安心です。晴海三丁目に総合病院の聖カタリナ病院、豊洲に昭和大学江東豊洲病院、隅田川の向こう側に聖路加国際病院があります。聖路加は最寄りのバス停から1本で目の前まで行けますよ」
40代・単身のDさんは、発展を続けるエリアならではの生活インフラの拡充も魅力だと話す。
「ウチが完成した後、隣に立ったタワマンの1階に24時間営業のコンビニができて、かなり重宝していますね。また、マンション前には、晴海~銀座~有楽町~東京駅八重洲口を結ぶ“晴海ライナー”のバス停や、新橋・虎ノ門ヒルズへ直通の“東京BRT”のターミナルもある。最寄りの都営大江戸線勝どき駅・月島駅までは歩いていずれも13分ほどと近くはないのですが、都営バスや中央区コミュニティバスといったバス便も充実しているので移動がとてもスムーズなんです」
東京BRTは将来、段階的に豊洲、有明、台場にもネットワークが延びる予定だ。
災害に対する意識を高める、手づくりの「防災設備見学ツアー」
最後に、ティアロレジデンスの特徴である、防災の取り組みについてふれておこう。
耐震性能や非常用発電機、備蓄倉庫など防災に関するスペックも、マンション選びの重要な要素だが、いざ入居してしまうとそれらの存在は住人の意識から忘れられがちだ。そうした事態を避けるためにティアロレジデンスが行っているのが、住人向けの防災設備見学ツアー「ぶらティアロ」である。
見学コースは地下の非常用発電機、マンションに採用されている免震構造の根幹となる免震ピットなど。さらに消防用ポンプ、備蓄倉庫、屋上のヘリコプターのホバリングスペースなどバラエティ豊かな内容だ。参加者はそれらの防災設備を目の当たりにすることで、改めて非常時への備えや意識を高めるという。
2021年2月13日夜の福島県沖地震では東日本全域でも長周期地震動が長く続いたが、免震構造のティアロレジデンスではどのような揺れを感じたのだろうか。
30代・ファミリーのEさんに発生時の状況を教えていただいた。
「あの日は、ティアロ入居以来で最も大きな揺れだったと思います。がたがたと揺れることはなく、ゆーらゆーらと揺れる、免震構造特有のものでした。恐怖を感じるほどではなかったです。ゆっくりした揺れだったので、物が落ちたり、倒れたりもありませんでした。
共用部分では、エレベーターが安全のため一時的に自動停止しましたが、すぐに自動復旧しました。最新鋭の設備で良かったと思いましたね」
管理組合による、マンションの持続可能な仕組みづくりに成功した一方、ハードの充実度、さらに買い物、医療、教育、足まわり、眺望の良さや水辺ならではの開放感など住環境の満足度も高い。湾岸・晴海に暮らすことの良さを教えてくれるマンションだ。
※2021年のイベント開催は新型コロナウイルス感染症対策のため上記の通りではありません。今後の開催は未定です