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所在地:神奈川県川崎市
竣工年:2015年
総戸数:139戸
「住宅すごろく」という言葉がある。
独身時代のワンルームアパートを振り出しに、結婚して賃貸マンション、頭金が貯まったら分譲マンション、やがてマンションを売却して郊外に庭付き一戸建てを買って“上がり”というものだ。
この考え方は1970年代の高度経済成長期に登場したといわれている。それからほぼ半世紀を経たいま、住宅すごろくの在り方は大きく変わった。経済の紆余曲折、郊外から都心居住への回帰、高齢化、少子化、晩婚化、単身世帯の増加、価値観の多様化――さまざまな要因によって「マイホーム」取得を目指すだけでなく、折々のライフスタイルに適応しやすいことから、積極的に「賃貸」を選択する人も増えたのだ。
ここで紹介する「GATE SQUARE 小杉陣屋町」は、そんな現代の住まい観を分かりやすく体現したマンションである。神奈川県川崎市中原区小杉陣屋町の約2000坪の敷地に、賃貸(総戸数73戸)と分譲(同66戸)のレジデンスが共存しているのだ。なぜこのような住まいができたのか。建主である株式会社原マネージメント社長・原 正人さんに聞いた。
「原家は江戸時代から約400年、この地で肥料の販売や米問屋、味噌屋、醤油屋、油問屋などの商いや銀行業、不動産業、さらには5代にわたって神奈川県議会議員を務めるなど、政治も通して地域社会に貢献してきました。

この地域の幹線道路である中原街道は、かつて江戸と駿府を直線で結ぶ街道で歴史は東海道よりも古く、徳川家康が江戸入城の際に利用していました。小杉陣屋町はその中継地であり、宿場町として栄える一方、将軍家のための御殿が設けられ、家康や秀忠が鷹狩りを楽しんだほか、用水路(稲毛・川崎二ヶ領用水路)開削のための陣屋が設けられるなど、歴史が色濃く残る場所でもあります。
いま、GATE SQUARE 小杉陣屋町が建っているこの土地には、明治44年(1911年)に上棟した家がありました。父が川崎市からの要請を受け、平成元年(1989年)、市内多摩区の生田緑地にある日本民家園に母屋を移築し、その後、母屋は市の重要歴史記念物に指定されました。私はその跡地を受け継いだのですが、2000坪すべての土地を維持するのが難しくなってしまったのです。通常なら土地を切り売りすることになりますが、それではこの地の歴史や生きてきた人々の営みや文化を次の世代に継承することができなくなると悩みました。

そこで、三井不動産レジデンシャルさんに相談し、同じ敷地内で、三井さんに分譲棟を建ててもらい、私たちが賃貸棟を企画するという事業を選択しました。賃貸と分譲が一体となったプロジェクトは日本全国を見渡してみても極めて希少であり、一筋縄ではいかない事業でしたが、それを成し遂げるのが私の使命だと考えたのです」(以下コメントはすべて原さん)
分譲と賃貸を融合させたレジデンスをつくったのは、原さんの強いこだわりによるものだったという。
「自分に合う家を探すときに、お金がない若いうちは賃貸、年を重ねてお金に余裕ができたら分譲、という考え方に違和感をもっていました。本来、家は、人生のステージによってチョイスし、変えていくのが理想でしょう。だからGATE SQUARE 小杉陣屋町は、買っても住める、借りても住める、いずれも実現できる場所にしたかったのです」
GATE SQUARE 小杉陣屋町の竣工は2015年。



賃貸棟はすぐに入居者が決まり、分譲棟も即日完売。住宅の基本性能や仕様、設備は賃貸も分譲も同一だ。住まい手がシンプルに、自身のライフスタイルに応じて「いまは賃貸」「やはり分譲」と選択した結果だったと原さんは話す。
「私が考えていたとおり、分譲、賃貸の間に隔たりはないようです。実際、賃貸で入っていたうちの数世帯がその後分譲棟の住戸を買われました。逆に最初に分譲を買った方が、子世帯のために賃貸を借りたケースも聞いています。ライフスタイル、人生のステージに応じて自分に合った住まいを選んでほしいという、GATE SQUARE 小杉陣屋町のフィロソフィーに共感した方が集まってくださったと感じています」


原さんは、分譲・賃貸レジデンス双方の交流を深めるため、ソフト面の仕掛けも行っている。年末のクリスマス会では賃貸棟・分譲棟の各ラウンジや中庭を行き来するなど、敷地内を有効に活用し、ともにイベントを楽しんでもらっている。また、多分野の専門家を講師に招き、賃貸棟・分譲棟いずれの入居者も参加できる講演会を実施。ここでも入居者間の交流が生まれているという。
さて、賃貸・分譲が一体になったGATE SQUARE 小杉陣屋町には、もうひとつの大きな特徴がある。
それが、先述したかつてこの地で400年の歴史をつないできた原家の資産ならぬ「史産」がマンションのいたるところに反映されていることだ。
最も目を引くのは、中原街道に面した陣屋門だ。くぐった先には原家と小杉陣屋町の歴史、近隣地域で行われるお祭りなどの情報を発信するギャラリーや、ドッグパーク、稲荷社がある「陣屋門プラザ」が広がる。ここはレジデンスの入居者だけでなく、誰もが通ることができる公開スペース。歩くたびにこの地の歴史、文化を垣間見ることができる。

ちなみに2019年7月、中原街道に面した陣屋門と稲荷社は国の有形文化財への登録が文部科学大臣に答申されており、2020年1月には正式に登録される運びだという。GATE SQUARE 小杉陣屋町を通じて、街のアイデンティティがさらに強まることだろう。

分譲、賃貸いずれもレジデンス外観は移築された原家の旧母屋がデザインのモチーフだ。外装は瓦のいぶし風タイルや石器質タイルなどを用い、外周の小径や中庭のKAHALAガーデンなどにかつて蔵でつかわれていた小松石が再利用された。また、バルコニーの形状には、旧屋敷軒裏の欅の木の風合いを踏襲。明治期の近代建築と現代の最先端の建築技術が融合している。

GATE SQUARE 小杉陣屋町から徒歩10分少々の場所には武蔵小杉駅がある。武蔵小杉といえば、駅周辺の大規模複合再開発が進み、タワーマンションが立ち並ぶ首都圏でも屈指の人気の街だ。
「確かに駅周辺のタワーマンション群を見ると隔世の感はあります。元々、複数路線で東京都心や横浜方面にアクセスでき、日本医大、聖マリアンナ、関東労災など総合病院が3つもそろっている上、多摩川の自然も身近な場所。また、川崎フロンターレをはじめとしてサッカーなどのスポーツも盛んな土地ですし、土地の形状がフラットで移動がしやすいなど街としてのポテンシャルは高いものがありました。人口の急増に対応して、保育園、小学校など教育施設の整備も進んでいますので、武蔵小杉はますます人気の街になっていくと思います」
ある入居者は「駅近のタワーマンションを検討していたのだけど、この物件を見てひとめぼれして、こちらの購入を決めた方も複数いらっしゃるようです」と教えてくれた。また、別の入居者は「私は、ここに帰ってくる時間が好きなんです。中原街道に出て、陣屋門や大きな樹木が見えると『ああ、今日も家に帰ってきた』とホッとできるんですよね」と満足げに話す。

賃貸・分譲一体型の希少なレジデンスであり、400年もの歴史を受け継ぐGATE SQUARE 小杉陣屋町は、武蔵小杉駅周囲の“超高層都市”とは好対照の存在だ。これからもいままで同様に街を見守り、住人たちのコミュニティを生み出す場であり続けるだろう。

※物件の状況によって、空室情報がない場合もございます。
この記事は2019年11月14日に公開された記事を転載したものです。掲載内容は取材当時の情報です。細心の注意を払って情報を掲載していますが、当該情報について内容の正確性・最新性・信頼性・合法性等につきましては保証できかねますので、ご自身の責任で本ページをご利用ください。
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