20件以上の内見を重ねて「譲れない条件」が見えた。私が理想のマンションに出合うまで

趣味の茶器などがあるリビング

会社員をしつつ、地元横浜や旅先で食べたおいしいものについてTwitterやブログに書いている在華坊と申します。共働きの妻と2人暮らしです。

自分たちは結婚してしばらく賃貸物件に暮らしていました。築年数がかなり古い物件で、立地のわりに広くて値段も安いから……という理由で選んでおり永住するつもりはなかったのですが、居心地が良かったため2年目の契約を更新。しばらくはそこに住むことになりそうな予感が漂っていました。

そんな折、コロナ禍で在宅時間が長くなり、「冬は寒い」というデメリットのあるこの部屋にいつまでいられるだろうか……と思うように。ちょうど同じ頃、同じマンション内の物件が存外安く売りに出されたり、知り合いがマンションを探し始めたり、とても気になる新築マンションが売り出されることを知ったり、ローンの金利や税制など、今現在購入に有利な条件であることを知ったり……といった状況もあって、自分自身も購入を考えるように。その後20件以上の内見を経て、現在住んでいる中古マンションを購入しました。

入居から1年がたちましたが、自分たちにとってはなかなか理想的な物件であり、いまだに引越したいと思う新たな物件には出合っていません。

今回は、自分たち夫婦がどのような条件で物件を探したのか、またなぜ20件以上も内見をしたのか、購入するまでの経緯を振り返ってみたいと思います。

新築を検討したものの、比較検討する中でターゲットを「中古」に絞った

最初に、気になった新築マンションのモデルルームを見に行きました。お子さんのいるご家庭は積極的に選ばないであろう、歓楽街に近い立地ということもあり、昨今の値上がりが激しい相場の中では比較的割安感があって、試算するとローン返済もなんとかなりそう。一時は購入を真剣に検討しました。

しかし、並行していくつか中古物件を見る中で、立地や間取りや価格をフラットに比べると新築よりも良さそうな中古物件がいくつか出てきました。私たちの場合、どうしても新築が良いというこだわりはなかったため、最初に気になっていた物件は断念。その他の新築マンションは非常に割高に感じたため、以降のターゲットを中古に絞ることに。

新築マンションの場合、物件自体の供給が限られているため、その時売り出されている、もしくは今後計画されているマンションから、かなり広域でエリアを検討することになります。私たちの場合、お互い横浜育ちで、横浜の中心部のかなり狭い範囲内で探したいと思っていたこともあって、必然的に中古から選ぶことになりました。

仲介会社の担当者との相性も大切なポイント

中古物件については、毎日SUUMOを眺め、立地や眺望が良く金額に納得感のある物件にまず連絡を入れました。しかし仲介会社からは「最近値下げをして買い付けの申し込みが2件入った」とのこと。

しかし「せっかくなので、他の物件も見てみませんか?」と言われたので、希望の条件を伝えて、先方から候補物件を教えてもらうことに。またこちらで気になる物件があるたびに、内見の手配をしてもらいました。

結果的にはそれで理想的な住まいにたどり着けたので良かったのですが、途中で一度、別の仲介会社の現地見学会に行ってみたところ、説明の丁寧さに驚いたのを覚えています。

私たちを担当してくれた仲介会社の人は、内見の手配は手早くしてくれて助かったのですが、良い意味で見守るだけというか、積極的に介入してこないタイプの人だったため、いろいろ相談しながら決めたい人だと物足りなさを感じたかもしれません。ただ、基本的に仲介会社の人は自社で扱っている物件を販売すると、売主と買主の両方から仲介手数料が入るので、そちらを売りたがるそうですが、私たちの担当者は(内心はともかく)そういう押し出しはしない人でした。

いずれにしても、仲介会社の担当者ごとに個性があり対応にも差が出るので、いくつか仲介会社をあたって、相性の合う人と一緒に探すのがよいように思います。

理想の住まいに出合うまでに20件以上の内見を重ねた


内見の初日は、こちらが希望した間取り、地域、予算感で、仲介会社の人が選んでくれた5件を見るところから始めました。

最近はネットを見ていれば住宅情報もかなり得られるので、事前にじっくり検討して、内見自体は5件程度にとどめる人が多いようです。しかし自分たちの場合、内見はなるべくたくさんしたいと考えていました。

もちろん自分自身でもネットで情報収集していました。いちばん見やすい「SUUMO」はもちろんのこと他のサービスも含め、毎日どころか日に何度も、暇さえあれば指定した検索条件で新着情報をチェックすることも。

検討地域内で情報がオープンになっている物件はもれなく把握していた自信があります。実際、仲介会社の人が提示してくれる候補はみんな知っていたので、途中からはもう、内見の手配だけをお願いしていました。

私たちの場合、物件に何を求めているかをイメージするために内見が必要だと考えていました。築年数、駅からの距離、広さ、間取り、設備、掲載されている画像から想像される雰囲気など、ネットから得られる情報もたくさんありますが、実際内見しないと分からない要素もたくさんあります。最終的には20件以上、25件くらい見たでしょうか。

また、部屋の中ももちろん大切ですが、それ以外にも大切な要素があります。

内見時にはたいてい、仲介会社の人に車に乗せてもらって効率的に何件も回るので、物件周囲の様子まで見ている余裕がありません。なので、内見候補にした物件については、最寄駅から往復で歩く場合の信号待ちの時間を含めた所要時間を確認したり、駅からの道中で街の雰囲気を確かめたり、利用しそうなスーパーマーケットの品ぞろえを確認したり、飲食店などの個人商店の多さを確認したり、マンション周囲の状況・雰囲気を確認したり……といったことを、内見前後に必ずするようにしていました。

例えば周囲に駐車場が点在していたり、古い民家がある場合、そのうち再開発されて大きなマンションが建つ可能性もあるでしょう。目の前に庭がまったく手入れされていない家があったりすると、暮らし始めてから気になるかもしれません。

自分たちは初めから、横浜市の神奈川区・西区・中区・南区に概ね限定して探していたので、周囲の状況は事前に把握していたのですが、それでも歩いてみると新たな発見がいろいろあり、日々楽しいお散歩でした。あまり知らない地域で検討している人は特に、歩き回ってみるべきだと思います。

内見時には、マンションの敷地内や建物内を見ることに専念しました。部屋だけでなく、ゴミは24時間出せるのか、管理状況はどうか、自転車置き場は使いやすいか、自転車ラックに空きはあっても上段か下段か、エレベーターの広さや使いやすさ、周囲の部屋に不審な様子はないか、廊下に荷物を放置している部屋があるか、などなどです。実際、同じフロアに不審な張り紙をした部屋があったり、マンションの裏手がゴミの山になったりしていて、これはちょっと……と思う物件も。

また内見を重ねていくうちに、ここは譲れない部分、ここは妥協可能な部分、というような感覚が養われていきました。

例えば最近は各階にゴミ置き場のある物件もありますが、便利な分、管理費に跳ね返ってきます。自分たちの場合は、低層階の部屋を選べば1階まで直接捨てに行ってもあまり手間ではないと思えました。

他にもエレベーターから遠い部屋は不便だけれど、廊下の人通りが少なくて静かに暮らせるかもしれない。低層階よりも高層階の方が眺めは良いかもしれないけれど、3~4階くらいまでの方が、朝急いでいるときに階段を使いやすくていいかもしれない、といった具合です。

内見によって、自分たちにとって本当に必要なものが見えてきた

さて、肝心の部屋の話です。当初は自分たちが住みたい部屋に本当に求めることがなんなのか分からず、内見した物件について、間取りの使いやすさ、日当たり、眺望、収納、台所、環境など細かい項目ごとに5点満点でノートに点数を付けて総合評価を数値化していました。

物件の点数を記録していたノート

しかし、数値化してみて総合点数が高い物件に必ずしも住みたいかといえばそうでもなく、点数が高いにもかかわらず納得できないものも出てきたのです。

例えば間取りについては、単に部屋数や広さだけの問題ではなく、「部屋の形が四角ではなく使いにくい」とか、「リビングと寝室の配置がしっくりこない」とか、「梁(はり)の突き出しや天井の高さなどがいびつで居心地が悪い」とか、実際に部屋に入ってみないと分からない部分も多かったです。

今の部屋は比較的梁の突き出しが少ない
今の部屋は比較的梁の突き出しが少ない

それまで住んでいた物件は壁式構造*1だったため、部屋の形がきれいで柱や梁の突き出しもまったくなかったのですが、いろいろ見ていくうち、「世の中にはこんなに天井から圧迫感を感じたり、四角くなくて使いづらい間取りもあるのか……」と驚いたものです。

また、以前住んでいた物件は高台にあり、眺望と日当たりが非常に優れていました。なので内見するうちに「世の中にはこんなに日当たりが悪い部屋があるのか……」という驚きもありました。「当たり前だと思っていたものが実はとても重要だった」という気付きを得られたのも、実際に物件を見たからこそでした。

一度、駅からの距離、広さ、値段などかなり理想的な物件があり、期待して見に行ったのですが、一歩部屋に入るとなんだか薄暗くてじめっとしていたので、一瞬で「この部屋はないな」と思いました。それ以降、自分たちにとって「日当たりの良さ」は絶対の条件であると分かったのです。

とにかく、たくさん内見する中で「自分たちにとって本当に必要なもの」が見えてくる過程は非常に重要でした。そうするうち、「駅からのアプローチで坂道は苦ではない」「広さと日当たりは絶対」「内廊下のタワマンは嫌だ」「車通りの多い道沿いは嫌だ」「近くに個人営業のおいしい店がたくさんほしい」「絵を飾ったり本棚を置いたりできる壁面が一定以上ある部屋が良い」など、自分たちの求める条件がはっきりしていきました。

上記の条件を満たしており、それなりに気に入って、決めてしまおうかとかなり迷った物件が一つありました。駅近くで日当たりも良く、周囲にスーパーや飲食店も充実していました。しかし、駅に近すぎてベランダ側に線路があったのです。電車の音は暮らしていてどの程度気になるのか、内見後の会社帰りに調べてみることに。マンションの外に30分ほどたたずんで、暮らしている自分たちを想像しながら、アリかナシか2人で話し合いをした結果、見送ることに。いよいよ決めようかという段階になったら、曜日や時間などを変えてしっかり環境を確認するのがよいと思います。

譲れない条件が明確になったからこそ、即決できた

なかなか物件を決められずにいると、仲介会社の人はよく「100%の理想の物件はない」と言います。実際自分も、15件近く見た段階で「ご希望の条件からすればこれだけのものはなかなかないですよ、すぐに他に決まってしまうかもしれませんよ」と強く押されたことがありました。しかし自分たちの場合、提示された中から決めるか、強く迷った翌日に、理想に近い物件が出てきたことも。そこは結局、現金一括の人に買われてしまったのですが……。

しかし、いつまでも決断できないのは問題ですが、よほど引越しを急いでいるのでなければ、自分にとっての理想が何なのかはっきりした後に、物件が出てくるのをのんびり構える、くらいのつもりでもいいと思います。中古物件はどのタイミングで何が出てくるか本当に分かりません。「運と出合い」だと感じます。

内見を重ねていると、空き部屋ばかりでなく、実際に人が住んでいる部屋を見せてもらえることもあります。先方と時間の調整が必要だったりしてひと手間多いのですが、実際に住んでいる人がどんなふうに家具を並べているのか、どうやって暮らしているのか見られる貴重なチャンスなので、臆せず見に行くとよいでしょう。

小さいお子さんがいて、新築で買ったマンションを高値で売り抜けて一軒家に引越す人、子育てを終えて定年を迎え、もっと地方に引越す老夫妻、数年に一度引越しを繰り返している一人暮らしの男性、広いすてきな部屋に1人で住んでいる悠々自適のマダム。マンションの内見は、人の暮らしや生きざまに思いをはせる場でもあるのだなあ、と思ったものです。

最終的に自分たちが決めた部屋は、最初に内見に行こうとして、申し込みが先に入ってしまっていて諦めたマンションの、別の部屋でした。土曜日の朝に布団の中で物件サイトの新着情報を見つけ、すぐに内見の手配をして翌日見に行き、これまで積み上げてきた自分たちにとっての条件に合致すると納得し、1週間以内に値引き交渉まで終えました。

実は最初に内見しようとした部屋の方がお値段が安かったのですが、実際に内見できていたとして、その時に決断できた自信はないです。「幸せの青い鳥」はすぐ近くにあったわけですが、それまで多くの部屋を見る中で自分たちにとっての譲れない条件がはっきりしたからこそ、即断即決できたんだと思います。

実際に住んで気付いた「今後見ておきたいポイント」

引越してから1年間、今の部屋にとても満足はしていますが、実際に生活し始めてから気付いた点も。例えば、24時間換気の換気扇の音がうるさいような気がしています。しかし内見時には気にしていなかったため比較対象がなく、そんなものなのか、なんとかした方がよいものなのか、判断がつきません。

築年数はそれなりなのですが、2000年〜2009年ごろに建てられたマンションは、それ以降に建てられたものに比べて建物の仕様が非常に良い傾向があります。昨今のマンションは資材費や人件費の値上がりで仕様が安くなりがちです。自分が購入したマンションも例にもれず、新築時のフローリングよりもその後にリフォームされた部屋のフローリングの質感がかなり低く、内見時にもっとフローリングの具合などを確かめておけばよかったな、と思いました。

マンション共用のインターネットは安定して速度が出るので特に不便に感じてはいないのですが、購入した物件によっては非常に速度が遅くて難儀している人もいるようです。しかし、自前で回線を引くためには壁に穴を開けないといけないのでどうしようもない……という場合もあるようで、インターネット環境は事前に確認した方がよさそうです。

細かい点では、冷蔵庫の設置位置が左開き扉を想定しており、持ち込んだ冷蔵庫が右開きだったため、少し難儀しています。扉が両開きの冷蔵庫なんて、どうせどっちかしか使わなくなるでしょ……と思っていたのですが、引越しがあると役に立つんですね。

賃貸と違って購入した場合、気に入らない点はリフォームも可能です。ベランダ側のリビングと居室の間が壁になっており、普通の扉があったのですが、他の内見した部屋を見る中で、「ここは引き戸にして開放的にしたらよいのでは?」と思い、引き渡し後にリフォームしました。住み始めてみると、光もよく入り、風もよく通るので、このリフォームは正解でした。

引き戸にする前のリビングと隣室の間
引き戸にする前のリビングと隣室の間
壁を抜いて引き戸にした様子
壁を抜いて引き戸にした様子

中古の場合、購入後にリフォームすればよい点もありますが、リフォームに費用がかなりかかる、あるいは水場の配置などリフォームではどうしようもない点もあります。そこを考慮に入れつつ、細かい部分にこだわりすぎるよりは、できる範囲でリフォームするくらいの心構えでもよいのではないかと思います。

また実際に暮らし始めて、前の家にはなかった設備の便利さも知りました。床暖房の暖かさと快適さに触れて本当にあって良かったと思ったし、お風呂の追い焚き機能と宅配ボックスはもともと欲しいなと思っていたのですが、もうそれらがない暮らしは想像できないようになりました。新たな便利さを知ることで、今後譲れない条件がまた変わってくるのかもしれません。

また部屋そのものも大切ですが、マンションの場合は建物全体の管理も大切です。今現在、自分は管理組合の理事をしていますが、長期修繕計画を新規に作成したところ、長期的に考えると修繕積立金を3倍近くにした方がよいという提案になっており、現状の積み立て具合に少し不安を感じています。

購入前に確認した長期修繕計画では大丈夫かなと思っていたのですが、昨今の資材費や人件費の値上がりは想像以上のようでした。若い世代が多い物件や、今後も住み続けたいと思っている人の多い物件であれば住人の「施設を維持していこう」という気持ちが高いですが、そうでないと、修繕積立金を上げる話もまとまりにくいでしょう。

事前にどこまで分かるかは難しい部分もありますが、いよいよここにしようか……という段階になったら、長期修繕計画や管理組合の総会の議題と議事録などを読んで、将来の積み立てに不安はないか、マンション内で大きな問題は起きていないか、管理費などの滞納はないか、駐車場の利用率は良いか、などを確認しておくのは必須と思います。

自分たちはひとまず今の暮らしを楽しみつつ、将来的にはキッチンをもっと広げようとか、10~20年後のリフォームをどうしようかな……なんて想像しています。

中国茶でお茶の時間

物件の値上がりやローン金利の動向など不確定な要素も多く、購入を迷うこともあると思いますが、家やマンションは買いたいと思ったときが買い時。条件に合った物件に出合ったときにすぐに動けるように、あらかじめ準備しておくのがよいかと思います。

【在華坊さんが実践した「マンション探し時のチェックリスト」】

※在華坊さんがマンション購入にあたってチェックした項目をリストにまとめました。これらの項目も参考にしながら、マンション探しに役立ててみてください。


マンションの建物内では、部屋以外の様子も含め見ておく

物件周囲の様子を見ておく

マンションの将来性について(長期修繕計画や管理組合の総会の議題と議事録などをチェック)

著者:在華坊

在華坊

1978年生まれ。横浜、野毛のあたりに在住。出張ついでに飲み歩くことが楽しみな会社員。横浜の話題や出張の旅先での酒場めぐり、美術館めぐりの話が多いブログ「日毎に敵と懶惰に戦う」を2004年から更新中。

Twitter:@zaikabou / ブログ:日毎に敵と懶惰に戦う

編集:はてな編集部

*1:床・天井・壁×4と合計6枚の壁で空間を構成する構造。柱や梁ではなく壁で建物を支えるため、室内が凹凸のないスッキリとした空間になり、家具の配置がしやすくなる