賃貸経営では何らかの原因で空室期間が長期化することもある。その状態が長引かないためには原因である問題点を把握して、的確な方法で問題を解消していくことが必要だ
空室が続くのには次の3つの原因が考えられる。一定の期間が経っても入居者が決まらない場合は、原因を分析して募集活動などを見直すことが重要だ。
家賃や敷金・礼金の設定などが相場や時期的・地域的ニーズに反している場合、募集条件の見直しを検討する必要がある。家賃を減額する場合、賃貸経営や家計の収支に影響が生じるが、空室期間が長引いてしまうよりましと考えたい。空室期間は収入がゼロというだけでなく、物件の維持費や税金がかかる分、赤字となるからだ。
具体的には、家賃を下げる、敷金を家賃2カ月分から1カ月分に、礼金をゼロにするなどだ。仲介の不動産会社と十分に協議して決めよう。
アンケートでは、「実際の家賃は希望より1万円以上減額した」が34%、そのうち「3万円以上減額した」が5.8%いた(「家賃、契約条件を決めて入居者を募集する」ページ参照)。減額が数千円から1万円以内というケースも含めると、家賃を見直す状況は多いようだ。
ただし、家賃を下げることだけで空室を解消しようとするのは避けたい。そうした場合、競合する周辺物件も家賃を下げるなどの対応が発生して、値下げ合戦に発展しないとも限らない。重視したいのは、物件の特徴を活かしてさらに物件の魅力を増し、周辺物件と差別化することで、入居者のニーズをとらえることだ。
賃貸物件の魅力を高めるには、物質的にグレードを上げる方法と、供給不足の物件に変える方法とがある。
設備や室内仕様、外まわりが古い・汚れているなど、魅力的でない場合、リフォーム費用をかけてでも、グレードを高めると、希望の家賃設定どおりでも入居者が決まる可能性が生じる。特に、キッチン、洗面、トイレ、浴室など清潔感を求められやすい水まわりを新しくすると、魅力が増す。
例えば、賃貸物件に多い「ペット飼育不可」「入居者による物件のカスタマイズ不可」「楽器演奏不可」などといった禁止事項を逆に可能としたり、高齢者や外国人などが入居しやすい条件に変更するなど、供給数が不足している特定のニーズに応える。そうすることで、入居者が決まりやすくなるわけだ。
不動産会社に募集活動の内容や反応を確認して、空室解消のための活動強化を依頼する。特別な広告宣伝をする場合は費用実費がかかることもある。強化内容についてどんな方法で行うのかを確認しよう。
会社が熱心でない場合は、ほかの不動産会社に仲介(媒介)の委託をする。その際、注意したいのは、「専任媒介契約」(1社だけに委託する契約)では、契約期間中に他社への依頼ができないこと。「一般媒介契約」(複数の会社に委託する契約)や媒介契約書を締結していない場合は、随時、他社へ委託できる。
賃貸経営を賢く行うためのノウハウや豆知識、成功のためのコツなどをご紹介いたします。
文/金井直子 イラスト/江口修平 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー