コンセントを増設したい。DIYをしてもいい?費用の目安は?

公開日 2020年07月10日
コンセントを増設したい。DIYをしてもいい?費用の目安は?

家電製品の数が増えたり置き場所を変えたりしたときに、「ここにもコンセントがあれば……」と思うことはありませんか?今回は、コンセントを増設する主な方法と、費用の目安を解説。さらに、後々に困らないために、住まいを新築・リフォームするときにコンセントを多めに設置しておいた方がよい場所について、一級建築士の佐川旭さんに教えてもらいました。

コンセントを増設する方法は?DIYしても大丈夫?

コンセントを増やす方法は主に2つ

今の住まいで、コンセントの数が足りなくて“たこ足配線”をしている、コンセントの位置が遠くて延長ケーブルを使っている、という方は多いかもしれません。しかし、“たこ足配線”は1つのコンセントに電流負荷をかけ過ぎるため、ブレーカーが落ちやすくなったり、漏電や感電による火災の危険性があります。また、延長ケーブルの利用はつまずいて転倒する原因になることがあります。
このような場合、必要な場所にコンセントを増設すれば“たこ足配線”や延長ケーブルの利用を解消できます。

タコ足配線
“たこ足配線”は安全の問題だけでなく、見た目も美しくありません…(画像/PIXTA)

住宅のコンセントを増設する方法は、主に2つあります。

方法1:コンセントから増設したい場所まで、配線を壁の表面に這わせる方法

「配線にカバー材を用いることが多いのですが、色や位置によってはかえって悪目立ちすることもあります。カバー材は使わず、巾木の上や窓枠など段差がある部分に配線を這わせると目立ちにくくなるでしょう」(佐川旭建築研究所 佐川旭さん。以下同)

方法2:今あるコンセントから増設したい場所まで、または分電盤から増設したい場所まで、壁の中に配線を通す方法

部屋からは配線が見えませんが、壁を壊して工事をするため、壁に這わせる方法と比べると工事費も手間もかかります。
「柱と壁(石こうボード)とが接している場合、電気工事職人によっては、柱に穴をあけて配線を通すケースが時々みられますが、構造強度に問題が生じるので絶対に止めましょう。柱と石こうボードが接する部分を数ミリ削れば配線は通せますし、この程度なら構造強度に影響がありません」

壁の中に配線を通す工事イメージ
コンセント増設工事のイメージ。壁の中では、間柱に這わせるのが一般的です(イラスト/杉崎アチャ) 

DIYはNG!有資格者に依頼しよう

これら2つの方法は、いずれも「電気工事士」の資格を持つ人しか工事してはいけない決まりです。持ち家だから……とDIYで行う人もいますが、漏電の原因になったり、分電盤の寿命を早めたりする可能性があります。自分で工事は行わず、専門の知識・技術を持つ電気工事士に依頼しましょう。

コンセントの増設工事イメージ
コンセントの増設工事は「電気工事士」の有資格者に依頼しましょう(画像/PIXTA)

コンセントを増設する手順は?費用の目安は?

コンセントの増設工事は、電気工事会社に依頼するか、リフォームの際に行うケースが一般的です。ここでは、依頼から増設工事までの3つの手順をご紹介しましょう。

手順1:増設する場所を考える

家電製品の置き場所や増設目的を踏まえて、増設したい場所を考えます。
「見た目や使い勝手を重視するなら、場所はもちろん高さも大事です。家電に隠れるようにするか、使いやすい高さは床上何センチぐらいかなど、さまざまな視点から検討しましょう」

手順2:コンセントの種類と口数を決める

増設場所を決めたら、コンセントの種類と口数を決めます。
「エアコンや電子レンジなど消費電力が多い家電用に増設するなら、専用コンセントを設けるとよいでしょう。水気が多い場所にウェシュレット用や洗濯機用として増設する場合は、アース付きコンセントを選択してください」

なお、コンセントの口数は、2~3口が一般的です。ただ、テレビやパソコンまわりなど家電製品が多く集まる場所なら6~8口と多めの口数を選んでおけば、家電製品が増えてもたこ足配線を防ぎやすくなります。

アース付きコンセントとコンセント
右側がアース付きコンセント。家電製品が水に濡れたときに起こる漏電や感電を防ぐ役割があります(画像/PIXTA)

手順3:分電盤の空き状況を確認してもらい、工事方法を決める

設置場所と種類、口数を決めたら、電気工事会社やリフォーム会社の担当者に、回路と分電盤の状況を確認してもらいます。
「一般的には、1つの回路からコンセントを4~5カ所設けられます。増設したい場所に応じて、近くの回路から分岐配線にするか、分電盤の空き回路から直接配線にするかを計画してもらいましょう。分電盤の空き回路が足りない場合は、電力会社との契約アンペア数を増やし、分電盤を交換することになります」

分岐配線にするか、または分電盤からの直接配線にするかが決まったら、配線が見える・壁の中を通して隠す、いずれかの工事方法を選択し、見積もりを依頼します。見積もりで工事内容と金額を確認したのち、工事を発注します。

家庭用ブレーカー
古い住宅の分電盤は30~40A対応が多いもの。今後、家族の人数や家電製品が増えそうな場合、余裕のある60A対応の分電盤を選ぶのがオススメ(画像/PIXTA)

工事費用は、増設方法と配線の長さなどで変動

コンセント増設の工事費用は、前述した2つの方法によって異なります。
「配線が見える方法の場合、料費と工事人件費を合わせて1万2000円前後でしょう。壁の中に通して隠す方法の場合はこの1万2000円に、壊した壁を補修するための石膏ボードや壁クロスなどの材料費がプラスされます。補修範囲が広いと材料費だけで結構な金額になるので、1~2カ所程度の増設なら配線が見える方法を選択し、リフォームをするときに配線が見えないように工事してもらうとよいかもしれません」

ちなみに、分電盤を交換する場合、宅内の分電盤交換工事と、屋外から宅内までの引き込み工事代として20万円程度の費用が必要になります。わからないから、といってすべてを工事会社にお任せにせず、必ず見積もりを作成してもらい、工事内容と費用を確認してから依頼しましょう。

工事内容 費用
壁の表面に配線を這わせる方法 1万2000円前後(料費と工事人件費含む)
壁の中に配線を通す方法 1万2000円プラス材料費(壊した壁を補修するための石膏ボードや壁クロスなど)
分電盤の交換 20万円程度(自宅内の分電盤交換工事プラス屋外から宅内までの引き込み工事代)
リフォームイメージ
工事前には見積もりをもらい、工事内容や金額を確認したうえで発注しましょう(画像/PIXTA)

後から困らないために、新築・リフォームでコンセントを多めに設けたい場所は?

床面積120m2でコンセント35個が目安

欲しい場所に無いと不便を感じやすいコンセントですが、設計上での“数の目安”はあるのでしょうか。
「戸建住宅の場合、床面積120m2で35個程度が目安になります。ただ、最近はすべての部屋にエアコンを設置するケースや、所有する家電製品の数が増えています。使わない限り電気代はかからないので、多めに設けておく方が賢明かもしれません」

次からは、空間別に設置したい数の目安と、あると便利な場所などをご紹介しましょう。

【リビング】

目安は6個ですが、テレビやパソコンコーナーのまわりには多めに配して“タコ足配線”を防ぎましょう。ご家庭に応じて、クリスマスツリーや扇風機、電気ストーブなどの季節家電用、空気清浄機用などの設置を忘れずに。
「リビング内にロボット掃除機を置きたい場合、近くにコンセントがあると常に充電できて便利です」

ロボット掃除機
ロボット掃除機の置き場所を決めたら、近くにコンセントを設けておきましょう(画像/PIXTA)

【ダイニング】

目安は4個です。ホットプレートや卓上電気鍋を頻繁に使うご家庭は、ダイニングテーブルまわりに専用コンセントがあるとよいでしょう。
「家電のコードの長さは2mが標準です。せっかくコンセントを設けても、テーブルから遠いと延長コードを使うことになるので位置にも配慮してください」

【キッチン】

目安は6個ですが、食器洗浄乾燥機や電子レンジなど消費電力の多い家電製品には専用コンセントを配しましょう。そして、調理家電用は、数だけでなく高さにも配慮が必要です。
「必要数を確認したうえで、置く家電に応じて床上20cm程度、カウンター程度などの高さを決めると使いやすくなります」

【洗面室】

目安は2~4個です。
「ドライヤーだけでなく、髭剃りや電動歯ブラシや美容グッズなど充電して使う物が多いので、鏡面や収納まわりに少し多めに設けておくのがオススメです。利き手の都合もありますが、鏡面の片側にまとめて設けることは避け、両側に分散した方が使い勝手がよいでしょう。さらに、壁掛け扇風機用に壁の上方、暖房機器用に下方に設けておくと、より便利です」

【個室】

目安は3個ですが、部屋の広さに応じて調整しましょう。設置場所は、まずは机とベッドを置く位置を決め、その周辺に多めに設けておくとよいでしょう。
「コンセントの口とUSB充電口がセットになったタイプなら、睡眠中や机に向かっているときにスマホの充電が手軽にできます。また、ウォークインクロゼット内にコンセントがあれば、湿気が溜まりやすい季節に除湿器を使えるため、カビや嫌な臭いの発生を防ぎやすくなります」

照明スイッチ2つ、USB充電口2つ、コンセント1口が一体になったタイプ
照明スイッチ2つ、USB充電口2つ、コンセント1口が一体になったタイプ。ベッドの枕元にあると便利!(画像/PIXTA)

【玄関】

目安は1~2個です。玄関でクリスマスやハロウィンなどのライティング装飾を楽しみたい人は、収納カウンターの上や巾木の上あたりに設けておくと、延長コードを使わずにすっきりと飾れます。

【廊下・階段】

目安は2~4個ですが、場所がとても重要です。
「掃除機の標準的なコードの長さは5mです。掃除機を一気にかけたいなら、階段の上り口か下り口に設けておきましょう。廊下が長い家なら、中央あたりに1つ設けておくと便利です」

【外まわり】

目安は2個ですが、設置を忘れがちな場所でもあります。
「シーズンイベントの装飾用や、屋外で食事を楽しむときのホットプレートやランプ用、芝刈機や高圧洗浄機用などのために、必ず設けておきたいですね。設ける際は防水タイプを選択してください」

防水用コンセント
ベランダや駐車スペースの近くなどの屋外には「防水用コンセント」を選びましょう(画像/PIXTA)

増設工事のタイミングは、先々を見据えて決定を

新築やリフォーム直後には「コンセントの場所も数も完璧」だとしても、長く暮らすうちに家電が増えたりライフスタイルが変わるため、不便に感じるようになるのは普通のことと、佐川さんはお話しされます。

「家は長く住み続けるとリフォームの必要が生じるものです。今、不便だからとすぐに工事をせず、設備機器の交換時期や、間取りや内装を変えたいタイミングなど、先々を見据えたうえで増設計画を立てれば、費用や手間の面で無駄が生じにくくなります」

まずは記事を参考にして増設工事の方法を理解し、ライフスタイルの変化や家のリフォーム時期など先々を見据えたうえで、工事のタイミングや方法を選択するのが最善といえるでしょう。

まとめ

住宅のコンセントを増設するためには、今あるコンセントから増設したい場所まで配線を壁の表面に這わせる方法と、壁の中に配線を通す方法がある。

コンセントの増設工事のDIYはNG。工事は有資格者に依頼し、分電盤の空き状況を確認してもらい、見積もり内容を確認したうえで、工事を依頼しよう。

コンセントの数は、戸建住宅の場合、床面積120m2で35個程度が目安。ただ、家電製品の数が増えているため、多めに設けておく方が賢明。

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取材・文/山南アオ イラスト/杉崎アチャ
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