財形貯蓄制度や住宅財形のメリットについて解説。利用するのはやめたほうがいい?という疑問にも答えます

公開日 2024年02月05日
財形貯蓄制度や住宅財形のメリットについて解説。利用するのはやめたほうがいい?という疑問にも答えます

財形住宅貯蓄などの財形貯蓄制度が、福利厚生として勤務先に用意されている人もいるでしょう。この制度は、住宅購入のためにも使える貯蓄なのでしょうか?今回は、財形貯蓄とはどのような制度なのか、そのなかでも住宅財形にはどのような特徴があるのかを解説。また、メリット、デメリットや、どのような人に向いているのか、住宅財形の活用法なども紹介。ファイナンシャル・プランナーの菱田雅生さんに監修していただきました。

財形貯蓄とはどんな制度?

国と勤務先が連携する従業員のための制度

財形貯蓄制度とは企業や団体が国と連携して従業員の資産形成を支援する、「勤労者財産形成促進法」という法律に基づいた制度です。あなたの勤務先に、福利厚生としてこの制度があれば、給与から天引きされるかたちで、勤務先が提携している金融機関に積み立てられます。正社員だけでなく、継続雇用期間などの要件を満たす契約社員や派遣社員、アルバイトやパートスタッフも利用することができます。

住宅財形も財形貯蓄のひとつ?財形貯蓄制度は一般、住宅、年金の3種類

財形貯蓄制度には、一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄という積立期間や用途などが異なる3種類があります。一般財形貯蓄は「一般財形」、財形住宅貯蓄は「住宅財形」、財形年金貯蓄は「年金財形」など略して呼ばれることも多くあります。後で紹介しますが、住宅を購入する際に利用できる「住宅財形」も、財形貯蓄制度のなかのひとつなのです。

では、次に、3種類ある財形貯蓄の特徴を紹介していきます。

一般財形貯蓄は使い道自由な貯蓄

一般財形貯蓄(正式名称は勤労者財産形成貯蓄)は、企業や各種団体などに勤務する人が、金融機関などと契約をして3年以上、定期的に給与(賃金)からの天引きによって、勤務先を通して積み立てていく貯蓄のこと。天引きは毎月の給与またはボーナス期などに行われます。

契約時の年齢に制限がなく、複数の金融機関との契約もできる点が特徴。また、積み立ての目的が限定されておらず、払い出しの時期や回数も原則自由。結婚資金や出産資金、教育資金、車の購入費、住宅購入費などに自由に使うことができます。

住宅財形は住宅取得やリフォームなどが目的の貯蓄

住宅財形と呼ばれる財形住宅貯蓄(正式名称は勤労者財産形成住宅貯蓄)は、持ち家の取得や持ち家のリフォーム(増改築)を目的として行う貯蓄。定期的に給与から天引きされ、勤務先を通して積み立てていくのは一般財形貯蓄と同じです。異なるのは、契約時の年齢や積み立て期間など。契約時に55歳未満であること、5年以上の期間にわたって積み立てることが条件。また、一般財形貯蓄は複数の金融機関との契約が可能ですが、住宅財形は一人1契約です。

年金財形は年金形式で受けることが目的の貯蓄

年金財形(財形年金貯蓄、正式名称は勤労者財産形成貯蓄)は、60歳以降に5年以上の期間にわたって年金として支払いを受けることを目的とする貯蓄です。住宅財形と同様に契約時に55歳未満であること、5年以上の期間にわたって積み立て、一人1契約が条件です。なお、年金形式で受け取る際の条件などについては、金融機関によって異なる場合がありますので、契約時に確認しておくことがおすすめです。

財形貯蓄制度は3種類
一般財形貯蓄 財形住宅貯蓄 財形年金貯蓄
利用できる人 財形貯蓄制度がある企業・団体の従業員 財形貯蓄制度がある企業・団体の従業員で、55歳未満の人 財形貯蓄制度がある企業・団体の従業員で、55歳未満の人
貯蓄の目的 自由 持ち家の購入やリフォームの資金づくり 年金資金づくり
積立期間 原則3年以上 原則5年以上 原則5年以上
払い出しの時期・回数 制限なし 住宅取得の前後2回まで 60歳以降に年金形式で受け取り
非課税措置 なし あり あり
(表作成/SUUMO編集部)

財形貯蓄のメリットは?

給与天引きで資産形成ができる財形貯蓄。一般財形や住宅財形、年金財形をしているとどのようなメリットがあるのでしょうか?

給与天引きだからお金が貯まりやすい

毎月決まったお給料のなかからコツコツお金を貯めていくのは苦手、という人も多いでしょう。財形貯蓄制度を利用すると、お金は給与から天引きされるため、うっかり使ってしまうことがありません。貯蓄をしようと意識しなくても、自然にお金が貯まるのが大きなメリットです。

利子等に税金がかからない

住宅財形と年金財形の貯蓄額の元利合計が550万円※から生じる利子等が非課税になります。
※財形年金貯蓄のみの場合は、生命保険または損害保険の保険料、生命共済の共済掛け金、簡易保険の掛け金等にかかるものは払込ベースで385万円。

財形持家融資を利用できる

1年以上にわたって財形貯蓄をしている場合、財形持家融資制度を利用して持ち家の購入やリフォームをする際の資金を借りることができます。住宅財形以外の年金財形、一般財形も対象です。

財形持家融資制度には、「転貸融資」と「直接融資」があります。「財形持家転貸融資」は勤務先などを通して融資を受ける制度、「財形持家直接融資」は住宅金融支援機構(公務員の場合は共済組合等)からから融資を受ける制度です。

財形給付金制度、財形基金制度がある

財形貯蓄をしている人は、勤務先が財形給付金制度や財形基金制度を採用しているのであれば、一定年ごとに給付金を受け取ることができます。

財形貯蓄のデメリットは?

財形貯蓄を利用するなら、メリットだけでなくデメリットも知っておく必要があります。では、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

目的外の引き出しをすると非課税措置の対象にならない

一般財形の使い道は自由ですが、住宅財形、年金財形にはそれぞれ貯蓄の目的が定められています。住宅財形、年金財形を目的外の理由で解約や中途解約をすると、メリットの一つである利子等への非課税措置の対象とならず、払い出しの際に課税されることになります。なお、一般財形はもともと非課税措置がありませんから、解約時には残高がそのまま払い出されます。

低金利の今は、非課税措置そのものにメリットが少ない

一般財形が非課税措置対象にならないことや、住宅財形や年金財形の目的外・中途での解約が非課税措置の対象から外れることはデメリットですが、低金利の今は、そもそも非課税措置そのものにあまり恩恵はないといえます。

iDeCoのように天引きされるお金に所得控除制度がない

資産形成の方法としてiDeCoを検討している人もいるでしょう。iDeCoは拠出する全額が所得控除の対象となり、現役時代の所得税を軽減することが可能です。しかし、財形貯蓄の場合は、所得控除制度がありません。

ほかの財形貯蓄に変更できない

財形貯蓄は選択した種類(一般財形、住宅財形、年金財形)を途中で変更することができません。住宅財形を利用していたけれど、住宅を購入する必要がなくなったから年金財形に切り替えたい場合などが、一度解約して、希望の財形に入り直すことになります。

商品によっては元本割れの可能性がある

財形貯蓄がどのような金融商品に積み立てられるのかは、会社が提携する金融機関によって異なります。勤務先が保険会社や証券会社と契約している場合、保険や投資信託などの商品は元本割れのリスクがあるため、財形に加入する際にチェックしておく必要があります。

住宅財形、財形貯蓄のメリット、デメリットについて話す夫婦のイメージ
(イラスト/いぢちひろゆき)

住宅財形は、住宅購入をするとき頭金を増やせるメリットがある

計画的に頭金を増やせるのが財形貯蓄のメリット

金利の低い金融商品に積み立てになる財形貯蓄の場合、利子等への非課税措置もあまりメリットとはいえません。住宅取得のための頭金を一般財形や住宅財形で貯めるのも、自分で銀行の口座に貯めていくのも大きな違いはありません。では、あえて財形貯蓄を選ぶメリットはあるのでしょうか。

財形貯蓄は「給与から自動的に引き落とされる天引き」のため、毎月一定額が積み立てられていきます。それだけだと、銀行などの積立式の預金と同じですが、財形貯蓄の場合は引き出しの際に勤務先を通す必要があるため、銀行の預金の解約よりも手続きが面倒。住宅の頭金にするはずだったお金を、「これくらいいいだろう」と引き出したりしにくい点は大きなメリットです。

頭金があれば、住宅ローン返済の負担が減らせる

選ぶ住宅ローンによっては、借りる人の返済能力などの審査が通れば、住宅購入やリフォームに必要な資金を全額借りることが可能です。しかし、借入額が多ければ多いほど、その後始まる住宅ローン返済の負担は大きくなります。住宅財形や一般財形で積み立てたお金を頭金にすれば、返済負担を軽くすることができます。

例えば、下の表は5000万円のマンションを購入する場合の例。頭金がない場合と、頭金550万円を入れて住宅ローン借入額を減らした場合では、頭金がある方が、毎月返済額は1万7384円少なく、頭金を含めた総支払額は約226万円少なくすることができます。

5000万円のマンションを購入する場合。住宅ローン返済額の例
頭金がない場合 頭金550万円を用意した場合
マンションの価格 5000万円 5000万円
頭金額 なし 550万円
住宅ローン借入額 5000万円 4450万円
毎月返済額 15万8037円 14万653円
総返済額 約6638万円 約5907万円
総支払利息 約1638万円 約1457万円
頭金を含めた総支払額 約6638万円 約6457万円
住宅ローンは金利1.7%、全期間固定金利型、返済期間35年、元利金等返済、ボーナス返済なしとする。総返済額と総支払利息は1000円以下を四捨五入。住宅ローンの金融機関やローン商品によって返済額が異なることがあります。表の金額はあくまでも目安としてください(表作成/SUUMO編集部)

住宅財形に限らず利用できる財形持家融資

財形貯蓄のメリットについて解説した箇所でも挙げたとおり、財形貯蓄をしている人は財形持家融資(財形住宅融資)を利用することができます。住宅ローンは借入先の違いで、公的ローンと民間ローンの大きく2つに分けられますが、財形住宅融資は公的ローン。金利は5年間固定金利、一般的な民間の住宅ローンよりも審査基準がゆるやかという特徴があります。財形住宅融資を利用するための主な条件は下のようになります。

  • 一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄のいずれかを1年以上続けている
  • 借入申込日前2年以内に財形貯蓄の預け入れを行っている
  • 借入申込日の残高が50万円以上ある
  • 融資額は貯蓄合計残高の10倍までで最高4000万円まで(住宅取得価額の90%まで)

低金利の住宅ローンが多い今、財形住宅融資の利用は要検討

公的ローンの代表格の財形住宅融資は、かつては民間の住宅ローンに比べて低金利で、融資限度額も大きいというメリットがありました。しかし、最近は民間の住宅ローンが充実。融資限度額が増えたり、金利も低金利が適用になったりするケースが多くあります。

例えば、2023年10月1日~12月31日申込分の財形住宅融資の金利は当初5年間は1.50%(住宅支援機構に申し込み、団体信用生命保険に加入する場合)。
みずほ銀行では5年間の固定金利選択型の基準金利は3.15%と高めですが、金利の引き下げが適用されれば1.30~1.60%(保証料前払い、店舗で手続きを行う場合)となります。

適用金利は、金融機関や住宅ローン商品、借りる人の条件によって異なりますから、必ず複数の住宅ローン商品を比較して選ぶようにしましょう。

住宅財形、財形貯蓄について話す夫婦のイメージ
(イラスト/いぢちひろゆき)

住宅財形はどんな人に向いている?やめた方がいい人は?

資産を増やすことより、計画的に貯めることを優先するならおすすめ

住宅財形をはじめとする財形貯蓄。低金利時代の今は、財形貯蓄をしたからといって大きく資産がふくらむことは期待できません。「将来、家を買うための頭金にする」「少しでも老後の資金を貯めておきたい」といった目的がはっきりしている人、かつ、「コツコツとローリスクで貯めていきたい」「貯金は苦手だから給与天引きがいい」という人に向いている制度です。リスクはあっても、大きく資産を増やしたい、という人は財形貯蓄以外の方法を検討するのがおすすめです。

まとめ

財形貯蓄制度には一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3種類がある

住宅財形(財形住宅貯蓄)は持ち家の取得やリフォームのための貯蓄が目的

財形貯蓄をしている場合、3種類のどの貯蓄でも財形住宅融資が利用できる

住宅財形は頭金を計画的に貯めたい人に向いている

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取材・文/田方みき イラスト/いぢちひろゆき
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