住宅ローンをいくら借りるかで、住宅の購入予算は左右される。この住宅ローンの借入額を決めるときにポイントになるのが返済比率(返済負担率)だ。返済比率(返済負担率)はどのくらいが適切なのか。いくらなら無理なく返せるのかを計算してみよう。
返済比率(返済負担率)とは、「年収に占める年間返済額の割合」のこと。住宅ローンの審査で金融機関がチェックするポイントの一つだ。返済比率(返済負担率)が基準を超えると返済負担が重くなり、返済が滞るリスクが高まるので、融資が受けられなかったり、借入額を減らされたりする。
返済比率(返済負担率)の計算式は「返済比率(返済負担率)(%)=年間返済額÷年収×100」となる。ここでいう年収は、会社員なら社会保険料や所得税などを差し引く前の「税込み年収」だ。また年間返済額には住宅ローンの毎月返済額やボーナス時返済額だけでなく、住宅ローン以外の借り入れがあればその返済額も含めるので注意したい。
「クレジットカードでリボ払いを利用していたり、携帯電話の端末代金の分割払いをしていたりすると、その分も返済額に加算されます。きちんと返済しているかもチェックの対象です」と話してくれたのは、ファイナンシャルプランナーの久谷真理子さんだ。
また、2025年2月現在は変動型などで借りると金利が1%未満の場合が多い超低金利なのだが、そのままの金利で審査されるとは限らないという。
「各金融機関では、審査のための金利を設けているケースが一般的です。返済の途中で金利が上がったときに返済が滞らないように、金融機関がリスクヘッジしているのです」(久谷さん)
返済比率(返済負担率)を計算するときの金利が実際の適用金利か、審査金利かによって、同じ年収でも借りられる額が変わってくる。例えば年収500万円(税込み)の人が返済期間35年で借りる場合に、年収負担率35%で計算した借りられる額が後述のシミュレーションの表だ。適用金利を年0.5%(変動金利)で計算すると約5620万円まで借りられると出るが、仮に審査金利が年3.0%だとすると3790万円となり、その差は約1830万円となった。
この、返済比率(返済負担率)は金融機関や住宅ローンの種類によって異なるが、おおむね30~35%程度となっている。例えば【フラット35】はどの金融機関でも一律で以下のとおりだ。
年収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
---|---|---|
基準 | 30%以下 | 35%以下 |
例えば年収400万円の場合は返済比率(返済負担率)35%以下が基準となる。ということは、「400万円×35%」=140万円が年間返済額の上限だ。これを12カ月で割ると「140万円÷12カ月」=約11万6666円が毎月返済額の上限ということになる。
民間住宅ローンの返済比率(返済負担率)は金融機関によりさまざまだが、例えば以下のように細分化されているケースが多い。
年収 | 100万円以上 300万円未満 |
300万円以上 450万円未満 |
450万円以上 600万円未満 |
600万円以上 |
---|---|---|---|---|
基準 | 20%以下 | 30%以下 | 35%以下 | 40%以下 |
この場合、年収400万円だと返済比率(返済負担率)30%以下が基準となり、【フラット35】よりも厳しくなる。だが、年収600万円以上の人は返済比率(返済負担率)の基準が40%以下なので、【フラット35】よりも基準が緩い。
返済比率を下げるには、以下の3つの方法があります。
返済比率を下げるには、自己資金の投入額を増やす方法があります。前述したとおり、返済比率(返済負担率)(%)=年間返済額÷年収×100」となるため、頭金を増やすと必然的に年間返済額が減ることになり、返済比率も下がります。返済比率を下げたいのであれば、住宅購入後の生活費や緊急時の備えなども考慮に入れながら、自己資金をためた上で融資を受けることをおすすめします。
返済期間を長期に設定することも、返済比率を低く抑えるための方法の1つです。返済期間を長くすることで、その分割賦額が減少。月々の返済負担が軽減され、結果的に返済比率を引き下げられるのです。ただし、融資期間には上限が設定されている場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
年間返済額を減らせば、返済比率も下がることは、「頭金を増やす」でも記述しましたが、年間返済額は、住宅ローン以外に車のローンやクレジットカードのリボ払いなど、他の借り入れも合算されます。つまり、他の借り入れを減らせば、返済比率も減ることになります。
適用金利(固定金利と変動金利)と審査金利で年収別に借入可能額を、シミュレーションしていきます(2025年2月現在)。
年収(税込) | 年収負担率 | 年間返済額(上限) | 金利 | 借入可能額(上限) |
---|---|---|---|---|
500万円 | 35% | 175万円 | 年0.500%(変動) 年1.900%(固定) |
約5620万円 約4470万円 |
年3.0% | 約3790万円 |
年収(税込) | 年収負担率 | 年間返済額(上限) | 金利 | 借入可能額(上限) |
---|---|---|---|---|
600万円 | 35% | 210万円 | 年0.500%(変動) 年1.900%(固定) |
約6740万円 約5360万円 |
年3.0% | 約4540万円 |
年収600万円(税込み)の人について同じく年収負担率35%で計算すると、借入可能額の上限は適用金利(変動)である年0.5%で計算すると約6740万円だが、審査金利である年3.0%では約4540万円となり、2000万円を超える差となる。
年収(税込) | 年収負担率 | 年間返済額(上限) | 金利 | 借入可能額(上限) |
---|---|---|---|---|
700万円 | 40% | 280万円 | 年0.500%(変動) 年1.900%(固定) |
約8000万円 約7140万円 |
年3.0% | 約6050万円 |
年収700万円(税込み)の場合はどうか。年収が高いと年収負担率の基準も高くなるので、年収負担率40%で計算してみよう。すると適用金利(変動)で計算した借入可能額は貸付上限の約8000万円、審査金利では約6050万円となり、その差は2000万円近くとなる。
年収(税込) | 年収負担率 | 年間返済額(上限) | 金利 | 借入可能額(上限) |
---|---|---|---|---|
800万円 | 40% | 320万円 | 年0.500%(変動) 年1.900%(固定) |
約8000万円 約8000万円 |
年3.0% | 約6930万円 |
さらに年収800万円の場合で計算すると、年収負担率40%とした場合の借入可能額は適用金利(変動)では、こちらも貸付上限の約8000万円、審査金利では約6930万円となる。その差は1000万円ほどになる。
返済比率(返済負担率)の基準や計算で使われる金利が金融機関で異なるのであれば、なるべく基準の緩い金融機関で借りればたくさん借りられて、予算を増やすことができるだろう。だが、銀行が「貸してくれる額」と、借りた人が「無理なく返せる額」はイコールではない。
では返せる額はどのように求めればよいのか。
「生活費や教育費などの支出は人によって違うので、いくらなら大丈夫とは一概には言えません。また所得が増えると税金などの負担が増えるため、年収が多少増えても手取りはなかなか増えないものです。住宅ローンをいくら返せるかの目安は、これまで支払ってきた家賃などの住居費や貯蓄額から、今後必要となる貯蓄や住宅の管理費などのランニングコストを差し引くことで計算できます。さらに先々の収入や教育費の変化なども考慮することが望ましいでしょう」(久谷さん)
例えば今支払っている家賃が12万円で住宅購入用などに月々5万円を貯蓄していたとしよう。購入後のマンション管理費などのランニングコストが月額3万円、今後の教育費などに必要と考えられる貯蓄が同5万円とすると、「毎月返せる額」は以下のようになる。
今の家賃12万円 + 今の貯蓄5万円 - 今後のランニングコスト3万円 - 今後必要な貯蓄5万円 =毎月返せる額9万円
月々9万円の返済でいくら借りられるかというと、例えば金利を年1.89%(2025年2月の【フラット35】の金利の一例)、返済期間35年で計算すると約2760万円だ。
将来のことも見通して資金計画を立てるには、収入の変化や子どもの進学といったイベントを組み込んだライフプラン表を作成するのが理想的だ。とはいえ、自分でつくるのは骨が折れるので、ファイナンシャルプランナーなどに相談するのが現実的だろう。あるいは住宅金融支援機構のホームページにライフプラン表がつくれるシミュレーターがあるので、そちらを利用してもよさそうだ。
住宅ローンが超低金利で借りやすい状態になっているが、だからといって実力以上に借りるとあとで返済が苦しくなってしまいかねない。将来も考慮した資金計画を立てるようにしたいものだ。
この記事は、2025年2月現在の情報です
返済比率が基準を超えると返済負担が重くなり、返済が滞るリスクが高まる
返済比率を計算するときの金利が実際の適用金利か、審査金利かによって、同じ年収でも借りられる額が変わってくる
返済比率(返済負担率)を下げるには「頭金を増やす」「返済期間を延ばす」「他の借り入れを減らす」なども方法がある
収入の変化や子どもの進学といったイベントを組み込んだライフプラン表から、「返せる額の目安」を作成しよう