家を買うとき一度だけかかる不動産取得税。軽減を受けると税額が大幅に減るので、忘れずに手続きしよう。
不動産取得税とは、土地や建物を買ったときにかかる税金のこと。新居に入居してしばらくすると、自治体から納税通知書が送られてくる。地方税であり、納税先は都道府県だ。具体的には都道府県の税事務所で納税の手続きをする。
不動産取得税の税額は、「課税標準額×税率」で計算される。課税標準額とは法律上、その不動産の価格のこと。とはいえ、実務では実際に売買したときの時価ではなく、原則として固定資産税評価額(以下、評価額)と呼ばれる公的な価格が使われる。この評価額は時価よりも低いのが通常で、土地の場合は時価の7割程度、建物の場合は5~6割程度が目安とされている。
税率は原則4%だが、土地と住宅については2024年3月31日の取得までは3%に引き下げられている。この引き下げには特に要件はなく、土地か住宅であればOKだ。また宅地や宅地と同じ扱いを受ける土地に限っては同じく2024年3月31日まで、評価額の2分の1が課税標準額となっている。
住宅を購入する場合、住宅が一定の要件を満たせば軽減措置が受けられる。まず建物については評価額から一定額が控除される。控除額は住宅が新築された日に応じて下記のように決められており、1997年4月1日以降に建てられた住宅であれば1200万円が控除される。
新築日 | 控除額※ |
---|---|
1997年4月1日以降 | 1200万円 |
1989年4月1日~1997年3月31日 | 1000万円 |
1985年7月1日~1989年3月31日 | 450万円 |
1981年7月1日~1985年6月30日 | 420万円 |
1976年1月1日~1981年6月30日 | 350万円 |
1973年1月1日~1975年12月31日 | 230万円 |
1964年1月1日~1972年12月31日 | 150万円 |
1954年7月1日~1963年12月31日 | 100万円 |
この軽減措置を受けるためには、建物が以下の要件を満たす必要がある。
なお、上記の床面積はマンションの場合、専有面積に共用部分を持ち分に応じて按分した面積が加算される。また、長期優良住宅に認定された新築住宅の場合、控除額が100万円上乗せされて1300万円(※2024年3月31日まで)になる。
一方、住宅用の土地については、上記の要件を満たす住宅が建っている場合に、以下のいずれか多い額が不動産取得税の税額から控除される。
(1)4万5000円
(2)土地1m2当たりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(200m2が限度)×税率(3%)
では実際に、不動産取得税はいくらかかるのか。4000万円の新築一戸建てを買ったケース(土地と建物は同一の者が同一のタイミングで購入している場合)で軽減前と軽減後を比べてみよう。土地・建物の面積と評価額は以下のとおりとする。
まず軽減前の税額は、土地の評価額を2分の1にしたものと建物評価額に税率(3%)をかける。
軽減後について、土地分は下記のうち多い金額を上記の税額から控除できる。
(1)と(2)とでは(2)のほうが金額が多いので、これを軽減前の土地の税額から控除すると、
となり、控除額のほうが税額より大きいので税額はゼロとなる。
一方、軽減後の建物分は新築なので評価額から1200万円が控除され、
が税額となる。
結局のところ、土地と建物を合わせた税額は軽減前の53万2500円から1万5000円に大幅に軽くなる計算だ。
※東京都では、(2)の計算式に「住宅の取得持分」をかけて控除額を計算する。都道府県により計算式が異なる場合があるため、管轄の税務担当部署に確認するとよいだろう。
不動産取得税の軽減措置を受けるためのポイントは、申告が必要ということだ。新居に入居して数カ月すると納税通知書が送られてくるが、申告していないと軽減前の税額が記載されているので、多額の税金を払うことになりかねない。
どこに申告するのかというと、冒頭で述べた都道府県の税事務所だ。しかも申告期限が条例で定められており、原則として期限内に手続きしなければ軽減が受けられない。
とはいえ新居に入居したばかりの時期はなにかと忙しいので、手続きを忘れてしまう人もいるだろう。そもそも手続きが必要であることを知らない人も少なくないはずだ。試算でも分かるように、不動産取得税は軽減を受けるか受けないかで大きく負担に差が出るので、軽減が受けられないのはあまりにも痛い。
では手続きを忘れて軽減前の税額の納税通知が送られてきたらどうすればいいかというと、すぐに税事務所に問い合わせよう。申告期限が過ぎていても、納税通知書を受け取ってから手続きすれば軽減が受けられるのが一般的だからだ。
ただし期限後の手続きで軽減が受けられるとは100%は言い切れないのも事実。やはり家を買ったら自治体のホームページなどで期限を確認し、忘れずに手続きするのが一番だ。