頭金なしで住宅ローンを組むメリット・デメリットは?後悔しないポイントや年齢別の注意点も解説

最終更新日 2024年03月29日
頭金なしで住宅ローンを組むメリット・デメリットは?後悔しないポイントや年齢別の注意点も解説

近年の低金利を受け、頭金なしで住宅ローンを組むフルローンを選ぶ人も増えてきました。しかし頭金なしで家を買うことに不安を感じる人も多いのではないでしょうか? そこで今回は、頭金なしで住宅ローンを組むメリット・デメリットや後悔しないポイント、年齢別の注意点、フルローンを避ける方法などを、ライフヴェーラの代表でファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんに伺い解説します。

頭金なしで住宅ローンは組める?

そもそも頭金とはどのようなお金なのか、住宅ローンは頭金なしで組めるのかを、鈴木さんに伺いました。

頭金とは?

「頭金とは、住宅価格から住宅ローンの借入額を引いた金額のことです」(鈴木さん/以下同)

例えば3000万円を住宅ローンで借り入れて3500万円の住宅を購入する場合、500万円が頭金となります。なお、住宅購入に際しては別途諸費用も必要です。

頭金の平均や頭金ゼロの割合は?

リクルートの「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、新築マンション購入時の自己資金(頭金)比率の平均は22.1%、新築一戸建てでは13.7%です。一方自己資金ゼロも、新築マンションで14.4%、新築一戸建てで25.6%いることがわかります。

頭金ゼロで住宅を購入する人の割合は、新築マンションでは14.4%、新築一戸建てでは25.6%
頭金ゼロで新築マンションや新築一戸建てを購入する人は意外と多い(イラスト/つぼいひろき)

頭金なしで住宅ローンは組めるが、基本的にはおすすめしない

「頭金なしで住宅ローンを組むこと自体は可能です。とくに近年は低金利が続いているため、頭金なしで住宅ローンを組む方が増えているように思います。

家を購入する方にはさまざまな背景があるので、頭金なしでも問題なく返済していける方もなかにはいます。ですので、頭金なしでの住宅ローンに絶対反対というわけではありません。しかしデメリットを考えると、基本的にはおすすめできません」

頭金なしで住宅ローンを組むメリットは?

頭金なしで住宅ローンを組むことには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

頭金が貯まるまで待たなくていい

「頭金なしで住宅ローンを組むと、より早い時期に住宅を購入できることはメリットです。基本的に住宅ローンは、定年のタイミングで完済できているのが理想です。しかし頭金が貯まるまで待つと、返済完了が70歳、75歳と高齢になりがちですし、かといって借入期間を短くすれば月々の返済負担が重くなります。

対して、例えば頭金がなくても30歳で家の購入に踏み切れば、35年ローンであっても65歳で完済できるのは安心です」

理想の家を買い逃さずにすむ

「住宅との出会いは『一期一会』と言われます。気に入った物件が見つかったときに『頭金がないから』『頭金が貯まってから』と躊躇していると、その物件を買い逃し、さらに今後同様の物件と出会えるかはわかりません。理想の家を買い逃さずにすむことも、頭金なしで家を買うメリットの一つです」

手元に資金を残せる

「頭金を入れなければ、手元に資金を残せるのもメリットです。例えばこれから子どもの教育にお金がかかるときに、すべての資金を頭金に入れてしまえば教育資金が不足してしまいかねません。そのようなケースでは、頭金なしで住宅ローンを借り入れて、資金はそのまま手元に残すのも選択肢の一つです」

教育費のイメージ
これから教育資金がかかる場合は、頭金に費やすよりも手元に資金を残しておきたい(画像/PIXTA)

住宅ローン控除を最大限利用できる可能性がある

「住宅ローンで家を購入した人は、年末の住宅ローン残高(限度額最高5000万円(2025年入居の場合)・住宅の種類による)の0.7%を所得税から控除できる『住宅ローン控除』を利用できます(※)。頭金を入れなければ借入額はそれだけ大きくなるので、住宅ローン控除を最大限利用できる可能性があります」
(※)所得税から控除しきれない場合、翌年の住民税からも一部控除

頭金なしで住宅ローンを組むデメリットは?

頭金なしで住宅ローンを組むデメリットも確認しましょう。

金利が高くなる可能性がある

「頭金なしで住宅ローンを組むと、金利が高くなる可能性があります。住宅ローンの金利は、融資率が高くなると上がるケースがあるからです。融資率とは、物件価格に対する融資の割合を指します。金融機関では、融資率9割を超えると金利を高くするケースがあるため、頭金ゼロだと金利が高くなる可能性があるのです」

借入総額や月々の返済額が高くなる

「金利が高くなれば、それだけ返済総額が増え、さらに月々の返済負担も重くなってしまいます。借りたときには『ギリギリなんとかなる』と思っていても、状況が変わることで返済不能に陥るリスクは高くなってしまうでしょう」

なお、万一実際に返済不能となり住宅ローンの返済が滞ってしまった場合、任意売却(住宅ローンが残ったまま金融機関の同意を得て売却する方法)や競売(裁判所により強制的に売却されること)などで手放さなければならなくなる可能性があります。

住宅と増えるグラフ
住宅ローンの金利が上がると月々の返済額の負担も増え滞納や返済不能のリスクも高まる(画像/PIXTA)

住宅ローンの審査が厳しくなる

「住宅ローンを借りるときには、金融機関の審査があります。審査では担保とする物件の価値とあわせ返済能力の有無が厳しくチェックされるのが一般的です。とくに頭金なしのフルローンとなると年収に対する負担率を含めかなり厳しく審査される傾向があります」

担保割れする可能性が高くなる

「頭金を入れないと住宅ローンの借入額が大きくなるため、いざ売却しようとなったときに『担保割れ』する可能性が高くなります。担保割れとは、住宅ローンの残債が売却額を上回る、いわゆる『オーバーローン』の状態を指します。

住宅を売却するときには住宅ローンを一括返済しなければなりません。返済が厳しくて売却したいと思っても、住宅ローンの借入額が大きければ担保割れして売るに売れない可能性があるのです」

【年齢別】頭金なしで住宅ローンを組むときの注意点は?

頭金なしで住宅ローンを組むときには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか? 年齢別の注意点を、鈴木さんに伺いました。

35歳:ライフプランを綿密にシミュレーションする

「35歳は、これからのライフプランを読みにくい年代です。だからこそ、今後のライフプランを慎重にシミュレーションする必要があります。今後結婚の予定はあるのか、家族の人数は増えるのか、転職する可能性はあるのか、共働きを続けられるのかなど、よく検討しましょう。その際、なぜこれまで貯金できなかったのかを振り返ることが重要です。そのうえで、頭金なしでも65歳までに完済できる金額で住宅ローンを組むのが理想です」

ライフプランのイメージ
35歳で頭金なしで住宅ローンを組むなら今後のライフプランを慎重に検討しよう(画像/PIXTA)

45歳:定年もしくは65歳前に完済できるプランを立てる

「45歳は、お子さまがいる場合はこれから本格的に教育費が必要になる年齢です。またキャリアシフトする人が多い年代でもあります。今後の働き方についてよく検討したうえで、教育費を捻出し、さらに老後資金も貯蓄しながら返済できる金額で、フルローンの借入額を設定しましょう。

その際、65歳までに返済しようと短いローンを組むと月々の返済負担が重くなってしまいます。そのため借入期間は長くし、子どもが成長したあとの繰り上げ返済などを計算に入れたうえでプランニングするとよいでしょう」

50歳以上:減収リスクを踏まえて借入額を検討する

「50歳を超えると、今後のキャリアプランを考えたうえで資金計画を立てる必要があります。転職もそうですが、早期退職や起業などを考える人もいるでしょう。その際の『減収リスク』を踏まえ、無理なく返せる金額に抑えるのが無難です。

なお、金融機関によっては完済年齢上限を85歳とするところもあります。しかしどんなに遅くても、75歳までに返済できるプランを立てていただきたいです。一般的には加齢にしたがい生活習慣病・がんなどの病気のリスクやケガの発生リスクが高まります。入院が長引き収入が減ったり得られなくなったりすると返済継続が苦しくなる可能性があることは、考慮しておきましょう」

頭金なしの住宅ローンで後悔しないためのポイントは?

頭金なしで住宅ローンを組むときに、後悔しないためにできることはあるのでしょうか?

年収に対して無理のない返済額・購入予算を把握する

「頭金ゼロで住宅ローンを組む場合、年収に対して無理のない返済額や購入予算を把握することがもっとも大切だと思います。一般的に無理のない返済額は『手取り年収の25%』と言われています」

手取り年収から算出した無理のない月々の返済額と、月々の返済額から算出した頭金なしでの融資限度額は以下のとおりです。(返済期間35年、ローン金利1.8%でシミュレーション)

額面年収 手取り年収 月々の返済額 借入可能額
300 240 5.0 1557
400 320 6.7 2086
500 400 8.3 2584
600 480 10.0 3114
700 560 11.7 3643
800 640 13.3 4142
900 720 15.0 4671
1000 800 16.7 5201
単位:万円

「頭金を入れられない理由が『預貯金がない』ことであるなら、あわせてその原因を振り返ることも重要です。現状全体の出費に対して住居費が占める割合が小さい場合は、月々の返済額は額面年収の25%よりも少なくするべきです。

なお、家を購入すると固定資産税や管理費、メンテナンス費などの負担も発生します。それら住居にかかる費用を含めたうえで、今の家賃を超えない返済額を設定しましょう」

悪い条件でもシミュレーションしておく

「頭金なしで住宅ローンを借り入れるときには、もっとも悪いと思われる条件でもシミュレーションしておくことが大切です。

返済額の目安は『手取り年収の25%』としますが、これはあくまで『年収がこれ以上減らない』ことが前提です。
例えば、子どもが大学や大学院に進学したとき、夫婦のいずれかが働けなくなり収入が減ったとき、あるいは再雇用されなかったときでも返済を続けられる額なのか。
変動金利で借り入れた場合には、金利がいくら上昇すると返済額はいくらになるのか。

今よりも条件が悪くなったときでも返し続けていけると試算できていれば、頭金なしでも安心して借り入れできるのではないでしょうか」

住宅ローンを返済できるか考える夫婦
さまざまな事態を想定し、返済を続けられるか考えよう(イラスト/つぼいひろき)

物件の予算を見直す

「頭金なしだとどうしても借入額や返済額が高くなり、負担が大きくなりがちです。シミュレーションした結果、負担が厳しいと感じる場合には、もう少し駅から離れた場所で土地を探す、設備のグレードを下げるなど、物件そのものの予算を下げることを検討してもよいと思います」

頭金を入れ、フルローンを避ける方法は?

頭金なしでフルローンを組むこと自体は可能とはいえ、頭金を入れられるのに越したことはありません。前述したように頭金がゼロだと金利の優遇率が下がったり、頭金ありの場合よりも毎月の返済額が高くなり家計が厳しくなるといったリスクは考えておくべきです。
では、頭金を用意するためには、どのようなことができるのでしょうか?

親や祖父母に贈与を相談する

「フルローンを避けたい場合、ご両親や祖父母(直系尊属に限ります)に贈与を相談してみるのも方法の一つです。住宅購入に際しては、一定額まで贈与税を非課税とする措置が取られています(※)。具体的には、省エネ住宅の場合には1000万円まで、それ以外の住宅に対しては500万円までなら贈与税が非課税となります」※2026年12月31日まで

家計の見直しと増収を図り頭金を貯める

「今すぐどうしても購入したい家があるわけではないのであれば、まずは1年だけでも家計の見直しと増収を図ってみるのがよいと思います。例えば月10万貯められるのであれば、1年後には120万円貯まります。

『たった120万円頭金に入れても』と思うかもしれません。1年分の賃貸の家賃などを考えると、早めに住宅を購入するほうがよいと考える方もいるでしょう。

しかし勢いで住宅を購入するのではなく、家計を見直すことから始めれば、計画性をもった住宅購入・返済計画を立てられるはずです。安心・安全な資金計画のもとマイホームを購入したいと思うのであれば、そういった努力は必要だと思います」

家計を見直す夫婦のイメージ
これまで預貯金できなかった理由を突き詰め家計を見直しておこう(画像/PIXTA)

今頭金なしで住宅ローンを組むのが最適なのかを考えよう

最後にあらためて鈴木さんに、頭金なしでの住宅ローンを検討している方に向けてアドバイスをいただきました。

「頭金なしでも、無理なく最後まで返済できるのであれば何の問題もありません。しかしこれまで預貯金してこなかった人が『理想の家と出会ったから』『一生に一度の買い物だから』と場当たり的に頭金なしで住宅ローンを組むのは危険です。

年齢も物価も上がっていくこれからの35年をしっかりイメージしたうえで、本当に今、頭金なしで住宅ローンを組むのが最適なのかを考えましょう」

まとめ

頭金なしの住宅ローンは、借入額と返済額が高くなるのがデメリット

頭金なしで借り入れた際、最悪のパターンでも返済できるかシミュレーションしておく

頭金がなぜ貯まらなかったのかを振り返り、家計を見直すことが重要

新築マンションを探す
中古一戸建てを探す
新築一戸建てを探す
土地を探す
賃貸物件を探す
中古マンションを探す
注文住宅の会社を探す
リフォーム会社を探す
売却査定する
カウンターで相談する
ハウスメーカーを探す
工務店を探す
引越し見積もりをする
取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/つぼいひろき
関連する最新記事を見る
住みたいエリアや購入価格からマンション・一戸建てを探そう!
住まいの種類
住みたいエリア
  • エリア
  • 都道府県
  • 市区郡
購入価格

お役立ち講座・個別相談のご案内無料

住まい選びで「気になること」は、人それぞれ。スーモカウンターのアドバイザーは、新築マンション選びと会社選びをサポートします。講座や個別相談を通じて、よかった!と思える安心の住まい選びをお手伝いします。
カウンターアドバイザー

住み替えサポートサービス

ページトップへ戻る