シンプルかつ現代的で洗練された雰囲気を感じさせるインテリアデザイン「シンプルモダン」。スッキリとしていておしゃれなシンプルモダンの部屋は、SNSでも王道の人気を誇っています。でも、よく考えてみるとシンプルモダンってどんなスタイル? そこで、知っているようで知らないシンプルモダンのこと、部屋づくりのポイントをインテリアコーディネーターの住吉さやかさんが伝授。さらに、洗練されたホテルのお部屋を実例に、シンプルモダンインテリアをご紹介します。
シンプルモダンという言葉を耳にしたことがある人も、どんなテイストなのかを説明するのは難しいかもしれません。住吉さんによると、シンプルモダンのポイントは「色」「フォルム」「質感」とのこと。
「シンプルモダンなお部屋でまず思い出すのは、白やグレーといったモノトーンが中心の色数の少ないすっきりとした空間ではないでしょうか。家具やカーテンだけでなく、壁や床もグレイッシュにして全体の色数を抑えた空間が最近のトレンドです。また、『フォルム』も重要で、家具は直線的なものを選び、カーテンやラグなどの柄も曲線的なモチーフではなく幾何学柄が相性が良いです。ただし色やフォルムをそろえすぎると空間全体がのっぺりしてしまうので、マットな壁の一部をツヤのあるタイルにしたり、レザーのソファにファーのクッションを置いたりして、異なる『質感』の組み合わせで空間を演出すると、今っぽくおしゃれなシンプルモダンの部屋に仕上がります」(住吉さん、以下同)
ちなみに、すっきり感が重要なインテリアスタイルのため、部屋の中に置くものは最低限に留め、隠す収納を心掛けることが大切だとか。
ただし、シンプルさを意識するあまり殺風景になってしまい、おしゃれさに欠けてしまうのは避けたいところ。実際のところ、“モダン”さを感じさせるにはアクセントになる要素が必要で、それがないとただ“シンプル”なだけの空間になってしまうと住吉さんは指摘します。
「よくやってしまいがちなのが、ごちゃごちゃしたくないからといって壁と同じ色のホワイトやアイボリーの無地カーテンをつけてしまうこと。これだと、のっぺりしてしまい、モダンの要素がない空間になってしまいます。カーテンは部屋の中でも面積を大きく取る部分なので、モダンな印象をもたらす上で重要なアイテム。グレー系の色や幾何学柄のカーテンを選ぶなどして、アクセントを加えてみていただきたいです。また、カーテンだけではなく、壁に現代アートの絵画やポスターなどを飾るとよりセンスアップしますよ」
ということで、これだけは押さえておきたいシンプルモダンな部屋づくりのポイントは次の通り。
<POINT.1>
壁紙や床材などは全体的に白や黒、グレーなどのニュートラルカラーでまとめる。
<POINT.2>
空間に置く物も、色数も極力減らす。ただし単調にならないように質感に変化をつける。
<POINT.3>
家具のフォルムは曲線的ではなく、直線的なものを配置。
<POINT.4>
幾何学柄のカーテンラグ、クッションを選ぶ。現代アートも有効。
これらのセオリーを頭に入れながら、シンプルモダンのインテリアコーディネートにチャレンジしてみましょう。ちなみに、住吉さんが考えるシンプルモダンの魅力を聞いてみました。
シンプルモダンな部屋は生活感を感じさせません。そのため、家にいながら非日常感を味わえるところが魅力ではないでしょうか。また、セオリーが明確なので『おしゃれな部屋にしたいけどセンスに自信がない』という人でもトライしやすいスタイルです。コツさえつかめば、希望通りのお部屋づくりを叶えることができます」
シンプルモダンのポイントが理解できたところで、趣向が異なる2つのホテルから部屋づくりのお手本にしたいシンプルモダンの客室をご紹介します。
まずは、2019年4月、銀座にオープンして話題をさらった無印良品のホテル「MUJI HOTEL GINZA」。「アンチゴージャス、アンチチープ」をコンセプトに、無印良品らしいウッディ系のシンプルモダンなデザインがとってもおしゃれなホテルです。
MUJI HOTEL GINZAの中で一番大きな部屋。内装は木・石・土といった自然素材を中心にコーディネートしています。無垢(むく)材を使用したインテリアは、木の温もりを感じながらも直線的でシャープな印象。ソファやカーペットのグレーやネイビーといった色味がアクセントに。
こちらは一番多いタイプの客室。左右の壁の質感や色味が異なり、モダンなコントラストが演出されています。全体の色数は少ないが、壁に置かれた書籍の彩りある表紙が空間に表情を与える印象。
続いては、国内外から高評価のラグジュアリーホテルを展開する星野リゾート運営の「星のや東京」。江戸東京の文化が薫る日本旅館です。日本伝統の建築様式を基調とした客室は、都会的でスタイリッシュ。非日常を味わえる和テイストのシンプルモダンなインテリアが随所に配されています。
深い群青色の壁が目を惹く「菊」の客間。縦糸と縦糸の間隔が0.7cmと細かい畳は「目積表(めせきおもて)」と呼ばれる織り方でつくられており、市松模様に見せる「市松敷き」により光の反射にバリエーションが加わります。畳らしい風合いがありながらもシャープな見栄え。手前のソファの上にあるメタリックなクッションがモダンな華を醸し出します。
こちらは、「桜」の部屋。ベッド上の壁色は「梅紫色」と呼ばれる和カラーで、空間にメリハリを与えています。手前の座椅子「畳ソファ」は青森ヒバを1本1本曲げて背面と腕置きに配しているオリジナル家具。機能性を兼ね備えながら、無駄がないシンプルなデザインが素敵です。
曖昧なイメージで捉えられがちな「シンプルモダン」というインテリア用語。要素を抽出したことで、どんなポイントを押さえればシンプルモダンと言えるのか、理解いただけたのではないでしょうか? おしゃれなホテルのコーディネートを参考にしながら、ぜひ自分らしいシンプルモダンのお部屋づくりを叶えてくださいね。