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納戸やサービスルームと表記されたスペースを実際に見てみると、居室としても十分使えそうな広さがあり、窓がついていることもありますよね。しかし、納戸やサービスルームとほかの部屋では、具体的に何が違うのか疑問に思ったことはありませんか?
一見すると個室や大きな収納スペースのように見えますが、その定義はどうなっているのでしょうか。今回は、マンションリノベーションを手がけるリビタの「リノサポ」コンサルタント・山田さんに、納戸やサービスルームの使い方について詳しく伺いました。
納戸やサービスルームといった表示を見るのは主に間取図。その表示には共通のルールがあります。不動産広告や店頭で見る間取図で、洋室や和室といった「居室」にあたる表示がされていれば、見る人はそこを一つの部屋として利用できると解釈するでしょう。しかし実際はそのスペースが、居室として十分な快適性を備えていない場合、例えば天井が低い、通風や採光が不十分といった場合、その広告に裏切られたと感じるでしょう。そのため、不動産業界では「不動産の表示に関する公正競争規約」という広告表示に関する自主ルールを設けています。このルールで定める「居室」と表記できる基準を満たしていない場合、「納戸」や「サービスルーム」といった収納スペースとしての表記になります。
一方で、住んでいる人に取材をすると、購入した住戸の納戸に手を加えるなどして「納戸」や「サービスルーム」を収納目的だけでない使い方をしている人もいます。同じ「納戸」の表記でも広さや状態はさまざまで、利用する人のライフスタイルもさまざまだからです。この後紹介していく間取図の用語は、このような表示上のルールに加え、これまでに取材してきた実例から、どのような利用の可能性があるかを合わせて紹介していきます。
間取図で、洋室と同じくらいの広さがあるにもかかわらず「納戸」と表記されているのを見て、不思議に思ったことはありませんか?洋室と何が違うのか、疑問に感じる方も多いでしょう。ここでは、なぜ「納戸」と表記されるのか、そして「サービスルーム」との違いについてわかりやすく解説します。
納戸とは定められた窓面積がないため、居室として認められない部屋のことです。
マンションの間取図でたまに見かける「納戸」や「サービスルーム」という文字。一見ほかの部屋と同じように見えますが、実は建築基準法に定められた「居室(※)」には認められない部屋であり、トイレや洗面室、廊下などと同じ分類にわけられます。納戸とサービスルーム、言い方が異なりますが、同じ意味で利用されています。不動産業界では建築基準法上での分類を参考に、「不動産の表示に関する公正競争規約」という広告表示に関する自主ルールを定めており、間取図や不動産広告はそのルールにのっとった表記となっています。
※食事、就寝、作業、娯楽など、生活を営むために継続的に使用する部屋のこと。リビングやダイニング、キッチン、個室(洋室や和室と表記される)、書斎が居室になる
とはいえ、例えば下記の間取図では洋室が5.4畳なのに対し、サービスルームはそれより広い6畳です。洋室とどこが違うのでしょうか。

「居室として認められるには、採光や通風など一定の条件を満たすことが必要になります。そのため窓のない部屋は必然的に居室ではなくなります。また上記間取図のように窓があっても『S』などと表記されている場合は、定められた窓面積(部屋の面積に応じた面積が必要)がないため、居室と表記していないのだと考えられます」。
「納戸」や「サービスルーム」は、建築基準法が定める採光や換気などの基準を満たしていないスペースのことを指します。これらのほかにも、次のような呼び方や表記が使われることがあります。
| 表記 | 意味、由来など |
|---|---|
| N | 納戸 |
| S | サービスルーム(SRと表示されることもある) |
| F | フリールーム |
| DEN | デンと読み、隠れ家的な用途を持つスペース |
| M | マルチルーム |
| U | ユーティリティスペース |
| STO | ストレージ(Storage)の略で、倉庫、貯蔵庫などを意味する |
これらのスペースは建築基準法上「居室」としては認められておらず、「洋室」や「和室」とは異なる表記をされることが一般的です。
また、間取図ではLDK以外に3部屋あっても、居室に該当しない部分は「3LDK」の「3」には含めないため、「3LDK」とは表記されず、「2LDK+S(サービスルーム)」「2LDK+N(納戸)」や「2SLDK」のように分けて表記されます。
ここからは、「納戸」や「サービスルーム」と「洋室」や「物置」、「クローゼット」との違いを解説します。
「洋室」は、フローリングなど畳以外の床材が使われた居住用の部屋で、採光や換気などの基準を満たした西洋風の空間を指します。一方、「納戸」や「サービスルーム」もフローリングを使うことはありますが、これらの部屋は建築基準法で定められた採光や換気の基準を満たしておらず、「居室」とは認められません。
建築基準法では、居室を「居住、仕事、作業、集会、娯楽など、長時間使用される部屋」と定義しています。そのため、「納戸」や「サービスルーム」は天井が低かったり、電源コンセントが少なかったり、エアコンの設置が難しかったり、換気が十分でなかったりする場合があります。
「納戸」や「サービスルーム」は、主に屋内にあるスペースを指します。一方、「物置」は、住む人がその用途に対して呼ぶもので、古民家や注文住宅のプラン例で見かけることがありますが、分譲マンション・一戸建てや中古物件の間取図で見かけることはあまりありません。また、小屋のように屋外にあることもあります。
「納戸」「サービスルーム」「物置」はどれも居室として使える快適性はないという点では同様といえます。
「クローゼット(CL)」は、主に衣類や生活用品を収納するためのスペースで、棚やハンガーラックが備わっていることが多いです。収納スペースの広さはさまざまで、狭いものから人が歩ける広さの「ウォークインクローゼット(WIC)」もあります。さらに、通り抜けられるタイプは「ウォークスルークローゼット」と呼ばれます。
一方、「納戸」や「サービスルーム」は「クローゼット」として利用することもできます。
「納戸」や「サービスルーム」は、建築基準法で定められた採光や換気の基準を満たしていないため、居室とは認められていません。しかし、その特性を活かすことで多くのメリットが得られます。では、どのようなメリットがあり、それを活かした具体的な使い方があるのでしょうか?
「納戸」や「サービスルーム」は、建築基準法の採光や換気の基準を満たしていないスペースです。つまり、日差しや風があまり入らない場所といえます。リビングなどの日当たりのよい部屋に置かれた家具やインテリアは、太陽光に含まれる紫外線を浴びることで、色あせたり劣化したりすることがあります。これは、紫外線が家具の素材に含まれる化学成分に影響を与えるためです。一方で、窓がない「納戸」や「サービスルーム」は日差しが入らないため、家具が日焼けしにくいというメリットがあります。
日差しの影響を受けにくい「納戸」や「サービスルーム」は、さまざまな収納スペースとして活用できます。例えば、衣類や皮革製品など日差しに弱いアイテムを収納するクローゼットとして便利です。また、食品を整理するパントリーとしても活用できます。書籍が多い方は書庫としても活用でき、広さに余裕があれば机を置いて書斎スペースとして使用している人も、取材で見かけます。
さらに、ギターなどの大きな楽器や直射日光を避けたい物品の保管にも適しています。もし窓がある場合は、日焼け防止のために遮光カーテンの導入を検討するとよいでしょう。
「納戸」や「サービスルーム」にはメリットの一方、注意すべき点もあります。ここでは、それらの注意点や考慮すべき点、それに対する対策や解決策について解説します。
「納戸」や「サービスルーム」には窓がないか、あっても開けにくい小窓であることが多いため、換気が不十分になりがちです。そのため、湿気がこもりやすく、温度調整も難しくなります。
湿気や温度を管理するためには、サーキュレーターや除湿器を使用したり、エアコンを設置したりする方法が効果的です。ただし、エアコンを設置する際にはコンセントの位置や下地の補強、ドレンホースの配管など、準備が必要となるため注意してください。
「納戸」や「サービスルーム」は、テレビ端子や電話回線、コンセントが十分に設置されていないことがあります。収納スペースではありますが、ホコリが溜まりやすいので、掃除機を使う際にはコンセントが必要です。
また、収納するものによっては温度や湿度管理が必要な場合があります。エアコンを設置したりする場合には、事前にコンセントが設置されているか確認しておきましょう。リフォームで後からコンセントを設置することも可能ですが、場所や条件によっては費用が高くなったり、エアコンの設置が難しくなったりする場合もあるので注意が必要です。

そもそも納戸とは衣類や家具など普段使わないものをしまっておく部屋を指す言葉です。つまり納戸は大きな収納スペースなのです。暮らしているといつの間にか家中がものであふれてしまう、ということは多くの人が経験しているのではないでしょうか。そんな人に便利なのが大きな収納スペース=納戸なのです。
「実際、住まいを探している方のほとんどの人が、収納をどうしようかと悩まれます。そういった方には納戸やサービスルームは収納として活用しやすいスペースです。特に子どもが生まれると、想定以上にものがあふれ、普段から整理整頓好きな人でも整理しきれなくなりがちです。納戸やサービスルームがあればきっと重宝するでしょう」。
とはいえ、単に次から次へとものを入れていくだけでは、後から取り出す際に見つけられなかったり、取り出しにくくなったりしてしまいます。「棚を備えたとしても、よくあるのが棚の奥行きが深すぎてものが取り出しにくくなることです。そうなると奥のものを何年も使わず、あることすら忘れてしまった、なんてことにもなりかねません」。
そこで、部屋と入れるものの寸法を確認することがまず大切です。できればあらかじめ入れるもののサイズを測ったり調べたりして、それを入れておくための収納計画を立てると上手に活用できます。
まずは何を入れたいか確認して、そのサイズを測り、それに合わせて収納棚などの奥行きを決めます。同時に、取り出すために人が通れるスペースも確保しましょう。「ボリュームのある収納スペースだから何でも詰め込めますが、通路など取り出すことも考えて計画する必要があります」。


納戸のほかサービスルームや「DEN(隠れ家的なスペース)」「F(フリースペース)」「ワークスペース」とさまざまな呼び方がありますが、納戸はシーズンオフの衣類やお正月や節句、クリスマスツリーなど室礼の品を保管するだけではありません。よくある活用方法を紹介します。
シェルフや本棚などを置き、本の収納や書類の保管をするスペースとして使うという方法もあります。また、お住まいの方を取材すると、寝室にはスペースの余裕がなかったり、リビングには家族がいるなどの理由で、テレワークなどの作業スペースとして使用している方も見かけます。ただし、納戸は換気が悪くなりがちというデメリットもあります。換気や湿気対策に気を付けましょう。
子どもたちの遊びや大人の趣味の道具を保管するスペースとしての活用もオススメです。おもちゃがリビングに置きっぱなしになって片付かない、という悩みも解消できます。
さらにこだわるのであれば、ライフスタイルに合わせてリフォームするのも一つの方法です。単に納戸を使いやすくするために造作棚を備えるだけでも、十分活用しやすくなります。さらに間取りを変更すれば、納戸部分の床面積(上記間取図でいえば6畳分の面積)を有効に活用することができます。
リフォーム例として、納戸と玄関を一体化して広い玄関収納(シューズクローク)にするケースがあります。靴だけでなく、コートなどが収納できると外出がスムーズにできますし、ベビーカーやアウトドアや釣り、スポーツなどの趣味の道具などを収納することで居室スペースが機能的に使えます。
「上記間取図のように廊下側に納戸がある間取りの方で、納戸と玄関を一体化して広いフリースペースにされた方もいらっしゃいます。その際に、玄関部分とそのほかのスペースを家具で仕切ることで使い勝手と見た目にこだわられました。将来的に子ども部屋が必要になったら、改めて玄関と子ども用のスペースとして壁で仕切ってリフォームすることも想定されています」。
ほかにも例えばこんなリフォーム例があります。




納戸に収納するものによっては温度や湿度の調節が難しいと感じることもあるでしょう。快適に過ごすために、エアコンや除湿器の設置を検討したいもの。また、納戸によってはエアコンの配管に必要な筒状の器具「スリーブ」がついていない場合もあります。もしついていない場合はエアコン配管工事が必要ですが、壁に穴を開けることになるため、マンション管理組合の許可を取らなければなりません。
特にマンションで左右に隣戸のある中住戸は、窓を設けにくいため納戸やサービスルームが生じやすくなります。そのため先述のとおり、3LDKの間取りを十分につくれる広さがありながら、2LDK+Sと表記されてしまいます。しかし、上記のようにリフォームすることで本来の広さを十分に活かした空間に変えることができるのです。
「マンションをネットで探す場合、「3LDK以上」などの条件で探されている方が多いのですが、これだと上記の間取図のマンションは「2LDK+S」と表記されますから、検索に引っかからない場合も。広さは3LDKと同等ですからもったいないですよね。ですから最初からリフォーム前提で考えている人は間取り表記ではなく、希望するm2数で探してみるようにしましょう」
ちなみにSUUMOでは、2LDK+Sは2LDK、3LDK+Sは3LDKの検索結果に含まれています。
そもそも納戸やサービスルームは、洋服でいえば既製品の状態。それぞれの家族にぴったり合ったオーダーメイドではありません。自分たちが活用しやすいように棚を備えたり、場合によってはリフォームしたりすることで、はじめてその住戸は自分たちにぴったりな住まいになるのです。
上記のとおり、多くの人は「2LDK+S以上」より「3LDK以上」で検索しがちですが、その分「納戸」などがある住戸は購入希望者が減り探しやすいといえます。収納スペースがたくさんほしいという人にはぴったりですし、ライフスタイルに合わせて間取り変更する際も、m2数に応じた広さを確保できます。部屋数よりもm2数にこだわって探してみてはいかがでしょうか。