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一戸建てに比べると、面積が限られてしまいがちなマンションのキッチン。少ない収納スペースでも、効率よくスペースを活用すれば、使いやすく、お洒落な空間をキープすることも可能です。今回はマンションのキッチン収納を上手く活用する方法について整理収納アドバイザーの西口理恵子さんに教えていただきました。
2022年に首都圏で新築マンションを購入した人を対象とした調査※によると、
購入したマンションの平均専有面積は65.9m2。子どもがいる世帯の場合は71.9m2となっています。
このような平均的な広さの3LDKの間取りの場合、キッチンは対面式カウンターキッチンのものが多く、その場合、システムキッチンのサイズは幅2400mm程度が主流になります。
※出典:2022年首都圏新築マンション契約者動向調査(リクルート)

「最近の新築マンションのキッチンは2400mmを切るサイズのものも見かけるようになりました。吊戸棚のない、オープンタイプの対面キッチンが主流になっており、収納スペースはコンパクトになってきています。
一戸建てのキッチンの場合は2500mm~2700mm程度のものが多く、また、食品庫としてパントリーを設けている場合が多いので、一戸建てと比較すると、マンションのキッチンの方が収納量は少なくなっていることが多いと思います」(西口さん、以下同)

一戸建てに比べると、比較的コンパクトなサイズのことが多いマンションのキッチンですが、収納量については、多ければ多いほどいいとは限りません。
「収納スペースが広すぎる家の場合、片付けてみると賞味期限切れの食材が大量に出てくるケースがあります。
災害時などに家の中で生活するためにストックしておくべき食材は1週間分と言われています。冷蔵庫の中にも食材があることを考えると、1週間分の備蓄の量はそれほど多くありません。
大きなストックルームなどがあっても、それを有効活用できないのであれば、収納以外の住空間にスペースを活用した方がいいという考え方もあります」
“キッチンが狭い=片付かない”のではなく、必要な量をきちんとしまえる収納スペースが確保されているかどうかが肝心です。
「例えば、鍋やフライパンの平均の所有量は普段あまり使わないものも含め、日本人の場合12個と言われています。
しかし、最近の傾向としては、若い世代の鍋やフライパンの平均的な所有量は6~7個と以前よりも少なくなってきており、その分量であればコンロの下の引き出しに十分収まります。
マンションの収納はコンパクトでも使いやすく、十分に収納できる工夫が施されているものも多くなっています。
また、物を持ちすぎない、シンプルに暮らしたいという人も増えているので、パントリーのない、コンパクトなマンションのキッチンでも、3~4人家族の必要量は十分に収納可能です」


対面式のカウンターキッチンの場合、背面に食器棚を置くためのスペースが設けられていることがほとんどですが、コンパクトなキッチンでも、使いやすい食器棚を選べば、収納力を補うことが可能です。また、ここ数年で食器棚の収納力もアップしているといいます。
「幅2400mmのキッチンの場合、冷蔵庫やゴミ箱などを置くスペースを除くと、幅1400mm程度の食器棚を設置することになります。
上下に収納が分かれているセパレートタイプのものを選ぶ場合が多いと思いますが、幅1400mm程度のものであれば、食器棚の中に1家族分の食器やカトラリー類、食材ストックは十分に収納でき、ゴミ箱用の大きな引出し収納がついているものもあります。
また、天板部分には良く使う電子レンジなどのキッチン家電を置くことが可能ですが、最近はキッチンで使う家電も増えているため、炊飯器は天板の上ではなく、下段の方にスライドで引き出せるスペースを設けているものもあります。
さらに、以前はキッチンカウンターの高さに合わせて、上下セパレートタイプの食器棚のカウンターの高さは80~85cm程度のものが主流でしたが、最近では、その高さが15cm程高くなり、1段分引き出しが増え、収納力がアップしたタイプのものも多く見かけるようになりました」




開放感を重視する人には不向きですが、どうしても収納場所を増やしたいという場合はカウンターの上部に吊戸棚を設置するという方法もあります。
「幅2400mmを切るようなケースで、収納として使える場所が足りないという場合は、吊戸棚をつけるという選択肢もあるでしょう。
ただし、人の手が届く高さは身長の1.2倍程度までと言われていて、吊戸棚の上の方の段は普通に手を伸ばしても届かない位置になります。使いこなすには、取手付きのストッカーを使ったり、棚板の位置を低く調整するなど、工夫も必要です」

キッチンカウンター下の収納や背面の食器棚を合わせれば収納力は十分と言われても、物が多いキッチンは、どうしても散らかりがち…という人も多いのではないでしょうか。しかし、ものの適正量と定位置、この2つを決めさえすれば、必ず片付くと西口さんは話します。
「片付けでは適正量と定位置をきちんと決めることが重要です。この2つを決めれば、1日30分の作業で2週間あればキッチンの収納を整えることが可能です」
まず、適正量とはどのように決めるのかというと、
1. 必要な量
2. 持ちたい量
3. 入る量の3つを書き出す事からはじめるそうです。
「必要最低限の量、自分が持っていたい量、収納スペースに入る量の3つの数字を紙に書き出したら、3つの中から好きな数字を選んでください。
例えば、ティーカップが好きで沢山持っているという人のケースで、必要な数が4脚、持ちたい数は40脚、食器棚に入る数は16脚だったとします。その場合、どうしても40脚所有していたいのであれば、例え多くても、自分の適正量は40脚と決めれば良いと思います。
収納は自分自身が気持ちよく暮らすためのものなので、無理にものを減らす必要はないですし、後から増えたり減ったりしても構いません。
しかし、ここでポイントなのは、自分で量を決めること。適正量を40脚と決めることができれば、食器棚に入らない分をどこにしまうのか、例えば、ダイニングの壁面に棚を設けて収納するなど、ほかに収納する場所を決めることができます」
また、適正量を考える時には、同じ種類のものは全部出して数を確認することになりますが、無自覚に所有している大量のものが出てくるものです。家の中にあるものの内、半分以上が1年以上使っていないものだと言われているそうですが、キッチンも同様、普段使っている食器は、実は持っている内のほんの一部だったりします。
「使っていないものは洗いにくかったり、サイズが使いにくいものだったりと理由があるものです。使うか、使わないかというよりも、自分の理想の暮らしを考えて、自分にとって本当に必要なものだけを残すというのも、適正量を決める際の考え方のひとつです」
適正量は人によってさまざまです。まずは自分の適正量を決めることで、適正量分のものをどこに、どのように収納するかという、次のステップに進むことができます。

片付けとは元の位置に戻すことだと話す西口さん。つまり、位置が決まっていないことには、片付けることができません。
片付けをするにはものの定位置、つまり住所を決めることがまず必要で、その住所は細かく“番地”まで決めた方がいいと言います。
「収納量が限られた、コンパクトな空間のキッチンであれば、ものの定位置を決める際、区切ることが重要です。引き出しにしまうといっても、空間を区切らないことには、一つ一つのものに住所を与えることができません」
最近ではラックやファイルボックスなど、さまざまな収納グッズが販売されていますが、引き出しを区切る際には100円ショップなどで手に入るアイテムで良いそうです。ただし、区切る際は、収納する場所の、幅・奥行き・高さの3つをきちんと測ることが大前提。何となく入るだろうと感覚で買わないことも大事なポイントだそうです。
さらに、区切ることで、ものの“番地”を決めることができたら、“表札”となるラベルを付けることで、さらに収納が使いやすいものになります。
「自分しか使わないような所でも、ラベリングをした方が悩む時間などをぐんと減らすことができます。例えば、醤油・みりん・酒などの液体調味料類を区切ったボックスに並べて収納している場合、それぞれの場所にラベリングしておくだけで、料理の際に、毎回手に取る調味料を間違えるストレスがなくなります。ラベリングをするというちょっとした工夫をするだけで、各段に生活しやすくなると思います」

適正量は自分で決められても、定位置をどこにすれば使いやすいのか、自分でイメージするのは難しいかもしれません。そんな人は、実際に使いやすくものが収納されたマンションのキッチンを参考にしてみるのはいかがでしょうか?
今回は西口さんが実際にコーディネートしたマンションのキッチン収納の例をご紹介します。
※キッチンの画像はすべて「カシータ垂水駅前」モデルルーム(写真提供/HANA)

物の場所を決める際に大事なのは、使う場所に使うものをしまうというルール。
フライパンや鍋などはコンロの下の引き出しに、調味料なども調理スペースの近くに収納されていると使いやすくなり、効率よく家事がはかどります。



ボックスなどできちんと区切って種類ごとに収納するのはもちろん、すぐに使いやすい状態にしておくと、より効率的です。
「メラミンスポンジなどは買って来たら袋から出してしまっておきましょう。使う時にさっと取り出せて便利です」


使用頻度も収納を考える際には大事なポイントです。
「1週間に1回以上使うものは使用頻度が高いもの。月に1回以下のものは使用頻度が低いものです。目の高さから腰の高さまでが一番使いやすい位置になるので、特に使用頻度の高いものを置くようにしましょう」
使用頻度の低いものは、目の高さよりも高い吊戸棚などに収納することになりますが、頭よりも上の高さに、あまり重たいものを置くのは禁物です。
「安全面を考えると、使用頻度が低いものでも、重たいものを高い位置にしまうのはおすすめできません。吊戸棚の上の方にしまうのであれば、使用頻度の低いバーベキューの時などに使う紙皿や、誕生日やクリスマスなどの時しか使わない飾りなど、軽いものを収納するようにしましょう」
吊戸棚の場合、下から1段目あたりまでは手が届くけれど、2段目より上になると届きにくいなど、棚の位置や身長によっては使い勝手が悪くなることもあります。高い位置に収納する場合は、取っ手のついたストッカーなどを使用すると使いやすくなるそうです。
また、棚を仕切る棚板についても、購入時の高さのままで使用している人が多いそうですが、しまうものに合わせて、使いやすい高さに調整するのが正解。特に高い位置の棚などは、棚板を下げることで使いやすくなることもあります。


使用頻度が低く、重たいものはできるだけ足元の方に収納しましょう。
「足元に浅い引き出しがあれば、ホットプレートなど、大きくて使用頻度の低いものを入れておくのに重宝します」

一戸建てと比べてしまうと、少し狭いと感じてしまうこともあるマンションのキッチンですが、効率よく収納すれば、十分に片付く収納量を備えています。今回紹介した収納術も活用しながら、是非キッチンの収納を見直してみてはいかがでしょうか。
マンションで対面式キッチンの場合、幅2400mm程度が一般的
コンパクトなキッチンでも、背面の収納スペースも上手く活用すれば、十分な収納量を確保できる
効率よく収納するには、適正量と定位置を決めるのがポイント