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「日当たりが悪い」イコール「残念な部屋」と決めつけていませんか?日当たりが悪い部屋には、デメリットだけではなくメリットもあるのです。まずは、どんなことが日当たりに影響するのか、日当たりが悪い部屋のメリットとデメリットなどを検証。友安製作所のインテリアコーディネーター栗本真佐美さんに、日当たりが悪い部屋で快適に暮らす秘訣を教えてもらいました。
北向きの部屋であればある程度「日当たりが悪い」と予想できますが、それ以外の部屋でも「住んでみたら暗かった」ということはよくあるもの。ではどんなことが日当たりに影響するのでしょうか。
日当たりの悪さが気になったら、まずは窓の向きを正確に調べてみましょう。
「一般的に、南→東→西→北の順に採光性は低くなっていきます。ただ、どの方角でも窓があれば必ず光は入ります。窓が大きいほど、高い位置にあるほど採光性は高くなります。明るさの面では、窓の向きだけでなく大きさと位置が重要です」(インテリアコーディネーター 栗本真佐美さん 以下同)
南向きでも、少し東に向いているか、西に向いているかで、日差しの入り方は違ってきます。たとえば、東南東向きの部屋の場合は、午後を過ぎるとすぐに日が入らなくなります。朝ゆっくり起きる人にとっては、「南向きなのに日当たりが悪い」印象になりかねません。その窓からは、どんな季節に、どの時間に、どれくらいの日差しが入るのか?シミュレーションできる無料アプリなども使って確認してみましょう。

方角の次に重要なのが、周囲の建物との関係です。たとえ南向きでも、すぐ隣に建物が隣接していれば日当たりは期待できません。
「『周囲の建物との間に一定の距離を取らないといけない』と法律によって定められているので、どんな部屋でもある程度の採光性は確保されているはずです。しかし、それが実際にどの程度なのかは事前にチェックしておくべきでしょう」
民法によって定められているのは「建物を築造するには境界線から50cm以上の距離を保たなければならない」ということだけ。隣家との間が1mしかない場合もあります。自分の家の間取りを気にするだけでなく、隣の建物との間にどれくらいの距離があるか、また今は空地でも将来的にどんな建物が建つ可能性があるか、についても、不動産会社に確認するなどして調べておきましょう。
どんなに日当たりのいい部屋でも、部屋の奥に行くほど日差しは入りにくくなります。2部屋が連続しているような縦長の間取りでは、一番奥まで日差しが届くことはまずありません。南向きでも「日当たりが悪い」「暗い」と感じる可能性は十分にあるということ。実際に部屋の奥でどれだけの採光が得られるかについても、内見時などに確認しておきましょう。
たとえば南向きの窓の場合、冬は部屋の奥まで日差しが入りますが、夏には日差しが垂直に近い角度で入るため、室内は「日当たりが悪い」状態に。外が明るい分、室内は暗く感じられるもの。季節によって日射角度が違うこともおさえておきましょう。

日当たりが悪い部屋は、賃貸にしても分譲にしても家賃や価格が安くなる傾向がありますが、それだけ人気がないということ。しかし、紫外線による悪影響が問題視される昨今では、一概に「日当たりがいいほどいい」とは言い切れないかもしれません。固定観念を振り払って、日当たりが悪いことで得られるメリットにも目を向けてみましょう。
「日当たりが悪い部屋」という言葉からいい印象を受けることはないかもしれません。しかし、「直射日光が当たらない部屋」と考えると、メリットはたくさんあります。
(1)内装材や家具、コレクションの日焼けや色あせの心配がない
(2)肌への紫外線ダメージが少ない
(3)夏は涼しく、冷房費を節約できる
(4)明暗の差が小さいので目に負担が少ない
(5)窓外の景色が美しく見える
年々気温が上昇している中では、「夏涼しい」ことは大きなメリットになります。暑さが苦手な人にとっては特に大きな魅力になるはずです。
また、(5)については、たとえば北側の窓が公園などに接している場合、窓の外に見えるのは、南からの明るい日差しを浴びて輝く景色。美しい風景を楽しむには、北側の窓の方が有利なのです。北向きの部屋で眺望が得られる場合は、採光のためだけでなく景色を楽しむための窓をつくってみてはいかがでしょうか。
「『紫外線が入りにくい』のはかなりの強みです。日焼けを気にする人にとって大敵の紫外線は年々増加しているそう。紫外線を浴びると、肌や目だけでなく、畳やフローリングが日焼けして傷んだり、家具やコレクションが色褪せたりします。室内で図面を書く、写真を撮る、ベランダでバーベキュー(管理規約を要確認)をする、など、日当たりが良すぎると困るときもたくさんあります」

紫外線量への配慮が必要な日数が増えている
気象庁がつくば市で行う紫外線量の観測調査によると、1990年の観測開始以降、地表に到達する紫外線量は増加傾向にあります。また、紫外線が人体に与える影響が強いため、日中の外出を控えるなど人体への影響に特に配慮が必要とされる「UVインデックス8(※)」以上の日数も、10年あたり13日程度増加しています。

日当たりが悪いことで発生する具体的なデメリットには、以下のようなことが考えられます。
(1)日中でも暗く、照明が必要
(2)湿気が多く、カビが発生しやすい
(3)冬は寒く、暖房費がかさむ
(4)気持ちが暗くなる
ただし、どの部屋でもすべてが当てはまるとは限りません。断熱性に優れた最近の建物では、湿気や寒さの問題なく暮らせる可能性があります。その部屋では実際にどんなデメリットが発生するのか、しっかり確認しておきたいですね。

ライフスタイルや職業によっては、日当たりが悪い部屋の方が快適だったり便利だったりすることがあります。たとえば、「アトリエをつくるなら北向きで」と指定されるほど、画家にとっては「色が判断しやすい」「目が疲れない」「集中力が上がる」といった点で北向きの窓はメリットがあるのだとか。また、夜勤のある仕事に就いているひとなら、日中明るすぎる部屋よりは少し暗い部屋の方が熟睡しやすいはず。パソコン画面に日差しが反射して見えにくくなると困る人や、光量によって色の見え方が変わると困る職業の人にとっても、明るすぎる日差しはかえって迷惑なものです。
「トーンを落とした暗い部屋の方が、人は気持ちが落ち着くもの。部屋が明るければ明るいほどいい、というわけでもありません。もちろん、『明るさ至上主義』の人であれば、最初から日当たりのいい部屋を選んだ方がいいと思いますが、落ち着いた環境を好む人なら、日当たりの悪さはそれほどマイナス要因にならないはず。部屋をホテルライクやインダストリアルといったシックなスタイルでまとめて、落ち着いた雰囲気を楽しんでみてはいかがですか」

日当たりの悪い部屋には問題点もありますが、これらの問題さえ解決すれば快適に暮らせる可能性が十分あります。インテリアコーディネーターの栗本真佐美さんに、上手な対策方法を教えてもらいました。
「生活様式が変化し、在宅時間が長くなったことで、照明器具にこだわる人が増えています。おしゃれな照明器具は置くだけでインテリアのアクセントになりますし、種類やデザインもたくさん揃っています。また、照明器具はただ部屋を明るくするだけでなく、たとえば光を天井に当てたりして、光そのものの表情を楽しむこともできます。LED電球なら、たくさん使っても電気代は気になりません。積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか?」
「湿気の問題は、こまめに『換気』をすることで解決できます。日当たりよりも風通しが大切です。空気が流れるように、空気の入口と出口をつくってあげましょう。サーキュレーターや扇風機を利用すると効率よく風を通せます。24時間換気システムがあるなら、ずっと稼働させれば大丈夫です。最近では湿気をコントロールする内装材もたくさんあります。DIYも簡単なので、湿気が気になるならぜひ挑戦してみてください」

「明るくしたいなら、まずは壁を白にしましょう。白い壁紙を貼るだけで、光が反射して部屋が明るくなります。あとは、どんなイメージの部屋にしたいかを考えて、アクセントになる色を選びましょう。より明るく暖かいイメージにしたいなら、オレンジ色などの暖色をアクセントにプラスすればいいですよ」
木や綿や麻などの自然素材を使い、シンプルでナチュラルにまとめる北欧インテリアは、冬には日照時間が6時間ほどしかないような、いわゆる「日当たりの悪い」北欧の国々で生まれたスタイル。家の中に閉じ込められる時間が長く、明るい太陽や暖かい春を待ちわびる思いの強さが、そのようなインテリアを生み出したといわれています。北欧インテリアを参考に、自然素材と鮮やかな色を使って、部屋を明るく暖かなイメージに変えてみませんか?

「寒さは、窓から伝わる冷気の影響が大きいもの。窓辺の断熱性を高めることが一番の寒さ対策になります。断熱性の高い窓ガラスを使ったり、厚手のカーテンを床まで隙間なく垂らしたりするだけで、冷気の侵入をストップできます。おすすめなのがカーテンボックス。壁との隙間をなくし上部からの光漏れや空気の流出を抑えるので、厚手のカーテンと組み合わせれば断熱性や遮光性をぐんと高めることができますよ。日当たりが悪い部屋なら、冬以外は透け感のあるような薄手のおしゃれなカーテンが使えます。夏と冬とで違う表情を楽しんでみてはいかがですか?」



「日当たりが悪い部屋では、当然のことですが、日光が必要な観葉植物の生育には向きません。観葉植物を飾りたい場合は、購入時に『どの程度の日当たりが必要か』を確認し、こまめに日に当ててあげるなどのケアが必要です。グリーンを楽しみたいなら、自然のものにこだわらずフェイクグリーンを取り入れてみてはいかがでしょうか。最近はフェイクグリーンのレベルが上がっており、色も質感も本物そっくり。日当たりの心配も、水やりの手間もありません。自然のものであれば切り花がおすすめ。一輪だけでも、色のアクセントとみずみずしさをプラスすることができますよ」



「トーンを落とした暗い部屋の方が、気持ちが落ち着くものです。部屋が明るければ明るいほどいい、というものでもありません。もちろん、『明るさ至上主義』の人であれば、最初から日当たりのいい部屋を選んだ方がいいと思いますが、落ち着いた環境を好む人なら、日当たりの悪さはそれほどマイナス要因にならないはず。
暗い部屋を明るくするのもいいですが、思い切って『暗さ』を楽しんでみてはいかがでしょうか。部屋全体はトーンダウンして、ポイントごとにデスクライトやスタンドなどの照明で明るさをプラスすれば、シックでおしゃれな空間になります。ホテルライクやインダストリアルデザイン、ゴシック、ヴィンテージ、アンティーク、グレーインテリアなど、暗い方が合うスタイルもたくさんあります。明るさが欲しいときは外で日光を浴びて、家の中では少し暗めの空間で落ち着いて過ごす、という暮らし方をするのもいいと思いますよ」


日当たりが悪いからといって、快適な暮らしをあきらめる必要はありません。日当たりの悪さをカバーする方法や、暗さを楽しむ方法がいろいろあります。日当たりの悪さを嘆くよりも、色々な工夫を取り入れて、自分にとって落ち着く空間をつくりあげてみませんか?
日当たりが悪い原因は主に「方角、部屋のつくり、周辺環境、季節」の4つ
日当たりが悪い部屋には、デメリットだけではなくメリットもたくさんある
「紫外線が入りにくい」部屋は、住む人にも、建物や家具、持ち物にもやさしい
暗さや寒さはインテリアでカバーできる