シンプルで柔らかな雰囲気が魅力のナチュラルインテリア。マンションの空間に取り入れる場合、どのようなことに気をつけたらよいでしょうか。
インテリアコーディネーターの経験があり、一般社団法人国際カラープロフェッショナル協会の理事を務める、カラーリストのとおみねきよみさんに、おすすめのアイテムや取り入れるときのコツ、注意点などを伺いました。テイスト別の実例集は空間づくりのヒントにしてください。
はじめに、ナチュラルインテリアの特徴や魅力についてとおみねさんに解説してもらいましょう。
「ナチュラルインテリアとは自然の木の色を活かした木材をメインに使用したインテリアのこと。全体的にシンプルで明るい雰囲気が特徴です。木特有の穏やかでぬくもりある素材感に癒やされ、リラックスすることができます。
シンプルで飽きのこないデザインは性別や年齢を問わず好まれる傾向にあり、工夫次第でデザインに個性を加えることも可能です」(とおみねさん、以下同)
主に、天然木をはじめとする自然素材を使います。
・木材(白木、ナラ材など)
・籐
・麻
・木綿
・観葉植物 などが代表的な素材になります。
ナチュラルにインテリアをまとめるには配色のバランスも大事だそう。
「デザイン性の高い空間をつくるときの基本の配色比率は『ベースカラー70%:アソートカラー(※)25%:アクセントカラー5%』になります。ベースカラーとは床・壁・天井などの面積が一番大きい部分、アソートカラーとは家具・建具など2番目に面積の大きい部分を意味します。アクセントカラーはクッションや小物などの小面積の部分で、ほかの色に比べて、鮮やかで目立つ色を使用します」
※ベースカラーを引き立てる色のこと
「また、白を取り入れる場合、真っ白なピュアホワイトは人を緊張させる色なので、オフホワイトなどやや色みのある白のほうがよいでしょう。
ナチュラルインテリアでは、同系色相・同系トーンでまとめると、くつろぎや落ち着きが出ます。以下のような色の組み合わせがおすすめです」
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ナチュラルインテリアは、小物のテイストや色の組み合わせによっていくつかの種類に分類することができます。代表的な種類やそれぞれの空間づくりのポイントを紹介します。
「明るめの木材と優しいトーンの壁紙などを用いるシンプル系のレイアウトです。このシンプルナチュラルをベースに、別のテイストを組み合わせて調和させることができます。
白木やナラ材など淡い色の木製家具やコットン、リネンなどのファブリック類を使用します。全体的に穏やかで柔らかい印象の空間になりますが、直線的なデザインの家具を配置するとさらにまとまりがよくなります」
「日照時間が短く家の中で過ごす時間が長い北欧の地域では、明るく温かみのあるインテリアが好まれます。ファブリック類やスツールの座面などにアクセントカラーを取り入れたり、壁の一面にアクセントクロスを採用すると北欧風の明るい空間になります。ブルーグレー、ピスタチオカラー、植物柄などが人気の色柄です」
「ナチュラルな雰囲気にグレーや黒を取り入れて空間を引き締めると、モダンな空間になります。しかし、黒の面積が多くなってしまうとナチュラルな印象が弱まってしまうため、家具の脚や椅子の座面だけ黒色にするなど少ない面積に留めることがポイントです。
また、植物の緑をアクセントにするのもおすすめです。シャープな見た目のものより少し丸みのある柔らかな印象の植物を選ぶと、ナチュラルな雰囲気にマッチします」
「マンションではリビングの隣に和室が配置された間取りもあります。
リビングとのデザインの統一感を意識しつつ、和室にもナチュラルインテリアを取り入れてみましょう。家具を置くときは背の低いものでそろえることがコツです。障子がある場合は木製ブラインドなどに変えるとモダンな印象になります」
「ヴィンテージ要素を取り入れたい場合は、ベースカラーを引き立てるアソートカラーに少し暗めのトーンの色を使うのがポイント。
例えば、フローリングのトーンを少し暗めの色にして空間にコントラストをつける手法があります。黒を取り入れると空間が引き締まり、かっこいい印象になります」
「リビングは家族みんなが過ごす場所。やすらぎを与えるナチュラルインテリアと相性のよい空間といえます。リビングとダイニング、キッチンが一つの空間にあるLDKの場合は、使う色数を少なくして空間全体の統一感を意識しましょう。小物や調理器具、キッチン家電などの色やデザインがそろっていないと、まとまりがなく雑多な印象になってしまうので要注意です」
「玄関ホールは来客を迎える空間であり、家族が毎日出入りする場所です。安堵感を与え、外での緊張感をほぐすレイアウトにするとよいでしょう。空間のアクセントにお気に入りの絵画や花を飾るのもおすすめです」
「寝室にナチュラルインテリアを採用することで、リラックスして眠ることができます。空間に使う色数を少なくするとホテルのように整然とした雰囲気を演出できます。ファブリック類は、シンプルなデザインのリネンやコットン素材のものを選ぶとよいでしょう」
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「幼少期は鮮やかな色が子どもにとってよい刺激となるため、シンプルナチュラルを基本とし、カーテンや椅子の座面などに赤や青、緑などのアクセントカラーを取り入れることをおすすめします。中高生になってからは家具やファブリック類などを差し替え、落ち着いた色で統一すると勉強に集中できる空間になります」
「トイレや洗面所など水まわりにナチュラルインテリアを取り入れることもできます。水を扱う場所なので清潔感を保てるような配慮と、寒々しくならない優しく温かみのある色を使うことが大切です。棚や扉など、水が跳ねにくい場所に木を使うことをおすすめします」
「綿や麻などの張り地や、木製脚のソファはナチュラルインテリアになじむ人気の家具です。ヴィンテージテイストにするなら、明るめの色と柔らかい革で設えたソファがおすすめです」
ヴィンテージテイストを出すには、アイアンの脚を使うのもよいでしょう。明るめの色と柔らかい革のソファとマッチします。
「部屋に圧迫感を与えない木製のローテーブルもナチュラルインテリアのリビングにぴったりのアイテムです。床も木材の場合はラグを敷いたり、床と風合いの異なるテーブルにすることで空間デザインに起伏を付けることができます」
「ラグを敷くときは天然素材のものを選ぶとよいでしょう。夏はコットンやリネン、冬はウールと使い分けると心地よく過ごすことができ、季節によって空間に変化を与えることができます。天然素材のラグの中には家庭で洗濯できないものもあるので購入時に確認しましょう」
「ガラス製などの、デザイン性が高くシンプルなペンダントライトや木製のスタンドライトを使うとよりナチュラルな空間になります。調光機能のあるダウンライトと併用すると、時間帯によって明るさや色みを調整できるので便利です」
「カーテンの色は、ベージュやグリーン、生成りなどアースカラーの中から選ぶとよいでしょう。壁紙やラグの色と調和する色を選び、カーテンスタイルはフラットな仕上げにするのもポイントです。カーテンを使わず目隠しを設けたい場合は木製ブラインドもおすすめです」
「植物はナチュラルインテリアを構成する重要なアイテムです。葉が丸いものやツル性のものなど、見た目がかわいらしい観葉植物のほうがナチュラルインテリアに合っています。籐やかごの鉢カバーなどを付けておしゃれに演出することもできます」
「マンションの部屋は一戸建て住宅と比較すると間取りがコンパクトな場合が多いため、開放感や明るさを意識した空間づくりがポイントです。背の高い家具を置くと圧迫感があるため、少し背の低い家具を配置し、自然の光をふんだんに取り込みましょう。また、天井に近い部分に黒やダークトーンの色を使用すると空間を狭く感じる作用があるので気をつけてください」
「空間全体のテイストをそろえることは大切ですが、そろえすぎると単調な空間になってしまうおそれがあります。使用する木の色みに変化を付けたり、同じ木でも木目の風合いが異なるものを選んだりすると、変化のあるおしゃれな空間になります」
マンションでは床材を自由に選べないケースがほとんどです。設置する木材家具の色みに少し変化をつけるだけでも、空間にメリハリが生まれます。
「マンションの限られた空間の中に高級感をプラスしたいときは無垢材がおすすめです。ぜひ家具などに取り入れてみましょう。集成材でも木の風合いを楽しむことはできますが、天然木のみで構成された無垢材は質感や見た目、香りがよく、木の魅力をダイレクトに感じることができます」
大規模なリフォームを行う際、床を無垢材に変更するという選択肢もあります。
「自然光の柔らかい光を取り入れて明るい空間にしましょう。マンションでは窓の位置や大きさがあらかじめ決まっており、リフォームで追加・変更することは難しいと思います。外からの光をなるべく遮らないような家具の配置や、カーテンスタイルを意識しましょう。照明器具を使って空間を明るく保つ方法もあります」
木や自然素材をふんだんに使ったナチュラルインテリア。マンションの空間に上手に取り入れ、心地よい住まいにしたいですね。
「ナチュラルインテリアの空間をつくるときは、まずどんなテイストの空間にしたいかを考えてください。落ち着いたモダンな空間にしたいのか、ヴィンテージ風のかっこいい空間にしたいのかによって、使う色やそろえる家具や小物類は変わってきます。性別や年齢を問わず誰にでも好まれるのがナチュラルインテリアのよいところです。住む人の好みを取り入れながら、お気に入りの空間をつくっていきましょう」
ナチュラルインテリアの特徴は、木を中心とした自然素材をメインに使うこと
色数は少なくし、色みのある白や、アースカラーで構成する
木製家具やファブリック、植物を組み合わせて好みの空間にアレンジできる