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さまざまな金利タイプから選ぶことができる住宅ローン。固定金利と変動金利、その違いはどんなことなのでしょうか。今回は固定金利の仕組みやメリット、デメリット、上手な使い方を完全網羅。住宅ローンを契約する前に知っておきたい、役立つ情報をまとめました。
固定金利とは、適用になる金利が変わらない金利タイプのこと。住宅ローンの場合は、固定金利が適用になる「固定金利型」のほかに、変動金利が適用になる「変動金利型」に分けられます。今回は「固定金利型」の住宅ローンを中心に解説しますが、まずは「固定金利型」「変動金利型」はそれぞれ、どのような金利タイプなのかを知っておきましょう。
一定期間、金利が変わらないタイプ。金利が固定されている間は返済額も一定。変動金利型に比べて金利は高め。
一般的には半年ごとに金利が、5年ごとに返済額が見直されるタイプ。金利の動きによっては、将来、返済額が変わる可能性がある。固定金利型に比べて金利は低い。
住宅ローンを借りるとき、どの金利タイプを選ぶかは自由です。しかし、金利タイプによって金利などの条件が違うため、同じ金額を借り入れてもその後の返済計画に違いが出てきます。それぞれの特徴を知ったうえで選ぶことが大切です。
金利が一定の固定金利型は、固定期間の違いで全期間固定金利型と固定期間選択型の2つのタイプに分けられます。
完済まで金利が一定のため、返済額が変わりません。借り入れ時点で、今後、いくら返済していくのかが明確なため、家計の収支の計画が立てやすいといえます。住宅金融支援機構が民間金融機関と提携している【フラット35】がその代表です。
固定期間中は金利が一定。固定期間は金融機関によって違いますが、2年、3年、5年、7年、10年が設定され、固定期間終了後は変動金利型または再び固定期間選択型を選べるのが一般的です。

固定金利型の住宅ローンには、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょう。ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに聞きました。
低金利が続いている今、変動金利型の住宅ローンには金利0.380%(2020年12月7日現在、ジャパンネット銀行)といった超低金利のものも。一方、全期間固定金利型の代表【フラット35】の金利は1.310%(2020年12月の最多実行金利、返済期間21~35年、住宅取得費に対する融資割合90%以下)です。
●例
35年返済で借り入れた場合、変動金利型0.380%と固定金利型1.310%では、下の表のように返済額に大きく差が出ます。それでも、固定金利型を選ぶメリットはあります。
■金利別・借入額別の毎月返済額(35年返済、元利均等返済、ボーナス返済無しの場合)
| 借入額 | 変動金利型0.380% | 固定金利型1.310% |
|---|---|---|
| 3000万円 | 7万6295円 | 8万9088円 |
| 4000万円 | 10万1726円 | 11万8785円 |
| 5000万円 | 12万7158円 | 14万8481円 |
「固定金利型の住宅ローンは、毎月返済額が変わらないため、収支計画が立てやすいこと、そして、金利が固定されている安心感が大きいことがメリットです。
特に、全期間固定金利型の【フラット35】は、完済まで金利が変わらないので安心が続きます。住宅ローンの返済は最長で35年と長く、これからの長い返済期間に金利が上昇しないとは言い切れません。今はたまたま超低金利が続いていますが、景気が回復すれば金利は上がります。それでも、全期間固定金利型の住宅ローンには金利上昇などの影響を受けないメリットがあるのです」(竹下さん、以下同)
今後、金利がどう推移するかはわかりませんが、金利の上昇の仕方によっては、今は返済額が多めになる固定金利型を選んだほうが、変動金利型よりも返済額が少なくなる可能性もあります。
●例
5000万円を借りて、固定金利型を選んだ場合と、変動金利型を選んだ場合の試算が下の表。
もしも変動金利型が10年ごとに1%上昇した場合、当初は固定金利型のほうが毎月返済額が約2万円多くても、返済11年目からはほぼ同じになり、返済21年目からは固定金利型のほうが毎月返済額が少なくなります。
■10年ごとに変動金利型が1%上昇した場合の毎月返済額(35年返済、元利均等返済、ボーナス返済無しの場合)
借入額5000万円の場合
| 変動金利型0.380% | 固定金利型1.310% | |
|---|---|---|
| 返済1~10年目 | 金利0.380% 毎月返済額12万7158円 |
金利1.310% 毎月返済額14万8481円 |
| 返済11~20年目 | 金利1.380% 毎月返済額14万3478円 |
金利1.310% 毎月返済額14万8481円 |
| 返済21~30年目 | 金利2.380% 毎月返済額15万4157円 |
金利1.310% 毎月返済額14万8481円 |
| 返済31~35年目 | 金利3.380% 毎月返済額15万8022 円 |
金利1.310% 毎月返済額14万8481円 |
※住宅金融支援機構HP内「資金計画シミュレーション」で試算
毎月返済額が変わらないので収支計画が立てやすい
金利が固定されている安心感が大きい

変動金利型に比べて金利が高い固定金利型の住宅ローン。デメリットは、やはりその金利の違いによるものです。
「変動金利型よりも金利が高めに設定されているため、毎月返済額が高くなる、借入可能額が少なめになるというデメリットがあります。また、今後、低金利で推移すると、変動金利型よりも総返済額が多めになる点もデメリットです」
毎月返済額がどれくらい高くなるかは、前出の表でもわかりますが、5000万円を借り入れた場合、変動金利型(0.380%)と固定金利型(1.310%)では、固定金利型のほうが2万1323円高くなります(35年返済、元利均等返済、ボーナス返済無しの場合)。
借入可能額は、年収に占めるローン返済額の割合によって算出される金額が目安となります。
●例
年収に占めるローン返済額の割合が25%の住宅ローンの場合、年収850万円の人の年間返済額の上限は212万5000円(毎月約17万7000円)。金利0.380%の変動金利型に比べると、金利1.310%と高めの固定金利型では、借りられる金額が約999万円少なくなります。
■毎月返済額17万7000円の場合の金利別の借入限度額(35年返済、元利均等返済、ボーナス返済無しの場合)
| 変動金利型0.380% | 固定金利型1.310% | |
|---|---|---|
| 借入限度額 | 6959万8156円 | 5960万3427円 |
では、今後も、低金利が続いた場合の総返済額を比べてみましょう。
●例
5000万円を借り、変動金利型0.380%が35年間変動しなかった場合、固定金利型1.310%で借りたほうが完済までの総返済額が約896万円多くなります。
■5000万円を借りた場合の金利別の返済額(35年返済、元利均等返済、ボーナス返済無しの場合)
| 変動金利型0.380% | 固定金利型1.310% | |
|---|---|---|
| 毎月返済額 | 12万7158円 | 14万8481円 |
| 完済までの総返済額 | 5340万6374円 | 6236万1976円 |
| 利息の支払額 | 340万6374円 | 1236万1976円 |
変動金利型に比べて毎月返済額が多くなる
借入可能額が少なめになる
今後も低金利で推移すると、変動金利型より総返済額は多めになる
住宅ローンの固定期間選択型の場合、金利が固定される期間には2年、3年、5年、7年、10年といったさまざまな年数があります。一般的に、固定期間が短いほうが金利は低くなっています。2年、3年といった固定期間が短いものを選べば、毎月返済額は少なく抑えることができますが、今後、金利が上昇し、固定期間が終了したときに選べる金利が高くなっていれば返済額は増えることになります。
| 当初に選択した固定期間 | 金利 | 毎月返済額 |
|---|---|---|
| 2年 | 0.65% | 13万3134円 |
| 3年 | 0.65% | 13万3134円 |
| 5年 | 0.65% | 13万3134円 |
| 7年 | 0.75% | 13万5392円 |
| 10年 | 0.80 % | 13万6530円 |
では、どのような視点で固定期間を選べばいいのでしょう。固定期間選択型のメリットは、固定金利期間中は住宅コストを一定にできること。
「金利を固定したい、つまり支出を一定にしたい理由と期間を考えてみるといいでしょう。例えば、子どもの教育費の捻出に不安を抱きたくない場合、教育費を積み立てる期間が10年だとすれば、10年固定を選んで住居への支出を一定にするのが安心です。また、妻が復職するまであと5年、というケースなら、5年固定で金利の低さを享受するのもいいでしょう。固定期間終了後に金利が上がっていたとしても、妻の復職で収入が増えていますからリスクは回避できます」

借入時に選んだ金利の固定期間が終了すると、次の金利はどうなるのでしょうか。
「固定期間終了後の取り扱いについては金融機関によって異なります。特に申し出をしなければ自動的に変動金利型に移行しますが、再び固定期間選択型を選ぶこともできるのが一般的な仕組みです。ただし、全期間固定金利型は選べないケースが多いです」
手数料については、変動金利型に移行する際は不要ですが、再び固定期間を選ぶ場合には、その都度、特約再設定手数料を支払うのが一般的。手数料の金額は金融機関によって、また、同じ金融機関でも手続きの方法によって違います。
●例 再び固定期間選択型を選ぶ場合の手数料
三井住友銀行の住宅ローンの場合
WEB手続き:無料
窓口:書面での手続き 1万6500円
:専用パソコンでの手続き 5500円
みずほ銀行の住宅ローンの場合
固定期間終了後に固定期間を選択:1万1000円
固定期間選択型の住宅ローンを利用する場合は、固定期間終了後の金利タイプや手数料についても確認しておくことが大切です。
上手に利用すれば、金利の低さも安定も得られる固定期間選択型ですが、事前に知っておきたい注意ポイントがあります。それは、固定期間終了後の金利アップ。
「2年固定、3年固定、5年固定の金利が、変動金利型よりも低く設定されていることがあります。これは、当初期間は引き下げられた金利が適用されているため。固定期間終了時には必ず金利が上がります。金利が上がってからの毎月返済額に無理なく対応できるかを事前に判断することが重要。固定期間選択型は当初に適用される『優遇金利』と、固定期間が終了してからの『基準金利』を必ずチェックしておきましょう」
●例
三菱UFJ銀行のネット専用住宅ローン(事務手数料型)の場合
固定3年 金利0.34%(店頭表示金利2.94%)
※4年目以降完済まで その時点の店頭表示金利より 年 -1.75 %
変動金利型 金利0.475%(店頭表示金利2.475%)
※完済まで その時点の店頭表示金利より 年 -2.00 %
上の例では、変動金利型よりも3年固定のほうが金利が低くなっています。これは、店頭表示金利よりも大きく引き下げられているため。固定期間が終了後の引き下げ幅は-1.75%と今よりも小さくなるため、適用金利は上がります。今は超低金利時代ですから、将来的に今よりも適用金利が低くなることはないと考えていいでしょう。
今後、金利が変動しなかった場合、固定期間終了後に返済額はどう変わるのかを試算したのが下の表です。
| 金利タイプ | 当初3年間の金利/毎月返済額 | 4年目以降の金利/毎月返済額 |
|---|---|---|
| 固定期間選択型3年 | 0.34%/12万6288円 | 1.19%/14万3925円 |
| 変動金利型 | 0.475%/12万9241円 | 0.475%/12万9241円 |
同じ金額を借り入れても、返済に対する向き合い方やライフプランによって、ぴったりの金利タイプは違ってきます。どのような借り方が向いているのか、竹下さんに聞いてみました。
・向いているのは全期間固定金利型
「繰り上げ返済が面倒、返済額は一定がいい、という方は全期間固定金利型がいいでしょう。この借り方を選ぶのは、収入が安定している方が多い傾向にあります」
・向いているのは低金利の変動金利型や固定期間選択型、ミックスローン
「早く完済するなら、元金の減りの早い低金利の変動金利型や固定期間選択型を選ぶのがいいでしょう。
ただし、繰り上げ返済をしたいと考えていても、実際に可能かどうかは別の話。子どもが私立の学校に入学するなど教育費がかかって繰り上げ返済ができないことも。相談に来られた方には、ライフプランを考えてから判断するようアドバイスしています。もしも、年間100万円くらい繰り上げ返済できる余裕があるなら、借り入れを固定と変動の異なる金利タイプで分けるミックスローンも。例えば、固定2000万円、変動1000万円で借りて、変動のほうをどんどん繰り上げて完済すれば、教育費がかかる時期には返済額を減らすことができます」
・向いているのは全期間固定金利型
「金利の動きに影響されず、支出に変化がない全期間固定金利型で借りるのがいいでしょう」
・10年固定と変動金利型でミックスローンにする人が多い
「変動と固定のミックスローンを選ぶことで、金利が変わらない安心感と、低金利のおトク感の両方を得られます。将来金利が上昇しても固定金利型でリスク回避、金利が低いままなら変動金利型のメリットが受けられます」
・固定期間の長い10年固定型や全期間固定金利型が安心
「確実に教育費を貯めるためには、他の支出が安定していることがポイント。教育費を捻出する期間、住宅ローン返済が固定できる借り方がいいでしょう」
・借りるなら全期間固定金利型
「ほんとうは住宅ローンは借りてはいけないタイプです。少しでも不安を抑えたくて10年固定を選ぶ人が多いのですが、【フラット35】など全期間固定金利型の住宅ローンにするほうがいいでしょう」

変動金利型に比べて金利が高めの固定金利型ですが、金利の変動がなく毎月返済額が一定期間続く安心感は大きなメリットです。今後のライフプランのなかで、住宅関連の支出を安定させたい期間や時期に合わせて上手に固定金利型や固定期間選択型を利用するといいでしょう。
固定金利型では返済額は安定するけれど金利が高め
変動金利型では返済額は抑えられるけれど将来、金利が上がる心配がある
一定期間、固定金利が適用される固定期間選択型は、固定期間終了後の金利アップに注意
金利タイプを選ぶ際には今後の収入や年収、ライフプランの変化も含めた幅広い視点で考えよう