日本の伝統的な間取りである和室を洗練された雰囲気の「和モダン」スタイルや、ナチュラルな北欧インテリアに和風の要素をミックスした「ジャパンディ」スタイルにコーディネートするのがオススメ。そこで、それぞれのスタイルの特徴、マンションの和室や洋室を和風のおしゃれな空間にするためのポイントについて、インテリアコーディネーターとして活躍する住吉さやかさんに聞きました。
「和モダン」とは、「障子」「畳」「襖」など伝統的な和風のデザインに、直線的でスタイリッシュな現代的なデザインをミックスしたスタイルのことです。 シンプルで落ち着きのある雰囲気の中に温かみを感じられるのが特徴です。
ジャパンディとは、北欧のインテリアと日本の伝統的な和の要素をミックスしたインテリアスタイルのことです。「Japan(ジャパン)」と「Scandinavia(スカンジナビア)のdi」を合わせた造語になります。木のぬくもりを感じられるシンプルでスッキリとした明るい空間が特徴です。
和の要素をミックスした和モダンとジャパンディの共通点として、格子など直線的なフォルムとむく材など自然素材を使用するところが挙げられます。いずれのスタイルも機能的かつシンプルな美しさを兼ね備えており、素材のこだわり方も似ています。
「反対に、この2つのスタイルは色使いが大きく異なります。どちらもアースカラーをベースにカラーコーディネートしますが、和モダンは侘び寂びの精神をインテリアに反映することも多く、日本の伝統色にある濃い色を用いて陰影を表現することも。一方、ジャパンディは北欧スタイルで好まれるオーク材などの白木を使い、ニュートラルな色だけでコーディネートします。日本の<禅>を感じさせる静かな空間が特徴です」(住吉さん、以下同)
和モダンスタイルにするためには、自然素材との相性がいいアースカラーに統一すると、ナチュラルで落ち着いたインテリアになります。ベージュ・ブラウン・モスグリーンなどの自然な色彩でコーディネートすることで空間全体がなじんで、スッキリとした印象になります。
「壁の一面やテキスタイルに紺色や若草色など日本の伝統色を使うと、和の雰囲気がプラスされます。空間に陰影をつけることで、より落ち着いた雰囲気を演出することもできます」
和モダンのスタイルの空間をつくるには、自然素材や木質感のあるアイテムを取り入れるのがポイント。日本に昔からあるスギやヒノキなどの木材や、竹、畳、和紙、漆喰などの自然素材を使うことで、和の雰囲気あふれる空間になります。
「和モダンは節が多い木質感のあるものとの相性が良く、一枚板のテーブルや無骨なデザインのチェアなど木の質感をダイレクトに感じるようなファブリックがよく合います。ソファーも木枠で組んだようなものがいいですね」
和風インテリアに障子や格子など水平・垂直ラインが強調される直線的なデザインを取り入れると、スタイリッシュでモダンな雰囲気を演出することができます。
「例えば、曲線を描くカーテンはモダンな雰囲気がなくなってしまうので、和モダンにしたい場合はプリーツスクリーンなど直線的なデザインのものにすると、スッキリとして洗練された空間をつくることができます。家具は重心の低いロータイプのものをセレクトすると落ち着きのある佇まいになります」
照明にも和素材を使うと、和の趣が感じられます。ツヤ感のあるガラス製のものではなく、光を柔らかく反射する和紙や陶器などを使うと、上品で落ち着いた空間になります。
「和紙や陶器、南部鉄器など日本の伝統品を使ったペンダントライトや間接照明などを取り入れると、グッと和の雰囲気が出るのでオススメです」
ジャパンディスタイルは、白やベージュなどのアースカラーで統一して、シンプルでナチュラルな雰囲気にまとめるのが基本です。
「同系色で統一すると空間に立体感が出にくいので、質感の違うものを組み合わせてリズムを出すのがポイントです。石など硬質感のある素材やモコモコしたウールやコットンなど、同系色のさまざまな素材を取り入れることで、立体感を出しつつスッキリまとまります」
和モダン同様に、ジャパンディも自然素材や木のぬくもりを感じるファブリックや小物を取り入れると、ナチュラルな印象の空間にすることができます。
「ジャパンディスタイルには、節の少ないオークなどのむく材など明るい色味の木材を使うと、シンプルで洗練された雰囲気になります」
シンプルで洗練された雰囲気にするためには、空間に余白をつくることが大切です。家具のサイズや装飾の数などに配慮して、抜け感のあるミニマルなインテリアにしましょう。
「大きな家具を詰め込んだり、装飾をたくさん付けたりするのではなく、無駄を削ぎ落としていく“引き算”のコーディネートをするよう心がけてください。例えば、ソファをひとまわり小さいサイズにすると、空間に余白が生まれてスッキリします。また、家具は直線的なデザインのものを採用し、ソファやチェストなどの脚は華奢なデザインのものにするとスタイリッシュになります。
ナチュラルな雰囲気とのバランスも大事なので、ドレープのあるカーテンなどで柔らかさをプラスすると、より上品な雰囲気を演出できます」
ジャパンディスタイルの場合、テキスタイルに色は加えず、柄も無地やそれに近いものを選ぶようにしましょう。質感の異なるものを組み合わせると、空間にメリハリが出ます。
「同じ柄でいろいろな質感のテキスタイルのアイテムを取り入れるのがイマドキっぽいですね。壁に合わせてアートを飾ってもおしゃれですよ」
子どものプレイスペースとして使ったり、ゲストルームとしてなど、シーンに合わせていろいろな使い方ができるのが和室のメリット。テーブルやチェアなど家具を置いてしまうと使い方が制限されてしまうので、最低限のアイテムに抑えることが大切です。畳が凹まないよう、重いアイテムを置くのは避け、可動しやすいものを選びましょう。
「マンションの和室の場合、壁紙やカーテン、照明などを工夫するだけでも、居心地のいい空間になります。家具はロースタイルのものをセレクトしてください。
マンションの和室はLDKに隣接しているケースが多いため、LDKとつながりを持たせたい場合は同系色の壁紙や家具などでコーディネートすると統一感が出ます。反対に、ガラリと雰囲気を変えたいという場合は、ちょっと濃いめの色にしてみるのもオススメです」
洋室を和風テイストのインテリアにする場合、琉球畳などの置き畳をラグのように敷いて部分的に畳スペースにすると、和風のテイストを手軽に楽しむことができます。
「中には、小上がりになるタイプもあります。小上がりはソファと同じぐらいの高さで腰掛けられるので、ソファやダイニングチェアに座っている人と目線が近くなり、会話がしやすいというメリットがあります。小上がり部分が収納になっているタイプもあるので便利です」
また、飾り棚などを設けたり、アートを飾るなど、パッと目線がいくフォーカルポイントをつくると空間がより素敵に見えます。
「置き畳を敷く場合は、洋室にある収納の扉のタイプの確認を。開き戸や折れ戸の場合、開閉時のスペースを考慮して配置しましょう」
和テイストをミックスした「和モダン」と「ジャパンディ」は、自然素材を取り入れた機能的かつシンプルな美しさを兼ね備えたインテリアスタイルという点が共通している
和室でも洋室でも和風テイストのおしゃれなインテリアはつくれる。和室の場合は、さまざまな用途に使えるよう最低限のアイテムに抑えることが大切。洋室の場合は、琉球畳を敷いて部分的に畳スペースをつくると和の趣ある空間を手軽に楽しめる