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床に段差をつけることで、空間に変化が生まれるスキップフロア。タテの空間を活かした、個性的な間取りの家にすることができる。しかし、注意しないと暮らしにくい家になることも。スキップフロアのメリットやデメリット、プランニングの際の注意点を、一級建築士のYuuさんに聞いた。
スキップフロアは、どんな空間のことを指すのだろうか。
「床の高さをずらし、1階 ― 1.5階(中2階) ― 2階といったタテの空間を活用するのがスキップフロアです。スキップフロアが効果的なのは、例えば傾斜地に家を建てるとき。土地が高くなったところを中2階にすれば、傾斜を活かした家づくりが可能です。また、ビルトインガレージの天井を低めにして、その上に中2階をつくるなど、立体的な空間活用ができるのがスキップフロアの醍醐味(だいごみ)です」(Yuuさん、以下同)


例えば、間仕切りのないLDKで、リビングとダイニングキッチンに段差があれば、ソファでくつろいでいるときと、ダイニングで食事をするときでは視線の高さが違い気分も変わる。ひとつの同じ空間でも数段の階段があるだけで、使い方を変えやすい。
<実例1>リビングに隣接したスキップフロアが子どもの遊び場に
下の写真はリビングから0.5階分上がったところにあるフロアが、子どもの遊び場になっているケース。くつろぐためのスペースと子どもが遊ぶためのスペースが高さで区切られているが、壁もドアもないため家族の一体感が感じられる間取りになる。

<実例2>スキップフロアの下を大型収納に
下の写真はキッチンから上階へつながる吹抜けに、子どもたちの遊び場&スタディースペースになるスキップフロアをつくり、その下を大型の物置にしたケースだ。

・開放感と楽しさのある間取りにできる
「スキップフロアを取り入れることのメリットは、開放感のある空間をつくれること。床の高さを変えることで、空間が変化しながらつながる楽しい間取りにもなります」
・無駄なスペースのない間取りが可能
スキップフロアは床の段差によって空間を仕切ることができるため、壁や廊下をつくらないプランも可能。その分、部屋を広々と使うことができる。
・収納スペースをたっぷり確保できる
「タテ空間を活用すれば1階と2階の間のスペースを収納にすることができます。収納スペースを増やすと部屋が狭くなってしまいがちな狭小地でメリットが大きいですね」
開放的で空間を有効活用でき、楽しい間取りも実現できるスキップフロアだが、知っておきたいデメリットもある。
・子どものケガや、高齢になったときの体への負担が心配
「階段での移動が多くなることは、バリアフリーという観点からはデメリットでしょう。後からホームエレベーターをつけにくいという難点もあります」
小さな子どもがいる場合は、階段からの落下などに気をつける必要がある。また、自分が高齢になったときに段差が負担になり、暮らしにくい家になる可能性もある。
・掃除が大変
階段はすみにホコリがたまりやすい。家のあちこちに階段や段差があるので、掃除をするのが大変だ。掃除機を持って階段を上り下りするのも、毎日のことだと面倒かも。お掃除ロボットに任せるわけにいかないのも残念。
・間取りのプランニングに豊富な経験が必要
平面での移動だけでなく、階段の上り下りのあることや、高さの違うフロアからの視界には何が入るかなども考えてプランをつくらないと使いにくく、落ち着かない間取りになってしまう。
「家事動線に階段が多くて疲れるなど、不満足な間取りにならないよう、綿密なプランニングが必要です。また、設計・施工にも高い技術が必要ですから、経験の豊富な設計会社、施工会社に依頼することが重要です」
依頼先を選ぶときには、スキップフロアの施工例があるか、どんなプランかを確認するようにしよう。
・コストがかかり、工期も長くなる
スキップフロアは複雑なデザインになるほど、コストがかかり工期も伸びる。壁やドアのない大空間が多くても、コストダウンをするのはなかなか難しいので、事前にきちんと見積もりをとりたい。
「そのほか、断熱性について心配する人もいるようですが、家全体の断熱性能が高ければ、壁の少ない開放的な空間にしても問題はありません。スキップフロアも、開放的なだけでなく、壁や扉で仕切るプランもあります。通風や採光、光熱費なども間取りプラン次第です」
「マンションでもある程度の天井高があれば、段差のある空間にリフォームすることはできます。例えば、タテ空間の下3分の1を書庫にして、上をスタディースペースにするプラン。天井が低い空間は落ち着いて集中できるのでスタディースペースにぴったりです。和室も天井高をそれほど必要としない空間なので、床を上げて小上がりにして、下を収納スペースにするのもいいでしょう」

今の住まいをスキップフロアに変えるのは大がかりなリフォームになる。でも、タテの空間を活用するなら小さな工夫でもできる。
「子ども部屋によくつくられるロフトもスキップフロアの一種です。ロフトベッドを購入して、上をベッドに、下を勉強スペースに使うのもタテ空間の活用です。スキップフロアの要素を取り入れて、空間を有効活用する工夫をしてみるのもいいですね」
メリットは、開放的で空間を有効に、楽しく使うことができること
家事動線や部屋の配置を考えないと移動に負担がかかる間取りになるのがデメリット
小上がりやロフトなど、ちょっとした空間もスキップフロアの一種として楽しめる