下がり天井は、キッチンの事例写真などでも目を引くプランの一つだと思います。
印象はいいけど、下がり天井って何のため?具体的にはどれくらい下げるもの?
カッコいいからと取り入れたことで、後悔するようなデメリットはない?
そんな下がり天井の疑問について、建築会社の方に聞いてみました。
下がり天井とは、天井の一部がほかの部分よりも下がった状態の天井を指します。
一戸建ての場合は、デザインの一部として取り入れるものがほとんどですが、
マンションの場合は梁やダクトスペースをきれいに隠すためといった構造上の理由で下がり天井になっていることが多いです。
そのため、一戸建てとマンションでは少し分けて考えておくのがよいでしょう。
また、キッチンなど水まわりの天井が下がっている場合には、排気ダクトに勾配をつけるなど構造上の理由があるものです。下がり天井というデザインで設備を上手く隠して空間づくりをしていると考えましょう。
「キッチンの下がり天井をリフォームで解消したい、という場合には、あえて排気ダクトを天井の外に出した「現し」にして、天井自体は高くするという方法もあります。できる、できないと決めつけずに、どんなデザインにしたいか、何か方法はないかを設計士に相談し、柔軟に検討していくとよいと思います」(スタジオ・チッタ 中村さん、以下同)
一戸建ての下がり天井はデザインで取り入れ、空間をおしゃれにする作用があります。特にこれから注文住宅を建てるというタイミングであれば、下がり天井は「やりたいかどうか」で検討することができます。ここからは、一戸建てで下がり天井を取り入れるのに知っておくとよいことを説明していきます。
マンションを購入する際、下がり天井をチェックする方法としては、間取図を見て、販売会社に確認することです。次のような観点でチェックするとよいでしょう。
間取図で下がり天井は点線で表記されています。下がり天井の位置や数を確認しましょう。
ただし、どれくらい下がっているかは分からないため、購入前にはしっかり現地確認を。圧迫感などといった印象への影響だけでなく、置くつもりだった家具が収まらないといったことへの回避にもなります。
ラーメン構造のマンションで間取り変更を伴うリフォーム・リノベーションを予定している場合は、梁の位置に注意が必要です。梁は構造体なので、リフォームで移動することはできません。不自然に天井の一部が下がることがないようレイアウトを考えたり、デザイン的にまとまりよく下がり天井を取り入れたりと工夫が必要になります。納得した上で購入できるよう、リノベ目的で中古マンションを購入する際は、現地で事前に設計士と相談できるとベターです。
下がり天井を取り入れることで、空間にどんな効果やメリットがあるのかを紹介します。
最近はオープンなLDKが好まれますが、天井に段差があることで空間を緩やかに仕切れます。壁や間仕切りを使うよりも、圧迫感や閉塞感を出さずに、視覚的に空間を分けられるのがメリットです。広いLDKの中で、キッチンやダイニングをリビングと緩やかに分けるときなどに使います。
天井が一段下がることで、空間にアクセントがつきます。下がり天井の部分だけ天井の色を変えたり、木目調やモルタル調にしたりと素材やデザインで遊べます。広いLDKが単調にならないよう、空間のフォーカルポイントとして大胆なデザインを選択するのも手でしょう。
「キッチンのコンロ上の天井は不燃の基準を満たす素材で仕上げる必要があるので、木目調にしたい場合は木目調のシートなどを使うとよいでしょう。近くで見る場所ではないので、十分木材の雰囲気を楽しめると思います」
意外なことに、下がり天井を上手に取り入れることで広さを演出することができます。下がり天井のキッチンから少し天井が高いリビング側を見たときには開放感が感じられますし、リビング側から下がり天井のキッチンを見たときには、奥行きを感じられるためリビング全体が広く感じられるでしょう。
天井が低いと部屋の重心が下がり、空間が落ち着いた印象になります。適度な低さは『おこもり感』という心地よさを感じることも。和室のように床に座って過ごす部屋であれば部屋全体の天井を低くすることで落ち着いた雰囲気を出すとよいと思いますが、広がりを感じたいLDKなどでは、下がり天井のように天井の一部を下げることでおこもり感を演出するのも手です。
下がり天井は、家の構造上、どうしても出っ張る梁やレンジフード、排気ダクトといった設備を隠すのにも使われます。これは、場合によっては一戸建てにもあるケースです。目立たせたくないものをデザインで美しくカバーできるのも、下がり天井の良さのひとつです。
ほかに下がり天井が向いた空間としては、イスに腰掛けるより目線が低い位置になる寝室などがあります。
前述の通り、低い天井は和室のスケール感とも相性が良く落ち着いた空間になります。ただし、この場合は天井の一部を下げるのではなく、天井全体を低めに設定するのが一般的です。
天井の我部紙についてもっと詳しく
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「そうならないように下がり天井の位置やサイズ、色、素材などを計画していきます。例えば、下がり天井を窓側に付けて天井とサッシの高さをそろえると、外への視線が窓の上の壁で止まることがないので、外にスッと視線が促されて空間に広がりを感じるような効果を得られることもあります」
このように、天井が下がっていることをネガティブにしないプランを選ぶとよいでしょう。
下がり天井にすると、基本プラン外のオプションとなるため、施工費用がアップします。施工費用は、広さや選ぶ素材など仕様によりさまざまですが、よくあるキッチンの下がり天井では、数万円程度から検討できます。相談の際に確認しておくとよいでしょう。
「掃除に手間がかかるのは、下がり天井に間接照明が仕込まれている場合です。光源がある部分はくぼみになっていますので、ホコリが溜まりやすくなります」
目に入りにくい高い位置にありますが、こまめな手入れを心掛けましょう。
下がり天井に間接照明を組み合わせると掃除の面ではデメリットになりますが、空間に浮遊感が生まれ、よりスタイリッシュに演出できます。また、間接照明にすることで、光が直接目に入らず、やさしい光が壁伝いに広がります。下がり天井を検討する場合は、ぜひ夜の空間の印象も併せて考えてみてください。
キッチンカウンターをちょっとバーのようにする場合にも、間接照明は良い演出と言えます。ほかにも、リビングから見てキッチンの手前側に間接照明のような目が止まる仕掛けがあると、奥の雑然とした物が目立たないという効果もあります。
寝室の下がり天井に間接照明があれば、ベッドに横たわったときに直接光が目に入らないので、機能面でも優れた照明の方法となります。ただし、読書をする習慣がある場合や、書斎コーナーを設ける場合は、間接照明以外の照明も併せて検討する必要があります。
実際に下がり天井を取り入れた、家を紹介します。ひと口に下がり天井といっても、デザインにより印象はかなり変わるのが分かると思います。
小さめの空間で思い切ったデザインを取り入れやすいキッチンは、下がり天井を取り入れやすい場所の一つ。選ぶ仕上げ材による印象の違いに注目しましょう。
20畳近いLDKのうち、キッチンとダイニングを下がり天井にし、さらにキッチン部分に木目調の意匠を施している。床や梁と合わせ、広いLDKでそれぞれを印象的にデザイン。
LDKの天井はレッドシダーが張ってあり、ウッディな空間に。キッチンの部分は壁に合わせた白い下がり天井にしてスッキリと仕上げている。
キッチンのフロント部分にモルタル調の下がり天井を施した例。LDK全体の色味を抑えて柔らかな印象の空間に。
キッチンと一列に並ぶダイニングに合わせ、空間の中央に設けられた下がり天井。黒い下がり天井から空間に広がる間接照明がスタイリッシュな印象をつくる。
リビングの下がり天井は、広いLDKを緩やかに区切ったり、外とのつながりをつくったり、照明と合わせて空間のアクセントにしたりとさまざまな役割を持つことに注目しましょう。
LDKの中央部で天井と下がり天井で意匠を変え、空間を緩やかに分けた例。くつろぎのスペースには温かみのある木の意匠、食事のスペースはスッキリとした白でまとめている。
窓の高さに合わせて窓回りに下がり天井を設け、空間をすっきりとしたデザインに。昼間は視線がストレスなく外に向かい、夜は下がり天井の間接照明で室内の雰囲気が高まる。
下がり天井は、家の顔となる玄関や、プライベートな空間づくりを楽しみやすい寝室などに取り入れても◎。
寝室の下がり天井は空間に落ち着きをプラス。天井に暗い色を選ぶことで、おこもり感が増す。間接照明を設けて光が直接目に入らないようにするのも良い手だ。
和室は基本的に床に直に座って過ごす場所であるため、天井は少し低めくらいが落ち着く。子どもの遊び場などでリビングの一画に設けた畳コーナーは、下がり天井にすることで秘密基地のような趣に。
下がり天井は数万円程度のコストアップにはなるものの、空間を緩やかに仕切ったり、整えたり、雰囲気をアップしたりと、目を引く空間づくりを叶えてくれるプランの一つ。圧迫感が出ないように採用するにはどうしたらよいか、を念頭に置きつつプランナーに相談してみましょう。
下がり天井は数万円程度のコストアップにはなるものの、おしゃれで目を引く空間づくりを叶えてくれるプランの一つ
空間を緩やかに仕切ったり、排気ダクトをデザインでカバーしたりといった役割も
圧迫感が出ないように採用するにはどうしたらよいか、を念頭に置きつつプランナーに相談するとよい