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開放感を演出し、採光や風の通り道も確保できる吹き抜け。魅力がたくさんある反面、間取りや照明選び、エアコンの位置など建築時に注意したほうがよいこともあります。Casaの水谷遼二さんに話をうかがい、注文住宅に吹き抜けを取り入れるときのポイントについてまとめました。 「吹き抜けをつくると家が暑い/寒いって本当?」「アトリウムとの違いは?」など、よくある疑問にもお答えします。
広々とした明るい空間を演出できるという理由から、人気の高い建築手法「吹き抜け」。具体的にどのようなデザインや間取りを指すのでしょうか。まずは、吹き抜けの定義や特徴、注文住宅における取り入れ方から解説します。
吹き抜けとは、床板を設けずに複数階をつなぐ空間のことです。
「最も多いのは1階と2階をつなぐ吹き抜けです。上階部分の床板を設けないことで上下階に縦のつながりが生まれ、開放的な空間になります」(Casa 水谷さん、以下同)

「吹き抜けの天井の高さは建築会社の施工の仕方によって異なります。当社の場合は、1階と2階をつなぐ吹き抜けでおよそ5~6mの天井の高さが目安となります」
また、都市部の狭小地などに立つ3階建て住宅では、採光を確保する目的で1階から3階につながる吹き抜けを取り入れる人もいるようです。その場合は天井が5~6mよりもさらに高くなります。
「広さに関しては、小さめのもので3畳、大きなもので10畳ほどになります。その中でも4畳半や6畳くらいの規模の吹き抜けにすることが多いです」

吹き抜けを取り入れる場所として適しているのは、やはり家族が集まるリビング。特に、南向きで太陽光が差し込みやすい間取りの場合、吹き抜けならではのメリットをより享受しやすいでしょう。このほか、玄関に吹き抜けをつくるのもおすすめ。開放感が生まれ、家全体が洗練された印象になります。
水谷さんによると、吹き抜けを家のどこに取り入れるのかも時代とともに変化があったようです。
「家族が最も長く過ごす場所を開放的にしたいという考えから、LDKに吹き抜けを取り入れる人が多いです。少し前は玄関に吹き抜けを取り入れる人も多かったのですが、近年は玄関をコンパクトにして居室を広くする手法が人気です」
では、吹き抜けを採用するとどのようなメリットや効果が期待できるのでしょう。
吹き抜けを採用すると、空間全体に高さが生まれ視界が開かれます。
「上階の床板がないため視界が広がり開放感を得ることができます。空間を広く見せたいときにも吹き抜けは有効です」
居室の広さ自体が変わっていないとしても、高さがあるだけで広々と見えるもの。敷地が狭い、リビングを広くとっていない物件には特におすすめです。

吹き抜け上部に窓を設ければ採光を確保し、空間を明るくすることができます。
「家が密集しているエリアなどでは1階の窓から光を取り入れることが難しく、吹き抜けをつくって採光を確保するというケースも珍しくありません」

暖かい空気は他の空気よりも軽く上昇しやすいため、吹き抜けをつくることで空気が循環しやすくなります。風通しの良さは快適な住環境の維持だけでなく、カビやシロアリ対策、光熱費削減などにも効果的です。
「窓の配置を工夫すると、吹き抜けの高低差によって風が通り抜けやすくなります。換気をすると空気が流れやすいため、春や秋など過ごしやすい気候の時期は心地よく暮らすことができるでしょう」

上下階がつながっているため、家族とのコミュニケーションがとりやすい家になるというのもメリットのひとつ。
「例えば、1階で家事をしながら2階の子ども部屋で過ごしている子どもに声を掛けたり、常に家族の存在を身近に感じたりすることができるでしょう。
しかし、これはメリットであると同時にデメリットともいえます。常に家族の存在を感じることでプライバシー性が低いと感じる人や、生活音が気になってしまう人もいるためです」

光や風を取り込みやすく、家族間でのコミュニケーションもとりやすい吹き抜け。魅力が多い一方で、注意すべきデメリットもあります。
メリットがたくさんある吹き抜けですが、「暑い」「寒い」という声もよく聞きます。
「吹き抜けによる暑さ・寒さの原因は、家の性能や構造によって左右されます。窓の位置や種類、断熱性などを考慮して計画しないと室内の気温が気候に左右されやすくなるため注意が必要です。特に東や西に窓があると夏は直射日光が入りやすいため、建物外部にすだれやグリーンカーテンなどをつけて遮蔽(しゃへい)することをおすすめします」

「空間がつながっているため、どうしても音やニオイが伝わりやすくなるという特徴があります。家族の存在を感じられることをメリットとして紹介しましたが、料理のニオイや生活音が吹き抜けを介して伝わってしまうことを避けたい場合は、吹き抜けをつくらないほうがよいかもしれません。夜勤などの理由で生活時間の異なる家族がいる場合も注意が必要です」
家づくりで後悔しないためにも、吹き抜けを検討する際は家族のライフスタイルや価値観を確認したほうがよいでしょう。

高さがある分、通常の居室スペースと同じように掃除できないのは吹き抜けの難点。なかには、専門業者に掃除やメンテナンスを依頼する家庭もあるようです。
「高い場所にある窓やシーリング、照明器具などの掃除は大変です。長い棒を使うか、掃除用の動線をつくるといった方法もありますが、どうしてもこまめな手入れをしたいという方には吹き抜けは不向きかもしれません」

上から下を見下ろせるという吹き抜けの構造上、落下への対策はマスト。人だけでなく、物が落ちるだけでも下にいる人がけがをしてしまう可能性があります。見た目には影響しますが、安全対策は必ず行いましょう。
「小さなお子さんやペットがいる場合、吹き抜けから転落してしまう危険性はゼロではありません。リスクを考慮して転落防止対策のネットなどを設置する人もいます」

1階スペースに開放感が生まれる吹き抜けですが、当然吹き抜けで広げた分だけ上階の床面積が狭くなり、部屋数や収納スペースを削らざるを得ません。居住スペースが狭くなることを理解したうえで、上階と下階のレイアウトを決めましょう。特に、今後家族が増えたり子どもの成長によって個室が必要になったりする場合などは慎重に考えましょう。
“人生最大の買い物”ともいえるマイホーム。のちのち後悔しないためにも、家づくりの前に吹き抜けの注意点と間取りのポイントをチェックしましょう。
「吹き抜けの暑さ・寒さ対策の中でも特に重要なのが窓の位置とガラスの種類です。夏は暑さを家の中に入れず、冬は南面の窓に直射日光がしっかりと当たるように全体的なバランスを見ながら計画することが大切です。
そのため、ガラスの種類について熱を取り込む日射取得型と、熱を遮る日射遮蔽型を方位ごとに使い分けたり、季節によって変わる太陽の高さを考えながら最適な位置に窓をつけたりすることがポイントとなります。建築会社が行う正しい計算をもとに、適切な窓の位置とガラスの種類を決めることをおすすめします」
また、暑さやまぶしさ、プライバシー対策の観点から吹き抜けの窓に電動カーテンやロールスクリーンを設置するという選択肢もあります。

夏の熱気を外に逃がす方法として、棟換気(むねかんき)ができる屋根にするという選択肢があります。棟換気とは屋根に換気口を取り付けて室外に熱気や湿気を逃がす手法のことです。
「吹き抜けをつくる際は棟換気ができる屋根にすることがおすすめです。屋根の形状にも関わってくるため、早い段階で建築会社と相談するようにしましょう」

エアコンをどこに設置するかによって夏と冬の快適さが変わってきます。
「おすすめは、2階ホールの上と1階の床面に1台ずつエアコンを設け、季節ごとに使い分けることです。ホールの上には夏の冷房用のエアコンを、ホールの下には冬の暖房用の床下エアコンを設けます。冷たい空気は下に、暖かい空気は上に移動するという性質があるため、1台だけのパワーでも設置する位置によっては空間全体に空気が流れ快適に過ごすことができます。この方法なら少ない台数で空調ができるので省エネになり、コスト面でもメリットがあります」

「吹き抜けは上階の床をなくす構造のため、正しい構造計算に基づいた設計や間取り決めをしないと耐震性が低くなる可能性があります。吹き抜けの規模や壁の量、床の厚みなど丁寧な構造計算に基づいて吹き抜けを設計すれば耐震性に関する心配はいりません。心配な方は、間取り決めの打ち合わせの段階で建築会社に確認してみるとよいと思います」

安全対策をしつつ、開放感を最大限発揮したい場合には腰壁を変更するのも一案です。
「より開放感を出したい場合は、ホール部分に腰壁ではなくアイアンの柵や透明のパネルなどを設置して視界が抜けるようにするとよいでしょう。吹き抜けの開放感は、上下階の空間のつながり方によって決まります。上階の奥を見せるほど開放感が生まれます」

「シーリングファンには吹き抜けのデザイン性を高めてくれるというメリットがあります。優れた断熱性能を備えた家であればシーリングファンを設置しなくても一年を通して快適に過ごすことができますが、一般的には冬場はシーリングファンによって暖気を上から下へ流すことで家が暖かくなり、夏はファンで気流をつくることで快適に過ごすことができます」

照明選びは、部屋の雰囲気を左右する重要なポイント。吹き抜けにマッチする照明器具やおすすめの取り付け位置について聞いてみました。
「ダウンライトやペンダントライトなどの主照明以外にも、吹き抜けの横にダクトレールを設置すると可変性の高い照明計画が可能になります。ダクトレールは照明の位置を自由に変えられる良さがあります。壁に飾ったアート作品を照らすこともできます」

「開放感を出すコツのひとつとして、照明で目線の先を照らすという手法があります。吹き抜けの壁や天井など目線の先が明るいことでそこに視点が誘導され空間の広がりを感じられるためです」

「吹き抜けにシーリングファンを設置した場合は、ダウンライトなどの光源との位置関係に注意してください。シーリングファンの近くに光源があると、ファンを動かしたときに影が落ち着きなくチカチカと動いてしまうためです」

「実際に吹き抜けのある部屋を見てみたい」という人も多いはず。そこで、ここからはCasaの施工実例を紹介します。ぜひ、吹き抜けのある家をつくるときのヒントにしてください。
家を建てる前に見学した建売のリビングが気に入って家づくりに活かしたというSさん。日差しもたっぷり入る吹き抜けは、断熱性にも考慮。季節を問わず快適に過ごすことができます。

一番長く過ごすリビングを快適な空間にしたいと考えたSさん。ダウンフロアのリビングに開放感たっぷりの吹き抜けを取り入れておしゃれな空間に仕上げました。断熱性・気密性にもこだわったため、エアコン1台でも快適に過ごすことができます。

三角形の変形地に家を建てたMさん。限られた面積を最大限に活かし、開放感のある家が完成しました。18畳のLDKはリビングダイニングの上部を吹き抜けにし、広さも明るさも確保。デザイン性が高く圧迫感のないスケルトン階段を採用したこともポイントです。

吹き抜けのある大空間とスキップフロアを使ったファミリースペースを希望したHさん。黒い手すり格子がスタイリッシュなLDKは、上部を吹き抜けにして開放感を演出。ナチュラル&ビンテージなスタイルをベースにした、高級感あふれる空間が完成しました。

満足のいく家をつくり上げるためにも、吹き抜けに関する疑問はしっかりクリアにしておきましょう。最後に、吹き抜けに関するよくある質問をQ&A形式でご紹介します。
吹き抜けは、床板を設けずに複数階をつなぐ空間のこと。最も多いのは1階と2階をつなぐ吹き抜けで、採光性や通風性を高めるなどのメリットが挙げられます。
アトリウムは天窓やガラス屋根から自然光を取り入れた、広々とした吹き抜け空間のこと。建物の内部が広く開かれているという点では吹き抜けと同じですが、吹き抜けが“ある特定の空間”を指すのに対し、商業施設やホテルなどで用いられるアトリウムは、建物全体の設計に関わる大きな空間を指すのが一般的です。
暖かい空気が上に流れてしまうことで、1階部分が寒くなりやすいのが吹き抜けのデメリット。暖房器具を使っても部屋全体が暖まりづらいという特徴があります。吹き抜けでの寒さ対策には断熱性能の高い窓や床材、壁材の採用が最も効果的。このほか、シーリングファンやサーキュレーターによって空気循環を促したり、全館空調システムを導入したりするのも一手です。
最後にまとめとして、吹き抜けを設計するときのポイントをうかがいました。
「吹き抜けにはメリットがたくさんありますが、音やニオイの伝わりやすさや掃除のしにくさといったデメリットもあります。家づくりをスタートする際には一緒に暮らす家族とよく相談し、吹き抜けの有無を決めたほうがよいでしょう。
また、吹き抜けを取り入れるうえで断熱性など家の構造は無視できないポイントです。快適な生活を送れる家にするためにも、丁寧に構造のことを考えてくれる建築会社を選ぶとよいと思います」
吹き抜けとは、床を設けずに複数階をつなぐ構造のこと
開放感や採光の確保のしやすさというメリットがある半面、音やニオイの伝わりやすさや掃除のしにくさというデメリットもある
窓やエアコンの設置の仕方などを工夫することで季節を問わず快適に過ごせる
吹き抜けの寒さ対策には断熱性能の高い窓や壁、床材、シーリングファンや全館空調システムの導入が効果的