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核家族世帯が増えている今、家族構成やライフスタイルに合うコンパクトな平屋を建てたいと考えている人は多いでしょう。そこで今回は、20坪で建てられる平屋の間取りを紹介。さらに、間取りづくりにおける注意点について、一級建築士事務所 秋山立花の秋山怜史さんにうかがいました。
20坪(約67m2、約40畳)の建築面積で2階建てを建てる場合は(※建ぺい率等は考慮しない)、3~4LDKの間取りも可能な広さですが、同じ20坪の建築面積で平屋の場合は、2階がない分、ややコンパクトな間取りになります。
「20坪の平屋であれば、人数は1人か2人。3人家族でも暮らせない広さではありませんが、大人3人で暮らすとなると、ゆとりはないイメージです。部屋数については3LDKにすると個室が狭くなってしまうので、1LDK~2LDK程度ということになるでしょう」(秋山さん、以下同)
例えば、子どもが家を出た家庭や一人暮らし、または、別荘のような用途で考えている場合には、20坪の平屋は十分快適に暮らせる広さといえるでしょう。小さな子どもがいるファミリーが20坪の平屋を建てるということであれば、子どもが成長したり、家族の人数が増えたりしたタイミングで、住み替えを考えることになるかもしれません。
20坪の平屋は、老後の生活に非常に適した住まいといえます。夫婦2人暮らしあるいは1人暮らしのシニアにとって、20坪程度の広さは十分なスペースを提供し、過剰なスペースを抑えることで生活や手入れがラクになります。特に、2LDKの間取りが人気で、リビングとダイニングキッチンが一つの空間にあり、他に2部屋を設けることができます。これにより、夫婦2人が快適に過ごすためのプライベート空間を確保できるでしょう。
さらに、平屋は階段がないため、将来の身体的な負担を軽減することができ、動線が効率的であることが利点です。また、リフォーム等で室内環境の改善を図れば、高齢者にとって快適で健康的な住まいを実現することもできます。このように、20坪の平屋は老後の生活を考慮した理想的な選択肢といえるでしょう。

ここでは、20坪の平屋のメリットとデメリットについてまとめてみました。それぞれ見ていきましょう。
20坪の平屋を建てるメリットは以下のとおりです。
平屋の場合、同じ床面積の2階建ての家と比べると、敷地面積(土地の広さ)をより多く確保する必要があります。さらに、平屋は基礎や屋根の部分が2階建てよりも大きくなるため、同じ建築面積の2階建てよりも、建築費用が高くなるのが一般的です。
土地代も建築コストもかかるため、限られた床面積をより有効に使いたいと考えるものですが、そもそも、同じ床面積の2階建てと比較すると、平屋のほうが空間は広々と感じられるといいます。
「2階建ての場合、階段や2階の廊下などをつくるための面積が必要になります。平屋はそれらが必要ないため、3坪(約10m2、約6畳)程度は平屋のほうが居室などに使える面積は広くなり、同じ床面積20坪でも、平屋のほうが空間を広く感じることができます。
また、限られた床面積をより有効に使いたいということであれば、廊下のスペースをできるだけつくらないようにするというのがポイントです。廊下に割く面積を減らせば、その分、リビングや個室などに使える面積を増やすことができます」

20坪とコンパクトな平屋は、建築費用を抑えることが可能です。建物自体がコンパクトなため、材料費が少なく済みます。また、工事期間も短縮できるため、人件費を含む工事費を削減できるでしょう。
また、限られた空間での生活は光熱費や維持費の削減にもつながります。冷暖房の効率が良いことに加え、掃除や修繕にかかる手間や費用も少なく済むでしょう。それにより、長期的なコストも抑えられます。
20坪の平屋を建てるデメリットは以下のとおりです。
平屋は建築面積がそのまま床面積となるため、同じ広さの2階建てに比べると広い土地が必要です。それに加え、駐車スペースも考慮するとなると、その分の敷地面積も追加で確保しなくてはなりません。
そのため、都市部をはじめとする人気の高いエリアは人が多く、建物も密集していることから十分な広さの土地を見つけることが難しいといえます。平屋を希望する場合は、敷地面積を確保できるかどうかを慎重に検討することが大切です。
空間を広く使え、上下移動もなくシンプルな動線で暮らせる平屋ですが、快適に暮らすためには、間取りのプランニング以外にも注意しておく点があるといいます。
「平屋の場合、生活スペースがワンフロアで完結するため、地面からの冷えや、屋根からの熱などの影響を考えて断熱対策をしっかり行う必要があります。特に屋根については、平屋の場合面積が大きくなるので、注意が必要です」
断熱対策が不十分だと、住みはじめてから冷暖房費などのランニングコストがかさむなどの問題がおきかねません。平屋を建てる際には、設計者などとしっかり断熱対策について相談しておくようにしましょう。

20坪の平屋といっても、家族構成や暮らす人のライフスタイルなどによって、間取りプランはさまざまです。今回は20坪の平屋の間取りを考えるヒントになるよう、20坪の平屋を建てた実例を3つ紹介します。


バリアフリーで住みやすい木造の平屋を建てることにしたKさん。柱や梁を現し、床は無垢(むく)フローリングにするなど、LDKは木のぬくもりを感じられる空間に仕上がりました。天井高を高くし、ハイサイドライトを設置したことで、光や風がうまく通り抜けるようになっています。
また、廊下のない開放的な間取りにより、各空間へのアクセスもスムーズ。車椅子にも対応できるよう、ゆとりのあるプランです。
夏も冬も快適に過ごしたいと、外張り断熱+充填断熱のW断熱や高性能サッシを採用。高気密・高断熱を実現し、床暖房も備えた平屋は一年を通じて快適に暮らせると、新しい住まいに満足されているそうです。

【DATA】
延床面積 65.00m2(19.6坪)
敷地面積 161.13m2(48.7坪)
家族構成 2人
(実例写真・間取図提供/仁科建設)


夫妻2人で住まう家なので、1階で生活が完結する、くつろげる平屋がよかったというHさん。夫妻のこだわりのつまった平屋は動線がコンパクトで掃除などの家事もラクになりました。
敷地の一部は人工芝を敷いた庭にしてドッグランとしても活用。LDKから庭には直接出られるよう勝手口を設けたので、庭の一角に設けた洗濯物を干すスペースへアクセスしやすく、家事動線にも配慮した間取りです。
日当たりが良く、昼間は照明がなくても快適に過ごせるというリビングのクロスや床材は白で統一。明るい色合いで、より空間を広々と演出しています。リビングの壁には飾り棚を設け、写真などを飾って楽しめるようにしたそうです。

【DATA】
延床面積 66.66m2(20.1坪)
敷地面積 221.95m2(67.1坪)
家族構成 2人
(実例写真・間取図提供/ヤマダホームズ)


永く住まうことを見据え、ワンフロアで快適に暮らせるコンパクトな平屋を選択したFさん。のびやかな空間で、自分らしく楽しめるマイホームをと考え、大好きな雑貨を飾る飾り棚やニッチを各所につくり、家中にハンドメイドの作品やお気に入りの小物などを飾って暮らしを楽しんでいるそうです。
また、コンパクトな空間も広く感じられるよう、間仕切りは最小限に。LDKには吹抜けを設け、ロフトとつなげることで、明るく開放感あふれるLDKになりました。広々とした空間が物であふれることがないよう、タタミコーナーの下を収納として活用するなど、十分な収納スペースも確保しています。


【DATA】
延床面積 71.21m2(21.5坪)
敷地面積 201.39m2(60.9坪)
家族構成 本人
(実例写真・間取図提供/クレバリーホーム)
コンパクトな20坪の平屋でも、工夫次第で快適な住まいをつくれます。平屋ならではのメリットを活かしつつ、自分たちの暮らしに合ったプランを考えてみてはいかがでしょうか。
20坪の平屋は1~2人暮らしサイズ。間取りの目安は1LDK~2LDK
廊下を減らせば、床面積をLDKや居室に使える面積が3坪程度広くなる
平屋は特に断熱対策に配慮が必要