「ミニマムな暮らしがしたい」「一人暮らしなので広い家は不要」などの理由から、コンパクトでかっこいい平屋に住みたいと考える人が増えています。すでに土地ありの場合で予算を1000万円くらいとしたときに、どんな平屋を建てられるのでしょうか? また土地代込みの総予算1000万円くらいで平屋を建てることはできるのでしょうか。この記事では、1000万円くらいのローコストな予算で建てられる平屋の具体的な広さや間取り、外観などを、建築時の注意点とあわせ、青山芸術の藤木舞さんに伺い解説します。
家を新築するには、建物本体価格のほか「別途付帯工事費」や「諸費用」がかかります。別途付帯工事費とは、塀やフェンス、玄関アプローチなどの整備にかかる外構費や水道の敷設費などを、諸費用とは設計料や登記にかかる費用などを指します。
「別途付帯工事費には建物本体価格の20%、諸費用には建物本体価格の10~15%程度を見積もっておくと安心です」(藤木さん/以下同)
家の価格や建てられる家の広さを考えるときに、参考になる指標が「坪単価」です。坪単価とは、ひと坪当たりにかかる建築価格のことで、「建物本体価格÷延床面積」で算出します。坪単価は、家の構造や設備・建材のグレードが上がるほど高くなります。
2022年度【フラット35】利用者調査によると、2022年の注文住宅の建設費の全国平均は3715.2万円、平均住宅面積は122.8m2(約37坪)です。
家の建築費は本体価格と付帯工事費(本体価格の20%程度)、その他諸費用(本体価格の10%程度)になるのが一般的であることを考えると、建物本体価格の全国平均は約2857万円となり、平均坪単価は2857万円÷37坪で約77万円になります。
「ひと昔前までは、ローコスト住宅であれば坪単価50万円程度で家を建てることができました。しかし2024年現在では、コロナ禍やウクライナ情勢の影響を受け、住宅価格はどんどん高くなっています。職人不足もあり人件費も高騰しており、資材価格が落ち着いたとしても価格が下落する見込みはなさそうです。
またそもそも平屋は、2階建てと比較するとコストがかかる屋根や基礎の面積が広くなるため、坪単価は高くなる傾向があります。そのためこれから平屋を建てるのであれば、坪単価70万円~80万円(税別)程度は見込んでおく必要があるでしょう」
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平屋の総予算(土地別・税別)が1000万円の場合、内訳は建物本体価格が約770万円、別途付帯工事費が約153万円、諸費用が約77万円です。坪単価が70万円であれば、建てられる平屋の広さは約11坪(約36m2)になります。
「約11坪というと、ワンルームマンション程度の広さになります。暮らすだけなら十分な広さです」
建物本体価格の予算を1000万円とした場合、別途付帯工事費に約200万円、諸費用に約100万円必要になるので、総予算は約1300万円にふくらみます。その分建てられる家の面積は、坪単価70万円なら約14.3坪となり、同じ素材やグレードであれば、建物本体価格770万円の11坪よりも1.3倍ほど広い家を建てられるようになります。
家を建てるには土地が必要になります。総予算1000万円で、土地もあわせて購入しての家づくりはできるのでしょうか?
住宅の総予算が1000万円の場合、すでに土地があれば1000万円すべてを家の建築費に充てられます。一方土地代込みで考える場合、総予算から土地代を差し引いたものが平屋の予算になります。例えば土地代が500万円であれば、家にかけられる予算は500万円にしかなりません。
「山奥など1坪数千円で土地が買えるようなエリアでなければ、総予算1000円で土地と住宅の両方を購入するのはかなり厳しいと思います」
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「土地がなく、予算も1000万円と限られている場合、家を建てるのではなくトレーラーハウスという選択肢もあります。トレーラーハウスとは、タイヤが付いたシャーシと呼ばれる台車に乗せ、車で牽引(けんいん)して移動できる『車両扱い』の建物のことです。
トレーラーハウスは地面に固定しない限りは住宅とはみなされず、建築基準法の適用を受けません。居住用であれば、住宅に必要な設備もコンパクトにまとまっています。ただし地域によっては駐車場の確保(車庫証明)が必要です」
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ここでは予算約1000万円で建てられる平屋はどのようなものなのか、外観や間取りを紹介します。
建物本体価格890万円(坪単価約80.9万円)の平屋です。約11坪の延床面積で、1LDKの間取りを実現しています。浴室とトイレは独立、キッチンは3口コンロ。一人暮らしにちょうどよい間取りとなっています。
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予算1000万円くらいで、できるだけかっこいい平屋を建てたいときに、押さえておくべきポイントを紹介します。
注文住宅には完全オーダーメイドの「自由設計型」と、決まった間取りや仕様から選ぶ「規格型」があります。自由設計型は間取りから使用する建材まですべて好みを反映できますが、設計から始めるため費用が高くなります。その点規格型はある程度決まったなかから選ぶため、コストを抑えやすいことが特徴です。予算1000万円くらいで家を建てる場合は、規格型を選びましょう。
「家は広くなればなるほど、また設備や建材のグレードが上がれば上がるほど費用が高くなります。予算が1000万円くらいであるなら、広さと設備のグレードのどちらを優先するのかなど、あらかじめ優先順位を明確にしておき、できるところからやっていきましょう」
「平屋のコストを下げるには、延床面積を抑えるのが効果的です。例えば昔の住宅では、日中は茶の間として使っている部屋を、夜には布団を敷いて寝室として使うといった工夫をしていました。部屋の用途を限定せず、複数の目的に使えるようにするのは、限られた空間を有効に活用する方法の一つです。
また面積を抑えても、窓から外が見渡せるようなロケーションであれば、空間の広がりを感じられます。ほかには勾配屋根で天井高を高くして、縦空間に広がりを出すのもおすすめです」
「増築の余地を残しておくと、将来のライフスタイルの変化に対応しやすくなります。例えば予算1000万円くらいで1DK、1LDKのようなミニマムな家を建て、経済的に余裕が出たときや家族が増えたときに増築する、という考え方もあります」
予算1000万円くらいで平屋を建てるときの注意点も確認しておきましょう。
「コストを抑えて家を建てるときには、壁をつくる量が多くなるほど価格が上がってしまうので、不要な間仕切りはできるだけ減らすことを考えましょう。また建具や収納の扉を減らすなど、ちょっとした工夫が大切になると思います」
最初にお伝えしたように、同じ「予算1000万円くらい」でも総予算なのか、建物の予算なのかによって建てられる平屋は違ってきます。また建物本体価格1000万円の場合でも、建築会社によって標準仕様に含むもの・含まないものは異なるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
設備や建材のグレードを上げたり、標準仕様にはない設備を導入したりする場合は、「オプション」として別途費用が必要です。
「家を建てるときには『せっかくだから』とついあれもこれもほしくなってしまうものです。しかし予算を1000万円くらいと決めているなら、規格型注文住宅の標準仕様におさめ、不要なオプションを付けないことが大切です。
なおどんな安価な住宅でも、建築基準法が定める最低限の耐震基準や断熱性能などを守って建てられています。標準仕様でも十分安全・快適に暮らせるでしょう」
家は建てて終わりではなく、建てたあとにも屋根や外壁などのメンテナンスコストがかかります。基本的にローコストな住宅は、費用を抑えるためにグレードが低い資材などが使われているのが一般的です。
例えばハイグレードな屋根材であれば耐久性が高く、塗装メンテナンスは20年に1度ですむのに、ローコスト住宅では10年に1度塗り直しが必要になるかもしれません。コストを重視して平屋を建てるのであれば、建築後のランニングコストも視野に入れておくことが大切です。
最後にあらためて藤木さんに、予算1000万円くらいで平屋を検討するときのアドバイスを伺いました。
「現在建築価格や人件費が高騰しているので、予算1000万円くらいで平屋を建てるときには、いかにコストカットするかが重要になります。そのためには、できるだけ建築面積を小さくするのが原則です。小さな家でも、外の景色を取り入れる、天井高を上げる、できるだけ部屋を区切らないようにするなど、少しでも広く見える工夫をしてみてくださいね」
1000万円くらいで建てられる家の広さは、家の構造や設備・建築資材のグレードなどによって異なる
土地も含めての家の予算1000万円くらいは、都市部では現実的ではない
小さな家でも工夫次第で広く見せることができる