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“ニッチ”という言葉、ご存じですか?一般的には「隙間」という意味でよく使われますが、実はインテリアを考える際に知っておきたい、住まいにまつわる用語でもあります。今回は住まいの“ニッチ”とその使い方について、インテリアコーディネーターの住吉さやかさんに教えてもらいました。
木造住宅の壁は、間柱という柱を等間隔に立て、そこに石膏ボードなどを取り付け、クロスを張るなどの仕上げがなされているものが一般的です。このような壁の場合、壁の中の間柱と間柱の間には空間ができますが、この空間を利用して設ける壁面のつくり付けの棚のことを“ニッチ”と呼びます。
「ニッチは、ちょっとした小物などを飾る飾り棚としてだけでなく、収納スペースとしても活用できる便利なスペースです。
ニッチは壁の空間の厚みを利用して設けるため、ニッチをつくることができない壁もあります。例えば、断熱材が入っている外に面する壁や、コンクリートに石膏ボードが直接張られているような壁には、ニッチを設けるための空間がなく、壁の中に間柱がある壁の場合でも、柱の部分にはニッチをつくることはできません。
つくりたい場所につくれるとは限らないので、建築段階ではしっかりと専門家の意見を聞き、相談するのがオススメです」(住吉さん、以下同)

ニッチという言葉のイメージから、小さな収納スペースを想像する人も少なくないと思いますが、そのサイズは小さいものばかりとは限りません。
「ニッチの奥行きは壁の厚さにもよります。一般的な在来工法の場合、壁の厚さは13cm程度ですので、石膏ボードの厚みなどを差し引くと、ニッチの奥行きは10cm未満になります。収納スペースとして活用したい場合などは、設計の早い段階から計画をすれば、壁を厚くして、奥行きのあるニッチをつくることも可能です」

「横幅は柱と柱の間隔まで広く取ることができるので、例えば幅90cmほどのニッチというものも工法によっては可能です。高さは足元から天井までの高さをニッチとして活用できます」

使いたい場所にDIYでニッチをつくる方法もありますが、前述したように、ニッチをつくることのできない壁もあるので注意が必要です。また、ニッチをつくることができる壁の場合でも、下地を確認し、柱にあたる部分に穴をあけてしまわないよう、慎重に作業を進めなければなりません。
「DIYに慣れている人であれば、自分でニッチをつくることも不可能ではないかもしれませんが、壁に穴をあけてつくるものなので、万が一失敗した場合、DIY初心者には上手く挽回するのが難しいと思います」
例えば、ニッチ自体をつくるのではなく、ニッチに扉をつけるDIYであれば、ニッチにはめ込むことができる既製品の収納棚もあるので、そういったものを利用するという方法もあります。

ニッチは、キッチン、リビング、洗面、玄関など、さまざまな場所に設けることが可能です。そのため、つくり付ける場所や使う人によって、その用途も実に多様です。
「家づくりをする際に、お気に入りの小物や季節のアイテムなど、ちょっとしたものを飾るスペースが欲しいと感じている人はたくさんいらっしゃいます。ニッチは比較的手軽につくることができるので、飾るスペースとしてニッチをつくる人も多いですね」


飾るスペースとして活用する以外にも、実用的な収納スペースとしてニッチを活用したいという人もいます。
「ほかの収納と違い、ニッチを利用した収納は壁から出っ張らないのが魅力です。ニッチを上手に設ければ、片づけやすく邪魔にならない収納がつくれます」
家具のレイアウトなども考慮して、しっかり収納のプランニングを立てた上で、ニッチの位置やサイズを計画すると、ニッチを収納スペースとして有効に使うことができるそうです。




空間を有効活用でき、収納としても装飾スペースとしても活用できるニッチですが、せっかくつくるのであれば、おしゃれに使いたいものです。例えば、ニッチ部分の壁の仕上げに、アクセントになるような壁紙やタイルなどを張られているものもありますが、ほかの壁とは異なる仕上げにすることで、ニッチ自体をインテリアのアクセントにすることができます。
「アクセントになるような壁紙やタイルを張ると、ニッチ自体が飾りの役割を持つので、たくさんのものを置かなくても、お部屋のアクセントになります。
また、ニッチに照明を取り付けたい場合、縦長のニッチにはスポットライトタイプ、横長のニッチにはバータイプの照明がオススメです。凹凸感のある素材は照明を当てることで表情が出るので、石やタイルなどを張ったニッチには、ぜひ照明を取り入れてみてはいかがでしょうか」
収納として活用するニッチについては、さり気なくしていた方がいいため、照明まで取り付ける必要はないですが、ニッチは目に入りやすい、目立つ位置につくることが多いので、収納スペースとして使う場合でも、少し見える背景部分にきれいな壁紙が張られていたりすると、見せる収納として使いやすくなるそうです。

ニッチを収納として使う場合は、収納ケースなども活用しながら、色に統一感を持たせると、すっきり上手く活用することができるそうです。
「一般的なオープンタイプの収納の場合と同じく、ニッチの場合も収納ケースやかごなどに入れて収納すると、見た目が整うのはもちろん、分類しやすく、取り出しやすくもなるので使い勝手がいいと思います。また、色が多いと、それだけで雑然とした印象になるので、色みをそろえて色数を抑えると、すっきりとした印象になります」

飾るスペースとしてニッチを活用する場合、小物の配置の仕方などで、よりおしゃれに見せることができます。
「素敵に見える飾り方のルールというのがいくつかあります。まず、縦に空間が並ぶニッチの場合は、物を置かない空間を左右に点在させることで、バランスよく見せることができます」

「小さなニッチを複数並べてつくるのもオススメです。ニッチをつくる空間(壁)の大きさや形に合うように、小さなサイズのニッチを複数並べて、同じような色やサイズの小物を飾ると、1つだけニッチをつくって飾るよりもボリューム感がアップして華やかになります。
“3”はバランスがよく見える魔法の数なので、スペースがある場合は3つ並べるのがオススメですが、スペースがない場合や、飾りたいものの数によっては2つ並べてもOKです」

「大きめのニッチの場合は、三角形を意識して配置するとバランスよく見えます」

「素敵なニッチにするには、小物をどう配置するかも大事ですがテーマを持って飾ることが大切だと思います。クリスマスやハロウィンなど、季節感を表現する飾りはテーマを意識しやすいので、ぜひトライしてみてください。日常的にお気に入りの小物などを飾る場合は、テーマを決め、色やテイストをそろえて、飾るものを厳選して飾ると、素敵に飾ることができると思います」

サイズも使い方もさまざまなニッチ。紹介した使い方のコツも参考に、ニッチでお部屋をすっきり、自分らしく使ってみてください。
ニッチとは壁の厚みを利用して設ける棚
さまざまな場所に設置可能で、アイデア次第で飾り棚にも、便利な収納スペースにもなる
DIYも可能だが、避けた方がいい壁もあるので、注意が必要