注文住宅を建物の予算3000万円台で建てる場合、具体的にはどんな広さや間取り、構造の家を建てられるのでしょうか? この記事では、予算3000万円台で建てられる家の特徴や、実際の間取り・施工事例、建築時のポイントや注意点などを、クレバリーホームの菊間文弥さんに伺いました。
国土交通省の建築着工統計調査(2021年度)によると、一戸建て住宅の平均工事費は2349万円、平均延床面積は約118m2(約35坪)です。平均の建物工事費を延床面積で割った平均坪単価は、約66万円になります。土地別予算3000万円で同じ35坪の家を建てたとして考えると、坪単価は約85万円かけられる計算です。
「クレバリーホームの平均の建物工事費は2518万円、平均坪数は約36坪、平均坪単価は70.4万円です。そう考えると、土地別予算3000万円、坪単価85万円は潤沢な予算といえます。例えば外壁タイルのグレードを上げる、自然素材で内装を仕上げるなど、自分たちがこだわりたい部分にコストをかけられると思います」(菊間さん/以下同)
建物の予算としては比較的高額な3000万円を費やすと、どのような広さや性能を有した家を建てられるのでしょうか?
「3000万円で建てられる家の広さは、坪単価によって異なります。
例えばクレバリーホームの標準仕様の坪単価は約70万円なので、単純に計算すると42.8坪(約141m2)の家が建てられます。一方グレードを上げて坪単価90万円の仕様にする場合には、建てられる家の広さは33.3坪(約110m2)です。
このように、予算が同じであれば、広さとグレードはトレードオフの関係になる傾向があります。ただ実際のところ設計者はほかのさまざまな要素も考慮して検討し、お客様の希望に最大限沿える提案をするので、まずは希望を伝えることが大切です」
「注文住宅は木造か鉄骨造で建てられるのが一般的です。ウッドショックや円安などの影響で木造の坪単価も上がりましたが、鉄骨造よりはまだ低いままです。坪単価でいうと、木造で60万円から70万円、鉄骨造で90万円から100万円程度が平均だと思います。
建物予算を3000万円とした場合、木造だと40~50坪、鉄骨造だと30~33坪となり、木造のほうが広い家を建てられることになります」
家を建てるときには、建築確認申請時の最新の建築基準を満たす必要があるため、価格にかかわらず最低限の耐震性や断熱性は備えています。予算を3000万円とする場合は、そこからさらに性能を高めることも可能です。
「クレバリーホームでは、標準仕様であっても高い耐震性や断熱性を実現できる構造を採用しています。仮に予算を3000万円とした場合には、例えば北海道で採用しているような高断熱仕様にする、あるいは強い台風に耐える沖縄の家と同等の強度を備えた家にするなど、性能のグレードを高めることが可能です」
「キッチンやお風呂、洗面、トイレなど、どの住宅にも必ず備わっている設備についても、予算が3000万円あればハイグレードのものを選べます。また、家全体の室内温度を調整できる全館空調も実現可能です。
あるいは太陽光発電と併せ、通常はオプションとなるケースが多い蓄電池を導入することもできるでしょう。蓄電池があると、夜間や災害時でも自家発電した電気が使えるので便利ですが、容量によっては200万円から300万円と高額で、あきらめる方も少なくありません。予算が3000万円あるのなら、一緒に導入できると思います」
ここからは、実際に建物予算3000万円台で建てられた家の事例を間取りとともに紹介します。
「玄関やキッチン、浴室などを共有するタイプの二世帯住宅です。二世帯住宅は水まわり設備をそれぞれ2カ所設ける分離型だと高額になるため、予算を上げる、もしくは延床面積を狭くすることになりがちです。しかしこちらのケースでは、子世帯はミニキッチンやトイレなど最低限の設備とし、主要設備を親世帯と共有することで、予算3000万円台であっても68坪(約225m2)という広々とした居住空間を確保できました」
「赤レンガ風のタイルとシンプルな白いタイルを1階と2階で張り分けることで、モダンな外観に仕上げました。クレバリーホームでは外壁にタイルを採用していますが、タイルは高級感を演出できるだけでなく、塗装メンテナンスが不要なのもメリットです」
屋根の上には「娘のためにサンタが入ってくる煙突をつくってあげたい」との施主の希望を実現するために飾り煙突をアクセントに設置。理想としていた「赤いレンガ風のかわいい家」は、デザイン性もメンテナンス性も抜群です。
三角の切妻屋根と円形ルーバー、窓枠に取り付けられたグリーンのモールとフラワーボックスなど、まるで外国の絵本に出てくるようなおしゃれな洋風デザインの家です。
「天井まである本棚やカップボードなど、収納もすべてオリジナルで用意し、造り付けにしています。ドアや床材と色合いを合わせることでテイストが統一され、とてもおしゃれにまとまります」
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「家族団らんも一人のときも幸せ時間を満喫できる、音楽室のある住まい」
「アシンメトリーな切妻の大屋根の勾配部分に居室を設け、まるで平屋のような2階建てにすることで、コストを抑えつつ必要な空間をすべて確保しています」
1階と2階は開放感のある吹抜けで緩やかにつなぎ、コミュニケーションをとりやすくしました。二人が自由に動けるアイランドキッチンにし、洗う・干す・しまうまでがスムーズにおこなえるよう洗面とサンルーム、ファミリークロークを隣接させるなど、家事動線にも工夫されています。
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「今もこれから先も、ずっと快適に暮らせる“平屋のような2階建て” 」
3000万円の家を住宅ローンで購入する場合には、どの程度の年収が必要なのかも菊間さんに伺いました。
「住宅ローンの年間の返済額については、手取り年収の25%程度に抑えるのが安心ラインとお伝えしています。借入金額が3000万円であるのなら、年収は450万円から550万円程度が目安です。住宅ローンは30年、35年と長い時間をかけて返済していくものなので、無理のない金額に抑えることが大切だと思います。
なお年収は、これからどちらかが働けなくなる可能性がある場合を除き、ご夫婦の年収を合算した世帯年収としてよいでしょう」
2021年(令和3年)の国税庁による民間給与実態調査では、所得者の平均給与は443万円と報告されています。平均程度の年収があれば、3000万円の家を建てられると考えてよさそうです。
住宅ローンの借入額は、頭金をいくら入れるかによっても異なります。住宅金融支援機構のフラット35利用者調査(2021年度)によると、頭金の全国平均は借入額の17%。3000万円借り入れる場合には、約510万円に相当します。
「クレバリーホームでは、頭金は平均より少なめの10%程度でご提案しています。現在はマイナス金利政策がおこなわれており、住宅ローンの金利も大変低くなっているためです。
金利が低いときには支払う利息も少なくて済むので、頭金を多く入れるより、万一に備えて手元に多めの現金を残しておくほうが安心感を得られます。もし金利が上がってきた場合には、そのときに手元にある現金で繰り上げ返済を考えればよいと思います。
また今は給料も上がりにくくなっているので、たくさんの頭金を貯めるのは大変です。その間に家賃を払い続けることや、金利が上がる可能性を考えると、頭金の額を抑えて早めに家を建てるのは悪くない選択だと思います」
予算内でできるだけ希望をかなえるためには、どこにどのような費用がかかり、どうすればコストを抑えられるのかを考える必要があります。注文住宅の建築費を3000万円台に抑えるためのポイントや注意点を伺いました。
「建物本体価格の予算が3000万円あれば、理想をかなえやすくなりますが、すべてを実現できるとは限りません。そのためこだわりポイントと優先順位を明確にしておくことが大切です」
ハウスメーカーや工務店も、それぞれこだわりを持って家づくりをおこなっています。自分たちが大切にしたい点が明確になっていれば、建築会社を選ぶときにも判断しやすくなるでしょう。
「コストを抑えたいと考える場合でも、構造躯体など住宅の耐久性や性能に影響する部分の費用は削らないことが重要です。
家の内装や設備などは、経年により老朽化しても修繕や交換ができるようになっています。しかし骨組みなどの構造躯体に関しては、やり直しや交換はできません。お子さんやお孫さんの代まで長く住める家にするためには、コストをかけるべき部分だと思います」
「家は凹凸が多くなるほど材料費や施工費がかかります。そのため平屋ならコの字型やL字型ではなく四角形にする、2階建てなら総二階にする、屋根は切妻屋根や寄棟屋根にするなど、シンプルな形状にするとコストを抑えやすくなります。
シンプルな外観であっても、例えばタイルの種類やデザイン、色を張り分けるなど工夫すれば、十分個性的で満足度の高い家になると思います」
「同じ延床面積の家を建てる場合、平屋ではなく2階建て、総2階にすると建築コストは安くなります。それは、例えば延床面積40坪の家を建てると仮定すると、平屋であれば基礎も屋根もどちらも40坪必要ですが、2階建てであれば基礎も屋根も2階の面積分小さくできます。また総2階であれば、それぞれ半分の20坪で済むためです。
基礎や屋根は家のなかでもお金がかかる部分なので、コストを抑えたい場合は、外観の形状についても設計者に相談するとよいでしょう」
「近年は住宅の断熱性や気密性などが高くなったこともあり、北欧の家のように玄関から入ったらすぐに広々としたリビングがあるような、廊下をなくした空間設計も人気です。このような部屋を細かく区切らない間取りは、間仕切りが少なくなるので材料費や施工費を抑えられます。
部屋を細かく区切らなければ、可変性が高くなるのもメリットです。例えば子ども部屋が2室隣り合って配置している場合に、間仕切り壁を設けず広くとり、成長したら収納家具で仕切るようにする。そうすれば、成長して巣立ったあとはまた広く使えます。
そのようなことができるよう、クレバリーホームでは間仕切りを兼ねた収納アイテムなどをご用意しています。収納アイテムで間仕切るため、リフォーム工事をする必要がないので将来的なリフォームのコストも減らせます」
「家を建てるときには、本体工事費以外に付帯工事費と諸費用もかかります。付帯工事費には仮設工事費、外部の給排水工事、設計図書作成費などが、諸費用には登記費用や住宅ローンの事務手数料などが含まれます。付帯工事費と諸費用は、給排水を埋設する長さなどによって変動しますが、合わせて300万~500万円が目安です」
家の本体工事費を3000万円、付帯工事費と諸費用を300万円とした場合、家の総建築費は3300万円。さらに消費税10%を加えると、税込の総建築費は3630万円となります。予算オーバーとならないよう、付帯工事費と諸費用、そして消費税はあらかじめ見込んでおきましょう。
「土地込み予算3000万円の場合、3000万円から土地代を引いた金額が注文住宅の予算となります。
例えば土地代が1000万円なら家の予算は2000万円なので、クレバリーホームの平均坪単価70万円で考えると、やや小さめの28坪(約93m2)程度の家が建てられます。一方土地代が2000万円だと建物予算は1000万円となり、坪単価70万円だと14坪(約46m2)分にしかならず、一戸建ての予算としては現実的ではないでしょう。
土地込み予算3000万円で注文住宅を考えるのであれば、坪単価にもよりますが、土地予算は1200万円から1500万円ほどに抑え、最低でも1500万円から1800万円程度を建物予算として確保する必要があると思います」
※坪単価はあくまでも目安となります。坪数が小さければ坪単価は高くなるので、坪単価ではなく『建築費用で総額いくらなのか』という見積もり価格を基準に考えましょう
建物工事費の予算が3000万円と決まっているのであれば、建てたい家の延床面積で予算を割って坪単価を出し、その価格帯で建ててくれるハウスメーカーを探すのも方法の一つです。
「とはいうものの、会社のホームページなどを見ても坪単価などの情報は掲載されていないことが多いです。その場合、SUUMOのように建築面積や坪単価・建物価格の情報を掲載しているサイトを見て、価格の目安を確認するとよいと思います。そのうえでモデルハウスなどを見に行って、詳しく話を聞いてみましょう。
ただ、モデルハウスに1~2時間滞在しただけでは、実際の住み心地はわかりません。クレバリーホームを含め、実際にモデルハウスに宿泊し、住み心地を体験していただけるようにしている会社もあるので、参加してみるのもおすすめです。
そのようなサービスがない場合でも注文を受けて建てた家の完成見学会や、実際に住んでいるユーザーの家を訪問させてくれる会社もあります。モデルハウスよりもより生活感があるので、そういったイベントに参加すれば自分たちが実際に住むイメージが湧きやすくなると思います」
最後に改めて菊間さんに、3000万円台で注文住宅を建てるときのポイントを伺いました。
「建物予算に3000万円かけられるのであれば、自分たちの理想をかなえつつ、長く住める家づくりができると思います。
とはいうものの、家づくりは建築会社の営業や設計士、工事監督など多くの人とかかわりながら進めるものです。ホームページやモデルハウスを見ていいなと思っても、話をしてみるとちょっと違うと感じることもあるでしょう。
多くの方にとって、家は一生に一度のお買い物になるのですから、この人なら信頼できる、任せたいと思える人がいる会社を探し、一緒に家づくりを楽しんでいただきたいと思います」
3000万円は、建物のみの建築工事費としては潤沢な予算
予算内でできるだけ多くの希望をかなえるためにはこだわりポイントと優先順位を明確にしておく
建築会社を選ぶときには、完成見学会などで実際の住み心地を確認するのがおすすめ