「日照権」とは?隣家とトラブルにならないよう、新築時に気を付けるポイントを解説

最終更新日 2025年10月23日
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「日照権」とは?隣家とトラブルにならないよう、新築時に気を付けるポイントを解説

自分の家の日当たりが気になる人は多いでしょう。一戸建てを新築するなら、日当たりにもこだわりたいもの。住宅の日当たりには、「日照権」が絡んできます。その日照権とはどういうものか、隣家と日照権でトラブルになることはないのか、弁護士の岡田修一さんに伺い解説します。

日照権とは?

住まいを新築しようと考えたとき、日当たりのいい家にしようとすると、気になるのが「日照権」です。

「日照権に法律上の明確な定義はありません。定義は人それぞれで、『日照を享受する権利』と言えます」(岡田さん、以下同)

空から降り注ぐ太陽の光を浴びて、健康的かつ快適に暮らす権利、と言い換えてもいいかしれません。

日照権は、憲法や法律で保証されている?

日照権は、法律などで定められた「権利」なのでしょうか?

「条文上の明確な記載はありません。一般的に憲法13条から導かれる人格権、そして民法で定める土地建物の所有権から導かれる物件的請求権として適切な日照を得る権利、これらのどちらか、または両方を根拠とする場合が多いです」

建築基準法と日照権の関係

日照権自体は人格権や所有権に基づくものですが、建築について定める建築基準法の日照に関わる規制に「日影規制」や「北側斜線制限」があります。

日照権と関係の深い「日影規制」「北側斜線制限」とは?

日影規制

日影規制(ひかげきせい・にちえいきせい)は、建築物による影で周囲の日照を遮らないように、高さを制限する規制です

高さは建築基準法で定められており、規制対象区域と規制値等は地方公共団体の条例で定められています。
条例では冬至の日(12月22日ごろ)を基準として、午前8時から午後4時まで(北海道のみ午前9時から午後3時まで)の間で、平均地盤面から一定の高さの敷地境界線を起点に5m超と10m超の範囲内で、それぞれ一定時間以上の日影を生じさせないことが求められています。

規制を受ける建築物が、「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」では、「軒の高さ7mを超える建物、または地階を除く階数が3階建ての建物」となっています。それ以外の地域については「建築物の高さ10mを超える建物」などとなります。
なお、軒の高さとは、土地面から屋根の頂点までの高さではなく、屋根組みまでの高さのことです。

日影規制を受ける範囲の例
日影規制では、起点から5m超と10m超の範囲内で、一定時間以上の日影を生じさせないことが求められる(イラスト/いぢちひろゆき)

北側斜線制限

北側斜線制限という決まりは、北側にある隣地の日照権を守るために建築基準法により定められている高さ制限です

北側斜線制限は、「第一種・第二種低層住居専用地域」「中高層住居専用地域」のみで定められている決まりです。敷地の真北方向の隣地境界線から一定の高さを立ち上げた中空を起点にして、その敷地に向けて一定の勾配の斜線(北側斜線)の範囲内で建築物を建てる必要があります。
例えば、第一種・第二種低層住居専用地域では、立ち上げの高さが5m、勾配が「1:1.25」。また第一種・第二種中高層住居専用地域では、立ち上げの高さが10m、勾配が「1:1.25」となっています。

北側斜線制限
北側斜線制限は、北側にある隣地の日照を守るために定められている(イラスト/いぢちひろゆき)

一戸建てで主張できる日照権は?

「日照権を侵害しているかどうかは、社会通念上我慢すべき限度である「受忍(じゅにん)限度」を超えているかどうかで判断されます。
問題の建物が、日影に関する建築基準法や行政の定めに抵触しているような場合は、受忍限度を超えると判断されることがほとんどと言えますが、一方で、法令違反がない場合は、受忍限度は超えるまでの侵害はないとして、違法とはされないことが多いです。
ただ、後でも紹介しますように、法令違反がない建物についても、日照が遮られる時間の長短や生活への影響程度などの事情から、違法な日照権侵害が認められるケースもないわけではないです」

日照権を主張されるのは、どのようなとき?

建築基準法に抵触している場合、訴えられた側に非があるのは自明ですが、建築基準法を守った上でトラブルになる場合、どのような相談が多いのでしょうか。

「相談を受けるのは、隣にマンションなどの大きな建物が計画されている場合が多いですね。隣家が一戸建て住宅の場合、日照権だけが問題になることは少なく、工事騒音や目隠しフェンスの有無など、近隣紛争の相談の中に日照権が含まれることがほとんどです。そして、日照権の問題はなかなか解決せずに、最後まで残ることが多いですね」

近隣とトラブルになり、相手方に「日照権を侵害された」と主張されるのは、どのようなケースなのでしょうか。

近隣との距離・方角は?

「隣家との距離は、接近していればいるほど、トラブルになる可能性は高いですね。また方角は、日照が遮られたと訴える人の家屋が北側にあるケースが多いのが実情です。しかし、建築基準法上の規制以外に明確な基準がないので、案件ごとの事情によります」

被害を訴えている側の事情や地域性、他の建造物との関係など、トラブルにはさまざまな要素が絡んできます。

樹木に対して日照権を主張できる?

これまでは、主に建築物が日照を遮るケースで考えてきましたが、樹木が日照を遮る場合、日照権を主張できるのでしょうか?

「樹木による日照権のトラブルは、枝の越境や落ち葉の侵入に対するクレームと一緒に相談されることがほとんどです。ただ、樹木は邪魔な部分だけを伐採できるので、話し合い、いわゆる示談での解決が多いですね」

樹木による近隣トラブル
樹木による日照権のトラブルも、話し合いから始めましょう(イラスト/いぢちひろゆき)

太陽光発電への影響は?

「日照に関することでは、太陽光発電の問題もあります。日照を期待して費用をかけ、太陽光発電を設置。利益を見込んでいたが、近隣に建築物が建ち、予想以上に日照が得られず、収益に影響が出る場合などです」

太陽光発電については、ソーラーパネルに日光が反射して眩しいと近隣からクレームが生じる場合もあり、訴えが認められるかどうかはケースバイケースとなります。

日照権でトラブルになった場合は?

自家の日照が得られない、近隣から日照に関するクレームを受けたなど、日照権でトラブルになりそうな場合はどうすればいいのでしょうか?

相談窓口

「市町村の建築指導課などに相談することも一つの方法です。ただ、建築基準法等に抵触していなければ、対応には限界があります。
各弁護士会の法律相談を利用するとよいと思います。弁護士の得意分野を見て選べる相談の場合は、事前に所属する弁護士のプロフィールを確認して、日照権について詳しそうな弁護士に相談を希望するといいでしょう」

相談費用は1時間1万円程度のことが多いようですが、事前に確認しましょう。初回相談が無料の弁護士事務所を利用したり、所得制限はありますが、法テラスを利用したりすれば無料での相談もできます。

また、自分が家を建てる前に周囲への日当たりが気になるのであれば、建築士や建築会社に相談することもできます。家の図面が上がってきた段階で気になるのであれば、建築士団体がセカンドオピニオンとして相談に乗ってくれることもあるので、トラブルの事前防止に活用しましょう。

トラブル例

「日照権は、マンション建築に関係したトラブルが多いですね。建物同士の距離がかなり離れているのに被害を訴える人もいます。マンションの建築計画が明らかになった段階で近隣住民が何人か集まって被害を訴えたこともありました。一方、一戸建てが一戸建てを訴えるという例は少ないですね」

マンション建築による日照権のトラブル
日照権のトラブルはマンション建築に関するものが多い(画像/PIXTA)

日照権が認められた判例と、認められなかった判例は?

日照権が認められた判例とポイント

日影規制のない立地でも受忍限度を超えると認定

■2010年2月24日 神戸地裁尼崎支部の判例
日影規制のない立地に計画された14階建てのマンションに対し、隣地マンション(8階建て)の住民が神戸地裁尼崎支部に「日照権を侵害される」として建築差し止め仮処分を申し立て、マンションの10階以上の建築が禁じられました。

「冬至期における午前8時から午後4時までの間で、日影時間が4時間を超える住戸があり、受忍限度を超えると認めるのが相当、とされた点がポイントです。判断基準は、日影規制の有無ではなく、受忍限度を超えるかどうかとなっています」

冬至期以外で高速道路が住宅の日照権を侵害

■2020年7月30日 名古屋高裁岡崎支部の判例
新東名高速道路の建設によって、近隣住民が「日照権を侵害された」として損害賠償を求めました。国土交通省の通達では、冬至の午前8時から午後4時、居室の開口部が4~5時間日影になる場合は補償の対象としていましたが、冬至にはその基準に満たなかったため、一審の名古屋地裁岡崎支部は、冬至を基準とすることは合理的とし、原告の訴えを退けました。
しかし二審の高裁では、原告住人の住宅が日影になる時間は、春分と秋分には7時間になり、年間平均では5時間に及ぶとして、日照被害は大きく、受忍限度を超えていると判断しました。

「冬至に限らず、一年を通して日照が遮られるかどうかで判断された点がポイントです。年間平均5時間、春分や秋分には7時間も日照を侵害される住民の気持ちに寄り添った判例と言えます」

日照権が認められなかった判例とポイント

夏至を基準とすると受忍限度を逸脱していたが、被害を認められなかった判例

■2014年2月17日 東京地裁の判例
隣地建物により冬至の日、ほとんど日照が遮られるような状況になった住民が、東京地裁に提訴しました。しかし、春分の日などは影響が少なかったこと、以前は隣地に低層建物が建っていたため、原告が敷地境界線に接するように住宅を配置していたことも新たに建った建物に日照を遮られる原因であること、訴えられた建造物が幼稚園として利用されており公共性が高いことなどを理由に、訴えは退けられました。

「冬至を基準にすると受忍限度を逸脱しているとも言えますが、原告側が将来的な日照を想定していなかった姿勢や建物の公共性など、その他の要素も加味されて、認められなかった点がポイントです」

日照被害のある部屋がほとんど使用されていなかったため、被害を認められなかった判例

■2020年12月11月30日 札幌地裁の判例
日照時間が短く、直射日光がほとんど得られないとして隣家を訴えましたが、日照を遮るとされた住宅は低層であり、日影規制の対象ではありませんでした。また、原告側は日中、日影の状況とは異なる理由で在室しておらず、日影の影響は限定的などとして、訴えは認められませんでした。

「日照が遮られる部屋を日中使っていないことも考慮要素として、訴えが認められなかった点がポイントです。個別事情などから、受忍すべき限度を逸脱しているかどうか判断されました」

日照権でトラブルを防ぐポイントは?

これまで見て来たとおり、建築基準法を守っていても、裁判になると受忍限度の判定はさまざまで、判決も多様です。

「感情的になって近隣住民とトラブルを起こすと、将来にわたって快適に住み続けるという観点では中長期的に見て大きなデメリットになります。そのため、相手の状況も考慮せざるを得ないこともあります。無理な要求をのむ必要はありませんが、ある程度言い分を聞く耳を持ち、お互いの意見を調整する努力をすることも大切です。裁判では、誠実に対応したかどうかも判断基準になります」

住まいを持とうと検討している土地の周辺地域で、今後マンションなど大型建築物の建築計画がないか、日照権でトラブルになる可能性はないかなどを事前に確認しておきましょう。

日照権のトラブルで話し合い
感情的にならず、誠実な対応を心掛けましょう(イラスト/いぢちひろゆき)

隣家と日照権でトラブルになるのは、避けたいものです。日当たりを確保しつつ、隣家ともトラブルにならないよう心掛けて、事前の準備を進めてください。

まとめ

建築基準法の日影規制や北側斜線制限と関わりがある

建築基準法を守っていてもトラブルになることはある

感情的にならずに誠実に対応を

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取材・文/福富大介(りんかく) イラスト/いぢちひろゆき
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