建物滅失登記とは?自分でもできる?手続きの流れや必要書類、費用などを解説

公開日 2024年05月29日
建物滅失登記とは?自分でもできる?手続きの流れや必要書類、費用などを解説

建物を取り壊したときに必要になる「建物滅失登記」。登記を怠ると、どのようなデメリットがあるのでしょうか? また費用を抑えるために、自分で手続きすることはできるのでしょうか。

今回は、建物滅失登記が必要になるのはどのようなときなのか、放置するとどうなるのかなどを、土地家屋調査士の浅川正雄さんに伺い解説します。建物滅失登記をする際に必要になる書類なども紹介します。

建物滅失登記とは? しないとどうなるの?

まずは、そもそも建物滅失登記(たてものめっしつとうき)とはどのようなものなのか、しないとどうなるのかを解説します。

建物滅失登記とは

建物滅失登記とは、登記簿に登記されている建物が滅失した事実を登記簿に反映させることを指します。なお「滅失」とは、「物理的になくなる」ことを意味します。

「建物が建てられると、それがどのような構造の建物か、誰が所有しているのかなどを登記する『表題登記』がおこなわれ、登記簿が作成されます。建物滅失登記は、表題部の登記事項を抹消する手続きです。表題部が抹消された登記簿は、『閉鎖登記簿』として公開の対象から外されます」(浅川さん/以下同)

建物滅失登記が必要になるとき

建物滅失登記が必要になるのは、建物を解体したときです。また火災で焼失したり、自然災害で滅失したときも、滅失登記が必要です。

「火災や自然災害以外では、基本的には『意図的に』取り壊した場合に『滅失した』とされ、滅失登記が必要になります。一方、田舎にある誰も住まない実家が建物の劣化で今にも崩れそうな場合は『滅失した』とはみなされず、滅失登記はできないのが一般的です。

近年は建築技術が向上しており、構造だけを活かして家を再建することもできます。意図的に取り壊していない物件を滅失登記した場合、滅失登記の回復が必要となり、手続きが複雑になる可能性があります」

建物滅失登記の対象になる家とならない家
同じように人が住めなくなっている家であっても、滅失登記できるケースとできないケースがある(イラスト/つぼいひろき)

建物滅失登記をしないことの問題点

建物を取り壊したにもかかわらず、建物滅失登記をしないでいると、どのような問題が起こるのでしょうか。

固定資産税がかかり続ける可能性がある

建物滅失登記をしないでいると、登記簿上は建物が存在したままとなり、固定資産税がかかり続ける可能性があります。固定資産税は、毎年1月1日時点の『登記簿上の所有者』に対して課税されるためです。

「固定資産については、年に1回、状況に変化がないか調査がおこなわれることになっています。その際、建物がなくなっていることが分かると、担当部署から状況を確認するために連絡が来るケースもあるようです」

土地を売却するのが難しくなる

滅失して現存しない建物が登記簿上に残っていると、土地を売るのが難しくなります。そのような土地を購入し、自ら建物滅失登記をしようと思うような人はいないと考えられるためです。

新しい建物を登記できない可能性がある

更地となっている土地に家を建てて表題登記しようとしたところ、実は建物滅失登記がされていなかったといったケースでは、建物滅失登記が終わるまで新しい建物を登記できない可能性がでてきます。

「ほかにも抵当権が残ったまま取り壊したようなケースでは、抵当権者(金融機関など)の建物滅失登記への承諾が必要になり、準備が整うまで表題登記ができないこともあります。

ただしそういった場合でも、土地家屋調査士※が状況を説明すれば、建物滅失登記を待たずに表題登記できるのが一般的です。まずは土地家屋調査士に相談してみてください」

※土地家屋調査士とは、不動産の登記において必要になる、土地や家屋の調査や測量をおこなう国家資格者です。

建物滅失登記は誰が、いつすればいいの?

建物滅失登記ができる人には制限や期限があるのでしょうか。

建物滅失登記ができる人

建物の所有権がある人

建物の滅失登記の申請ができるのは、その建物の所有者として登記されている人です。滅失した建物が共有不動産で、所有者が複数いる場合は、全員の許可を得る必要はなく単独で滅失登記をおこなえます。

「共有不動産については、共有者全員の同意が必要になる『変更・処分行為』、持分割合に応じた過半数の同意が必要になる『管理行為』、そして単独でおこなえる『保存行為』があります。滅失登記を単独でおこなえるのは、建物滅失登記は共有不動産に対する『保存行為』に該当するからです。

なお、取り壊し自体は『変更・処分行為』にあたるので、共有不動産である場合、所有者全員の同意が必要です」

建物の相続人

「親から相続した土地の建物が、実際は滅失しているにもかかわらず、登記簿上には建物が残っている場合もあります。そのようなケースでは、相続人であれば誰でも建物滅失登記の申請が可能です。こちらについても同じく、共有不動産に対する保存行為であるため、ほかの相続人の同意を得なくても、単独でおこなえます」

土地家屋調査士

所有者、相続人以外で建物滅失登記の申請ができるのは、土地家屋調査士だけとされています。

「登記簿には、不動産の所在地値や面積、構造などが記載される表題部と、所有権や抵当権に関する事項が記載される権利部があります。権利部に関することは司法書士でもおこなえますが、表題部の登記については、土地の所有者や相続人以外では土地家屋調査士しかできません。

建物滅失登記は表題部にかかわることであるため、所有者、相続人が対応できない場合は、土地家屋調査士に委任が必要です」

建物滅失登記の申請ができる人
建物の滅失登記の申請ができる人は、建物の所有者か相続人、もしくは土地家屋調査士に限られる(イラスト/つぼいひろき)

建物滅失登記の期限

不動産登記法では、建物滅失登記は、建物の滅失から1カ月以内におこなわなければならないとし、正当な理由なく登記を怠った場合には、10万円以下の過料を課すとしています。(不動産登記法第57条不動産登記法164条

「いつをもって『建物が滅失した』とするかについては、所有者が滅失の事実を知った日からとするのが一般的です。また大きな災害で建物が滅失してしまった場合は、一定期間不履行の責任を問わない措置が取られることもあります」

建物滅失登記の必要書類は?

建物滅失登記をする際に必要になる書類を紹介します。

どんなケースでも必要になる書類

どんなケースでも必要になる書類は、次の4つです。

建物滅失登記申請書

建物滅失登記を申請するための書類です。法務局で用意しており、法務局のホームページからダウンロードも可能です。

建物滅失登記申請書のダウンロードはこちらから
登記申請書(建物滅失登記)

滅失した建物の関係書類

滅失した建物の概要が分かる、次のような書類も提出します。
いずれの書類も全国の法務局の窓口や郵送、オンラインで入手できます。

書類 概要
登記簿謄本(登記事項証明書) 不動産の登記情報が記載された書類
建物図面(各階平面図) 建物の各階の周囲の長さや床面積などが記載された平面図
公図 土地の位置や形状が記された図面

「建物平面図については、登記に際して義務化される1965年(昭和40年)以前に建てられた家ですと、存在しないこともあります。その場合はなくても問題ありません」

建物滅失証明書

建物滅失証明書とは、建物を解体・撤去した業者が建物を滅失したことを証明する書類です。決まった書式はなく、建物の所在地や家屋番号、滅失の理由、建物所有者、解体業者の名称や住所などの情報などを記載し、業者の実印を押したものを提出します。建物滅失証明書は、解体業者が無料で作成するのが一般的です。

解体事業者の代表者事項証明書と印鑑証明書

解体事業者の代表者事項証明書と印鑑証明書が必要ですので、解体事業者に発行を依頼しましょう。なお、代表者事項証明書とは、会社の代表者の代表権を証明する書類です。

状況により必要になる書類

状況により必要になる書類も紹介しましょう。

委任状

建物滅失登記を土地家屋調査士に依頼する場合には、委任状が必要です。委任状は、土地家屋調査士が用意してくれます。

相続関係を示す書類

相続人が建物滅失登記をおこなう場合、亡くなった建物の所有者との相続関係が分かる書類も必要です。亡くなった人の戸籍謄本・除籍謄本と、建物滅失登記をおこなう相続人の戸籍謄本を用意するとよいでしょう。

「相続人が複数いる場合でも、必要になるのは実際に建物滅失登記をおこなう相続人の書類だけです。全員の書類を用意する必要はありません」

住民票や戸籍謄本など

相続人が建物滅失登記をする場合など、登記簿謄本(登記事項証明書)の住所や氏名が申請者と異なるときには、申請者の住民票および戸籍謄本が必要です。

建物滅失登記は自分で申請できる? 手続きの流れは?

建物滅失登記の申請が自分でできるのか、気になる方も多いようです。

建物滅失登記は、建物が滅失したときの状況や、権利の状態などによって必要な書類は異なることもあるため土地家屋調査士に申請を依頼するのが一般的です。

ここでは自分で建物滅失登記の申請にチャレンジしてみたい方に向けて、手順や流れを紹介します。

必要書類をそろえて申請書に記入する

建物滅失登記申請書には、建物の所在地や家屋番号、建物の種類や構造、床面積などの必要事項を記入します。登記簿謄本の内容に沿って、一言一句間違いなく記載することが大切です。

建物滅失登記申請書
建物滅失登記申請書は、登記簿の内容と相違ない記載が必要(画像引用/法務局)

法務局に書類を提出する

必要書類の準備ができたら、滅失した家を管轄している法務局に書類を提出します。必要書類はどの法務局でも入手できますが、提出は滅失した建物の管轄の法務局になります。建物滅失登記をする法務局が遠方の場合は、郵送での提出も可能です。

なお、建物滅失登記の申請は、専用ソフトをインストールすることでオンラインでもおこなえます。ただし、マイナンバーカードとカードリーダーが必要になり、さらに添付書類はオンライン申請の受付日から2日以内(初日、休日などをのぞく)に登記所に持参、もしくは書留郵便などによる送付が必要です。

建物滅失登記のオンライン申請についてもっと詳しく
建物を取り壊した(建物滅失の登記をオンライン申請したい方)

登記完了証を受け取る

法務局側の手続きが完了したら、建物滅失登記をした法務局で登記完了証を受け取ります。あらかじめ返送用の封筒と必要な郵便切手などを用意して渡しておくことで、郵送での受け取りも可能です。

「登記完了証の受け取りまでにどのくらいの期間がかかるかは、管轄する法務局や状況によって異なるため一概には言えません。私たちが手続きした場合でも、1週間で済むこともあれば、1カ月かかることもあります。

法務局では、各手続きに対する完了予定日を窓口に掲示し案内しているので、その日にちを目安にするとよいでしょう」

建物滅失登記にかかる費用は?

法務局で登記する際には、登録免許税がかかる場合もありますが、建物滅失登記にはかかりません。そのため自分で手続きをするのであれば、手続き自体に費用がかかることはありません。建物滅失登記の手続きを土地家屋調査士に依頼する場合は、5万円程度が相場です。

「これは登記簿や公図、平面図などの調査を含めた一般的な相場です。ただし建物滅失登記をする不動産が遠方で、調査するために出張する必要がある場合、別途費用がかかります。建物滅失登記の依頼費に定価はなく、ケース・バイ・ケースであるため、まずは見積を取ってみるとよいでしょう」

土地家屋調査士と計算機
土地家屋調査士への建物滅失登記申請依頼の相場は5万円程度(画像/PIXTA)

確実に手続きしたいなら、建物滅失登記は土地家屋調査士に依頼しよう

最後にあらためて浅川さんに、建物滅失登記についてのアドバイスをいただきました。

「建物滅失登記をするときには、手違いがないように、土地の地番と建物との関係が間違いかなどを、慎重に調べる必要があります。

また登記手続きに際しては、一言一句正確な記載が必要になり、間違った場合は管轄の法務局まで足を運んで修正しなければなりません。不足書類の修正・追加は郵送でやりとりすることもできますが、時間がかかってしまいます。そのため建物滅失登記は、基本的には専門家である土地家屋調査士に依頼いただければと思います」

まとめ

建物滅失登記とは、建物が滅失した事実を登記簿に反映させること

建物滅失登記を怠ると、固定資産税がかかり続ける、土地売却が難しくなるなどの不利益が起こり得る

建物滅失登記は、土地家屋調査士に依頼すると迅速・確実に終えられる

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取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/つぼいひろき
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