小屋裏を注文住宅で最大限に活かす！収納力アップから趣味部屋まで、後悔しないための間取りと注意点

住まいにおいて、屋根と天井の間にある空間のことを「小屋裏」と呼びます。通常は天井板で塞がれている場所ですが、小屋裏収納や趣味のスペースなど多目的に使うこともできる便利な空間です。そんな小屋裏収納について桧家住宅愛媛の稲月拓郎さんに話を聞き、建築基準法上の小屋裏の位置付けや上手な活用術、建築時のポイントなどについてまとめました。

小屋裏とは？

小屋裏の定義や特徴

まずはじめに小屋裏とは何かについて解説します。小屋裏とは屋根の下にある空間のことをいいます。勾配のある屋根の下には図のように空間ができ、通常は天井材で塞がれています。

天井と屋根の間にできた空間を小屋裏と呼ぶ（イラスト／あべさん）

「小屋裏は、天井裏や屋根裏とも呼ばれることがあり、法律上の正式な呼び名は決まっておらず、いずれも同じ意味と捉えて良いと思います。ただ、『小屋裏収納』という言葉があるように、小屋裏という言葉には収納のイメージが強いかもしれません。しかし実際には趣味やペットのためのスペースにするなど、さまざまな用途で活用できる便利な空間です」（稲月さん、以下同）

建築基準法における小屋裏の立ち位置

建築基準法において、床面から天井までの高さが1.4m以下、床面積が下階の2分の1未満であることが小屋裏の条件です。自治体によってはこの制限が多少異なる場合もあります。また、小屋裏は住宅の床面積や階数には算入されず、居室とは異なる空間という扱いになります。つまり、小屋裏は容積率や固定資産税の計算には含まれません。

「そして、もう1点知っておいたほうが良いのが建具についてです。扉などの建具を取り付けて小屋裏の出入口を塞ぐのは建築基準法上禁止されていますので注意しましょう」

注文住宅で小屋裏をつくることを検討している場合、法律上の制限についてよく知ることが大切です。

床から天井までの高さが1m40cm以下であることが小屋裏の条件（画像提供／桧家住宅愛媛）

小屋裏を設けるメリット

住宅に小屋裏を設けるとどのようなメリットがあるのでしょうか。

「空間を有効活用できることが小屋裏を設けるメリットです。居室よりもコンパクトなつくりとはいえ、クローゼットなどの収納と比べると十分な広さがあります。たっぷりとした収納空間が欲しい方や趣味のアイテムを飾りたいといったさまざまなニーズを満たすことができ、多目的で使えるのが小屋裏の魅力ではないでしょうか」

限られた面積の中で間取りを決める際、収納の数や広さは迷うポイント。小屋裏の場合、屋根の下に空いた空間に収納スペースをつくることができるので、部屋の数も収納量もどちらも確保できるという良さがあります。

広々とした小屋裏収納。季節家電や子どもの思い出の品なども収納しておくことができる（画像提供／桧家住宅愛媛）

小屋裏を設けるデメリット

小屋裏を設けるデメリットもチェックしましょう。

「小屋裏がライフスタイルに合わなかったという方もいます。屋根の下という場所を変えることはできないので、上下移動が発生することは避けられません。収納したいものを持ち運ぶときには多少の労力が必要となります。将来を見越してバリアフリー設計の家を検討している場合、小屋裏は不向きかもしれません。小屋裏への上下移動の負担を軽くしたい場合、階段やはしごの選び方が重要となります」

また、湿気やカビ対策、夏の温度管理などもポイントです。空気がこもりやすく、夏場は屋根から熱が伝わりやすいですが、空調設備を整えることで問題を解決することができます。階段の選び方や空調設備については「注意点」の章で解説します。

小屋裏を収納スペースとして活用する場合、重い荷物の上げ下ろしが課題となる（画像／PIXTA）

小屋裏の費用相場

法律上は床面積や階数に算入されない小屋裏空間ですが、施工面積には算入される可能性があります。
「当社の場合、小屋裏を設けても追加の施工費は加算されませんが、会社によって算出方法が異なりますので打ち合わせ時によく確認してみましょう」

また、小屋裏の施工費用が発生する場合、会社によって差はありますが8～10畳程度でおよそ50万円前後が相場です（※）。居室や水回りと比較すると設備などがなくつくりもシンプルなため工事費用もリーズナブルです。

※シンプルなクロス仕上げなど、内装を標準的な素材で施工した場合

壁や床の素材、動線を階段にするかはしごにするかなどによって金額は変動します。さらに収納の棚板や洋服をかけるポールなどの設置や引き出しを造作する場合はプランによって費用が変わりますので、施工会社に相談してください。

シンプルなデザインの小屋裏の実例。特殊な壁材や床材、造作収納などを取り入れると施工費用が高くなる場合も（画像提供／桧屋住宅愛媛）

小屋裏の活用方法は？

小屋裏収納

雛人形や子どもの学校の作品、季節家電、衣類、旅行鞄などをしまっておく場所にぴったりです。収納スペースとしては十分な広さがあるので少し大きなアイテムも保管しておくことができます。ただし、階段やはしごを使って持ち運びをしなくてはいけないので収納計画は慎重に行いましょう。カラーボックスや棚などを置いて物の出し入れがしやすいように小屋裏をレイアウトすることもおすすめです。

収納として活用している小屋裏。普段使わないアイテムを保管するときに便利（イラスト／あべさん）

趣味を楽しむスペース

小屋裏を趣味のスペースとして活用することも可能です。
「映画鑑賞や読書、ゲームなど趣味に集中するためのスペースとして使っている方もいます。やりたいことの内容に合わせて小屋裏のレイアウトを決めると良いと思います」

小屋裏があれば誰にも邪魔されずに趣味を満喫することができる（イラスト／あべさん）

子どもの遊び場

小屋裏を子どもの遊び場として活用することも可能です。おもちゃを収納する棚やプレイマットを設置して、遊び込める空間にすると子ども部屋のように使えます。

「小屋裏空間の半分を収納、もう半分をお子さんが遊ぶスペースといったように併用することもできます。ライフスタイルに合わせて使い方を変えていくのも良いですね」

小屋裏におもちゃや絵本の収納棚を置いてキッズスペースに。秘密基地のようなワクワク感を楽しめる（イラスト／あべさん）

小屋裏をつくる前にチェックすべき注意点は？

換気や温湿度管理ができるように設計する

「小屋裏は空気がこもりやすいため換気扇や空調設備を設けることが大切です。窓を開けてこまめに換気を行うことも快適な空間づくりのために有効です。特に雨季は湿気がこもりやすくカビが発生する可能性もあるため、適切な温度・湿度管理をしましょう」

夏場の小屋裏は気温が上がりやすいため冷房が必要（画像／PIXTA）

はしご・階段はライフスタイルと予算に応じて検討

「小屋裏に上がるためにはしごか階段を設置する必要があります。コストがかからず広い設置スペースが不要なのははしごですが、安定性があり使いやすいのは階段です。階段を設置するにはスペースが必要となり、設計段階で動線をしっかりと計画しなくてはいけません。両者ともメリットとデメリットがあるため、はしごにするか階段にするかは予算やライフスタイルに合わせて検討してください」

（画像／PIXTA）

はしごと固定階段のどちらのスタイルが暮らしに合っているかは要検討。自治体の条件もあるので確認を（画像／PIXTA）

収納に適していないものは置かない

「重いものや大きすぎるものは小屋裏収納には不向きかもしれません。しかし、固定階段のある小屋裏であればある程度の重さ・大きさでも収納できるというメリットがあります。また、夏は冷房を付けないと熱がこもりやすい空間なので、熱に弱いものは置かないほうが良いでしょう」

パソコンやタブレット端末などの熱に弱い精密機器は暑い空間に置いておくと故障の原因となるため要注意（画像／PIXTA）

コンセント・照明は必須

「小屋裏は居室ではありませんが人が出入りする空間です。照明やコンセントは必須といえます。また、小屋裏の中でテレビやパソコンを使用する場合、ネット環境を整えたりテレビのアンテナ端子があるとより便利な空間になります」

コンセントはもちろんテレビのアンテナ端子があると、小屋裏でできることの範囲が広がる（画像／PIXTA）

太陽光発電や屋上を検討している場合は設計図作成前に相談する

「太陽光発電のパネルを屋根に設置したり、屋上を希望する場合はなるべく早めに施工会社に相談したほうが良いと思います。なぜなら、小屋裏の形状の決め手となる屋根の形や、小屋裏へと続く階段の動線計画にも影響してくるからです。相談するタイミングが遅いと設計図を改めて作成することになり、余計な費用が発生するおそれもあります」

小屋裏と屋上の両方を備え、屋根には太陽光発電パネルを設置した住まいの外観（画像提供／桧家住宅愛媛）

外観によっては小屋裏が不向きなケースもある

「小屋裏は屋根の勾配の下にできる空間のことです。そのため勾配のない屋根や、特殊な外観を希望している場合は小屋裏の設計に不向きなケースもあります。太陽光発電や屋上を計画するときと同様、なるべく早いタイミングで施工会社に相談してみると良いでしょう」

外観のデザインによっては小屋裏空間が設計できない可能性もある（画像／PIXTA）

おしゃれで便利な小屋裏にするためのレイアウトのヒントは？

せっかく小屋裏があるのだから、こだわりの詰まったおしゃれな空間にしたいと考える人もいるでしょう。おしゃれな小屋裏にするためのレイアウトのヒントについて解説します。

「好みに合わせて小屋裏をレイアウトするのも家づくりの楽しみの一つです。入居後におしゃれな棚や照明器具などを設置したり、DIYで自分好みにカスタマイズすることもおすすめです。収納から趣味のスペース、子どもの遊び場まで可変性の高い空間なので、新築時にはできるだけシンプルなつくりにして、後からアレンジを楽しむ人が多いです」

建築段階では空間をつくりこみすぎないのもポイントですが、床材にこだわったり、壁の一面に好みのアクセントクロスを張るなど、内装に遊び心を取り入れてみるという選択肢も。小屋裏は外から見えにくい場所だからこそ、好きなようにアレンジしやすいという良さがあります。

小屋裏の使い道に合わせてレイアウトをアレンジするのも楽しみの一つ（画像／PIXTA）

注文住宅で小屋裏をつくるときのポイント

最後に、小屋裏をつくるときのポイントを稲月さんに聞きました。

「建築基準法上の制限はありますが、小屋裏はとても便利な空間です。デッドスペースにならないようにライフスタイルや家族構成に合わせて使い道を検討し、使いやすい空間になるように計画することが大切です」

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  執筆

  佐藤愛美（りんかく）

  ｜ライター
  制作会社りんかく登録ライター。茨城県出身。子育てや教育に関するライティングが得意。SUUMOにて住宅関係の取材を重ねるうちに家づくりへの興味が深まり、マイホームを建てることに。現在は、家族にとって心地よい住まいの環境を探求中