基礎断熱とは?床断熱との違いやシロアリ対策、建築時のポイントについて解説

公開日 2023年06月14日
基礎断熱とは?床断熱との違いやシロアリ対策、建築時のポイントについて解説

断熱性・気密性の高い住宅を建てたい場合、基礎断熱を選ぶことがおすすめです。基礎断熱とはどのような仕様なのか、松原産業の堀清憲さんのお話をもとに解説します。床断熱との違いや取り入れることのメリット・デメリット、シロアリ対策のポイントなども詳しく紹介します。家の新築時に断熱材選びで失敗しないためのヒントにしてください。

基礎断熱とは? 特徴や床断熱との違い

基礎断熱の特徴

「一般的に、家を建てるときは断熱性を高めるために断熱材を使用します。基礎断熱とは住宅の基礎部分に断熱材を張る工法のことです。建物の外周すべてを断熱材で囲い、床下空間まで室内と繋がった空間にしてしまうのが特徴です。そのため高い断熱性と気密性を得ることができます」(堀さん、以下同)

基礎断熱工事のイメージ
家の基礎部分に断熱材を張った様子。白の素材が断熱材(画像提供/松原産業)

床断熱と基礎断熱の違い

「住宅の床から下部分の断熱工法には基礎断熱のほかにも床断熱という工法があります。床断熱とは床の直下に断熱性能を持たせ、床面で熱の出入りを遮断する工法のことです。基礎断熱とは異なり、床下は室外空間になります。そのため高断熱・高気密の住宅にしたい場合は基礎断熱のほうが適していると言えますが、床断熱ならではのメリットもあるためどちらが良いかは希望する暮らし方により変わります」

床断熱は床面のみの工事になるため基礎断熱よりも簡単に施工できるという良さがあります。そのため中古物件のリフォームやリノベーションでは床断熱を選ぶ人も少なくありません。また、床下に空間があるため空気が循環し、湿気や施工不良によるシロアリの被害が少ないことも床断熱のメリットと言えます。

基礎断熱と床断熱の比較イメージ
基礎断熱は床下が室内空間になるが、床断熱は床下が室外空間になる。その点が両者の大きな違いである(元画像提供/松原産業 イラスト/堀江篤史)

基礎断熱工事の費用

基礎断熱を施工する場合、断熱材の材料費と施工費用がかかります。基礎断熱は基礎工事の際の施工になるため、基礎工事費用が高くなる傾向にあります。断熱材の性質や施工方法等によっても価格は異なり、施工会社ごとに差があります。見積もりの際は、どんな断熱材を使用しているのかや施工方法などを確認してみましょう。

基礎外断熱と基礎内断熱の違いは?

基礎断熱には、断熱材を基礎の外側に張る「基礎外断熱」と内側に張る「基礎内断熱」の2つの工法があります。断熱材を張る位置に違いがありますが、床下が室内空間になるというのはどちらも共通です。それぞれの特徴を解説します。

基礎外断熱

基礎コンクリートの立ち上がりの外側部分に断熱材を張る工法です。コンクリートの外側を断熱材で覆ってしまうため基礎内断熱よりも高い断熱効果を期待できます。しかし、断熱材が地面と接しているため、基礎内断熱と比べるとシロアリが断熱材の中を通って侵入しやすいという弱点があります。また、基礎の外側に断熱材を張ることでより気密性が高くなるため、カビのリスクも上がります。室内と同様に、床下も計画換気をしっかり行うことが大切です。

「使用する断熱材の量は基礎内断熱のほうが少し多くなりますが、基礎外断熱の場合は、必ず防蟻性能を持たせた断熱材を使用する必要があります。防蟻性能を持った断熱材の価格は2倍程度するので、基礎外断熱の材料価格は基礎内断熱に比べて倍になります」

基礎外断熱のイメージ
基礎コンクリートの外側に断熱材を張る工法(イラスト/堀江篤史)

基礎内断熱

基礎コンクリートの立ち上がりの内側に断熱材を張る工法です。コンクリートが外気に触れているため基礎外断熱に比べると断熱効果はやや劣りますが、基礎の内部に断熱材があることでシロアリが侵入するリスクを低減できることがメリットです。

基礎内断熱のイメージ
基礎コンクリートの内側に断熱材を張る工法(イラスト/堀江篤史)

基礎断熱のメリットは?

断熱性・気密性が高い家になる

「基礎断熱は外気が床下に入り込まず、断熱性と気密性が高くなります。そのため夏は涼しく冬は暖かく、年間を通して快適に過ごすことができます。特に北海道などの寒冷地では基礎断熱工法が主流になってきています」

雪が降っても暖かい室内のイメージ
雪が降る寒冷地域では基礎断熱工法が主流。寒さの厳しい冬でも外気の影響を受けにくい(イラスト/堀江篤史)

床下エアコンや全館空調と相性が良い

「床断熱の場合は床下が室外になるため床下エアコンを設置しても効果がありません。しかし基礎断熱の場合は床下まで室内空間になるため床下エアコンを使って家を効率的に温めることができます。また、全館空調を取り入れたい場合は家が高気密・高断熱であることが必須条件となるため、基礎断熱工法を用いるのが一般的です」

全館空調を採用した住宅のイメージ
床下エアコンや全館空調を取り入れることで、より快適に過ごせる住まいになる(イラスト/ 堀江篤史)

省エネ効果が高い

「基礎断熱は外気温の影響を受けにくいため、建物全体を常に一定の温度に保ちやすいという特徴があります。一度部屋が暖まったり冷えたりしたら保温しておけるため、冷暖房の省エネになり光熱費の節約を期待できます。また、気温差でリスクが高まるヒートショックの予防にもつながります」

エアコンのリモコンを持つ女性
基礎断熱の家にすることで光熱費のコストダウンが期待できる(画像/PIXTA)

配管が凍結しにくい

「寒冷地に住む場合は床下にある配管の凍結にも配慮が必要です。基礎断熱は床下まで室内空間になるため配管が凍結しにくくなります。床断熱の場合は配管が凍結破裂を起こすリスクがあり、凍結を予防するための装置を設ける必要があります」

住宅の床下にある配管
基礎断熱によって床下の配管が凍結することを防ぐことができる(画像/PIXTA)

床下収納をつくりやすい

「床下の温度が室内と同じであるため床下収納をつくりやすいというメリットがあります。夏や冬でも外気の影響を受けにくいため備蓄品などの保管場所として床下を有効活用できます」

床下収納
床下も室内空間になるため、収納内部は外気温の影響を受けにくい(画像/PIXTA)

基礎断熱のデメリットは?

シロアリ対策(防蟻処理)が必要

「基礎断熱を取り入れる際に気をつけなくてはいけないのがシロアリによる被害です。断熱材はシロアリに弱く、通り道(蟻道)になってしまうことがあるのです。シロアリは光や風を嫌う習性があり、床断熱の場合は地面から土台まで光や外気を遮るものがないため、シロアリの被害を受けにくい傾向にあります。一方、基礎断熱の場合は床下まで断熱材で覆い外気を遮断するため、シロアリが入り込みやすくなります。床断熱の場合は床下を目視してシロアリを発見できますが、基礎断熱の場合は断熱材を貫通する形で蟻道ができるため発見が遅れがちです。また、基礎断熱の中でも基礎外工法にする場合は被害を受けやすいので注意しましょう」

シロアリ被害のイメージ
床断熱と比較すると基礎断熱はシロアリの被害を受けやすい(画像/PIXTA)

カビが発生する可能性がある

「基礎工事の際に使用する基礎コンクリートは住宅が完成しても水分を含んでおり、しばらくは床下空間内で水分が蒸発し続ける状態となります。基礎断熱の家は床下の気密性が高く湿気がこもりやすいため、換気通路を設けるなど除湿対策をしないとカビが発生するリスクが高くなります」

基礎工事のイメージ
基礎コンクリートは完全に乾くまで時間がかかる。住宅完成時も完全には乾いていないため、床下で水分が蒸発し続ける(画像/PIXTA)

基礎断熱で後悔・失敗しないためのポイントは?

防蟻処理が施された断熱材を使用する

「しっかりと防蟻処理が施された断熱材を使用することでシロアリによる被害を予防することができます。日本で使用されている防蟻処理断熱材は、シロアリの歯が立たない素材、ネオニコチノイド薬剤系の素材、ホウ酸系の素材の3種類です。基礎工事の際にどんな断熱材を使用しているのか確認することをおすすめします」

また、断熱材の接着には防蟻剤を含んだシリコン等の素材を使用することも重要です。ほかにも防蟻タイプのウレタンスプレーを、基礎との取り合い部分に充填する処理も効果的でしょう。さらに対策を徹底したい場合やシロアリ被害が多い地域では、基礎の周りにパイプを埋設し、防蟻薬剤を定期注入するという対策もできます。

基礎断熱で使用する断熱材
松原産業製の断熱材「パイナルフォーム」シリーズ。防蟻処理がしっかりと施された断熱材を使用することがシロアリ対策のポイント(画像提供/松原産業)

断熱材は基礎工事の際に同時打ち込みをする

「基礎工事の際、基礎コンクリートと断熱材を同時に打ち込む(同時打ち込み工法)ことでシロアリ被害を抑制することができます。断熱材は後から張ることもできますが、その場合は基礎と断熱材に隙間ができやすくシロアリが侵入するリスクが高くなります」

同時打ち込みの様子
基礎工事の際に断熱材も同時に張ることで隙間をなくすことができる(画像提供/松原産業)

工事の際に隙間がないようにしっかりと密閉する

「シロアリは隙間から入り込んでくるため、断熱材を施工する際に基礎と断熱材を隙間なく接着することが大切です。可能性は低いと思いますが、施工時に隙間ができてしまうことも考えられます。そのため、依頼の際は基礎断熱の施工実績が豊富な会社を選んだほうが、より安心して家づくりができるでしょう」

また、入居後もヒビや隙間ができていないか目視で定期点検を行い、異常があれば早めに修理をすることがシロアリ被害を防ぐポイントです。

ヒビの入った基礎
シロアリは基礎のヒビや隙間からも侵入してくる。入居後も定期的に確認したほうがよい(画像/PIXTA)

湿気がこもらない工夫をする

「基礎断熱の家は床下に湿気がこもりカビが発生しやすいため、24時間換気ができるように床下換気システムを導入したり床面に換気口を設けるとよいでしょう。除湿機能があるエアコンを設置するのも効果的です。また、石油ストーブなどの暖房器具は灯油を燃焼する際に水蒸気を放出するため注意しましょう」

換気口を設けた床
床下に湿気がこもらないように空気の通り道をつくるとよい(画像/PIXTA)

断熱材の保証期間を確認する

「施工会社によっては断熱材の不具合やシロアリ被害に関する保証期間を設けている場合があります。保証があることで安心して暮らすことができるので、保証の有無やその内容について建築に入る前の段階で確認してみましょう」

住宅の保証のイメージ
基礎断熱を施工した後も、保証期間が設けられていれば安心(画像/PIXTA)

注文住宅に基礎断熱を取り入れる際の注意点

最後に、基礎断熱を取り入れる際の注意点を堀さんに伺いました。

「断熱材は自然災害の影響や施工不良等がなければ基本的には劣化しない素材のため、交換せずそのまま使うというのが一般的です。特に基礎断熱の家では、基礎に断熱材を接着するため簡単に付け外しができません。もしもそういった工事をするとなると、家を柱だけの状態にしなくてはいけない場合もあり、数千万円単位の工事費用がかかる可能性も。入居してから『違う断熱材を選べばよかった』と後悔しないために、家を建てる前に断熱工法や断熱材の種類をよく比較検討することが大切です。

また、長く快適に暮らせる環境を優先するのであれば、施工費用が少々高くなったとしてもグレードの高い断熱材を選ぶことをおすすめします。施工会社ごとに得意・不得意もあるので、自分たちのニーズにマッチした会社をしっかりと見極めることも重要です」

まとめ

基礎断熱とは住宅の基礎部分に断熱材を張る工法。床下も室内と同じ空間になる

床断熱と比較すると、基礎断熱のほうが高断熱・高気密の家になり、省エネも期待できる

シロアリやカビの発生に注意が必要。防蟻処理が施された断熱材の使用や床下換気によって対策することがポイント

基礎断熱は一度施工したら基本的には交換できない。家を建てる前に工法や断熱材の種類をよく検討して選ぶことが重要

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取材・文/佐藤 愛美(りんかく) イラスト/堀江篤史
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