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近年人気が高まっている平屋住宅。実は平屋は2階建てに比べて割高になりがちですが、その理由や坪単価の目安や費用を抑えるコツを知ることで納得感のある住まいづくりを叶えられます。今回は、全国で多数の建築実績を持つクレバリーホームの神尾さんにお話を伺いました。平屋の坪単価の現状や価格が上がる理由、住まいづくりで大切なポイントを実例とともにご紹介します。理想の住まいと費用のバランスについて考えたい方はぜひ、参考にしてください。
坪単価とは、土地1坪あたりの建築費のことを指し建物の建築費(本体価格)を延床面積(坪数)で割って算出します。建物価格は面積によって変わるため、坪単価と敷地の面積から想定される延床面積を掛けることで、建築価格の大まかな目安を把握するために必要です。
■坪単価の計算方法
坪単価=建築費(本体価格)÷延床面積(坪数)
例えば、建物価格2200万円の住宅を30坪の面積で建てる場合、坪単価は約73万円。延床面積が25坪で坪単価が50万円ならば、建物価格は1250万円となります。
建物価格には外構や地盤などの付帯工事にかかる金額は含まず、延床面積には家のポーチやベランダなど建物以外の工事面積は含まずに計算する会社も。しかし、建築会社によっては坪単価の算出時に含める場合があり、付帯工事の項目も異なるので問い合わせる際は確認しましょう。

「比較的シンプルな、長方形に近い形の平屋の坪単価は、木造住宅で60万円〜90万円程度ですが、使用する建材や建物の構造、設備などによって幅があります。特に近年は資材や人件費の高騰によって価格相場は上昇傾向です。ハウスメーカーや工務店によっても平均坪単価は異なります。建材や設備仕様が良いと坪単価も上がるため、建てたいメーカーや、住みたい家に近い施工事例の坪単価をチェックしてみることをおすすめします」(神尾さん・以下同)
坪単価は仕様やプランによって大幅に変わります。ハイグレードならば坪単価が100万円を超えることもあります。
| 坪数 | 平米数 | 坪単価 | 部屋数 |
|---|---|---|---|
| 20坪 | 66m2 | 約80万円 | 2LDK~3LDK |
| 25坪 | 82.5m2 | 約75万円 | 3LDK |
| 30坪 | 99m2 | 約70万円 | 4LDK |
「最近の物価高に伴い、戸建て住宅の坪単価も上昇傾向にあります」
その大きな理由を3つ紹介します。
資材や人件費、輸送費などが値上がりを続けており、工事費に反映されています。近年では、2021年のウッドショックにより木材が不足し価格が急騰しました。現在はウッドショック直後の乱高下は落ち着きましたが、2020年以前よりも高値傾向が続いています。資材は輸入するものも多いため、円安も大きく影響します。
住宅価格は値上がりしていますが、需要も引き続き高いため、坪単価も引き続き高いままとなっています。
これらの要因として、政府や自治体が住宅購入への補助金や減税措置を行っていること、住宅ローンが低金利であることが挙げられます。
近年は断熱性能が高い建材などを採用した、高機能な住宅が人気を集めています。省エネ法改正により現在、新築住宅を建てる場合一定の省エネ住宅性能を満たしている必要がありますが、これらの設備は建築コストの上昇につながります。「住み心地が快適なのはもちろん「リセールバリューは仕様が良いほうが期待できる」ということをメリットして考える方も増えています。政府の補助金も、ZEHなど省エネ仕様の住宅に対して手厚いため、購入の後押しとなっています」

坪単価とは別の話になりますが、土地価格も住宅購入時には重要なポイントです。
「首都圏をはじめ、住宅の需要が高い都市部を中心に地価は上昇しており、土地がない場合のトータルコストに影響します。仮に同じ床面積の住宅を建てる場合、平屋は2階建て住宅と比較して土地面積が多く必要となるため、より地価の影響を受けやすいといえるでしょう」
一般的に、平屋の坪単価は2階建て住宅よりも割高になります。同じ床面積、設備仕様の平屋と2階建て住宅を建てると仮定して坪単価を比較した場合、おおむね平屋のほうが1割〜2割ほど高額となります。
平屋の坪単価が高くなる理由は、主に基礎と屋根にあります。仮に床面積30坪の平屋と、15坪×2の2階建てを比較すると、平屋は基礎と屋根の面積が2倍必要となります。この2カ所は特に工事費用がかかる部分です。一方で、壁の面積はそれほど変わりませんし、建物の高さは半分なので構造に関わる部分は割安になり、トータルで1割~2割増しの金額になります。


平屋の場合土地の面積や価格も考慮すると、2階建て以上の住戸よりも生活空間がコンパクトになりがちです。建築コストを抑えながら快適な平屋を建てたい場合、考えるべきポイントをお教えします。
「理想の住まいを求めると、建築予算は高額になりがちです。家づくりで優先したいことを決めて、メリハリをつけることをおすすめします。暮らしの安全に関わる基礎や構造は、予算を削るのは難しいため、調整できるのは間取りや内装・外装、設備仕様などになります」
新築時に導入費用がかかっても、光熱費などのランニングコストやメンテナンス費用が抑えられる設備もあるのでチェックしてみましょう。
例としては次のような工夫が考えられます。

部屋はできるだけ多く、広いほうが良いと思いがちですが、十分な数や広さがあれば快適に過ごせます。例えば現在お子様がいらっしゃる場合、あと何年子ども部屋が必要となるでしょうか?家族が家でどのように過ごすか、現在と未来両方の姿を想像してみましょう。
「リモートワーク用の書斎スペースが欲しいけれど、昼間だけでよい」
「今はきょうだい同室で、子どもが成長したら数年間は個室を分けたい」
など、必要な部屋の数が変化する場合は、可動間仕切りや収納家具などを使えば、そのときに最適な部屋数を確保できます。

壁や廊下を減らす・位置を工夫することで、建築費を抑えられるだけでなく空間にゆとりが生まれます。部屋が広くなることで心地よい開放感を得られ、生活動線もシンプルになります。特にリビングなど多くの時間を過ごす場所は、開放感があると心地よく過ごせるでしょう。
平屋は2階建て以上の住宅と比較して、建物構造を支えるために必要な柱や壁の数、位置の制限が少なく、自由度が高くなるからこそできる工夫といえます。

「外の景色が見えるので窓は多くしたい」という方が多いですが、窓が多いと工事費は高くなります。また、平屋の場合はプライバシーにも配慮したいもの。寝室や水まわりなどに窓が必要かどうかを考えてみましょう。窓を減らす・小さくすることで、断熱性能が高くなるというメリットもあります。もちろん、すべての窓を小さくすると閉塞感があるので、リビングなど大きな窓を設ける場所も考えましょう。

洋服や家事用品などの収納は、快適な暮らしのカギとなる重要なポイント。部屋を広くすると開放的に過ごせますが、室内に収納家具が多くなると雑多な印象になり落ち着きません。部屋の形や配置を工夫しながら造り付けの収納をつくると空間がスッキリとします。リビングや水まわり・玄関などの周辺に家族共用の収納があれば、家事分担などもしやすくなります。
「扉はないと困る」という先入観にとらわれがちですが、目隠しはしたいけれど防音が不要な場所、例えばクローゼットや洗面室の入口は、ロールスクリーンなどで代用が可能です。厚みがないため見た目にもスッキリと感じられます。また、扉を設置する場合も、引き戸や開き戸など扉のタイプや材質などによって価格が変わってくるため確認しましょう。

「確実なことは断言できませんが、建築費や人件費の上昇傾向は続いており坪単価も高い水準が続くとみられます。また、都心などの地価上昇に伴って郊外の住宅購入を検討する方も増加しており、郊外需要は高まっています」(神尾さん・以下同)
「平屋の大きな魅力は、生活動線がコンパクトになり効率的ということです。階段の上り下りをせずに部屋や水まわりスペースを行き来でき掃除もしやすいため、年齢を重ねてからも安心して過ごせます。住み心地以外にも、リフォームやメンテナンス、解体時の費用を抑えられる、地震による倒壊リスクが低くなるなどのメリットがあります」
「空間を有効に使う工夫をすることで、お子様がいるご家族も快適に暮らせます。2階建て以上の戸建てと比較するとお子様に目が行き届きやすく、階段がないため安全面でのリスクが低くなります。また、マンションと比較すると下の階や隣接する住戸に気兼ねせず過ごせるため、子育て世代にも多くのメリットがあります」
「外観、特に道路側から見える部分は住まいの印象を左右するので、素材の質感はこだわったほうがお客様の満足度は高いと感じます。費用を抑えるために建物の形はシンプルに、窓を小さくした場合も、外壁に上質感があるとぐっとおしゃれに、洗練された雰囲気に仕上がります。タイル素材など、掃除の手間が少なくメンテナンスもしやすく、最終的にコストパフォーマンスが良い外壁もあります」

空間を有効活用している・住み心地を高める工夫をしている平屋の間取り実例を坪単価とともに紹介します。
吹き抜けやロフトを設けた「平屋ならでは」の良さを盛り込んだプランです。廊下をつくらず、家の中央にリビング、ダイニングを配置しています。この場合採光部が小さくなるのですが、吹き抜けに天窓を設けることで明るさ・開放感を高めました。12畳という実際の面積以上にゆとりがある印象です。吹き抜けの一部はロフトで、収納としても使えます。
子ども部屋を想定した洋室やSOHOはコンパクトですが、キッチンや脱衣室はスペースを広くとり、快適に家事ができるスペースを確保。収納は水まわりの横一カ所にまとめており、部屋の使い方にメリハリがあるプランといえるでしょう。



こちらは、よりシンプルな住まいの例です。廊下を設けてプライバシー性を高めながら、心地よく暮らせる造りとなっています。リビング・ダイニングの開口部は大きく設けて陽光をたっぷり取り込みます。
2つの子ども部屋の広さは4.5畳です。かつて子ども部屋は6畳程度の広さをお求めの方が多かったのですが、いつか独立後することを考えてよりコンパクトに、ベッドと勉強机が収まる4.5畳程度を希望する方が増えてきました。7.5畳の主寝室にはオープンスペースのDENを設置。「書斎は欲しいけれど、仕事をするのは昼間だけ」といった方は、このような造りにすれば時間によって部屋の用途を使い分けられるので、コンパクトなスペースでも快適です。


平屋の坪単価は、同じ床面積の2階建て住宅と比較すると外壁や屋根の面積が大きくなるため約1割~2割高い
建築費の高騰や高機能な設備仕様を求める人が増え、坪単価は上昇している
「わが家にとって」必要なこと、ライフスタイルを考えて設備仕様にメリハリを