平屋は防犯面からやめたほうがいい?後悔しないための防犯対策とは

公開日 2024年01月23日
平屋は防犯面からやめたほうがいい?平屋で後悔しないための防犯対策とは

近年、ファミリーはもちろん、女性や高齢者が一人暮らし用の平屋を建てるケースも増えてきました。その一方、「平屋を建てたいけれども、防犯面が不安」と感じ、「やめたほうがいいのかな」と気になる人もいるようです。この記事では、平屋は防犯が難しいといわれる理由を解説したうえで、平屋を建てて後悔しないために取り入れたい防犯対策を、kao一級建築士事務所の越野かおるさんに伺います。

平屋は防犯が難しいといわれる理由は?

そもそもなぜ「平屋は防犯が難しい」と思われる傾向があるのでしょうか?

1階に窓や出入口が多くなるから

「平屋は防犯が難しい」といわれるもっとも大きな理由は、空き巣が侵入を試みる窓や出入口が多くなるためです。これは同じ広さの家を建てる場合、平屋は2階建てよりも、侵入しやすい1階部分の床面積が広くなることが理由です。

警視庁の公表データによると、2022年(令和4年)の一戸建て住宅への空き巣の侵入口は、「窓」が53.5%で最多、次いで「表出入口」が21.3%となっています。

侵入窃盗の進入口(一戸建て)
進入口 割合
53.5%
表出入口 21.3%
その他の出入口 15.4%
不明 7.9%
その他 1.9%
非常口 0.1%
侵入窃盗の進入口は、窓からの侵入が過半数を占める(警視庁「手口で見る侵入犯罪の脅威」を参考に編集部にて作成)

「とくに『できるだけ多くの自然光を取り入れたい』『風がたくさん入るようにしたい』と考えると、窓が多くなる傾向があります。

また平屋だと、窓から侵入を試みる際に地に足を着けて作業しやすく、逃げるときにもさっと逃げられることも、狙われやすい理由の一つだと思います」(越野さん/以下同)

広く開けた場所に建てられることが多いから

同じ延床面積の家を建てる場合、平屋は2階建てや3階建てよりも広い土地が必要です。そのため広く開けた見晴らしがいい場所に建てられる傾向があります。その結果、家族構成や日々の暮らしの状況を把握されやすくなり、空き巣などに目を付けられやすいといわれています。

「平屋は地面に近い1階に日照を得るため、周りに高い建物がある土地が選ばれにくくなることも、広く開けた場所に建てられるケースが多くなる理由です」

平屋の建物部分にできる防犯対策は窓と間取り

平屋を建てるときに、建物部分にできる防犯対策にはどのようなものがあるのでしょうか?

先にお伝えしたように、一戸建てへの侵入窃盗の進入口は、半数以上が窓からです。そのため平屋に住むときには、窓の防犯対策の徹底がカギとなります。具体的な対策を確認しましょう。

窓はできるだけ少なく・小さくする

「まずは、物理的に窓の数を減らすことを考えるのが、平屋の防犯対策の第一歩です。

これまでの日本の家づくりは、採光と通風を確保するために、大きな窓を設けるのが一般的でした。しかし、近年は断熱性や気密性が重視されるようになりました。その結果、その妨げになる窓はできるだけ少なく・小さくする家づくりが主流になりつつあります。窓を少なく・小さくすることは、防犯だけでなく住宅性能の向上にも効果があるのでおすすめです。

なお、窓を少なく・小さくすると通風や採光の確保が難しくなります。通風については、ランニングコストはかかりますが、機械空調(給気・排気の両方を機械で行う方法)を導入し、採光の確保については、天窓(トップライト)や高窓(ハイサイドライト)など、窓の位置を検討するとよいでしょう」

侵入しにくい窓にする

「窓を設けるときには、侵入しにくい配置を考えることも重要です。

例えば掃き出し窓は、割った窓から鍵を開けられてしまうと、簡単に侵入されてしまうでしょう。けれども腰高窓であれば、鍵を開けた空き巣はさらに壁を乗り越えるアクションが必要になります。窓のスタイルも引き違い窓ではなく、FIX窓(はめ殺しの開閉できない窓)や横すべり窓(窓の下側が外に開く窓)などの、大きく開けられない形状にするのもよいでしょう。

さらに高窓(ハイサイドライト)や天窓(トップライト)にすれば、空き巣は鍵を開けるために窓を割ることすらできません」

窓の高さと防犯性の関係
窓を設ける場合も、高さや配置を変えるだけで防犯性が高まる(イラスト/杉崎アチャ)

窓ガラスに防犯ガラスを選ぶ

空き巣が窓から侵入するときには、鍵の近くの窓ガラスを割り、手を入れて鍵を開けるのが一般的です。そのため割れにくいガラスを選ぶと高い防犯効果があります。

例えば2枚のガラスの間に樹脂膜を挟んだ安全合わせ複層ガラスなどは、割ろうとしてもヒビが入るだけでなかなか割れないので検討してみるとよいでしょう。

面格子を設置する

トイレや浴室に付ける小窓は、換気するために開けっぱなしにすることも多いようです。そうした小窓には、防犯対策として面格子を設置するとよいでしょう。

「面格子を付けるのであれば、はじめから窓枠と一体になっていて、簡単に取り外しできない防犯タイプがおすすめです。窓を取り付けたあとにビスで後付けするようなタイプの面格子は、ドライバーがあれば簡単に取り外せてしまいます。防犯性が低くなるので、できるだけ避けましょう」

面格子付き引き違い窓
もともと面格子が付いた窓を選ぶと、ドライバーで外され侵入されることがない(画像/PIXTA)

大きな窓には防犯シャッターを取り付ける

「南側には大きな掃き出し窓を設け、庭やウッドデッキと気軽に出入りできるようにしたい」といったケースでは、防犯シャッターを取り付けることを検討しましょう。夜間や外出時などだけでもシャッターを閉めるようにすると、防犯への不安を減らせます。

窓ガラスの種類についてもっと詳しく
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防犯を意識した間取りにする

「間取りについても、防犯を考慮して検討しましょう。防犯というと空き巣ばかりを思い浮かべますが、近年は女性や高齢者など弱者を狙う犯罪も増えているため、その対策も必要です。

例えばランドリールームを設けると、洗濯を外干ししなくてよくなるため『女性しかいない』『小さな子どもがいる』などの家族構成を知られずに済みます。また玄関は開けた道路側に設けたほうが人の視線があるため、詐欺や押し売りなど悪意をもった訪問者が悪事を働きにくくなります」

平屋の外構にできる防犯対策は?

「平屋の防犯対策は、家だけではなく外構にもお金をかけることがとても大切です」と越野さんは言います。具体的にはどのような対策があるのでしょうか?

セミクローズドやクローズド外構を検討する

「防犯を重視するなら、物理的に家に近づきにくくなるよう、塀や門を設けることを検討してもよいでしょう。例えばインターホンは玄関ドアの横ではなく門柱に設置したり、宅配ボックスを門柱の近くに置いたりすれば、家人以外は自由に家に近づけなくなります」

宅配ボックス付き玄関
門扉近くにインターホンや宅配ボックスを計画すると防犯性が高くなる(イラスト/杉崎アチャ)

塀や生け垣は高さよりも透け感を重視する

セミクローズドやクローズド外構で防犯を意識すると、できるだけ中が見えないよう、塀や生け垣を高くしたくなるものです。けれども塀や生け垣は、高くしすぎると外から家の周りの様子が見えなくなるため、かえって防犯性は低くなるともいわれます。塀や生け垣はどのようにしつらえればよいのでしょうか?

「塀や生け垣で重要なのは、高さではなく『透け感』です。

例えば家の周りを囲う塀に柵を選べば、高くしても中が見えるので、人目に触れることを恐れて犯罪を働きにくくなります。生け垣についても、道路に人の気配がしたときに侵入者がさっと隠れることができないよう、密集させずに適度に透けて見えるようにするとよいでしょう」

塀の種類と防犯性を示すイラスト
堅牢な塀や生け垣がより防犯性が高いとは限らない。適度な透け感をもたせよう(イラスト/杉崎アチャ)

人感センサータイプの照明を設置する

玄関までのアプローチや庭には、人感センサータイプの照明を設置しましょう。家に近づくとセンサーが反応して照明がつくので、悪意をもった人物なら驚いてそのまま退散してしまいます。

防犯砂利を敷く

「道路に面していない家の裏など、人目につきにくく空き巣が侵入しやすいと思われる窓の下だけでも防犯砂利を敷くのも有効です」

防犯砂利とは、軽く踏むだけでも「ジャリジャリ」と大きな音がするよう加工された砂利のことです。なかには救急車のサイレンに近い80デシベルもの音を出す種類もあります。

平屋の防犯性をさらに高めるためにできる工夫は?

平屋の防犯性を高めるために、ほかにどのような工夫ができるのでしょうか?

防犯カメラや警報システムを採用する

より高度な防犯を意識するなら、防犯カメラや外部の警報システムを導入するのも方法の一つです。

「防犯カメラは万が一に備えて録画できるタイプを選び、家の正面だけでなく、家の両側面・裏側など、死角がなくなるように配置するとよいでしょう。デザイン的に嫌悪感があるかもしれませんが、防犯カメラは設置していることがわかるようにすると威嚇になります。

なお防犯カメラには、インターホンと連動し録画できるものもあります。スマホと連携するタイプのインターホンなら、留守中に訪問者があったときでも不在を知られず対応することも可能です」

録画できるインターホン
録画できるタイプのインターホンを選ぶと、あとからでも訪問者を確認できる(画像/PIXTA)

反射フィルムやミラーカーテンを採用する

日中カーテンを開けて過ごす時間が多いなら、窓ガラスに反射フィルムを貼ったりミラータイプのレースカーテンを採用したりするのも防犯には効果的です。そうすれば、日々の暮らしを外からのぞき見られ、家族構成や生活パターンを知られずに済むためです。

「ただし、ガラスの種類によっては、反射フィルムを貼ってはいけないものもあります。防犯対策として入居後に反射フィルムを貼ることを考えているのなら、設計の段階で伝え、適切なガラスを選んでもらいましょう」

窓を開けて寝るなら防犯性を高める

エアコンが不要な季節には窓を開け網戸だけにし、心地よい夜風に吹かれて眠りたいと思うことがあります。しかしどれだけ治安がいい地域でも、いつ何があるかはわかりません。どうしても窓を開けて寝たい場合は、取り外しできない面格子やルーバーが付いた窓にする、人が近づくと明かりがつく防犯センサーを設置するなど工夫しましょう。

近所との交流を深める

「近所にどのような人が住んでいるのかわからないのは不安なものです。お互いの人となりを知れば安心ですし、仲良くなれば『○○さんの家の前に不審な車がとまっているけど大丈夫かな』と気にしてもらえるようになります」

平屋の防犯対策は家だけでなく外構もあわせて検討しよう

最後にあらためて越野さんに、平屋を建てるときの防犯対策についての考え方を伺いました。

「防犯を意識した平屋にするなら、窓の対策を徹底すると同時に、外構にもきちんとお金をかけて物理的に近寄りにくくすることが大切です。二重、三重にトラップをしかけ、悪意をもって侵入を試みる人物に『この家は防犯に力を入れている』と思わせることこそが、最大の防犯対策になります。

最近は大手メーカーも平屋のプランを増やしており、平屋人気が高まっています。安心・安全に暮らせる平屋づくりを一緒に楽しめる建築会社を、ぜひ見つけてくださいね」

まとめ

平屋の防犯対策は窓の防犯性を高めることがもっとも重要

平屋の防犯性を高めるためには、外構にもお金をかけて対策しよう

「この家は防犯に力を入れている」と思わせることが、一番の防犯対策になる

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取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/杉崎アチャ
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