住宅診断(ホームインスペクション)で安心は買える?利用者の声や費用を紹介

公開日 2011年05月11日
住宅診断で安心は買えるのか?

住宅診断(ホーム・インスペクション)とは?

手ごろな価格や立地条件の良さ、好みの空間をつくれる自由度の高さなどで、年々人気が高まる中古住宅。しかし、「ちゃんと住み続けられるのか」「傷んでいる部分があるのではないか」といった中古住宅ならではの不安を漠然と抱いている人も多い。そうした不安への対策として近年注目が集まっているのが、購入前に住宅の検査を行う「住宅診断(ホーム・インスペクション)」だ。これは、専門家が住宅の劣化状態や欠陥の有無、メンテナンスの必要性など客観的な視点で建物をチェックしてくれるというサービスで、買主と売主のどちらからも依頼できる。購入前に診断してもらうことで、建物の状態を正確に把握できるのがメリットだ。中古住宅のシェアが高い欧米では既に一般的だが、日本での利用者はまだ少ない。
服や家電でも、良い買い物をするには広く情報を集めたり、ほかの人の意見を聞いたりするもの。住宅においても、第三者の判断を聞いてみることで、満足度の高い家選びができそうだ。

徹底検証!ホーム・インスペクションで中古住宅への不安は本当に解消できる?
中古住宅の不安解消1:利用者の声で検証

「診断にもとづいた耐震補強をしたことで購入後も安心して住み続けられます」

住宅診断にもとづいた耐震補強をして安心

京都府の瀬川さんご夫妻が家探しを始めたのは昨年8月。立地や予算、間取りなどの条件に最も合致したのが、築22年の中古住宅だったそう。「当初は『新築のほうが良いのでは』という気持ちもありましたが、購入前に耐震診断やシロアリ検査をしてもらえると聞き、お願いすることに」。診断の結果、家の重心が中心からずれており、ひずみが起こりやすくなっていることが判明。柱を太くして重心を家の中心に近づける耐震リフォームを行った。「しっかり耐震補強をしてもらったため、当初の不安もなくなり、安心して住み続けられます」

京都府向日市・瀬川良介さん(31歳)、あいさん(32歳)、音くん(10歳)、楽ちゃん(8歳)

リビングを始めほぼ全てのクロス張り替え
入居前にリビングをはじめ、ほぼ全室のクロスを張り替え。リビングの広さも購入の決め手となった
壁の撤去や柱の補強を行い使いやすい部屋に
中古住宅への不安感をインスペクションで軽減

当初は中古住宅への抵抗感があった購入者も、プロによるホーム・インスペクションを受けることで不安を払拭できた。診断結果をふまえて、「どの部分にどの程度の修繕が必要なのか」を説明されるため、購入者は内容や費用に納得した上でリフォームを依頼できる。適切なリフォームは、入居後の安心感にもつながる。

中古住宅の不安解消2:アンケート調査による検証

建物の傷み具合に不安を抱く人が多数

1位 建物の傷み具合が分からない 71.8%
2位 建物の耐用年数(寿命)が残り少ないのではないか 46.0%
3位 価格が不当に高いのではないか 30.6%
4位 住んでからもメンテナンスに手間と費用がかかりそう 30.4%
5位 断熱性など省エネルギー性能が低い 25.0%
6位 設備の性能やコンディションが悪そう 24.7%
7位 住む前の改修・補修に多大な費用がかかりそう 22.8%
出典:「インスペクションに関する調査」(リクルート調べ)、2010年11月調査、複数回答

ホーム・インスペクションの知名度はまだまだ低い

住宅検査を総称して「(住宅・ホーム)インスペクション」という呼び名がありますが、ご存知でしたか?

・知らなかった 85.1%
・知っていた 3.6%
・なんとなく聞き覚えはあった 11.3%

出典:「インスペクションに関する調査」(リクルート調べ)、2010年11月調査

95%の利用者が「また利用したい」と判断

もしもう一度中古住宅を購入するとしたら、ホーム・インスペクション(住宅診断)を利用したいですか?

・利用したい 95%
・無回答 5%

出典:「ホームインスペクション利用者100人のホンネ」(NPO法人日本ホームインスペクターズ協会調べ、2010年5月調査)

自分では気づけないチェックポイントが分かる

住宅診断(ホーム・インスペクション)を利用してみて1番強く思った感想
1位 建物で見ておかなければならないポイントを全然知らなかったので勉強になった 32%
2位 書籍や雑誌で情報収集しても気付けなかった劣化や注意点があって驚いたが、事前に知れて安心できた 23%
3位 ホーム・インスペクション結果を受けて、売主に修繕や値引きの交渉をしたので納得できた 15%
4位 結果を聞き「ついでにここも修繕しておこう」「性能を上げておこう」などリフォーム検討の幅が広がった 13%
5位 仲介業者の説明や自分の目では分からなかった劣化があり、中古住宅購入が怖くなった、または購入をとりやめた 6%
6位 もっとこういうことをアドバイスしてくれればよかったのに、と不満が残った点がある 3%
7位 入居後、予想外に点検やメンテナンスが面倒そう(あるいはお金がかかりそう)だと思い、愕然とした 1%
出典:「ホームインスペクション利用者100人のホンネ」(NPO法人日本ホームインスペクターズ協会調べ、2010年5月調査)
素人に分かりづらい点も診断によって明らかに

一般的にはまだ認知度が低いインスペクションだが、利用者の感想で目立つのは「建物で見ておくべきポイント」や「気づかなかった劣化や注意点」が事前に分かってよかった、というもの。「建物の傷み具合や隠れた瑕疵が分からない」という購入前の不安は、ホーム・インスペクションによってある程度解消できるようだ。

中古住宅の不安解消3: ホーム・インスペクションの流れを実際に体験

「一般耐震技術認定者」によるホーム・インスペクションを導入

この人に聞きました
久保浩さん(株式会社ハウスドゥ/住宅調査部 課長)
関西を中心に、不動産仲介・リフォーム・中古住宅の買取を一体化させたビジネスに取り組む不動産会社。いち早くインスペクションを導入しており、「一般耐震技術認定者」の有資格者による家屋調査・耐震診断を無料で実施している。
住宅情報モール向日店(株式会社ハウスドゥ)TEL:0120-16-8988

住宅診断での主なチェックポイント

屋根

遠くから目視で大きなダメージがないか確認した後、2階から1階の屋根をチェックします。状態によっては屋根材の補強や葺き替えを行います。

屋根のチェックポイント
瓦のひび割れはないか
塗装の剥がれはないか
雨どいにサビはないか
出典:「ホームインスペクション利用者100人のホンネ」(NPO法人日本ホームインスペクターズ協会調べ、2010年5月調査。以下同)

天井裏

天井の中まで上がって、使われている金物・工法を確認。建てられた年代の建築基準法に基づいているかをチェックします。

天井のチェックポイント
組にどのような金物が使われているか
どのような工法が採用されているか
雨漏りはしていないか

外壁

診断棒で壁を叩き、浮きがないかどうかを音で判断します。水の染みがあったり、苔が生えている場合は雨漏りしやすい可能性があります。

外壁のチェックポイント
ひび割れや剥がれはないか
浮きはないか
苔や水の染みがないか

室内

壁はクロスや塗装といった表面の破損だけでなく、内部の状態まで診断棒で叩いて確認します。

室内のチェックポイント

 

水の染みやカビはないか
壁紙の剥がれや破損はないか
浮きはないか
仕上げ材の下の状態は問題ないか

遠くから目視で大きなダメージがないか確認した後、2階から1階の屋根をチェックします。状態によっては屋根材の補強や葺き替えを行います。

畳のチェックポイント
畳の下にカビが生えていないか

レーザー水平器を使って柱がゆがんでいないかを見ます。すべての階を貫く”通し柱”を含め、主要な柱のチェックをします。

柱のチェックポイント
ゆがみがないか

水まわり

建具の動作不良や土台が腐っていることが考えられます。

水まわりのチェックポイント
建具が浮いていないか
隙間ができたりしていないか
水が漏れていないか

床下

現状を正確に把握するためには床下がもっとも重要。特にトイレ、洗面、浴室は水が漏れて、木が腐っていることが多い。床の上から見た後、床下に潜って両方から見ています。

床下のチェックポイント
土台が腐ったり破損していないか
シロアリの害はないか
キッチン、浴室、トイレ、洗面所からの水漏れはないか
入居後のメンテナンス計画にも住宅診断が有効

ハウスドゥでは診断の結果を写真のような書面にして依頼者に報告。建物の状態を伝えた上で、どのようなリフォームが必要なのかをアドバイスする。瑕疵の程度や予算によってはすぐに工事を行わず、長期にわたるメンテナンス計画を提案するケースも。リフォームの必要性や緊急性を適切に判断できるのも、ホーム・インスペクションの利点といえる。

検証を終えて ホーム・インスペクションは本当に有効?

購入者にとってのメリットは大。統一基準がないため依頼先の見極めも重要

中古住宅が気になるけど、本当に大丈夫なのかな?

購入前に、物件の正しい情報を把握できるのがホーム・インスペクションのメリット。建物の状態やメンテナンスの履歴、耐震性が分かることで、どんなリフォームをすべきか、そのためにいくら必要なのかが明らかになる。

思わぬ劣化が判明する場合もあるが、適切なメンテナンスをすれば、そのまま住めるケースがほとんどだ。欠陥住宅をつかむリスクも避けられるので、安心して中古住宅を買うためには、有用な手段といえるだろう。

「ホーム・インスペクション済み」という付加価値は、購入者だけではなく売主側のメリットにもなる。ただし、診断費用や検査項目が会社により異なり、統一基準が設けられていないという課題も残る。ホーム・インスペクションが住宅業界に浸透し、買主と売主の双方にとって利用しやすくなることを期待したい。

費用の目安は?実施している会社は?まだまだ知りたい!
ホーム・インスペクションQ&A

Q. どこに依頼すればいいの?

A. NPO法人「日本ホームインスペクターズ協会」のホームページでは、独自の認定試験をクリアしたホームインスペクター(住宅診断士)を検索できる。個人からの依頼も受け付けており、すべての仲介会社の物件診断が可能だ。左ページで紹介した「ハウスドゥ」のように、独自にホーム・インスペクションの制度を設けている会社もある。

Q. 依頼するタイミングは?

A. 複数の物件を診断してもらいたいなら、購入申し込みの前に依頼を。1つの物件に絞ってから診断してもらう場合は購入申し込みの後、売買契約の前に診断を申し込もう。なお、購入申し込みから契約までの期間は1週間以内のことが多いので、依頼する会社をあらかじめ決めておき、すぐに申し込めるようにしておくといいだろう。

Q. がっかりすることはないの?

A. 建物の不具合が見つかることは、必要資金が増えることにもつながる。診断を受けて予想以上に費用や手間がかかることが判明し、驚く購入者もいる。しかし、大多数が「もう一度中古住宅を購入するならホーム・インスペクションを利用したい」と答えていることからも、結果的には診断してよかったと考える人が多いようだ。

Q. どんな人が診断するの?

A. 各会社や団体が独自の基準を設けており、それらをクリアした人が診断を行う。日本ホームインスペクターズ協会では独自の資格試験を設けており、合格するためには建築や不動産取引、住宅診断方法などにおける知識に加えて、公正な診断を行うための高い倫理観を有することが求められる。

Q. どれくらいの時間がかかるの?

A. 住宅の規模や調査の内容によっても異なる。日本ホームインスペクターズ協会によると、目視で屋根、外壁、室内、小屋裏、床下などの劣化状態を調べる「住宅診断」には平均で2~3時間かかる(建物面積が100m2程度の場合)。さらに詳細診断を行う場合、診断士2人が3時間かけて行うことも。

Q. 費用の目安は?

A. 料金はホームインスペクター(住宅診断士)やその所属する会社によって異なるが、目視による住宅診断の場合、5~6万円前後が一般的だ。機材を使用して耐震診断を含む詳細診断をする場合、10万円以上になることも。不動産会社によっては、「ハウスドゥ」のように、無料のサービスとして実施していることも。

まとめ

住宅診断は、専門家が住宅の劣化状態や欠陥の有無、メンテナンスの必要性など客観的な視点で建物をチェックしてくれるサービス

費用は、目視による住宅診断の場合5~6万円前後、機材を使用した耐震診断を含む詳細診断は10万円以上になることも

住宅診断はメリットが大きいが、統一基準がないため依頼先の見極めも重要

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