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都市部を中心に家賃の高騰が続くなか、民間の住宅家賃補助制度、国や自治体の補助金・助成制度や会社の住宅手当・家賃手当を利用したいと考える人も多いでしょう。では、家賃補助制度とはそもそもどのような制度で、誰が利用できるのでしょうか。今回は主な家賃補助・助成制度、その対象者や入居の条件、失業時や一人暮らしでも利用できるのかなどを解説します。
そもそも家賃補助制度はどのような制度で、どんな人が利用できるのか、基本知識からチェックしていきましょう。
家賃補助制度とは、賃貸アパートやマンションで暮らしている人を対象に、家賃の一部を助成してくれる制度です。毎月の家賃が助成されるので、家計負担が軽くなるのが最大のメリット。また、家賃補助制度を利用することで自己負担だけでは住めないエリアや広い家に住めるようになるなど、住まいの選択肢を広げることもできます。
家賃補助制度には、民間企業が雇用している社員に対して行なっているもの、自治体が独自に行なっているもの、国が行なっているもの、行政に準ずる住宅供給公社やUR(都市機構)が行なっているものなど、さまざまな種類があります。
どの家賃補助を受ける場合にも、必ず適用条件があり、申請したからといって必ずしも受けられるわけではありません。「単身者のみ」「社員が世帯主の場合のみ」「若者世帯のみ」など、それぞれ制度の目的や条件、対象となる人が異なります。
「家賃補助」のほかに「住宅手当」という名称があります。賃貸の場合は、いずれも同じ意味で家賃費用を補助する目的で支給される手当ですが、「住宅手当」は持ち家で住宅ローンを支払っている従業員に対しても支払われるケースがあります。
日本の会社では、福利厚生のひとつとして、従業員を対象にした家賃補助制度を設けているところがあります。一般的に住宅手当・家賃手当を含む福利厚生は大企業ほど充実している傾向にありますが、近年はライフスタイルの多様化や働き方改革、コストカットなどを理由として、住宅手当・家賃手当を廃止する企業が増えています。また住宅手当・家賃手当の場合、企業から支払われる「所得」になるため、所得税が高くなる点にも注意が必要です。
会社によって内容やルールが異なるため、名称や費用や条件、支払い方法もさまざまです。例えば、次のようなものがあります。
会社の家賃補助制度と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが「住宅手当・家賃手当」ではないでしょうか。住宅手当・家賃手当は給与に上乗せする形で家賃費用の一部が支給される制度で、「令和2年就労条件総合調査」によると住宅手当・家賃手当の平均支給額は1万7800円となっています。適用条件や金額などは会社によってさまざまですが、一般的に次の条件を定めているケースが多いです。
もちろん会社によっては雇用形態を問わず一律に住宅手当・家賃手当を支給し、居住範囲を定めていないケースもあるでしょう。上記はあくまで一般的な支給条件になるため、支給条件に関しては各会社に直接確認しましょう。
もうひとつ、福利厚生の一環として浸透しているのが「借り上げ社宅制度」です。これは会社が物件を借り上げて賃料や初期費用を一部負担してくれるもので、周辺相場よりも大幅に低い家賃で住むことができます。借り上げ社宅の場合、徴収割合によっては法人負担分が経費として計上できるため、会社の節税対策にも。社員にとっても、会社にとってもメリットのある制度です。
会社の家賃補助を受けたい場合は、必要書類を提出して会社から承認を得なければなりません。住宅手当・家賃手当を受ける場合に、一般的に必要とされる書類と申請方法を見ていきましょう。
申請手順
①会社の総務課などに家賃補助申請する
②求められる書面などを用意する
<必要書類の例>
③書類を提出し、会社ごとの方法で提出
④家賃補助の適用可否と適用期間などを確認する
入社して間もない場合は、まず勤め先の人事課や総務課に問い合わせを。会社に家賃補助制度があるのかを確認したうえで、制度を受けるための要件や金額、申請方法なども聞いてみましょう。

地方自治体では、住民の定住・誘致を目的として、独自に家賃補助制度を設けていることがあります。
対象となりやすいのは新婚世帯、子育て世帯などで、実施しているのは地価の高い都市部の自治体や、人口が減っている地方自治体などです。毎月数万円が支払われるところもあれば、引越し費用の一部を助成するところも。助成の条件も細かく定められており、所得制限や家賃の上限があります。
自分が住んでいる街やこれから住みたい街での実施状況が気になった場合は、まず「自治体名と+住宅助成、家賃補助」で検索してみましょう。もし、住みたいと思っている自治体に制度があれば、利用しない手はありません。
ただし、自治体の助成制度は、自分自身で条件を確認し、申請期間内に書類を取り寄せて記入・申請する必要があります。自治体によっては人気のため抽選になることもあり、確実にもらえるものではありません。また、自治体の予算編成によって年度ごとに変更になることもあります。最新情報は各自治体のホームページで確認してください。
| 自治体名 | 名称 | 金額/期間 | 対象条件など |
|---|---|---|---|
| 東京都新宿区 | 民間賃貸住宅家賃助成 | 月額3万円/最長5年間 | 義務教育修了前の子どもを扶養し同居していることなど |
| 東京都千代田区 | 次世代育成住宅助成 | 月額2万円 (1年目、世帯人数2名の場合)/最長8年間 | 民間賃貸住宅またはマイホームへの住み替えをする世帯で区内に引き続き1年以上居住している子育て世帯など |
| 東京都目黒区 | ファミリー世帯家賃助成 | 月額2万円/最長3年間 | 18歳未満の子を扶養し同居している世帯 |
| 東京都目黒区 | 高齢者世帯等居住継続家賃助成 | 1人世帯 月額1万5000円/最長6年間 | 65歳以上の一人暮らし世帯、または全員が60歳以上で、そのうち65歳以上が1人以上いる世帯 |
| 山梨県韮崎市 | 転入者及び新婚家庭定住促進住宅家賃助成制度 | 月額1万円/最長2年間 | 市外からの転入者、または新婚夫婦で所定の「定住促進住宅」に入居する住民 |
| 福岡県筑後市 | 筑後市結婚新生活家賃支援事業 | 月額上限1万円/最長3年間+敷金・礼金等/上限5万円 | 婚姻の届出日から1年以内の夫婦で、夫婦の合計年齢が80歳未満など(パートナーシップ宣誓も対象) |
結婚を機に新居に引っ越す家庭を対象に、敷金や礼金、前家賃、引っ越し代の一部を補助する自治体もあります。
この制度は「結婚新生活支援事業」といい、補助額は自治体によって異なりますが、夫婦共に29歳以下の場合は最大60万円、夫婦共に39歳以下の場合は最大30万円の補助が受けられる市町村もあります。
補助が受けられるのは所定の年齢、世帯年収以内の新婚家庭で、詳細条件は自治体ごとに定められています。入居する団地などが決まっているケースや、住宅購入やリフォームも対象となるケースもあります。
結婚新生活支援事業は、地方だけでなく都市部にも広がっています。例えば、東京都の立川市、千葉県の千葉市・市川市・船橋市・松戸市、埼玉県の川口市、愛知県の名古屋市などが導入しています。
制度を行っている自治体は、子ども家庭庁の公式サイトから探すことができます。
→令和7年度 地域少子化対策重点推進交付金(都道府県一覧から「新生活」を選択)
地方移住を考えているときにチェックしたいのが、国が予算を出し、地方自治体が実施している「移住支援金」です。正しくは「地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業」といいます。
このうち「移住支援金」の対象となるのは、東京やその近郊に暮らし、東京23区に通勤していた人で、東京圏外の地方自治体に移住すると世帯で最大100万円が助成されます。シングルでも対象になり、最大60万円まで受け取ることができます。現在の制度では、18歳未満の子どもとともに移住した場合、1人あたり最大100万円が加算されます。
支援金は、移住して仕事をはじめたのち、移住先の自治体に申請を出して受け取ります。テレワークを利用して地方で働きたいという人、地方で起業したい人はぜひ活用したい制度です。

企業の家賃助成制度と、自治体の家賃助成制度をかけ合わせた制度もあります。例えば、江東区など首都圏近郊の自治体では、保育士を対象にした「借り上げ宿舎」制度があります。これは保育園を運営する運営法人が、賃貸住宅を借り上げた場合、自治体が家賃の全額または一部を補助する制度です。自治体にもよりますが、条件を満たす保育士であれば、家賃の自己負担がゼロまたは数万円で済む、初期費用がかからない、保育園に通勤しやすいといった利点があります。
注意点としては、補助金を受け取れるのはあくまで物件を契約している運営法人となるため、保育士には直接「住宅手当・家賃手当」として支払われるわけではないということです。既に運営法人が契約している住まいで暮らすことになるため、住まいにこだわりたい人、物件を選びたい人には向いていません。同居が可能かどうかなど、同居人や世帯所得にも制限があるので、詳しくは勤務先となる保育園に聞くとよいでしょう。

病気やケガ、会社の倒産などで、突然収入が減ってしまったら…?
いざというときに知っておくと役立つ、国や自治体の家賃補助や住まいの確保に関する制度を紹介しましょう。
「住居確保給付金」は、失業や廃業などによって生計が苦しくなり、住む場所を失うおそれのある人に対して、市区町村が家賃額を支給する制度です。支給額は地域の家賃相場等に応じて市区町村ごとに上限額が定められています。単身世帯の場合、地方の町村部では月額3万円台が多く、東京23区では5万円台~7万円弱と幅があります。
この制度は、失業・離職してから2年以内で、かつ求職活動をしている人が対象です。ただし、失業していなくても、本人の責任・都合によらない収入の大幅な減少があった場合は対象になることがあります。また、直近の収入額や預貯金が一定額以下であることなどの条件もあります。なお、給付金は本人ではなく、住宅を所有している大家さんや不動産管理会社などに直接支払われます。
2025年4月からは制度が拡充され、「転居費用補助」もスタートしました。これは、家賃のより安い住宅に引っ越すための初期費用(引越し代や礼金など)を補助する制度で、就職活動を要件としないのが特徴です。単身高齢者やひとり親家庭、病気による離職者など、幅広い層が利用しやすくなっています。
失業時などの際に利用できる居住支援制度としては、先述の住居確保給付金のほか、一般的な賃貸住宅では住まいの確保が難しい人を対象にした「セーフティネット住宅情報システム」もあります。
このシステムには、民間の賃貸住宅のうち、低所得者や高齢者、障がい者、子育て家庭などの入居を受け入れられる物件が登録されています。2025年10月には、こうしたセーフティーネット住宅の供給促進を図る制度改正も施行され、対象者にとって探しやすく・借りやすい住宅のさらなる増加が期待されています。
どちらの制度も知らないと利用することはできません。今、使わなくても、いざというときのために知っておくと役立つことでしょう。

「就職活動をしていても仕事がなかなか見つからない」「家賃を支払えず、住む場所がなくなった」「十分な生活できず将来が心配」など、暮らしに関して不安がある場合には一人で抱え込まずに各市区町村の福祉課に相談してみましょう。一人ひとりの状況に合わせて、専門知識を有する支援員が自立相談や就職支援、家計改善支援など多方面でサポートしてくれます。
これまでご紹介した公的な家賃補助制度に関する説明や申請支援を受けられる場合もあるため、困った場合は一度問い合わせてみましょう。
物件が限定されるものの、家賃助成が受けられる住まいや、行政や行政に準ずる住宅供給公社、URが運営し、割安な住宅もあります。初期費用や更新手数料が無料や割安であり、住まいの質が保たれているのが特徴です。特優賃、公社住宅にUR(都市機構)、公営住宅など、複数あるので整理して紹介しましょう。
土地の所有者が国や自治体などから補助を受けて住宅を建て、住宅供給公社などが借り上げて、管理している住宅です。世帯の所得額に応じて、住宅の本来家賃(契約家賃)の一部を国や自治体が補助してくれるので、割安な家賃で入居できます。
家賃補助額は入居後から毎年一定率で減少し、最長20年間で本来の家賃額となります。あわせて礼金・仲介手数料、更新料がかからないなどのメリットがあります。
注意点としては、特優賃の中から物件を選ぶ必要があること、申し込みにあたっては収入や入居条件があることです。収入基準や入居条件等は各自治体の特優賃制度により異なるため、対象となるか確認するとよいでしょう。
特優賃についてもっと詳しく
→特優賃(特定優良賃貸住宅)とは? 家賃の補助などお得? メリット・デメリットや入居条件は?
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が建設、所有し管理している賃貸住宅です。礼金や仲介手数料、更新料が不要です。家賃を一括して前払いする制度や連帯保証人などがいらないというメリットがあります。シングルでも入居できるほか、子育て世帯や35歳以下、近居などのさまざまな割引制度があります。入居には一定以上の収入が必要ですが、基本的に先着順で入居できます。
注意点としては、駅から遠い物件があること、建物や設備が古い物件があること、家賃は安いとはいえないこと、収入制限が厳しいという点があります。
UR住宅についてもっと詳しく
→UR賃貸とは?一人暮らしでも借りられる?UR賃貸住宅のメリット・デメリット
各自治体の住宅供給公社(JKK)が建設、所有し、管理している賃貸住宅です。住宅や所得によっては、家賃の補助が受けられることもあります。家賃がお手頃で、礼金や仲介手数料がかかりません。シングルでも入居可能ですが、一定以上の収入が必要となります。基本的に先着順で入居できます。
注意点としては、駅から遠い物件があること、住まいの設備が古いこと、募集先がわかりにくく、手続きが煩雑といった点があります。収入基準も厳しめです。
地方自治体が所有、管理している賃貸住宅(県営住宅や市営住宅)です。各県の住宅供給公社が管理運営を行なっていて、一定の所得以下の方、高齢者、シングル、障がい者、外国出身者などが優先され、収入が一定以下であることが入居条件です。行政によって年収区分が定められていて、家族の人数によって所得制限があります。その区分の上限を超えてしまうと入居ができません。入居は先着順ではなく抽選などになるようです。当選しないと入居できません。

家賃補助制度は複数ありますが、知らないと利用できない、申請しないと利用できないことがほとんどです。特に子育て世帯や比較的所得の少ない世帯、ひとり親世帯などであれば、適用できる制度が多々あります。自治体のホームページなどで家賃補助制度の内容について確認し、条件を満たしているのであれば、ぜひ申請してみましょう。
家賃補助制度は企業や自治体、国などがそれぞれ実施しているが、申請しないと利用できない
会社の家賃補助として、住宅手当・家賃手当と借り上げ社宅制度がある。条件に当てはまる場合は、必要書類を記入して申請しよう
失業などが原因で、民間では住宅を探せないときには、国の支援制度がある。生活が不安な場合や住む場所がない場合には地域の福祉課に相談を
物件は限られるものの、家賃が助成される物件、公社の物件などもある