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賃貸物件を借りる際に検討したいのが地震保険です。しかし「賃貸は地震保険に加入すべきなのか」「地震保険にだけ加入できるのか」「補償内容が分からない」などの疑問がある方も多いのではないでしょうか。そこでファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんに、賃貸物件の借主の立場からの地震保険の必要性や補償内容、保険金請求のポイントなどを聞いてみました。
火災保険では地震等による損害は補償されないため、地震等による損害に備えるためには地震保険に加入をします。地震保険は火災保険とセットで加入し、単独では加入できません。
「賃貸の場合、地震保険は基本的に火災保険へ自動付帯している場合が多いですが、強制ではないので地震保険だけ外すことも可能です。居住中に途中から地震保険に加入したい場合、火災保険の期の途中であっても加入できます。その場合、火災保険の契約応当日の前日で一度契約は終了し、応当日から改めて保険期間を設定します。火災保険と同時に地震保険に加入する場合は、保険期間は火災保険と同一か1年で設定します」(FP鈴木さや子さん、以下同)

地震保険で補償される対象は、建物と家財です。「賃貸物件では建物の所有者はオーナー(不動産会社や大家さん)なので、借りている側(入居者)は建物に対して保険をかける必要はありません。入居者が所有する家財に関しては、入居者自身が保険契約をする必要があります」

賃貸物件における地震保険は、家財のみが補償対象です。ここでいう家財は、食器類や家具類、テレビ、パソコン、冷蔵庫などの電気器具類、衣類・寝具類、カメラやスポーツ用品といった身の回り品など暮らしに必要なもので、居住用の建物に収容されている物を指します。
通貨や有価証券、預貯金証書、印紙、切手、1個(または1組)が30万円を超える貴金属や宝石、絵画、骨董品、自動車などは含まれません。避難所にいる間に盗まれた家財も対象外です。


地震保険は国と民間の損害保険会社が共同で運営する保険のため、どの損害保険会社も補償内容と保険料は同じです。
地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30~50%の範囲内で決めることが可能で、家財は1,000万円が限度です。
保険会社によっては地震による損失が生じて保険金が支払われる場合に、最大で火災保険金額の100%まで補償する特約を付けることができます。(保険金額を火災保険の保険金額の50%に設定した場合のみ契約可能などの条件あり※)
※特約については、保険会社によって異なる場合があります。詳しくは保険会社に必ず確認をしましょう。
また、「保険会社の地震保険以外にも、共済や少額短期保険などでも地震による損害をカバーしてくれる商品があります。保険料が安いほか補償内容もそれぞれ異なるので、自分のニーズに合った内容をチェックするといいでしょう」

賃貸物件の入居者が加入する地震保険では、火災保険で補償されない地震・噴火・津波(以下「地震等」)が原因で生じた火災や損害、埋没または流失による家財の損害が補償されます。火災保険との違いは原因が地震等であるかないかです。
例えば損害が地震等ではなく集中豪雨なら火災保険の水災の補償対象です。
「地震保険は、どの程度の家財が被害にあったかで保険金を算出します。損害にあった家財の修理費用や、再購入費用が支払われるわけではありません。例えば家財の保険金額を500万円で契約している家が、地震により家財の約30%が損害を受けた場合(小半損)、150万円(500万円×30%)の保険金が支払われます(イラスト参照)」
家財は5つに分類し、その中で一般に所有される品目の損害状況から家財全体の損害割合が決まります。「例えばテレビのみ損害があった場合、その損害額は家財全体の時価額の10%未満なので、一部損の基準に及ばず保険金は支払われません(表1参照)。また、お皿が1枚割れても10枚割れても食器類として1カウントですから、一部損に満たず保険金は支払われません」

| 分類 | 品目 | 構成割合 | 最大値 |
|---|---|---|---|
| 食器陶器類 | 食器、陶器置物、食料品、調理器具等 | 1% | 5% |
| 電気器具類 | 冷蔵庫、洗濯機、パソコン、TV、エアコン等 | 2.5% | 20% |
| 家具類 | 食器棚、タンス、机、椅子、ソファー等 | 4% | 20% |
| その他身の回り品 | カメラ、靴、鞄、スポーツ用品、レジャー用品等 | 2.5% | 25% |
| 衣類・寝具類 | 衣類、寝具等 | 15% | 30% |
地震保険では、以下の損害に関しては補償されません。
地震保険には建物の免震・耐震性能に応じて保険料の割引がありますが、複数の割引を重複して適用はできません。借主の地震保険は補償対象が家財のみですが、どの割引も選択することは可能です。
また、長期契約をすれば割引があり、保険期間ごとの係数をかけて保険料を計算します。
例えば1年契約の年間保険料が1万円の場合には、5年契約にすると保険料は5万円ではなく4万7,000円(1万円×4.7)になります。
| 保険期間 | 長期係数 |
|---|---|
| 2年 | 1.90 |
| 3年 | 2.85 |
| 4年 | 3.75 |
| 5年 | 4.70 |

下表は2003年度から2022年度までの地震保険付帯率の全国平均の推移(持ち家、賃貸どちらも含む)です。これによると、付帯率は2003年度以降20年連続で増加しており、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震など、大きな地震があった翌年は付帯率が上がっているのが分かります。
「震災をきっかけに地震の補償は火災保険単体では得られないことを知り、付帯率が上がったと考えられます。ただし、地域によっては2022年時点で付帯率50%台のところもあり、加入率は高い地域ばかりとは言えません。毎月の保険料が負担となり、加入に踏み切れない方もいるのだと思います」

「高級家具や家電、通常使用する楽器などを持っている人や揺れに弱い物件に住んでいる人は地震による被害が大きいので、地震保険を付けておくと安心です。ただし、保険金を満額受け取れるのは相当数の家財が被害に合った場合なので、家財を再建できるだけの貯蓄があるかどうか、多くは保険金の一部しか受け取れないことを考え、加入の有無を検討するといいでしょう」
自然災害で被害を受けた被災者が受け取れる被災者生活再建支援金制度(都道府県が運営)の支給額は、賃貸で最大150万円ですが、支援金の対象となるには条件があります。生活の再建をするには、家屋や家具の復旧・購入費用以外に引っ越し費用や新しい住居に移るまでのホテル代、新居の敷金・礼金などの費用が発生し、この費用すべてを自己負担するのはかなり大変です。

住んでいる地域が大きな地震に耐えられるか、リスクがどの程度あるかを知れば、あらかじめ備えることができます。「国土地理院や各自治体のHPにあるハザードマップでは、洪水、土砂災害、高潮、津波のリスク情報が確認できます。例えば津波の可能性が高い地域は地震による津波の被害が想定されるため、地震保険を検討するといいでしょう」

保険金請求時には、家財が地震によって損害を被ったことを証明する必要があります。身の安全を確保したら、損害の程度を写真に撮っておきましょう。ポイントは全体像に加え、多方向から撮影すること。
この写真が保険金請求する際の資料になります。また、保険会社が保険金の査定をするときには、壊れた家財を確認することがあります。壊れた家財は破棄せず、調査員が訪問した際(現地調査)に、撮影した写真と一緒に見せるようにしてください。

地震保険は自動的に保険金が下りるわけではありません。被災したら、保険会社または保険代理店に速やかに連絡を入れましょう。会社によっては電話のほか、インターネットで被害申請ができる場合もあります。連絡を受けた保険会社は専門家を派遣し、立ち会い調査を行います。
被災して保険証券を紛失しても、保険金の請求は可能です。また、契約した保険会社や契約の有無が分からない場合は、自然災害等損保契約照会センターに問い合わせましょう。契約があればその損害保険会社から、契約がない場合は自然災害等損保契約照会センターから2週間程度で連絡がきます。
一般社団法人 日本損害保険協会 「自然災害等損保契約照会センター」
フリーダイヤル 0120-501331
※受付時間:平日9時15分~17時(祝日・休日および年末年始を除く)

調査員による立ち会い調査の結果に不満がある場合は、再審査を依頼することができます。それでも納得がいかない場合には、日本損害保険協会が運営するそんぽADRセンターに相談しましょう。
そんぽADRセンター
ナビダイヤル 0570-022808(全国共通・通話料有料)
※受付時間:月~金(祝日・休日および年末年始を除く)午前9時15分~午後5時まで
最初の地震から3日(72時間)以内であれば何度余震があっても1つの地震とみなされ、それ以降は別の地震として扱われます。3日(72時間)以内に起きた余震で家財が壊れた場合も、本震と同様に写真に残します。
最初の地震から3年が経過すると保険金の請求は不可となります(保険法第95条)。ただし、東日本大震災など災害の規模によっては3年以上前の損害でも補償が受けられる特例措置を設けている場合があります。
また、地震保険は実損填補ではない(修理費の実費が支払われる保険ではない)ため、修理見積書などは必要ありません。
賃貸物件における地震保険は、食器類、家具類、電気器具類、衣類・寝具など暮らしに必要な家財が補償対象
地震保険はどの損害保険会社も補償内容と保険料は同じで、火災保険とセット契約となる
保険金請求の際は自ら保険会社に連絡し、壊れた家財は破棄をせず写真に撮っておくこと