昨年に続き、東京以外の行政市として唯一のトップ10入りを果たした鎌倉市。観光スポットとしてなじみがある鎌倉は、源頼朝によって幕府が開かれ150年にわたって政治の中心地として栄えた。開府から約800年たった今もなお、当時をしのぶ神社仏閣などの史跡が市内に点在しており、古都鎌倉の風情を感じさせるスポットとして多くの観光客が足を運んでいる。
鎌倉駅を中心に広がる市街地は、鎌倉幕府の都として計画的な整備が進められ、寺院も数多く建立されている。駅から少し離れたところには、荘厳な竹林で知られる「報国寺」や、あじさいが咲き誇る参道でも有名な「明月院」などがあり、街歩きも楽しいエリアだ。また、鎌倉駅から「鶴岡八幡宮」の門前にかけて延びる小町通りには食べ歩きグルメや土産物店などが並び、休日にはたくさんの人でにぎわっている。界隈のレストランでは山海の豊かな食材を活かした料理も味わえ、力強く濃厚な味わいの「鎌倉野菜」に代表される地産地消の豊かな食文化が土地に根差しているようだ。
一方、海側の景勝やリゾートにも恵まれており、市の南部に位置する「由比ガ浜」には毎年夏になるとサーファーをはじめマリンスポーツや海水浴を楽しむ人が集まってくる。穏やかな波が打ち寄せる「七里ヶ浜」は『日本の渚百選』のひとつにも選定。好天時には富士山も望める、リゾート感たっぷりのスポットである。
また、再開発が進むエリアもある。現在、JR大船駅では、東側で約270戸の高層マンションや商業施設が計画されている。また、湘南モノレール・湘南深沢駅近辺は、JR鎌倉総合車両センターの工場機能廃止にともない、広大な敷地は更地化工事が行われた。第3の拠点形成をめざす同エリアのまちづくりについては、大型商業施設の建設や大学の誘致なども検討されるなか、今年に入って意見交換会のまとめも公表され、今後の計画に期待が寄せられている。
行政と住民が手を携え、鎌倉の景観を保つための取り組みも盛んだ。2015年4月から全国の自治体に先がけて家庭ごみの有料化をスタート。ゴミそのものを減らすことで、市全体の環境美化につながる取り組みを積極的に進めている。なお、2013年度のリサイクル率は48.4%で、これは人口10万人以上の市として5年連続で全国第2位の数値。住民たちの高い環境意識がうかがえる。
10年前からは「まちづくり条例」を制定し、緑豊かな街並みをつくるための緑化を奨励。加えて、鎌倉らしい都市景観を守るため屋外広告物の色彩・デザインを制限するなど、美しい街並みを維持するための施策に力を入れている。
課題は待機児童の問題で、2015年4月時点では50人と県内ワースト4位だった。市内の保育ニーズは依然高まっており、市では「こども・子育て支援新制度」を立ち上げて低年齢児童を受け入れる小規模な保育事業所の運営を開始するなど、対策に乗り出している。
ファミリ―を含む全ての世帯にとって住みやすい街へ。課題はあるが、地元住民の努力と行政の取り組みによって維持されてきた古都の美しさは何よりの魅力だ。今後も、都心の利便性とは違った価値を求める人々に支持され、人気を維持していきそうだ。