農地転用とは?農地から宅地等への用途変更や農地売買は自由にできる?

最終更新日 2023年09月29日
農地転用とは?農地から宅地等への用途変更や農地売買は自由にできる?

農地を売りたい、畑だったところに家を建てたいときはどうすればいいのでしょうか。農地は自由に売買や用途変更が可能なのでしょうか?土地や建物の登記などに詳しい、札幌土地家屋調査士会広報部理事の荒木崇行さんに話を聞きました。

農地を売りたい、農地以外の使い方をしたい。自由にできるもの?

住宅地に比べて、簡単には売買や転用ができない

「農地は、食糧を生産する農業を守るための大切な基盤です。そのため権利の移動や農地以外への転用については、農地法による制限があります」(荒木さん、以下同)
この場合の「農地」というのは稲作に使用している水田や、野菜などを育てている畑のほか、酪農家が牧草を栽培している土地、果樹園なども含まれます。
「農地法がかかわる農地の場合、住宅地のように自由に売買はできません。売買や貸借、転用を行う場合には農業委員会や都道府県知事の許可を得る必要があります」

つまり、農業振興のため、また、周辺の農地への悪影響を防ぐため、「相続したけど自分は農家を継がないから売ってしまいたい」「農業をやめて、使っていた農地でコンビニを始めたい」などの売買や転用が勝手にはできず、許可を得られない場合もあるのです。

農地法の第3条、第4条、第5条がポイント

農地の売買や転用の制限については、農地法の第二章「権利移転及び転用の制限等(第三条~第十五条)に詳しく書かれています。以下はポイントとなる第三条、第四条、第五条の一部を抜粋したものです。

農地法第3条

農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない

農地法第4条

農地を農地以外のものにする者は、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可(中略)を受けなければならない

農地法第5条

農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(中略)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(中略)を受けなければならない

法律の条文は少し難しいので、どんな場合にどの条文がかかわるのかを解説しましょう。

農地を農地のまま売る場合<農地法第3条>

「例えば、農業を営んでいる実家の農地を相続したけれど、実家には戻れないし農業を継ぐ意思もない、という人が、近隣の農家や新たに農業を始めたいという人に農地を売る場合は第3条が関係します。農業委員会に申請して許可を得る必要があります」

農地を農地のまま売却するのであれば、すんなり許可がおりそうなものですが、実はケースバイケース。
「専業農家から専業農家への農地の売却は比較的ハードルが低いのですが、専業農家から兼業農家への売却の場合は許可がおりないこともあります。将来的に農地としての利用が継続しない可能性が高いからです。また、原則、農家でない人が農地を取得することもできません。売買が可能かどうかは農業委員会が現地で状況を調査し判断するため、一概にはいえません」

イラスト

農地を他の利用目的に転用する場合<農地法第4条>

所有している農地に家やアパートを建てる、資材置場や駐車場にするなど、農地の所有者が自ら土地の用途変更をしようとする場合は、第4条がかかわってきます。農地は一度転用されると、農地に戻すことが困難になります。また、無計画な転用は乱開発につながり地域の農業に影響することも。そのため、転用には下記のような届出や許可が必要です。

◎4ha以下の市街化調整区域内の農地の転用→都道府県知事の許可が必要
◎4ha超の市街化調整区域内の農地の転用→国との協議のうえ都道府県知事の許可が必要
◎市街化区域内にある農地の転用→農業委員会に届出

市街化調整区域は自然環境や農業などを守るための土地利用を図るため、その地域の条件や状況によっては許可がおりない場合もあります。市街化区域内にある農地の場合は、農業委員会への届出のみで転用が可能ですが、自治体の条例などで転用ができないケースもあります。転用可能かどうかはケースバイケースですから、地元の農業委員会に相談するのが先決です。

農地を他の用途のために売却する場合<農地法第5条>

住宅地や駐車場、資材置場など、農地以外のものに転用するために売却する場合は第5条の制限を受けます。この場合は、農地の売主、買主の両者が下記のような許可を受ける、または届出を出すことが必要です。

◎4ha以下の市街化調整区域内の農地の転用→都道府県知事の許可が必要
◎4ha超の市街化調整区域内の農地の転用→国との協議のうえ都道府県知事の許可が必要
◎市街化区域内にある農地の転用→農業委員会に届出

なお、農地を相続したものの、自分は遠隔地に住んでいて農業を継ぐこともできず、農地をどうしていいか分からないという場合は、農業委員会に売却や農園としての貸し出しができるかなど、相談にのってもらいましょう。地域によって制限や条件が違いますから、農地のある地元の農業委員会に問い合わせることが大切です。

農地に家を建てたいと思ったら?知っておきたいポイント

まずは地元の農業委員会に相談

自分が所有している農地に、自分が住むための家を建てることは不可能ではありません。でも、農地のまま無断で建ててしまうのはNG。家を建てる前に農業委員会に農地転用の届出が、また、建築確認申請も必要ですから、農地に家を建てようと思ったら、まずは地元の農業委員会や役場の建築指導課へ。そのほか、土地の名義や区画の変更を行う場合、登記や測量については土地家屋調査士に相談するといいでしょう。

農地を安く買って、地目変更をして家を建てられる?

自分が所有している農地ではなく、他の人から農地を買って宅地に地目変更をし、家を建てることは可能でしょうか?実は、農家ではない人が、農地を買うことは難しいのが現実です。
「特に、農業を保護していくために指定されている農業振興地域の場合、専業農家が買主でなければ農地の売買は難しいケースが多いといえます」

農業ではなく、住宅建築が目的で農地を買うのであれば、所有者に宅地への転用をしてもらってから購入する、という方法が考えられますが、可能かどうかは立地や地域の状況、条例になどによって違ってきます。農地の所有者に協力してもらい、地元の農業委員会に相談するのがいいでしょう。

イラスト

道路整備が必要な場合もある

農地を宅地に転用する場合、農地法をクリアするだけでなく、建築基準法も満たす必要があります。建築基準法では、建物を建てるには敷地が建築基準法で認められた道路に面していることが条件(接道義務)。農地に囲まれていて、道路と接していない土地では家を建てることはできません。道路と接するように宅地を設定するか、道路整備が必要な場合があります。

農地の多いエリアの場合、農地転用での住宅建築の実績が多い会社、知識の豊富な営業担当者がいる会社があるかもしれません。スムーズに売買や地目変更、建築を進めるために、農家の方や農業委員会などから、地元の建築会社の情報を集めてみるのもいいでしょう。

まとめ

農地の売買や用途変更には許可または届出が必要

農家以外の人が農地を買って家を建てることは難しい

農地の相続や売買、用途変更をしたいときは、まずは地元の農業委員会に相談を

土地を探す
注文住宅の会社を探す
中古一戸建てを探す
新築一戸建てを探す
カウンターで相談する
ハウスメーカーを探す
工務店を探す
売却査定する
賃貸物件を探す
引越し見積もりをする
中古マンションを探す
新築マンションを探す
リフォーム会社を探す
取材・文/田方みき イラスト/竹村おひたし
関連する最新記事を見る
住みたいエリアや購入価格からマンション・一戸建てを探そう!
住まいの種類
住みたいエリア
  • エリア
  • 都道府県
  • 市区郡
購入価格

お役立ち講座・個別相談のご案内無料

住まい選びで「気になること」は、人それぞれ。スーモカウンターのアドバイザーは、新築マンション選びと会社選びをサポートします。講座や個別相談を通じて、よかった!と思える安心の住まい選びをお手伝いします。
カウンターアドバイザー

住み替えサポートサービス

ページトップへ戻る