私たちが銀行などの金融機関にお金を預けたり、住宅ローンなどでお金を借りたりするときにかかわってくる金利。金利はどのように計算されるのでしょう。今回は金利についての基礎知識を解説します。
「金利」とは、お金の貸し借りをしたときに、借りた人が貸した人に支払う手数料(貸借料)みたいなもの、または、その手数料(貸借料)の割合を指している言葉です。
「金利を支払う」とか、「金利をもらう」といった貸借料そのものを指す場合もありますし、「金利は年〇%」といったように、割合を指す場合もあります。
また、「金利」の代わりに、「利子」や「利息」といった言葉が使われることもあります。「利子(利息)を支払う」、「利子(利息)をもらう」などです。しかし、「年〇%」といった割合を示す場合は、「利子年〇%」や「利息年〇%」ではなく「金利年〇%」と表記されるのが一般的です。
なお、古くは「歩合(ぶあい)」という言葉も使われていました。
例えば、その昔、日本銀行が一般の銀行にお金を貸し出す際に使われていた金利である「公定歩合」。聞いたことがある人もいますよね?
あれは、まさに、公が定めた歩合(=金利)だったわけです。
実は、1994年に金利が完全に自由化されるまでは、預金金利等の各種金利は常に日本銀行が定めた公定歩合に連動していました。日本銀行が公定歩合を引き上げるか引き下げるかが、世の中のすべての金利に影響を及ぼしていたわけです。
現在も日本銀行は、金融市場調節を通じて金利をコントロールしていますが、世の中のすべての金利が日本銀行によって直接コントロールされているというわけではありません。
ちなみに、現在も「日歩(ひぶ)」=1日あたりの歩合、つまり、1日あたりの金利という意味の言葉が使われることがあります。
「金利」は、お金を借りた人が支払って、貸した人が受け取るのが基本です。
預金の場合は、預金者が銀行にお金を預けるという行動が、銀行にお金を貸しているのと同じことになります。したがって、お金を借りた銀行は、預金者に利子(利息)を支払うわけです。
普通預金だと、毎年2月と8月の年に2回に分けて利子(利息)を支払うのが一般的です。2月や8月に通帳を記帳して、「お利息〇〇円」などと記載されているのを見たことがある人もいるのではないでしょうか。現在は、金利が低すぎて微々たる利息額になっているとは思いますが。
つまり、お金を貸している人にとっては、金利は高いほうがいいわけです。それだけ多くの利息がもらえるからです。
一方、住宅ローンや車のローン、カードローンなどで、お金を借りている人の場合は、貸してくれた銀行などにお金を返していくだけでなく、ローンの残高に応じた利息を支払っていく必要があります。
つまり、お金を借りている人にとっては、金利は低いほうがいいわけです。それだけ少ない利息の支払いですむからです。
ところが、近年、マイナス金利という言葉が使われるようになりました。
とはいえ、私たち個人がかかわるお金の貸し借りにおいては、超低金利状態ではありますが、依然として金利はプラスの状態です。
では、実際にどこがマイナス金利なのかというと、一般の銀行が日本銀行の当座預金に預けている金額の一定額を超えた部分に対する金利が、日本銀行の金融政策によって現在マイナス金利に設定されています。したがって、私たち個人にはあまり影響のない部分ですので、ご安心ください。
仮に、私たち個人がかかわるお金の貸し借りの金利がマイナスになったとすると、預金者は預金に対して利息を支払わなければならなくなりますし、住宅ローンなどのお金を借りている人は利息がもらえる、というわけのわからない状態になってしまいます。たぶん、そんな世の中が来る可能性は非常に低いかと思われますが。
利息の割合を示す金利は、多くの場合、1年間の利息の割合である「年利率」、略して「年利」で表記されるのが通常です。
例えば、現在、多くの銀行の普通預金金利は、年0.001%となっています(一部のネット銀行などでは少し高めの金利を提示している場合もあります)
その普通預金に100万円を預けていたとすると……
100万円×0.001%=10円
1年間で10円の利息をもらえることになります。
実際には、それを年に2回に分けてもらうので、5円ずつになります。
ちなみに、受取利息に対しては、20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が差し引かれ、税引き後の利息が口座に入ることになります。
ただ、1回あたり5円の利息の場合は、
となって、ともに1円未満なので端数が切り捨てられ、税金は全くかからないことになります。
一方、住宅ローンなどで、利息を支払うケースではどう計算するのかというと、毎月返済していく場合は、「年利」ではなく、1カ月あたりの利率である「月利」で計算するのが通常です。
例えば、3000万円を年0.6%の変動金利で借りる場合、1回目の返済額に占める利息部分の金額は、
となります。
これが、年1.2%の固定金利で借りる場合だと
となります。
単純に利息の負担が2倍になっていることがわかると思います。
ちなみに、2回目の返済額に占める利息部分の金額は、1回目の返済後のローン残高に対して月利を掛けて計算します。
計算式を見て気づいた方もいるかもしれませんが、実は、住宅ローンなどの借り入れに対してかかる利息部分の金額の計算には、返済期間の長短は全く影響しません。
3000万円を年0.6%の金利で借りた人の1回目の返済額に占める利息部分の金額は、返済期間が10年だろうが35年だろうが100年だろうが、1万5000円なのです。
ということは、返済期間を短くすると毎月返済額が増えますが、何が増えるのかというと、返済額に占める元金部分の金額が増えていくということです。元金部分の金額が増えると、ローン残高の減るペースが速まります。
2回目以降の返済額に占める利息部分の金額は、その時々のローン残高をもとに計算されますから、ローン残高の減るペースが速い分だけ、利息部分の金額が減るペースも速くなるわけです。結果として、元金部分と利息部分を合わせた総返済額も少なくなります。
住宅ローンなどの借り入れについては、できる限り返済期間は短めに組んだほうがトク、というのは、返済額の計算方法がこのような仕組みだからです。
住宅ローンの返済方法には、元利均等返済と元金均等返済の2つがありますが、利息の計算方法は基本的に同じです。その時のローン残高に対して月利(ボーナス返済の場合は、年利を2で割った半年利)を掛けて計算するのが通常です。
元金均等返済について詳しくはこちら
元金均等返済は損か得か 元利均等返済との違い、返済シミュレーション例を紹介/
なお、実際にローンを組んだ場合の1回目の返済額に占める利息額は、融資実行から1回目の返済日までの日数で日割計算された利息額になっている場合がありますので、ここで計算した金額とは異なっている可能性があります。また、1円未満の端数処理の取り扱いなど、金融機関等によって計算方法が異なる場合がありますので、詳しくはご利用の金融機関等にお問い合わせください。
一般的には、金利は借りる人には低い方が、貸す人には高い方が有利
預金をしていると利息を払うことになるマイナス金利は、個人にはあまり影響はない
住宅ローンなど利息を払う場合は、1カ月ごとの月利で計算されるのが一般的
住宅ローンの利息額の計算に返済期間の長短は関係ない
イラスト/杉崎アチャ