SUUMO(スーモ)は、住宅・不動産購入をサポートする情報サイトです。

住宅設備はユーザーの使い勝手を鑑みて、日進月歩で進化している。特に毎日の家事にかかわるキッチン&バス・サニタリーの進化には目を見張るものがある。では、便利で快適な機能・性能を備える最新設備はいかに開発されるのか?その商品開発?ストーリーを紹介しよう。
自分では気づいていない無駄な動線が意外と多い
例えば、主婦をまじえてのグループインタビュー、1000人を超えるアンケート調査、モニターによる使用テスト??。住宅設備開発のキモは、いかにユーザーの目線に立ち、使いやすさを追求できるかにある。新商品を発表した後も、ユーザーから使用後の「満足・不満」を調査し、次の商品開発に活かしていく。そうやって、住宅設備は日進月歩で進化してきたのだ。では、「使い勝手」が最重要のキッチンには、いかなる開発秘話があるのだろうか。
10年夏発売の「クラッソ」は効率的に調理を行うことを研究して開発されたキッチン。TOTO・キッチン商品開発グループの伊藤真弓さんに伺った。
「クラッソの開発ではアンケート調査に加え、一般のお客様宅を80件以上訪問し、キッチンでの調理手順や人の動きをビデオに録画させていただきました。観察・研究を進めるなかで、キッチンに不満をもっていない人でも、調理中の作業動線に無駄があると気づいたんです」
目指したのは動線が少ないI型キッチンを実現すること。「I型キッチンでいちばん長く立つ場所は1番が作業スペースで2番がシンク、3番が加熱機器まわりです。そこで、作業スペースをキッチンの中心に置き、よりラクに動けるようシンクや水栓、収納を工夫しました」
例えば、排水口をシンクコーナー奥の隅に設置し、蛇口からの水で自然とゴミが排水口に流れる構造。逆に浄水器は作業スペース側端に寄せることで、調理カウンター上の鍋にそのまま水を注ぐことができる。これなら家事動線は短くなる。
「今後もお客様の声に耳を傾け、それらを新商品の開発に活かしていきたいと思います」


【A】一度にサッと洗いたい そんな発想が着眼点
「一度にサッとゴミが流れればいいな」という発想から生まれた水ほうき水栓。シャワー幅が広く、当たった水が横に広がるので、少ない水でサッと洗える

【B】動線をスムーズにする 水栓を追求!
シンクの前に立ち鍋に水を注ぐと調理の手が止まる。そんな発見から水栓を調理スペースそばに設置。カウンター上の鍋にそのまま水が注げ、鍋底も濡れず移動もラク

【C】流した水でゴミが自然と 排水口に流れ落ちる設計に
シンク底に角度をつけ、水を流せば自然とゴミがコーナー奥の排水口に。モニターの使用テストでは「知らない間にキレイになっている!」との声も

【D】モニターの使い方から実現 無駄な動きが少ない収納
「よく使うものは手前に入れ、引き出し全部を開けずに取り出している」。そんな着眼点から連動式の二重引き出しが誕生。必要なものが少ない動きで取り出せる

少ない水でいかに流すか水の当たる範囲を検証!
従来品と水ほうき水栓でシャワーをテスト。シャワーの出る幅や水栓の角度などを研究し、少ない水でもサッと洗い流せる新機能を開発した。実はクラッソ開発の1年前から研究を進めていたとか。
3口同時に調理できたら使いやすいのでは?
3口横並びという斬新なアイデアが話題の「トリプルワイドIH」。その開発秘話をパナソニック エコソリューションズ社・住建新事業・商品企画室の西田美佐子さんに伺った。
「3口のIHクッキングヒーターはありますが、奥のコンロが使いにくいなど、改善点がありました。『3口同時に調理できたら使いやすいんじゃない?』と思い、一口IHを3つカウンターに埋め込んだ試作品をつくり、主婦のモニターの方数名に使用してもらったんです」
評価は概ね好評。そこから仕様やサイズを変更し、のべ144人のモニターが使用し商品化。
「実は、逆L字型の配置も検討しました。使いにくくてすぐ却下しましたけど(笑)」


モニターテストで実証 作業しやすい調理スペース
モニターのテストでもっとも好評だったのが、手前の調理スペース。盛りつけやちょっとした調理にもってこい。何度も微調整を行って、現在の16cmという奥行きになったのだとか
より手ごろな価格を目指し目標は10万円以下!
まさかお風呂まで自動でお掃除してくれるなんて・・・」、そう思った読者も多いのでは。ノーリツの新型システムバス「クレッセ」のオプションで搭載できる「おそうじ浴槽」は、同社を代表する家事ラク機能だ。ノーリツ・住設商品開発室の東影亘彦さんに伺った。
「お湯を使ってお風呂掃除の負担を減らしたい、それが開発のきっかけです。とはいえ、10年以上前の話。実は、自動洗浄機能は97年に『洗っときバス』で商品化し、その後もリニューアルして販売。ただオプションで15万円以上と高額で…」
それから数年後、価格を10万円以下に下げることを目標に、おそうじ浴槽の開発が始まる。
「過去のモデルは洗浄用のお湯と洗剤を噴射するノズルが3つありましたが、1つに簡略化。ノズルひとつでまんべんなく浴槽を洗えるよう、何度も改良を重ねて実現しました」
現在オプションで5万5000円、当初の約1?3。グッと身近な存在になったのだ。


【A】汚れにくく傷に強い浴槽を独自に開発
アクリル系人工大理石のバスタブは、数年前に同社で独自開発したもの。表面がなめらかで硬度も高いので汚れにくく、傷にも強い。キレイな状態が持続

【B】ノズルを改良し続けて浴槽をすみずみまで洗浄
スイッチを押すと浴槽内の洗浄ノズルからお湯と洗浄液を噴射させて、浴槽を洗う仕組み。1つのノズルで浴槽をすみずみまで洗えるように、試行錯誤を重ねてノズルの噴出口の形状は楕円形に

【C】ユーザーの声を反映し入手性の高い洗剤を採用
ユーザーの声を反映して、一般用の洗剤で、いちばん入手性の高いものを採用。しかも、使用洗剤量は約25ccと10年前のモデルの半分に

【D】浴槽素材の知見を応用汚れにくい床を開発
長年使うと床表面に傷がつき、汚れが入り込み黒ずみになる。それを解消するために、浴槽と同じ素材でコーティングした汚れにくい床を開発

お風呂掃除の不満を調査 時間と体への不満が多い
当初は「主婦の省手間」を目的に開発された自動洗浄機能。意外にもユーザーからは「高齢になるとお風呂掃除は体への負担が大きい」という声も多く驚きだったとか。(アンケートはノーリツ調べ)。
床が固い、冷たく感じる 予想外の不満の声が…
システムバス「サザナ」には、お風呂の心地よさを追求した新商品「ほっカラリ床」が搭載されている。開発を担当したTOTO・浴室開発企画グループの大庭崇嗣さんに話を聞いた。
「『お風呂の床は翌朝には乾いてほしい』というお客様のご要望から、2001年にカラリ床を開発しました。アンケート調査では概ねご好評いただけましたが、約2割のお客様から『床が少し固い』『冷たく感じる』などの声があったんです」
さらなる開発が始まり、畳のようなやわらかさで冬でもひんやりしないほっカラリ床を開発。
「どんなに難しいご要望でも、否定せずお客様の声に真正面から向き合ったから、ほっカラリ床は誕生したのだと思います」


ユーザーの意見を反映し踏み心地をとことん追求
三重構造で間に断熱クッションをはさんだほっカラリ床。感性工学を用いて最適な踏み心地を研究し、畳のようなやわらかさを実現。断熱クッションでひんやり感も解消
お手入れしやすくではなく なぜお手入れが必要か?
「全自動おそうじトイレ」、これまでにない画期的な機能を備える「アラウーノ」はいかにして誕生したのか?パナソニック エコソリューションズ社・住建新事業・商品企画室の酒井武之さんに話を伺おう。
「いかにお手入れをしやすくするかではなく、『なぜお手入れが必要なのか』、そこから開発がスタートしました。お客様宅の訪問調査では、『買ったときはキレイなのに、ずっと使っていると汚れてくる』という声があり、それがヒントになりました。汚れの原因はトイレの素材の陶器。非常に水アカがつきやすいんです。そこで陶器以外の素材を検証し始めたのです」
水アカのつきにくい有機ガラス系の新素材をトイレに採用。
「ただ、それだけなら汚れがつきにくいトイレです。当社はミクロの泡を使った技術をもっていたので、これを応用しようと。水と洗剤にミクロの泡を入れることで、洗浄力が大幅にアップしました。素材と洗浄法、この2つがそろって初めて、全自動洗浄が実現したんです」


【A】ユーザーの声を反映し洗剤補充をより簡単に
発売当初のモデルは洗剤を入れるタンクが取り出し式だったが、「入れづらい」と不満の声が。そこで、現行モデルではタンクを取り出さずに洗剤を入れられるように改良

【B】新素材だから実現!隙間なしでお掃除簡単
通常、便器と便座は素材が異なり隙間が発生するが、アラウーノは便器と便座が同素材の一体成型。
隙間がなくてお掃除がラク。新素材が新たな家事ラクを生んだ

【C】汚れにくいを追求し新素材を開発
水アカが付着しにくい有機系ガラスをトイレの素材に採用。
陶器以外のトイレに不安もあったが、グループインタビューでは「汚れが落ちるならかまわない」と支持も多かった

【D】自社の技術を応用し新たな洗浄方法を採用
洗浄方法は水と洗剤の2度洗い。この水と洗剤の中にミクロの泡を入れることで洗浄力をアップ。実はこれ、同社がお風呂の酸素浴のために開発した技術を応用したもの

リアルな擬似便で汚れ落ちを徹底確認!
開発で苦労したのが、「本当に汚れが落ちるかどうか」の検証。なんと、粘度の異なる5種類の擬似便を独自開発してしまったのだ!中華料理の後(油が多い)の便など、設定も驚くほどリアルだ。
住宅設備のトレンドとユーザーの嗜好性が合致
システムバス「サザナ」には、お風呂の心地よさを追求した新商品「ほっカラリ床」が搭載されている。開発を担当したTOTO・浴室開発企画グループの大庭崇嗣さんに話を聞いた。
「トイレは白」、そんな常識を覆したINAX(LIXIL)の「レジオ」。ご覧の通り、真っ黒のトイレである。LIXILの桑原俊勝さん(※当時)に伺おう。
「開発当時の2008年は、自分のこだわりにはお金を惜しまない”一点豪華主義”の風潮があり、ちょうど住宅設備のトレンドもシルバー系からモダンな黒に変わりつつありました。そこで、こだわりをもつユーザーに向け、高級感のある黒いトイレを提案したのです」
だが、開発は困難を極めた。
「実は、黒というのは焼き物でいちばん難しい色なんです。いろんな色を混ぜて黒にするので、均一に仕上げるのが難しい。ツヤ消しはさらに難易度が上がります。正直、完成ギリギリまでツヤありにするか悩みましたが、焼き物メーカーとしてのプライドをかけて技術者が奮闘し、ようやく商品化に成功しました」


一点豪華主義だから便座にも快適性を
快適性を求めて、従来品より横幅を13%アップした大型ワイド便座。縁もあえてスクエアに。モニターテストでは「長時間座っても疲れにくい」との声があがったという