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フローリングも壁や天井と同じように、長く使っていると傷やへこみ、汚れなどが目立ってくる。場所によってはカビによる黒ずみが出ることも。キレイにしたい!と思ったら、まずは、張り替える場合の施工方法やフローリング材選びのポイントなどを知っておこう。自分で補修する方法も紹介する。一級建築士のYuuさんに話を聞いた。
リビングや部屋のフローリングをまるごと新しくしたい!という場合、主なリフォーム方法は次の3つ。
(1)既存の板の上にフローリング材を張る重ね張り
(2)下地はそのままでフローリング材のみを撤去し、新しいフローリング材に張り替え
(3)下地板や床組を撤去、補修し、フローリング材を張り替え
「このなかでは、(1)の既存の板の上に重ね張りする方法が簡単で安く、施主もラク。6畳程度なら1日で仕上がります。実は、リフォームで大変なのは解体とそれに伴う廃材の処理なんです。フローリングを張り替える場合、床板だけでなく、幅木(壁の下部、床の接している部分に張られた横板)も剥がします。解体では音も出るし、ホコリも舞い、工期も重ね張りに比べて長くなります。剥がした床板や幅木は産業廃棄物扱いになるためゴミの日には出せず、処分費用がかかります。それに比べて重ね張りは、音やホコリの心配もなく、リフォーム時に出るゴミもわずかですみます」(Yuuさん、以下同)

つまり、フローリングのリフォームでは重ね張りができればコストや工期、手間の点で理想的。しかし、重ね張りができないケースもあるという。それはどんなケースだろう。
「歩いたり踏み込んだりしたときにギシギシ音がしたり、たわんでいたり、沈み込んだりする床は、下地が腐ってゆるんでいる可能性があります。一戸建てなら床下からもぐって、補修をしたうえでフローリングを重ね張りできる場合もありますが、古いマンションで下地が傷んでいる場合は、既存のフローリング材を剥がして、下地を補修してから張り直す方法になりますね。また、マンションの場合、重ね張りでは管理組合が定めた床の防音性能をクリアできないこともあります」
重ね張りが可能か、チェックポイントは床下の状態と防音性能。これらがクリアできるかリフォーム会社に確認してもらってから、リフォーム方法を相談するといいだろう。
張り替えに比べて気軽にできそうな重ね張りだが、もうひとつの注意点はフローリング材の厚さ。
「厚さ1.5mm程度のシートのように薄いフローリング材や、厚さ1.5cmのむく材まで、重ね張りに使える材料はいろいろです。重ねて張るので、フローリング材の厚みの分、床の高さが上がることになり、ドアの下がひっかかり、そのままでは開閉できなくなることも。床が1cm程度上がることでキッチンが低く感じる人もいます。ドアの下部をカットしたり、キッチンの高さを上げたり、調整を行う手間と費用がかかることがあります」

リフォーム費用は施工方法やフローリング材の種類によって大きく違ってくる。
「一番安く済むのは、DIY用のフローリング材をホームセンターなどで買って、自分で重ね張りをする方法。費用は畳1枚分数千円~といった材料費だけ。一方、フローリング材にこだわるとコストは跳ね上がり、標準的な張り替えで10万円台で済む広さに、30万円以上かかってしまう、ということもあります」
そこで、Yuuさんに、ニーズの多い2つのケースの費用の目安を出してもらった。(施工会社に依頼した場合)
・case1
6畳の和室をフローリングに → 13万6000円※
「畳をフローリングにしたいというお問い合わせはとても多いです。畳を撤去することで下がった畳の厚み分を、他の床レベルに合わせるための床組みを行い、標準的なフローリング材を張る場合のおおよその目安。工期は約2日です」
・case2
約16畳の部屋。既存の床板の上に重ね張り → 14万9000円※
「25.8m2(約16畳)のLDKに、厚さ1.5mmのフローリング材を両面テープで重ね張りする場合の目安です。工期は約2日です」
※金額は「積算資料ポケット版 リフォーム編2018」(経済調査会)をもとに試算。実際の費用は施工会社、材料、工期、住宅の状況、エリアなどによって異なります。
同じ材料、同じリフォームの方法でも、部屋の状況や張り方によってコストは違う。フローリング材は、四角い部屋に張るのが施工をしやすくロスが少ない。また部屋の長辺に沿う方向で張るのが基本だ。しかし、斜めに張ったり、ヘリンボーンなど入り組んだ模様にすると材料のロスが多くなり、手間がかかる分のコストもアップする。
「凹凸のある入り組んだ形の部屋も材料のロスが出るので割高になります。また、むく材を使う場合は施工箇所に仮並べをし、板を1本ずつ施工していくので手間がかかります。同じ広さでも、工業製品のフローリング材はまとまった面積を一度に張ることができるので、むく材よりも手間賃が抑えられます」

最近は、水やアンモニアに強く、シミになりにくいコーティングがされたフローリング材が豊富になった。そもそも表面が木ではなくプリントしたオレフィンなどのシートを張り付けたシートフローリングと呼ばれる床材も増えている。そのため、以前はクッションフロアやビニルシートが使われていたトイレに、フローリングが多く使われるようになっている。このような表面加工が施されたフローリング材は、キッチンやトイレ、洗面室などに、肌ざわりのいいむく材はリビングに適している。ペットがいる場合は足の関節を痛めないよう滑りにくいコーティングをした床材を、へこみをできるだけ付けたくないならオークやメイプルなど広葉樹系の硬いむく材を選ぶなど、暮らし方や場所によってフローリング材を選ぶといい。
「リフォームの場合のおすすめは、畳からフローリングに変更した場所をむく材にする方法。パインやヒノキなど、針葉樹系のやわらかいむく材にすると、畳と同じように寝っころがっても気持ちがいいんです」

コーティングしてあるフローリングが水に強いといっても限度がある。ぬれたらマメに拭くなど普段から大切に扱うのが長持ちさせるポイントだ。
「ワックス不要なものにはワックスはかけないなど、床材に合ったお手入れをしましょう。紫外線を浴びる場所のフローリングは劣化しやすいので、窓ガラスに紫外線をカットできるシートを張るなどもおすすめです」
傷やへこみはあるけど、張り替えるほどではない場合、気になる箇所はDIYで補修するといい。
「私もホームセンターで買ったフローリングの補修キットを使っています。ポイントは色合わせ。フローリング材と違う色は、傷がかえって目立ってしまいます。色選びを慎重にしてから使うようにしましょう」

傷だらけになったフローリングをどうにかしたい場合、張り替えや重ね張りではなく、補修+コーティングという選択肢もある。
「傷を直し、色あせた箇所に色を加える補修をしたうえでフローリングの全面にコーティングをする方法もあります。張り替えるよりもコストが抑えられます。フローリング材によってはできない場合もあるので、リフォーム会社に相談してみるといいですね」
フローリングの傷や汚れを気にしながら毎日過ごすよりも、自分でできる補修はこまめに行えば目立たなくなるし、手をかけた分、家への愛着も湧く。思い切ってリフォームするなら、家具の色や、つくりたい空間のイメージに合わせて色や素材選びを楽しもう。