住まいのリフォームのタイミングは人それぞれですが、長く住み続けると、使いづらい部分や経年劣化が気になってくるものです。また、最近では大掛かりなリフォームを前提に中古住宅を購入するという人も少なくありません。今回は大型リフォームにまつわるお金の疑問について、山商リフォームサービス株式会社首都圏北ブロック長、相澤さんに教えてもらいました。
リフォームにかかる費用はその内容などによってさまざまですが、300万円以上のリフォームを行った人を対象に実施した、2017年大型リフォーム実施者調査(リクルート住まいカンパニー)によると、大型リフォームでかかった費用の全体平均は610.4万円という結果になっています。住宅種別の平均費用を見てみると、一戸建てが621.9万円、マンションが539.9万円です。一戸建て・マンションそれぞれのリフォーム費用の平均は、1m2当たりの費用ではなく、かかった費用全体の平均のため、施工面積が広くなることの多い一戸建ての価格が高くなっているということも考えられますが、平均費用を比較すると一戸建ての方が約82万円多くなっています。
「リフォームが専有部に限られるマンションの場合、床や壁、天井などを張り替え、建具や水まわりの交換をするというような施工内容だと、平均金額程度のイメージですが、設備や建具などのグレードや、施工範囲などによっては、より高額なリフォームもめずらしくありません。
マンションの場合は造作壁を壊して、間取り変更を行うなどはできますが、構造壁を壊したり、排水ルートを変更したりすることはできません。一方、一戸建ての場合、リフォームの可能性は無限大です。構造部分に関しても、ある程度床や壁、天井などを壊さないと改善できない、断熱性や耐震性などを高める工事などをすることもあります。
また、一戸建ての場合、築年数が経ったものだと、構造の部分などに問題を残したままリフォームをするわけにはいかないため、マンションのリフォームよりも大掛かりになることがあります。施工内容などにもよりますが、費用が1000万円を超えるケースも少なくありません」(相澤さん、以下同)
築年数別の調査データも見てみると、築10~20年未満の場合と築20~30年未満の場合ではさほど平均金額に差はないものの、築40年以上の平均金額は築10年未満の平均金額より500万円以上高くなっています。築40年を超えるような築古物件になると、リフォームがより大掛かりになるなどして、築浅物件よりもリノベーション費用がかさむということも考えられそうです。
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リフォームにかかる費用は千差万別ですが、実際に大型リフォームを行った、マンションと一戸建ての事例で、リフォームにかかる費用を見てみましょう。
叔母の持ち家だった築約30年のマンションを譲り受けたMさん家族。自分たちが住むとなると、キッチン横に洗濯置き場があったり、冷蔵庫置き場がなかったりといった間取りの使いづらさが気になったため、住戸内をすべて解体・撤去するスケルトンリフォームを計画しました。おしゃれで使いやすいキッチンにしたいということで、元々壁付けのI型だったキッチンはII型のカウンターキッチンに変更。冷蔵庫置き場も確保でき、ブルーのクロスやカラフルなタイルがアクセントになっています。リビングの床にむくのスギ材を使用したのもこだわったポイント。リビングの居心地が良くなり、家族が自然と集まる空間になったそうです。
施工面積
約75m2
間取図
築25年の一戸建てに住むKさん家族は、暗くて寒い1階の生活環境を変えたいとリフォームをスタート。もともと1階にあるLDKから直接トイレへ入るという動線もストレスだったため、大幅な間取り変更を行いました。リフォームではLDKを2階に移し、トイレへの動線も改善。また、1階には主寝室のほかに、念願の子ども部屋をつくりました。さらに、内装、外装共にアクセントとしてタイルなどを採用。吹抜け階段まわりの柵にはパイプやメタルを使用したオリジナリティのある仕上がりに、とても満足しているそうです。
施工面積
90m2
間取図
調査データや実例からもわかるように、大型リフォームとなると、やはり、ある程度まとまった費用が必要になります。中古を購入したタイミングでリフォームを行った人の場合、リフォーム費用は自己資金やリフォームローンで用意するほかに、物件購入費用と合わせて借り入れる住宅ローンを利用するという選択肢があります。一方で、住んでいる家のリフォームを行う場合については、すでに借り入れている住宅ローンの借り換えを行って、リフォーム資金を調達する人も少なくないそうです。
「住宅ローンの残債がある場合、リフォームローンを借り入れると二重のローンを返済していくことになります。そういう場合は、リフォーム資金を住宅ローンと一つにまとめて借り換えるという方法をとることで、毎月返済額や総返済額を抑えられるケースもあります。
ただし、このような借り換えに対応していない銀行もあり、残債や金利によっては、借り換えて一つにまとめても、リフォームローンを借り入れる場合と毎月返済額や総返済額はそれほど変わらないということもあります」
なお、住んでいる家を大型リフォームする場合、工事の期間中、賃貸物件などに住む必要に迫られることもありますが、その場合は仮住まいの家賃と引越し費用などが必要になります。工事の規模や期間にもよりますが、ある程度まとまった金額の現金も必要になるので、準備が必要です。
費用が大きくなる大型リフォームのときこそ、少しでもおトクな制度は活用したいものですが、リフォームを行う際は、国や自治体によるさまざまな補助金や減税制度を利用することができます。
「耐震、バリアフリー、省エネ、長期優良住宅化などのリフォームを行う場合、所得税の控除や固定資産税の減額を受けられるリフォーム減税があります。
リフォームにまつわる補助金については、各自治体で利用できるものもあるので、国の支援制度と自治体の制度を併用できるかどうか、また詳しい手続きや利用条件などについては、個人では調べ切れない部分も多いと思います。どのような優遇制度が利用できそうか、施工会社などに相談してみるといいでしょう」
住まいは経年劣化するもの。不便さや不快に感じる部分があるのであれば、リフォームは快適に住み続けるためには欠かせないものとして、まずは資金計画からはじめてはいかがでしょうか。
大型リフォームでかかった費用の平均は610.4万
マンションよりも一戸建ての方が、リフォーム費用が多くなる傾向がある
リフォームの際にはさまざまな優遇制度を活用できる